JIS K 0157:2021 表面化学分析―二次イオン質量分析法―飛行時間形二次イオン質量分析計における質量軸の校正 | ページ 3

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この方法は,エネルギースリット値,コントラスト絞り,パスエネルギー及び引出し電圧のような他の
パラメータを最適化するために使用することが可能である。様々な分析器設定に対して,6.36.5の手順
を繰り返すことでこれらを最適化し,図3と同様のグラフを取得する。これらを使用し,どの分析器設定
がσMを最小化するかを決定することが可能となり,結果として最適な質量確度を得ることが可能である。
分析器に適した設定内容を選択するには,機器の取扱説明書又は分析機器製造業者の手引を使用する。
注記 最適化手順は,図2に見られるばらつきを低減することを目的としている。ばらつきはσM値によ
って特徴付けられ,σM値の減少がばらつきの低減となる。ばらつき改善可能な例を,σMの低減と
して図3に示す。全体的な改善は,変更可能な装置パラメータに依存する。
a) レンズ設定 b) 分析器のディフレクタX
及びディフレクタYの設定
記号説明
X1 : レンズ設定(%)
X2 : 分析器のディフレクタX及びディフレクタYの設定
Y1 : σM,u (×10−3)
Y2 : σM,u (×10−3)
図3−異なるレンズ設定並びに分析器のディフレクタX及びディフレクタYの設定に対するσM値の変化

6.6 校正手順

6.6.1 質量校正
ToF-SIMSスペクトルにおける質量校正は,校正される機器ではなく,スペクトルそのものに行う。測定
されたスペクトルにおいて,正しく同定されたことが確実なピークだけを校正ピークとして使用しなけれ
ばならない。
注記 不正確なピークの同定は,質量軸校正の不正確さにつながるが,正確なピークの同定を確実に行
うことで,不正確さの解消が可能である。
6.6.2 表面粗さの影響
1 mを超える粗さ又はエッジ高さのある試料では,質量分解能及び質量軸校正の確度が低下する。形状
が無秩序(例えば,研磨表面)ではなく構造化されている場合(例えば,MEMSデバイス),質量校正は,
同程度の試料高さの領域に制限することが望ましい。

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6.6.3 真の質量の計算
校正ピークの真の質量は,同定した分子式及び原子質量の標準一覧表を用いて計算しなければならない。
平均質量の値ではなく,同位体質量の値を用いなければならない。SIMSでは,イオンを測定するので,正
確さの高い質量を算出するためには,電子の質量(5.49×10−4 u)にイオン価数を乗じた値を正イオン分析
であれば減算し,負イオン分析であれば加算することが望ましい。
注記 例えば,C4H5Oの真の質量は,次のように計算を行う。同位体質量の周期表から,最も一般的な
炭素(C)同位体は12であり,12.000 000 uの質量をもつ。同様に,水素(H)は1.007 825 uの質
量及び酸素(O)は15.994 915 uの質量をもつ。したがって,分子C4H5Oの真の質量は4×12 u+
5×1.007 825 u+15.994 915 u=69.034 040 uである。
6.6.4 水素に関する注意
校正においては,水素を第1の質量として使うことが一般的である。水素は,校正された質量軸なしで
識別することが容易であり,一次校正の実施のために使用される場合もあるので,水素を第1の質量とし
て使用することは,非常に有益である。しかしながら,質量軸の正確な校正のためには,水素は推奨され
ない。
注記 水素の質量測定の不確かさは,典型的な値よりも著しく大きい。この理由の一部は,水素の軌道
が,より重いイオンよりも浮遊磁場によってより強く影響され(しばしばイオン像の変位として
観察される。),結果として,測定された通過時間,すなわち推定された質量値の不確かさが増大
する。
6.6.5 低分解フラグメント
低分解フラグメントの分子解析のために,同様に低分解のピークを校正ピークとして使用する。すなわ
ち,元の化学構造からの低分解又はフラグメンテーションをもつイオンを使用して校正する。質量校正に
原子イオンを含めない。準安定イオンを避ける。
注記1 低分解イオンは,G-SIMS [5]を用いて同定することが可能である。
注記2 原子イオンは運動エネルギーが大きく,有機イオンと比較してΔMの値が大きい。このため,
校正が偏ってしまう。これは,ほとんどの質量分析計が完全なエネルギー補償をもっていない
ために生じる。
注記3 準安定イオンは,それらの広いピーク形状によって同定することが可能である。
6.6.6 校正に用いる質量
校正においては,12 u30 uの質量,又は可能な限り,この質量範囲に近い第1の質量m1,及び現実的
に利用可能な範囲で最も大きな第2の質量m2を使用する。質量mの大きな分子を同定するために,校正
イオンの中にm2≧0.55 mを満足する質量m2を含まなければならない。分子の寿命を考慮する方がよい場
合がある。分子の寿命によって質量確度は変化する。短い寿命を示す場合がある大きなピーク幅をもつ分
子の使用は,回避するのがよい。
注記1 校正で,m2≧0.55 mをもつ,幅広い質量範囲を使用する必要性は,附属書Aに示している。
注記2 校正イオン中にm2≧0.55 mを満たす適用可能なイオンが存在しない場合,附属書Bに記載す
る内部添加法が役立つことが多い。
注記3 MS/MSは,高質量イオンを識別するのに役立つ可能性がある。

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6.6.7 校正イオンの個数
更なる中間の校正質量を追加するには,一般に,五つの校正イオンで十分である。
注記 校正質量を増やすことによって,一般に,校正の質が改善する。

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附属書A
(参考)
校正不確かさ
A.1 不確かさ
最も単純なケースとして,質量m1及び質量m2の二つのピークを使用した校正から生じる質量mの合成
不確かさU(m)は,式(A.1) [6]によって与えられる。
2 2 1/ 2
m2−m 2 mm
− 1 2
Um = U1 + U2 (A.1)
m2−m1 m2−m1
式(A.1)の不確かさU1及び不確かさU2は,それぞれm1及びm2の精密質量測定の不確かさである。ここ
で,実用上では,重要な質量範囲の大部分にわたって,U1=U2=U0である。mがm1又はm2に等しい場合,
この関数は最小二乗法から予想されるようにU(m)=U0となり,mがm1とm2との間の中間である場合,
U(m)=U0/2となる。
A.2 相対不確かさ
図A.1には,式(A.1)を用いて求めた相対不確かさU/U0を,m1=10,m2が100 u2 000 uの範囲内の値
をもつ際の校正5種についてそれぞれ示す。校正の不確かさが校正質量の範囲外で急速に増加しているこ
とが明らかである。m1=10 u及びm2=100 uの典型的な校正質量範囲では,m=1 000 uでU/U0=15であ
る。U0=3×10−3 uの場合,相対質量確度Wは60 ppmとなる。m1=10 u及びm2=500 uでは,m=1 000 u
でU/U0=2.3となり,相対質量確度Wが一桁低い7 ppmまで減少する。

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記号説明
X : M,u
Y : U/U0
注記 二つの質量ピークを用いた校正における相対不確かさU/U0を,m1=10,m2を100 u,300 u,500 u,1 000
u及び2 000 uのそれぞれの値とした場合の,質量の関数として3 000 uの範囲まで示す。m2よりも高い
質量では外挿の影響によって相対不確かさが大きくなる。
図A.1−二つの質量ピークを用いた校正における相対不確かさU/U0

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  • ISO 13084:2018(IDT)

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