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T 0902 : 2014
4.1.2 音声案内
音声案内は,次による。
a) 音声案内の種類 音声案内で使われる音声の種類は,次のように区分する。移動支援用音案内の設計
に音声の種類を考慮することが有効な場合がある。
1) ヒトが自然に発話した音声又は合成音声による区分。
2) 男声,女声又は性別不明の音声による区分。
3) 録音再生又は実時間(リアルタイム)発声による区分。
b) 音声案内の発話速度 音声案内の発話速度は,1 sに4音節から5音節までの範囲が望ましい。ただし,
周囲の反射,残響又は暗騒音によってこの範囲の発話速度が聴取困難な場合は,音声内容が聴き取れ
る範囲に調整する。
注記1 日本語の場合,音節数はモーラ数で数える。
注記2 一般に反射,残響,又は暗騒音が大きい場合,発話速度が速いと了解度が低くなる。
c) 音声案内が提供する情報 音声案内を利用者の誘導に使用する場合,利用者に提示する情報は,次の
内容を含んでいなければならない。
1) 誘導する目標の種類
2) 誘導する目標の方向
3) 誘導する目標が動いている場合,その動きの様子及び方向
例1 “男子トイレは向かって右です。”
例2 “光町方面ホーム行き下りエスカレータです。”
注記3 上記の例1及び例2の案内内容は,国土交通省ガイドライン(附属書A [1]参照)で推奨し
ている音声案内の文面と一致するものではない。
d) 注意喚起音 音声案内の前に,注意喚起の目的で非音声音を使用すると有効な場合がある。その場合,
4.1.3の要求事項及び推奨事項を満たす非音声音を使用する。
例3 “(水の流れを模した非音声音の後)トイレです。”
4.1.3 非音声音案内
非音声音案内は,次による。
a) 非音声音案内の種類 非音声音案内に用いる音は,チャイム音,自然現象などから類推できる音,そ
の他の音の3種類に区分する。移動支援用音案内の設計において,これら3種類の音の特性の差異を
考慮して利用すると有効な場合がある。非音声音案内に用いる音は,次の特性をもつ。
1) チャイム音は,図1に示す時間構造をもつ。チャイム音の一つの“部分”は,立上がり時間の短い
開始部とその直後に緩徐に起こる減衰部とをもつ。チャイム音の一つのフレーズは,一つ以上の“部
分”によって構成される。チャイム音は,利用者に正しい位置情報を提供するために,次の要求事
項及び推奨事項を満たす必要がある。
1.1) チャイム音の各“部分”の開始部(図1“部分”1nの各包絡線の開始点から最大値までの区間)
は,0 msより大きく,かつ,5 ms以下でなければならない。
1.2) チャイム音の各“部分”の減衰部は,振幅がおおむね時間と共に単調減少するものでなければな
らない。
1.3) チャイム音の各“部分”の信号波は,単一の調波音又は異なる基本周波数をもつ複数の調波音を
組み合わせた音でなければならない。また,僅かな周波数ゆらぎ又は振幅ゆらぎ若しくはその両
方をもつことが望ましい。
――――― [JIS T 0902 pdf 6] ―――――
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例1 単一の調波音は,三角波,のこぎり波などがある。
例2 異なる基本周波数をもつ複数の調波音の合成音で,僅かな周波数ゆらぎ,及び振幅ゆらぎをも
つ音には,楽器の和音などがある。
フレーズ
部分1 部分2 部分3 ··· 部分n
開始部 減衰部
音圧
包絡線
搬送波
···
···
時間
図1−チャイム音の時間構造
2) 自然現象などから類推できる音は,利用者に正確な位置情報を提供するために,次の要求事項及び
推奨事項を満たす必要がある。
2.1) 音案内が設置される周囲の自然現象の音との違いを明確に区別できる音にしなければならない。
また,実在する自然音との違いを明確に区別できる音にしなければならない。
2.2) 自然現象などから類推できる音は,原音信号に残響成分が含まれないことが望ましい。
3) その他の音は,チャイム音,自然現象などから類推できる音に該当しない音である。
例3 音楽,サウンドロゴなどは,チャイム音,自然現象などから類推できる音に該当しない音
である。
b) 非音声音案内の信号波の周波数特性 非音声音案内に用いる音に対する信号波の周波数特性の要求事
項及び推奨事項は,次の特性とする。
1) 最も低い周波数成分は,100 Hz以上1 kHz以下でなければならない。
注記1 波形が調波音である場合,最も低い周波数成分とは,その調波音の基本周波数に等しい。
