この規格ページの目次
14
K 0166 : 2011
6.9 適切な参照運動エネルギーの決定
6.9.1 アルミニウムを用いたときの相対分解能が0.04 %以下の分光器,又は金を用いたときの相対分解能
が0.07 %以下の分光器のための参照運動エネルギーは,表2のとおりである。
表2−エネルギー軸上でのピーク位置の参照値[7]
単位 eV
0
ピーク番号 帰属 Erefn
,
n
1 Cu M2, 3VV 62.37
2 Cu L3VV 918.69
3 Al KL2, 3L2, 3 1393.09
4 Au M5N6, 7N6, 7 2015.80
注記1 これらの運動エネルギーは,フェルミ順位を基準としている。
注記2 この表は,参考文献[8][10]で既に発表されたものを見直し
たものである。
6.9.2 6.9.1及び表2で要求されたものより大きく,0.2 %より小さな相対分解能R %をもつ分光器のため
のEref, nは,式(2)によって求める。
0 2
Eref , n
Eref , n
cR dR (2)
ここに, c,dは,表3のとおりである。
表3−参照運動エネルギーの補正
単位 eV
ピーク番号 帰属 C d
n
1 Cu M2, 3VV 0.0 0.0
2 Cu L3VV 0.2 −2.0
3 Al KL2, 3L2, 3 −0.3 −1.8
4 Au M5N6, 7N6, 7
5kVn(E) 0.0 0.0
5kVEn(E) −0.3 4.4
10kVn(E) −0.2 0.0
10kVEn(E) −0.1 0.0
注記1 この表は,もっと複雑な表[10] を単純化しており,0 %分解能のための表と,0.015 eVの範囲で矛盾がない。
注記2 この表の帰属の最下部欄で,対応国際規格では単位がkeVと表記されてい
たが,印加電圧で表記されるのが普通であり,単位はkVに修正した。
6.10 運動エネルギーの直線性の点検
6.10.1 6.8.3で決定された運動エネルギーの測定値の平均Emeas, nから,表2で与えられる参照エネルギー
Eref, nを式(2)に従って差し引くことで,それぞれのピークnに対する分光器のオフセットエネルギーの測定
値Δnが得られる。すなわち,式(3)が得られる。
Δn=Emeas, n−Eref, n (3)
――――― [JIS K 0166 pdf 16] ―――――
15
K 0166 : 2011
6.10.2 エネルギー軸の目盛が,目的とする分析のために十分に直線的であるかを判定するためには,式(5)
又は式(6)を用いて,測定したエネルギー軸の目盛における直線性の誤差,すなわち,Cu L3VVのピークに
おけるε2を計算する必要がある。この誤差は,分光器のオフセットエネルギーの測定値であるΔ2と,目
盛が線形であると仮定したときのCu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークの運動エネルギー
から導出される数値との差である。Au M5N6, 7N6, 7の場合,ε2は,式(4)による。
1Eref 4Eref 2 4Eref 2Eref 1
2 2 (4)
Eref 1
Eref 4
Al KL2, 3L2, 3の場合,ε2は,Δ4とEref 4とを,Δ3とEref 3とに置き換えた同様の式で与えられる。これらの
式は,具体的に数値を用いて次のように表される。
ε2=Δ2−0.562Δ1−0.438Δ4 (Au M5N6, 7N6, 7のとき) (5)
ε2=Δ2−0.356Δ1−0.644Δ3 (Al KL2, 3L2, 3のとき) (6)
それぞれのピークについて,式(5)又は式(6)から,ε2の値を計算する。
注記1 ε2の値を,表1に記録しておくとよい。
注記2 エネルギー軸の目盛の非直線性は,相対論的な影響の未補正によって生じる可能性もある。
同軸円筒形分光器を電子の減速なしで用いた場合,Au M5N6, 7N6, 7による補正では0.398 eV,
Al KL2, 3L2, 3による補正では0.172 eV影響を及ぼす。同心半球形分光器では,ε2への影響は,
それぞれ0.920 eV及び0.398 eVとなる。電子の減速をすることなく0.2 %以上の相対分解能
