JIS K 0157:2021 表面化学分析―二次イオン質量分析法―飛行時間形二次イオン質量分析計における質量軸の校正 | ページ 2

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K 0157 : 2021 (ISO 13084 : 2018)
スタート
装置のパラメータを No
最適化するか?
Yes
6.1/6.2 装置最適化のための参照試料
6.3 SIMSスペクトルデータの取得
6.4 質量確度の計算
6.5 装置パラメータの最適化
6.6 スペクトルの校正手順
注記 図中の数字は,関連する細分箇条を示す。
図1−装置パラメータ最適化及び校正手順のフローチャート

6 質量確度改善方法

6.1 最適化のための参照試料の取得

  6.2によって,平坦な導電性基板(例えば,シリコンウェハ)上に形成されたポリカーボネート薄膜(10
nm100 nm)試料を取得又は調製しなければならない。

6.2 ポリカーボネート試料の調製

6.2.1 調製に用いる環境及び器具
ポリカーボネート参照試料の調製手順を示す。この方法によって,ToF-SIMSのスペクトルにおいて1.9 %
よりも良好な試料間での繰返し性が可能となる[2]。ToF-SIMS用の試料を調製するためには,清浄な作業
環境が必要である。表面汚染を減らすために,清浄なガラス器具,ピンセット及びパウダーフリーの手袋
を使用しなければならない。器具として1 mLのガラスピペット,100 mLの共栓全量フラスコ及びスピン
コーティング装置を必要とする。スピンコーティング装置が使えない場合,ポリカーボネート溶液を滴下

――――― [JIS K 0157 pdf 6] ―――――

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し乾燥させたものを用いてもよいが,繰返し性が悪くなるため,スペクトル測定に注意を要する。
6.2.2 試料溶液の調製
清浄なアルミニウムはく(箔)上で100 mgのポリカーボネートをひょう量する。100 mLの共栓全量フ
ラスコに100 mgにひょう量したポリカーボネートを入れ,分析試薬級のテトラヒドロフラン(THF)を
100 mL加える。フラスコを振とう(盪)して時間をかけてポリカーボネートを完全に溶解させる。これに
よって,THFにポリカーボネートの入った濃度1 mg/mLの溶液を調製する。アルミニウムはく(箔)は新
たに巻き出したもので,非光沢面を用いる。THFが無水であることを確認する。無水THFでない場合は,
6.2.3のスピンコート膜を作製する際に筋状の乾燥痕が現れる。調製した原液の保管期間は,吸水するため
1か月以内とする。
注記1 ポリカーボネートが低レベルの添加剤を含む場合がある。
注記2 THF溶液中のポリカーボネートの濃度が±20 %変動する場合がある。
注記3 対応国際規格では,“光沢面を用いなければならない”と記載されているが,明らかな誤りのた
め“非光沢面を用いる”に修正した。
6.2.3 試料の調整
扱いやすい大きさ(例えば,1 cm角)のシリコン又は別の平坦若しくは研磨された導電性基板を2-プロ
パノール(イソプロピルアルコール)に浸せき(漬)し,約8時間以上洗浄する。清浄なイソプロピルア
ルコール中で基板を超音波洗浄し,乾燥させる。超音波槽が利用できない場合は,基板を清浄なイソプロ
ピルアルコールで洗い流す。基板をスピンコーティング装置に取り付ける。約0.2 mLのポリカーボネート
のTHF溶液を基板上に滴下し,毎分4 000回転で約25秒間回転させる。5 mLのピペットを用いてポリカ
ーボネートのTHF溶液を基板上に堆積させ,通常雰囲気中で風乾することによって調製してもよいが,こ
の方法は,不均一なポリカーボネート膜が生じるので,ピーク強度の繰返し精度が悪くなるため,比較す
る場合に注意を払わなければならない。
注記1 導電性であればどのような基板を用いるかは重要なことではない。なお,シリコンウェハを用
いると高品質な膜が得られることが知られている。
注記2 この手順を用いると,膜厚は約10 nmになる。絶対厚さは重要ではない。ただし,厚すぎると,
電荷の蓄積(帯電)によって,最適なToF-SIMSスペクトルデータが得られないことがある。

6.3 SIMSスペクトルデータの取得

6.3.1 試料の導入
ポリカーボネート試料をSIMS装置のチャンバー内に導入する。
6.3.2 装置の準備
装置を,装置製造業者の作業手順書又は個々の機関で作成された手順書に従って操作する。装置は,ベ
ークアウト後に十分に冷却されていなければならない。操作は,イオンビーム電流,計数率,及びその他
装置製造業者によって指定のパラメータが推奨の範囲となる条件で行う。検出器の電子増倍管の設定が正
しく調整されていることを確認する。

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6.3.3 測定条件
通常の分析条件及び測定時間を選択する。ToF装置の場合は,最大質量が800 u以上となる繰返し周波
数を選択する。C9H11O+ピークの強度が10 000カウント未満である場合,10 000カウント以上となるよう
に測定時間を長くする。信号強度が弱ければ,適正な測定時間内に10 000カウント以上を得ることができ
ない場合がある。最大イオンフルエンス(1×1016 ions/m2)を超えないようにするため,必要があればラス
タ面積を広げる。最終的には,データの質及び分析にかかる時間によって妥当な分析時間を設定する。設
定したパラメータを記録する。装置製造業者の作業手順書又は個々の機関で作成された手順書に従って,
検出器が飽和していないことを確認する。これは,パルス当たりの一次イオン個数を減少させることによ
って達成してもよい。
注記 繰返し性,再現性及び一定性の高い高品質なSIMSスペクトルの取得方法の詳細については,JIS
K 0153[4]を参照する。

