JIS W 0711:2021 無人航空機システム設計管理基準 | ページ 2

                                                                                             3
W 0711 : 2021

4 リスクアセスメント

4.1 一般

  無人航空機システムのリスクアセスメントを行うに当たっての注意点として,リスクアセスメントに関
しては,JIS B 9700:2013の全ての要求事項を適用しなければならない。JIS B 9700:2013では,機械類の設
計において安全性を達成するときに適用される基本用語及び方法論並びにリスクアセスメント及びリスク
低減の原則を規定している。リスクアセスメントの実施において,リスクが許容できるか否かの決定は,
無人航空機システムの用途及び使用目的に左右される。
JIS B 9700:2013には機械類の危険源の全般的リストが含まれており,この規格の附属書Aに示す無人航
空機システムの重要危険源のリストは,これを基にしている。

4.2 危険源の同定

  危険源の同定は,ある特定の無人航空機システムに存在し得る危険源を同定するために実施しなければ
ならない。附属書Aに,この規格に規定する無人航空機システムに存在し得る,典型的な危険源のリスト
を記載している。このリストには,全ての危険源が網羅されているものとみなしてはならない。特定の無
人航空機システムは,その固有の設計,意図した使用方法又は合理的に予見可能な誤使用の結果として,
附属書Aに記載する以外の危険源が出現する可能性があるため,注意することが望ましい。危険源の同定
プロセスは,設計ごとに実施し,特に次の点を考慮しなければならない。
a) 無人航空機の飛行制御システムが下す自律的判断の不確かさ及び誤った判断によると考えられる危険

b) 故障などによる無人航空機の意図しない動き
c) 無人航空機において取り扱うペイロードの不確かさ
d) 無人航空機システムが人体及び他の設備に与える予想外の影響(有害な電磁放射,非電磁放射など)
e) 無人航空機システムの運用環境,その他の外的要因による正常ではあるが想定外の動き
f) 無人航空機システムの予想外の空域条件,環境条件などでの運用(例えば,急激な天候変動,気圧,
温度,湿度などの環境変化など)
g) 運用時における第三者の予想外の動き(例えば,運用域への侵入,他の無人航空機の同一エリアでの
無許可運用など)

4.3 リスク見積り

  リスク見積りは,無人航空機システムの運用に当たり,無人航空機の飛行によって航空機の航行の安全
並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれないことに留意しながら,4.2で同定した危険源に関
して実施しなければならない。
全ての本質的安全設計方策並びに安全防護及び付加保護方策を採用した後には,無人航空機システムの
残留リスクの評価を行い,それが許容レベルにまで低減されたことを証明しなければならない。
適切なリスク見積りの方法は,ケースバイケースで策定しなければならない。見積り結果を基に,事象
(例えば,無人航空機の飛行によって航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損な
われること)が受容できないリスクの原因とならないことを示さなければならない。特定用途にリスクア
セスメントのための数値を用いる場合は,試験方法及び/又は測定方法の適切な妥当性確認を行わなけれ
ばならない。リスク見積りに出典と異なる数値を用いる場合は,それを基準としたことが適切であること
について妥当性確認を行わなければならない。