を得ることのできる市販の分光器はほとんどなく,4又は10の減速比Aで用いられている。
この減速によって前記の非直線性はA2分の1,すなわち,16又は100分の1に低減される。
先に示した非直線性が最大となる同心半球形分光器の場合で,0.058 eV又は0.009 eVにそれ
ぞれ低減される。この影響は実用上はほとんどの場合に無視してよいが,非常に高精度又は
低減速比の条件で,かつ,ε2の寄与がδ/4よりも大きいと判断される場合には文献を参考に
するとよい [10][12]。
注記3 対応国際規格では,式(6)の最後の項は“−0.644Δ4”となっていたが,理論上Δ4ではなくΔ3
であることから,Δ4をΔ3と修正した。
I I
6.10.3 eV単位で示された信頼水準95%でのε2の不確かさは,Uより小さく,
95 Uは式(7)による。
95
2 2 12
U95I 2.1 R .0040 (7)
I I
6.10.4 Uより小さければ,実用上,エネルギー軸の目盛は直線的とみなされる。|ε2|
Uを計算する。|ε2|が
95 95
I
の値がUより大きい場合,エネルギー軸の目盛は直線的ではない。しかし,|ε2|がδ/4より小さい場合,
95
すなわち,選択した許容限界δに比べて,直線性の誤差が十分小さい値とみなせる場合は,この程度の非
直線性は差し支えない。
I
例 σRが0.05 eV(表1に示した値)の場合,不確かさUは0.072
95 eVとなる。
式(7)は,附属書Cで導き出される。
注記 研究機関同士の共同研究の結果では,高分解能分光器から得られた平均σR2の値は0.06 eVであ
った。
6.10.5 |ε2|がδ/4より大きければ,分光器を修正することが望ましい。これは,6.7の繰り返しによって操
作を見直すか又は分光器製造業者に連絡するか,先に示したδの緩い値への変更が必要となる。
注記 上記は,直線性を点検するために必要な試験の全てではない。全ての試験を行うとすると,大
――――― [JIS K 0166 pdf 17] ―――――
16
K 0166 : 2011
規模な設備が必要となり,この規格の範囲を超えたものとなる。
6.11 校正誤差を定期的に決めるための手順
6.11.1 σR及びε2が決定された後,運動エネルギーの校正が必要とされる分光器を操作条件の設定ごとに,
一定の校正周期で校正誤差を決定しなければならない。6.14で規定するように,校正誤差の決定を,前回
の校正手順で決まっていた有効校正期間が失効する前にしなければならない。
6.11.2 定期的な校正には,Cu M2, 3VV及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークだけが用いられる。測定
の手順は,Cu M2, 3VVに続いてAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3ピークの順で,この手順によって行われた
前回の校正がσR<δ/8であれば繰り返す必要はないが,そうでなければ,更にもう1回測定を繰り返す必
要がある。したがって,定期の校正における繰返し回数mは,1回又は2回である。それぞれの測定では
電子の放出角度が法線に対して0°56°の間で,いつも同じ角度に試料を保持して測定する。試料の設
置は,手順に従って行う。6.8.1で規定した方法で,ピークの運動エネルギーを決定し,かつ,式(3)によっ
て,測定に用いた分光器のオフセットエネルギーΔ1及びΔ4の値を求める。
6.11.3 補正した運動エネルギーの値Ecorrと運動エネルギーの測定値Emeasとは,次に示す線形関係がある
と仮定する。
Ecorr=(1+a) meas+b (8)
エネルギー軸の目盛誤差aは,式(9)による。
1 4
a (9)
Eref 4Eref 1
そして,表2及び表3でEref 1及びEref 4が与えられると,エネルギーが0のときのオフセット値bは,式
(10)によって与えられる。
4Eref 1 Eref 4
1
b (10)
Eref 4Eref 1
注記1 a及びbの値は,Eに対する−Δ(Δではない。)の傾き及び切片である。
注記2 対応国際規格では,1行目は“補正した結合エネルギー”となっていたが,これは間違いの
