JIS K 0155:2018 表面化学分析―二次イオン質量分析法―単一イオン計数飛行時間形質量分析器における強度軸の線形性 | ページ 2

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3 方法の概要

  方法の概要を,図1にフローチャートとして示す。この方法では,4.14.3で示すように清浄化及び前
処理を一切行わないそのままの状態のPTFEテープに対して二次イオンスペクトルを測定する。分析条件
は,パルス当たりの二次イオン強度が,検出器のイオン計数が線形性及び非線形性を示す範囲になるよう
に,4.4で規定する手順で分析者が設定する。一次イオンビーム電流の範囲を正しく設定するために,PTFE
試料に対して16本のテストスペクトルを測定して決定する。次に非線形性を補正するために,PTFE試料
に対して16本のデータスペクトルを測定する。イオンビーム,質量分析器,帯電補正及びイオン検出シス
テムの設定条件について,線形性が得られる最適な装置動作条件であることを確認するための事項を4.5.2
4.5.5に示す。
なお,PTFEはバルクの絶縁体であるため,帯電中和が必要である。
質量分析器は,性能が最も安定する条件下で動作させることが望ましい。分析者はJIS K 0153に従って
装置の安定性を確認することが望ましい。この規格で示している手順はJIS K 0153に準拠している。
データ取得については4.5に示し,測定するピークの詳細を表1に示す。得られた強度に対して予想さ
れる挙動については,4.6に関連する式とともに示す。補正を行っていない生データ,又は装置付随のデー
タ処理用コンピュータによって補正された後のデータの線形性が十分な場合は,この規格の適用は不要で
ある。線形性が不十分で,かつ,装置の挙動が想定どおりの場合は,4.6.5に示す手順に従って補正を行う。
この補正によって,線形性が保たれる範囲を50倍以上に拡張できる。その後,装置の変化又は経時変化に
よってこの規格に規定されている手順の実施が必要となるまで再実施する必要はない。線形性が不十分で
装置が想定どおりの挙動を示さない場合には,その問題の改善方法を附属書に示した。附属書に示した方
法を用いることで,使用中の装置で実現できる程度内で線形性を保つ範囲を拡張することができる。ただ
し,理想的な装置に対して予想される範囲まで拡張できない場合もある。

――――― [JIS K 0155 pdf 6] ―――――

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開始
4.1 標準試料の入手
4.2 試料の取付け準備
4.3 試料の取付け
4.4 装置操作
4.4.2 イオンビームの設定
4.4.3 質量分析計の設定
4.4.4 帯電中和の設定
4.4.5 イオン検出器の設定
4.5 データの取得
4.6.4 強度補正のある場合,ない場合での線形性領域の評価
cMの最大値は十分か?
はい
いいえ
4.6.5 強度補正及び確認
直線性は十分か? 附属書D 直線性に影
いいえ 響する因子
はい
4.6.5.1 強度の補正
箇条5 測定を繰り返す間隔
注記 番号は,参照する関連の箇条
図1−この規格のフローチャート

――――― [JIS K 0155 pdf 7] ―――――

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4 強度の線形性を評価するための手順

4.1 標準試料の入手

  スタティックSIMSの分析計の校正には,屋内配管のシールに使われるPTFEテープの新しい一巻を用
いる。この一巻に識別のための印を付け,標準試料として保管する。
注記 PTFEは長さ12 m,幅12 mm,厚さ約0.075 mmのテープ一巻として,屋内配管用として販売さ
れている。

4.2 試料の取付け準備

  試料は,接着防止の粉を使用していないポリエチレン製手袋をし,コーティングされていない洗浄され
たステンレス製のピンセットで取り扱う。クリーンルームで使用されるビニル手袋は,成形時の離型剤が
表面を覆っているため使用してはならない。離型剤は,非常に可動的で,瞬時に試料を汚染する。この影
響で,測定の繰返し性が低下し,質の低下したデータとなる。
注記 この規格は,12Cと13Cとの天然同位体の強度比を用いて線形性を決定する。同位体比法を成功
させるためには,同位体ピークと干渉するバックグラウンドがない状態で測定することが重要
である。ほとんどのTOF-SIMS装置は,13Cのフラグメント及び12CHの妨害ピークを完全に分
離するのに十分な質量分解能をもっていないため,炭化水素汚染が最小限に抑えられるように,
標準物質は水素を含まず,低い表面エネルギーであることが重要である。PTFEは,これらの
重要な特性をもち,かつ,簡便に入手し使用できる。
手袋を選ぶときは,タルク,シリコーン化合物又は類似の汚染物質を避けるよう注意する必要がある。
“パウダーフリー”手袋は,タルクを含んでいない。コーティングされたステンレス又はステンレス製以
外のピンセットは不要な汚染を引き起こす可能性がある。