――――― [JIS W 0711 pdf 6] ―――――

           4
W 0711 : 2021

5 安全要求事項及び保護方策

5.1 一般

5.1.1 安全性の確保
無人航空機システムは,箇条5の安全要求事項に適合しなければならない。箇条4に規定する方法を用
いて無人航空機に付随する危険源を特定した場合,無人航空機システムは,その危険源に起因するリスク
が取扱説明書に記載する運用制限,運用上の対策などと併せて許容レベル以下とすることができるように,
設計しなければならない。
さらに,この規格では取り上げていない危険源に関しても,JIS B 9700:2013の原則に従って無人航空機
システムを設計しなければならない。
この規格を適用する際には,JIS B 9700:2013は不可欠である。この規格を適用又は使用する前に,この
規格のユーザは,JIS B 9700:2013を熟知することが望ましい。
この規格は,この規格に規定していない方策によってリスクの排除又は低減ができる場合にそれを妨げ
るものではないが,その場合,それらの方策は,少なくともこの規格に規定する方策と同レベルのリスク
低減を達成しなければならない。
方策を講じて,合理的に実行可能な限り,無人航空機の飛行によって航空機の航行の安全並びに地上及
び水上の人及び物件の安全が損なわれないようにし,更に無人航空機システムを継続的に使用する上での
ユーザの安全を確実にしなければならない。
無人航空機システムは,他の規格及び規制にも従わなければならない場合がある。
5.1.2 安全確保のための方策の構成
無人航空機システムは,JIS B 9700:2013の原則に従い,それぞれの用途に応じて特定された全ての危険
源に関して,次の構成で設計しなければならない。
a) 本質的安全設計方策
b) 安全防護及び付加保護方策
c) 使用上の情報
本質的安全設計方策の使用は,リスク低減プロセスの第一歩で,最も重要なステップである。これは,
いかにうまく設計された安全保護策といえども,故障又は故意に解除されることがあり,また,使用上の
情報は守られないことがあることが経験上,分かっているためである。
本質的安全設計方策は,無人航空機システム自体は,衝突又は接触する可能性のある地上及び水上の人
及び物件と他の無人航空機との相互作用の設計内容の適切な選択を通じて,リスクを低減又は排除するこ
とで危険源を回避する。
安全防護及び付加保護方策の追加は,リスク低減手法の第二ステップである。衝突又は接触する可能性
のある地上及び水上の人及び物件と他の無人航空機との間に起こり得る動的な相互作用によって,多数の
リスクが発生することから,無人航空機システムのある保護制御機能が特定のタイプのリスクを大幅に低
減することがある。
リスク低減が安全関連制御機能の使用によって達成される場合は,箇条6の要求事項を適用する。
本質的安全設計方策並びに安全防護及び付加保護方策が適用された後,それでも存在する残留リスクに
関する情報は,取扱説明書で提供しなければならない。使用上の情報に関する一般的な要求事項は,箇条
8に規定する。
5.1.3 安全要求事項の検証
箇条5の安全要求事項を満たしているかの確認は,次のうち一つ以上の方法によって検証することがで

――――― [JIS W 0711 pdf 7] ―――――

                                                                                             5
W 0711 : 2021
きる。
a) (システム設計の精査)
1) -1(ハードウェア設計の精査)
2) -2(ソフトウェア設計の精査)
3) -3(機能設計の精査)
b) (構造設計の精査)
c) (設計検証試験)
d) (測定)
e) (実用試験)
f) (その他)
重要危険源に関する様々な要求事項の検証及び妥当性確認の推奨方法は,上記a) f)の方法に対応して
適用可能な方法(A,B,·という形式)をとる。検証及び妥当性確認方法は,箇条7に規定する。

5.2 保管に関連する危険源

5.2.1 一般
無人航空機システムを保管する場合は,適切に設定された保管条件を取扱説明書などに記載することに
よって運用者に周知し,その環境下で保管し,機体の破損及び劣化による危険源から人を防護しなければ
ならない。また,バッテリ又は燃料を用いる機体の場合は,バッテリ又は燃料の適切な保管条件を設定し,
その環境下で保管し,発煙,発火,爆発などによる危険事象から防護しなければならない。極端な温度(高
温)から保護できない場合には“高温注意”などの注意表示を行い,人又は物件との接触によるやけど,
発火などから防護しなければならない。
5.2.2 本質的安全設計方策
機体に突起部などがある場合には,人が偶発的に接触しても危害を加えないように取り外したり,緩衝
材などで保護するようにしなければならない。可動部があり,指の挟み込みなどの危険性がある場合は,
可動部の固定手段又はガードを設けなければならない。
5.2.3 安全防護及び付加保護方策
次の方策を適用しなければならない。
a) せん断,突き刺し及び切断の危険源を排除し,人との接触の危険源を低減するために,鋭利な端部及
びせん(尖)端にクッション処理を施す。
b) 危険な可動部を覆うため,固定式又は可動式のガードを使用する。
c) 機体,バッテリなどの機能·性能に影響を与える危険源(温度,振動,衝撃など)から保護する容器
を使用し,適切な保管方法を適用する。
5.2.4 使用上の情報
無人航空機システムの保管条件として,次の事項を含んでいなければならない。
a) 無人航空機システムの保管方法及び保管時の環境条件
b) バッテリ·燃料の保管方法及び保管時の環境条件
c) 保管に関する適切な警告文
5.2.5 検証及び妥当性確認
5.1.3のB(構造設計の精査)によって,検証及び妥当性確認を行う。