2) 最も高い周波数成分は,8 kHz以上でなければならない。
――――― [JIS T 0902 pdf 7] ―――――
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注記2 純音などの狭い周波数帯域の音は,上記1),2) 両方の条件を同時に満たさず,非音声音案
内としての要求事項を満たさない。
3) 調波音を使用する場合,基本周波数成分から最も高い周波数成分までの周波数範囲の調波を全ても
つことが望ましい。また,調波音を使用しない場合,可能な限り多くの周波数成分をもつことが望
ましい。
なお,調波音を使用しない場合,周囲の雑音との区別がつくような音色とすることが望ましい。
例4 のこぎり波は基本周波数成分とその自然数倍周波数成分との調波を全て所有している。
注記3 三角波及びく(矩)形波は,基本周波数成分とその奇数倍周波数成分との調波しかもたず,
偶数倍周波数成分の調波がないので,3) で規定する非音声音案内としての推奨事項を満た
さない。
4) チャイム音の信号波については,上記1)3) に加え,a) の1.3) を満たすものとする。
4.2 フレーズの時間長さ
利用者が移動しながら聴取することが想定される場合,利用者が移動支援用音案内の内容を把握しやす
くするために,一つのフレーズの時間長さは5 s以内が望ましい。利用者が静止して聴取することが想定
される場所では,5 sを超えることができる。
注記 ヒトが歩行する速さは約1.2 m/sと見積もられるので,音声案内のフレーズの開始から終了まで
の時間が5 sの場合,その間に歩行者は約6 m移動することになる。フレーズの時間長さが長
くなるほど,利用者はフレーズの全体を聞くことなく通過する可能性が高くなる。
4.3 繰返し頻度
利用者が移動しながら聴取することが想定される場合,利用者が移動支援用音案内の内容を聞き落とし
て通過することを防ぐために,フレーズの終了時点から次のフレーズの開始時点までの時間間隔が2 s以
下で繰り返されることが望ましい。
例1 チャイム音を用いて“ピンポン(その後2 sの無音区間)”を繰り返す。
例2 “向かって右が男子トイレです(その後0 sの無音区間)。左が女子トイレです(その後2 sの
無音区間)。”を繰り返す。
なお,次のa) d) のいずれかの場合に限り,必要最低限の範囲で2 sを超えることができる。
a) 利用者が,静止した状態で聴取することが想定される場所の場合。
b) 音声案内について,移動中に複数回のフレーズの明確な聴取が可能である場合。
c) 4.6 b) に規定した,複数の移動支援用音案内の発音時間を重ならないようにする必要がある場合。
d) 4.6 d) に規定した感知器によって動作する場合。
注記 ヒトが歩行する速さは約1.2 m/sであるので,音声案内のフレーズの終了から次の開始までの時
間が2 sの場合,その間に歩行者は約2.4 m移動することになる。終了から次の開始までの無音
の時間が長くなるほど,利用者は移動支援用音案内の内容の一部を聞き落とし通過する可能性
が高くなる。
4.4 信号発生装置
信号発生装置の特性は,次による。
a) 周波数帯域 信号発生装置は,4.1で規定した周波数帯域の音を出力できなければならない。
b) 量子化ビット数 信号発生装置は,デジタル方式によって移動支援用音案内を発生,録音,再生又は
伝送する場合,音の信号の量子化ビット数は,8 bit以上を用いなければならない。また,16 bit以上
であることが望ましい。
――――― [JIS T 0902 pdf 8] ―――――
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注記 量子化ビット数は,デジタル方式によって信号波を数値化する場合のビット数(2進数で表
現した場合の桁数)である。
c) 圧縮 信号発生装置は,デジタル方式によって移動支援用音案内を録音,再生又は伝送する場合で,
かつ,音信号のデジタルデータを圧縮して記録する場合,著しく音質が劣化しないような圧縮率を使
用する。
4.5 スピーカ
スピーカは,次による。
a) 周波数特性 スピーカは,4.1で規定した周波数帯域の音を出力できなければならない。
b) 設置位置及び設置方向 設置位置及び設置方向は,次による。
1) スピーカの設置高さは,歩行路面から0.8 m以下又は2.4 m以上の高さとする。ヒトの音源定位特
性の観点から,高さの上限は3.0 m以下が望ましい。公共空間の構造上の理由で2.4 m以上の高さ