4.3 試料の取付け

4.3.1  試料の取扱時には,手袋をしてピンセットを持ち,手袋で直接試料を触ってはならない。試料を扱
うために使用する拭取り材は,試料表面を不要に汚染する可能性があるため使用してはならない。試料と
手袋との不必要な接触は避ける。試料を固定するために使用する試料ホルダー,その他の器具は,試料間
の相互汚染の可能性がある場合は定期的に洗浄しなければならない。シリコーン及び他の可動性成分を含
むテープの使用は避ける[3]。
4.3.2 4.1に示すPTFEテープから最初の20 cmを取り除いて廃棄し,その次の部分から清浄なはさみで
適度な大きさの試料を切り取る。一巻の最初の部分を取り除くことでPTFEの清浄な表面を露出させ,分
析に用いる。試料を洗浄してはならない。試料を表面が平たん(坦)になるよう,洗浄したねじ,マスク
などを利用して試料ホルダーに固定する。試料の固定に粘着テープは使用しない。試料の裏面は,試料ホ
ルダーと導通をもった導電性の面に確実に密着させる。PTFEを試料ホルダーの穴の上に置いてはならな
い。
注記1 一般的な試料ホルダーは,様々な径の穴のあいた金属板及び金属グリッドをもつ。激しいチ
ャージアップが生じる試料では,金属グリッドが有効な場合がある。
注記2 試料の下に穴があると,飛行時間形,磁場セクター形などの高い引出し電場を使用する装置
では,質量分解能及び繰返し性が悪くなる。箇条5で規定する繰返し評価の際には,清浄な
試料面が必要であり,一貫性を確保するために,試料を同じ一巻から採取する必要がある。

4.4 装置操作

4.4.1  一般
装置は,装置の製造業者の取扱説明書又はその他文書化された手順に従って操作しなければならない。

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装置は,ベーキング後に十分に冷却されていなければならない。測定は,イオンビーム電流,計数率,分
析計の走査速度,その他装置の製造業者によって指定されたパラメータが装置の製造業者の推奨の範囲と
なる条件で行う。検出器の増倍管の設定が正しく調整されていることを確認する(4.4.5参照)。装置によ
っては計数率の非線形性の問題の対処として,計数率を一定の上限値以下に収めるように警告表示する。
これによって計数率を,一例として0.1カウント/パルス以下など,低い値に制限することができる。こ
の規格によって,高ダイナミックレンジが可能となり,かなり高い計数率まで非線形性を修正することが
できる。また,短い分析時間における信頼性の高い測定が可能となる。この場合は上記の警告表示を無視
することとなる。警告を無視する場合は,装置に関する取扱書又は装置の製造業者への確認によって安全
性を確保する。
4.4.2 イオンビームの設定
4.4.2.1 この規格において,一次イオン電流によって,線形領域から非線形領域まで,一次イオンパルス
当たりの二次イオン強度が変わる。12Cと13Cとの同位体比を用いた確認を行うために,イオンビーム電流
の計測は必要ない。複数のイオン源が利用可能であれば,PTFEにおける12CF3+ピークが最も高強度とな
るものを用いる。4.5.4で詳細に規定するように,ビーム電流が二次イオン強度及び検出器飽和の程度につ
いて広範囲の値となるように調整できれば,一次イオンは原子イオンでもクラスターイオンでもよい。
4.4.2.2 分析試料上で,電流値が4.4.2.1の範囲の値になるように一次イオンビームの設定を行う場合には,
次の状況を満たすことが重要である。
a) パルス幅及びピーク形状が,電流値に依存しない。
b) ピーク幅が,検出器の不感時間(4.5.10にて決定し,通常 50 nsとする。)より十分に狭い。
c) 表1から選択したCxFyピークが,質量干渉の影響を受けない。
一次イオン電流は,偏向電圧を変えて,イオン銃の内部アパーチャーをイオンビームが断続的に通過さ
せることによって,容易に調整できる。他の方法では,パルスタイミング又は質量校正に変化を引き起こ
すことがある。
4.4.2.3 イオンビームは,可能な限り質量分析計のアクセプタンス領域の中心を向くようにする。これを
行うためには,質量分析計の全ての項目について位置合わせを行う。その後,質量分析計のアクセプタン
ス領域全体をイメージングするためにイオンビームの照射範囲を広げ,質量分析計のアクセプタンス領域
をイメージング領域の中心に合わせる。場合によっては,アクセプタンス領域全体に対して最大視野を十
分に大きくできないことがある。ソフトウェアによって制限されている場合は,ラスターエリアがより大
きくなるように倍率校正係数を変えた状態で中心合わせを行った後,倍率校正を適切な条件に戻すことで,
実施できることがある。
4.4.2.4 最大イオンドーズ量の推奨値は,1×1016個/m2である。典型的なイオンビームラスターエリアは
200 μm×200 μmであるが,ラスター一辺の長さをRとして式(A.2)によって求められるイオンドーズ量が
スタティック限界の要件を満たすように400 μm×400 μmまで増やすことができる。例えば,0.5 pAのパ
ルスビームでの200 μm角照射では,128 secの照射時間がスタティック限界の要件となる。200 μm角照射
の場合,128×128でのピクセル表示ではビーム径を3.1 μm以上に広げる必要がある。1 μmまでしか広げ
られない場合は,256×256でのピクセル表示を使わなければならない。そうしなければ,個々のピクセル
上での照射量が1×1016 ions/m2のスタティック限界の2倍を超える。過度に収束したイオンビームを用い
ると,デジタルラスタースキャン中に微小なダメージ領域が格子状にできる。このためビーム径を十分に
広げることが必要となる。正確な値は使用装置に依存するが,附属書Aに示すように,最小ビーム径は式
(A.1)によって評価できる。