6.4 質量確度の計算

6.4.1 ピーク中心の決定方法
分析機器製造業者のソフトウェアには,ピーク位置を自動で計算できる機能が搭載されており,この機
能によって得られたピーク中心M0の値を用いれば十分な場合がある。ここでは,M0を決定するために,
より正確で信頼性の高い方法を用いることが可能である。すなわち,測定ピーク付近の質量MPに対する
信号強度を,非対称ガウス関数GAによってフィッティングし,そのフィッティングからM0を算出する。
M0はピーク中心,MPはピーク付近の質量,G0をスケーリング係数とすると,GAは,式(1)及び式(2)によっ
て与えられる。
2
− MP−M0
GA=G0 exp2 2

(pdf 一覧ページ番号 )

                                       − MP−M0
及び
FWHM =0

(pdf 一覧ページ番号 )

                               22ln2
ここで,FWHM(α=0)は,非対称性係数α=0の場合のガウス関数の半値幅である。αは,非対称性を
与え,α=0では純粋なガウス関数となる。
各ピークについて,式(1)を当てはめる。ただし,隣接するピークからの干渉を回避するために,最大強
度の50 %以上の強度を使用するものとする。また,質量軸の校正は,このフィッティングによって求めた
ピーク位置を用いて行うことが望ましい。
注記 非対称ガウス関数は,広範囲のピーク形状に対して良いフィッティングを与えるが,その平均値
は,非対称ピークのため,著しい誤差をもたらす。ここでのフィッティングは,最大強度の50 %
までしかカバーしないが,一般に非対称ガウス関数は,最大強度の15 %までの優れたフィッティ
ングが可能である。
6.4.2 質量確度
質量確度ΔMを,式(3)に示すように,計測によって決定されたピーク中心M0と真の質量MTとの間の差
異として定義する。
ΔM=M0−MT (3)

――――― [JIS K 0157 pdf 8] ―――――

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注記 対応国際規格では,“ΔM=MP−MT”と記載されているが,明らかな誤りのため“ΔM=M0−MT”
に修正した。
相対質量確度Wは,式(4)で与えられる。
M
W= (4)
MT
なお,Wは,ppmで表す。
6.4.3 質量確度の具体例
図2に,最適化されていない装置におけるポリカーボネートの様々な炭化水素ピークについてのΔMを
示す。異なるフラグメンテーションをもつ二次イオンに対して,ΔMが広い質量範囲にわたって変化して
いる。これは,質量分析機器の質量軸確度が不十分であることを示している。
図2において,矢印で示したピークは,マススペクトルを校正するために使用する。なお,丸で囲まれ
た記号は,σMを計算するために用いるピークである。ここでは,非対称ガウス関数が使用される。
記号説明
X : M,u
Y : ΔM,10−3×u
図2−リフレクタ電圧VR=60 Vで取得したポリカーボネートの正イオンスペクトルにおける
炭化水素ピークの質量確度ΔM
ΔMの0からの統計的な発散度を提供するために,よく知られた4種のCxHy+グループ(x=4,6,7及
び8)の中からピークを選択する。詳細を,図2(丸で囲んだデータ)及び表1に示す。

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表1−σMを計算するために使用されるピーク
x値 イオン 真の質量u
4 C4H2 50.015 65
4 C4H4 52.031 30
4 C4H5 53.039 13
6 C6H2 74.015 65
6 C6H3 75.023 48
6 C6H4 76.031 30
6 C6H5 77.039 13
6 C6H6 78.046 95
7 C7H2 86.015 65
7 C7H3 87.023 48
7 C7H4 88.031 30
7 C7H5 89.039 13
7 C7H6 90.046 95
7 C7H7 91.054 78
8 C8H2 98.015 65
8 C8H5 101.039 10
8 C8H6 102.047 00
8 C8H8 104.062 60
8 C8H9 105.070 40
式(3)を用いて各々のピークのΔMを求め,x=4,6,7及び8の4種のグループに対してそれぞれ標準偏
差σCxHy(ΔM)を計算する。x=6の場合のσCxHy(ΔM)の計算式を式(5)に例示する。
6 2
MC6 H y− MC6 Hy
y=2
CH M= (5)
6y
4
最後に,式(6)を用いて,表1で定義した4種のCxHy+グループの標準偏差の平均値σMを計算する。
1
M= CH M+ CH M+ CH M+ CH M (6)
4 4y 6y 7y 8y
ここで,σCxHy(ΔM)は,x=4,6,7及び8の4種のCxHy+グループにおけるΔMの標準偏差である。
注記 分子の寿命を考慮する方がよい場合がある。分子の寿命によって質量確度は変化する。表1に示
した分子については,その寿命が質量確度に顕著な影響を与えることはない。

6.5 装置パラメータの最適化

  測定値σMを使用して,機器の操作パラメータを最適化する。質量確度を向上させるためには,σMの値
を最小にする必要がある。
ここで,リフレクトロンタイプの分析器の例として,レンズ電圧設定の最適値並びに分析器のX方向デ
ィフレクタ電圧及びY方向ディフレクタ電圧の最適値を図3に示す。図3 a)の曲線の最小値から容易に最
適なレンズ設定値を見つけることができ,レンズ設定は76 %である。同様に,分析器のディフレクタの最
適な設定値は,ブロードな最小値をもち[図3 b)],ディフレクタ電圧が大きいと急上昇し,ディフレクタ
X及びディフレクタYの両者に対してほぼ中央の0の設定となる。このため,イオン光学軸とイオンビー
ムラスター領域との位置を合わせるための適切な手順を使用することが重要である。

――――― [JIS K 0157 pdf 10] ―――――

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