に設置することが困難な場合,可能な範囲で高い位置に取り付けることが望ましい。また,設置空
間の構造上の理由で3.0 m以下の高さにスピーカを設置することが困難な場合,可能な範囲で最も
低い位置に取り付けることが望ましい。
注記1 歩行路面から0.8 m2.4 mの高さの範囲で誘導線上にスピーカが存在すると,利用者が通
過するときに頭部がスピーカに衝突するか,頭部とスピーカとが接近して,スピーカの音
量が聴覚に悪影響を与える可能性がある。
2) 移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合,スピーカの設置位置は,誘導点又はその近傍を
通る鉛直線上でなければならない。ただし,公共空間の構造上の理由でそのような設置が困難な場
合,できるだけ当該空間に近い位置に設置することが望ましい。
3) スピーカの設置方向は,そのスピーカの基準軸がそのスピーカの放射方向において主要動線又は誘
導動線と交点をもつように設置する。ただし,公共空間の構造上の理由で交点をもたせることが困
難な場合,できるだけ基準軸を主要動線に近づけることが望ましい。
4) 移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合で,誘導動線と主要動線とが一致しているときの
スピーカの設置方向は,その基準軸が主要動線と30°45°の角をなすことが望ましい(図2を参
照)。
5) 移動支援用音案内を利用者の誘導に使用する場合で,誘導動線と主要動線とが一致していないとき
のスピーカの設置方向は,その基準軸と主要動線との交点が,誘導動線と主要動線との交点に一致
することが望ましい。ただし,公共空間の構造上の理由で交点に一致させることが困難な場合,で
きるだけ交点に近づけることが望ましい(図3を参照)。
注記2 誘導点は,図2及び図3の例のように,スピーカの放射角内に入らない場合がある。しか
し,スピーカは一般的に放射角外にも音を放射するので,利用者の頭部中心より高い位置
に設置したスピーカを水平方向に向けない限り,誘導点においても音を聴取し,音源を定
位することが可能である。利用者は,聴取した移動支援用音案内の音像が頭部上方向にあ
ることを知り,それに定位することによって自分が誘導点に到達したことを知ることがで
きる。
注記3 狭指向性スピーカを使用する場合,誘導点においても移動支援用音案内の聴取が可能であ
ることを確認してから使用するのがよい。狭指向性スピーカでは放射角の範囲外では音の
聞き取りが難しい。また,放射角の範囲内では距離による音量変化が一般のスピーカより
小さいことに留意する必要がある。
――――― [JIS T 0902 pdf 9] ―――――
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図2−誘導動線と主要動線とが一致する場合のスピーカの設置例
図3−誘導動線と主要動線とが一致しない場合のスピーカの設置例
c) 周囲の構造 スピーカの基準軸上で,かつ,スピーカから主要導線までの範囲内に,音の伝搬に影響
を与える構造物が存在してはならない。また,スピーカの放射角の範囲内で,かつ,スピーカからの
距離3 m以内の領域内に,音の伝搬に影響を与える構造物が存在しないことが望ましい。
例1 音の伝搬に影響を与える構造物には,看板,標識,柱,壁などがある。
d) 外観 スピーカ又はスピーカを内蔵したきょう(筐)体は,それが移動支援用音案内を発する装置で
あることを示す外観をもつことが望ましい。
例2 視覚障害者の国際シンボルマークをきょう体及び設置位置近傍の壁又は天井に貼付する。
――――― [JIS T 0902 pdf 10] ―――――
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JIS T 0902:2014の国際規格 ICS 分類一覧
- 11 : 医療技術 > 11.180 : 心身障害者用の介護用具 > 11.180.10 : 移動用介護用具
JIS T 0902:2014の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC5532:2014
- 音響システム用スピーカ
- JIST0102:2011
- 福祉関連機器用語[支援機器部門]
- JIST0901:2011
- 高齢者・障害者配慮設計指針―移動支援のための電子的情報提供機器の情報提供方法
- JISZ8106:2000
- 音響用語
- JISZ8731:2019
- 環境騒音の表示・測定方法