ため,“補正した運動エネルギー”に修正した。
6.11.4 信頼水準が95 %である場合,この校正の不確かさU95は,式(11)によって求める。
2 cI 2
U95 95
2.1 2 (11)
運動エネルギーの範囲が0 eV2 250 eVの場合(Au M5N6, 7N6, 7のとき),又は1 550 eVの場合(Al
cI
KL2, 3L2, 3のとき),Uは,式(12)及び式(13)によって与えられる。
95
U95cI6.2 R (m=2) (12)
又は
U95cI 7.3R (m=1) (13)
cI
注記 分析者が選んだmに対し,U及びU95の値を表1に記入しておくとよい。
95
附属書Cに式(11)式(13)の導出法を示す。
6.12 分光器のエネルギー軸の目盛を補正する手順
6.12.1 分光器を校正するかどうかは,分光器,ソフトウェア,分光器のオフセットエネルギーの大きさを
表すΔn,繰返し性の標準偏差σR,及び許容限界±δのうち,どれを実行するかによって決まる。
ピーク1及び3又は4に対する (|Δn|+U95) の値が共にδ/4より小さければ,校正用の確認を行った後,
装置を再校正する必要はない。校正用の確認をした後に毎回再校正を行うのが最善であるが,毎回校正を
――――― [JIS K 0166 pdf 18] ―――――
17
K 0166 : 2011
するかどうかは,これに要する労力と要求される不確かさとで決めればよい。校正の実施は,分光器製造
業者から分析者に示されている校正方法に従う。多くの分光器において,分析者には,分光器の仕事関数
φを変更することだけが許されている。校正方法の選択は,分光器を利用できる施設に依存する。分光器
の仕事関数を変えることが唯一の実効的な選択である分光器に対して,次の三つの方法が提案されている
[6.12.1 a)6.12.1 c)参照]。これらの提案では,運動エネルギーの補正値Ecorrは,式(14)によって求める。
Ecorr=Emeas+ΔEcorr (14)
ここに, Ecorr : 次の方法ごとの補正値
a) 方法1は,分光器を変更しないで,式(8)の測定された運動エネルギーに,測定後の補正値ΔEcorrを加
える。
ΔEcorr=aEmeas+b (15)
ここに, a,bは,式(9)及び式(10)によって与えられる。
b) 方法2は,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いる場合には0 eV2 250 eV,Al KL2, 3L2, 3ピークを用いる場合に
は0 eV1 550 eVの運動エネルギー範囲に適用されるもので,測定後の補正を最小にする。ここでは,
増分Δφを,分光器で採用されている分光器の仕事関数に加える。ここで,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用
いる場合には,増分Δφは,式(16)によって求める。
21
( 1 4) (16)
測定された運動エネルギーに対する測定後の補正は,式(17)によって求める。
Eref 4
Eref 1
Ecorra Emeas (17)
2
Al KL2, 3L2, 3ピークを用いる場合には,式(16)及び式(17)において,添字4を添字3に置き換える。
この方法では,Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いる場合には1 039 eV,AlKL2, 3L2, 3ピークを用いる場合には728
eVの運動エネルギーのところで,それぞれΔEcorrがゼロになり,運動エネルギーの測定値に対する測定後
の補正が,それぞれ0 eV2 250 eV又は0 eV1 550 eVの範囲の運動エネルギー範囲で最小となる。
c) 方法3では,分析者によって選択される特定の運動エネルギー(頻繁に測定される元素の運動エネル
ギー)で,測定後の補正をゼロにする。ここでは,式(18)で与えられる増分Δφを分光器の仕事関数
に加える。
ΔEcorr=aEelem+b (18)
ここに, Eelem : 頻繁に測定される元素に対するオージェ電子ピークの
運動エネルギー