――――― [JIS K 0155 pdf 9] ―――――

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4.4.2.5 最終フレームが不完全な場合は,データに対する寄与が小さくなるように,式(A.4)に示す測定フ
レーム数nを20以上とするのがよい。
可能であれば,部分的な試料帯電を軽減するために,ランダムラスター測定を用いるのがよい。
4.4.2.6 統計上良好なデータを得るには,分析領域全体のスペクトルが必要である。
4.4.3 質量分析計の設定
4.4.3.1 線形性が保たれ,かつ,高強度となるような分析計の条件を選択する。正二次イオンの測定条件
を選択する。
注記 検出強度の再現性は,設定条件の組合せによって異なる。一般には,質量分析計のエネルギー
アクセプタンスの値を50 eV以上に設定した場合に,再現性が最も良くなる。
4.4.3.2 質量分析計は,高質量域における感度が高く,安定かつ再現性が良好となるように設定する。分
析計の偏向調整手順を,次に示す。イオンビームの位置をPTFE試料上の分析領域に合わせ,ラスターエ
リアを50 μm×50 μmまで小さくする。分析計の偏向調整は質量分解能が最大となるように,1か所ずつ順
番に調整する。この調整手順は,分析計の偏向ペアの数だけ繰り返すことが必要である。この過程で試料
上の分析領域が移動した場合には,一次イオン制御系を用いて,イメージの中心合わせを再度実施する。
4.4.3.3 リフレクトロン形装置では,リフレクタ電圧を設定するために,表面電位を求める手順が必要と
なる。リフレクタ電圧を変更した場合の,PTFE由来のCF2+イオンのピーク強度への影響を図2に示す。
リフレクタ電圧をより大きな正の値とすると,リフレクタ前段でイオンが反射し飛行時間が短くなるため,
見掛けの質量軸上においてピークは低質量側に移動する。イオン強度が急速に増加し始めるリフレクタ電
位の値は,試料の表面電位とほぼ一致した値となる。図2の例では試料の表面電位は約−79 Vであり,サ
ンプルの厚さと誘電率とに依存する。リフレクタ電圧をより大きな正の値とすると,二次イオンエネルギ
ー分布のより広い範囲が検出器へと反射され,信号強度はプラトー領域まで増加する。ピーク強度最大値
の半分の強度となるリフレクタ電圧(VT)は,精密かつ高速に計測される。測定時のリフレクタ電圧(VR)
としては,エネルギー受容値として望ましい値(VE)をVTに加え,再現可能な手順で設定する。ここでは,
−75 Vでピーク強度最大値の半分の強度となっている。エネルギー受容値を20 eVとして,−55 Vのリフ
レクタ電圧が効果的である。
4.4.3.4 4.4.3.3の手順にてリフレクタ電位を設定した後,表1に示す強度の弱い13C同位体ピークに,強
度の強い準安定イオンが重ならないように微調整実施が必要な場合がある。

――――― [JIS K 0155 pdf 10] ―――――

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