実際に測定された運動エネルギーに対する測定後の補正は,式(19)による。
ΔEcorr=a(Emeas−Eelem) (19)
ここに, ΔEcorr : 運動エネルギーEelemで,ゼロ
6.12.2 6.12.1によって,分析上必要な運動エネルギーの全範囲,又は選択された狭い運動エネルギーの範
囲において,|ΔEcorr|+U95で表される和が,校正を実施する校正周期にわたってδより小さくなる場合,6.12.1
のa) c)で定義された測定後の補正ΔEcorrは無視してよい。しかし,この校正は,選択された運動エネル
ギーの範囲内においてだけ有効である。
6.12.3 採用した補正手順は,実行していれば,Δ1,Δ4,a,b,妥当な運動エネルギー範囲及びΔφととも
に,記録しなければならない。全ての作業が正確に行われることを確実にするために,最初の繰返し校正
手順において,その補正手続を確認しなければならない。
6.12.4 これが選択された条件での最初の校正ならば,校正日付に対する校正データの変化を示す図5のよ
うなエネルギーの校正管理図を準備する。この管理図には,誤差許容範囲±δ及び再校正が必要となる時
――――― [JIS K 0166 pdf 19] ―――――
18
K 0166 : 2011
期を示す±0.7δの警戒限界も示す。
6.12.5 全ての校正において,エネルギー軸に対し,測定後の補正がされている場合は,Δ1及びΔ4の測定
値を,この管理図に書き加える。エネルギー軸に対する測定後の補正がなされているならば,Δ1+ΔEcorr
(ΔEref 1で算出されたもの)及びΔ4+ΔEcorr(ΔEref 4で算出されたもの)の測定値も,この管理図に書き加
える。各測定に対する不確かさU95を,図5に示すように,この管理図に追加する。
6.12.6 エネルギー軸に対する測定後の補正がされない場合は,(|Δ1|+U95)及び(|Δ4|+U95)がいずれもδ
より小さいことを確認する。エネルギー軸に対する測定後の補正がされている場合は,[|Δ1+ΔEcorr(ΔEref 1
のエネルギー点で算出されたもの)|+U95]及び[|Δ4+ΔEcorr(ΔEref 4のエネルギー点で算出されたもの)|
+U95]がいずれもδより小さいことを確認する。これらの条件が満たされず,かつ,初めて校正する場合
には,計算間違いを検査する。これらの条件が満たされず,かつ,初めての校正ではない場合には,校正
周期を短くするか,又はδの値を許容できるまで大きくする必要がある。
注記 エネルギー軸に対する測定後の補正がされている場合,Δ1及びΔ4の測定値を管理図に書き加え
ることは,分光器がこの手順による校正の範囲内にあるかどうかを確かめるためには重要では
ないが,累積する分光器変動を監視でき,その結果として,校正間隔を最適化するには役立つ。
V
Δ1,Δ4,e
1月 3月 5月 7月 9月 11月
校正日付
a 95 %許容限界
b 警戒限界
図5は,1月に測定を始めて以来,再校正されておらず,エネルギー軸に対する測定後の補正もされていない
分光器におけるΔ1及びΔ4の経月変化を示す。9月に初めて校正許容限界を越えているだけでなく,5月に警戒限
界の上限を超えていた上,4か月の期限を超えているので,5月に再校正をするべきであった。それぞれの測定
点の不確かさU95は,信頼性が95 %の場合のものであり,エネルギー軸の直線性の誤差及び不確かさを含む。こ
の図は,表1におけるm=2,δ=0.3 eVの例を表したものである。
図5−分光器の校正状態を表示する管理図[13], [14]
――――― [JIS K 0166 pdf 20] ―――――
次のページ PDF 21
JIS K 0166:2011の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 17974:2002(MOD)
JIS K 0166:2011の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0166:2011の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0147:2004
- 表面化学分析―用語