――――― [JIS W 0711 pdf 8] ―――――

           6
W 0711 : 2021

5.3 運搬に関連する危険源

5.3.1 一般
無人航空機システムを運搬する場合は,人に危害を加えない形状及び構造について検討しなければなら
ない。運搬時に,やけど又は類似の原因となり得る無人航空機システム又はその構成部品の極端な温度(高
温)から保護されるよう配慮し,保護できない場合には“高温注意”などの注意表示を行わなければなら
ない。誤って起動させ,ロータなどで人に危害を及ぼすことのないように設計しなければならない。
5.3.2 本質的安全設計方策
運搬中に,機体と人とが偶発的に接触しても危害を加えない形状及びロータ,又は可動部が意図しない
挙動によって人に危害を与えない構造に設計しなければならない。
機体,バッテリなどの機能·性能に影響を及ぼさない環境及び手段で運搬をしなければならない。
5.3.3 安全防護及び付加保護方策
次の方策を適用しなければならない。
a) せん断,突き刺し及び切断の危険源を排除し,運搬時の人との接触による危険源を低減するために,
鋭利な端部及びせん(尖)端にクッション処理を施す。
b) 危険な可動部を覆うため,固定式又は可動式のガードを使用する。
c) 機体,バッテリなどの機能·性能に影響を与える危険源(温度,振動,衝撃など)から保護する容器
を使用し,適切な運搬方法を適用する。
5.3.4 使用上の情報
使用上の情報は,無人航空機システムの運搬に対する説明として,次の事項を含んでいなければならな
い。
a) 無人航空機システムの運搬方法及び注意点
b) 運搬に関する適切な警告文
5.3.5 検証及び妥当性確認
5.1.3のB(構造設計の精査)によって,検証及び妥当性確認を行う。

5.4 機体本体及び制御装置の機能

5.4.1 一般
無人航空機の飛行中,ソフトウェア判断の誤り,プロペラ回転停止,電源喪失,センサ系の故障,通信
途絶,プロポ,地上局の設定の異常などが原因となる人又は物件への危害を避けるよう,機体本体を設計
しなければならない。
5.4.2 本質的安全設計方策
次の安全設計を適用しなければならない。
a) 故障時に第三者無人地帯上空から逸脱しない機能をもつこと
b) 故障発生時の最終手段としてその場に強制的に不時着させる機能をもつこと
c) 無人航空機操縦者の判断で,地上から任意のタイミングにおいて機体の発動機又は電動機を停止でき
る機能をもつこと
d) 飛行又は墜落時の接触による人又は物件への危害を最小化するよう,形状,構造,材料を検討するこ

e) 飛行時の接触による人又は物件への危害を最小化するよう速度制限を検討すること
5.4.3 安全防護及び付加保護方策
必要に応じて,次の方策を適用しなければならない。

――――― [JIS W 0711 pdf 9] ―――――

                                                                                             7
W 0711 : 2021
a) 危機回避機能(例えば,自動帰還機能,電波が復帰するまでの空中で位置を維持する機能などのフェ
ールセーフ機能)をもつよう設計しなければならない。
b) その他,電波,操縦系統,推進系統,電源,自動操縦のフェールモードに対し,暴走させないフェー
ルセーフの機能をもつよう設計しなければならない。
5.4.4 使用上の情報
使用上の情報は,機体本体及び制御装置の機能に対する説明として,次の事項を含んでいなければなら
ない。
a) 運用空域は,“第三者無人地帯上空”に限ること
b) 安全上必要な機体との距離
c) 有人航空機が接近する場合は,有人航空機を優先し,回避行動をとらなければならないこと
d) 運用制限(気象条件,風速,温度など)及び飛行制限(飛行速度,荷重など)
e) 飛行に当たっての禁止事項
f) フェールセーフシステムの仕組及び非常時の対応操作手順
5.4.5 検証及び妥当性確認
通常,5.1.3のC(設計検証試験)によるが,それによらない場合は,適切な方法,又は複数の方法の組
合せによって,検証及び妥当性確認を行う。
設計検証試験に当たっては,想定される全てのペイロード搭載状態に対し,最も飛行性及び操縦性が劣
ると考えられる状態で飛行実証を実施し,飛行性及び操縦性を立証する。

5.5 地上局,電波及び灯火類

5.5.1 一般
操縦方式,電波受信状態,バッテリの状態などの監視ができないことによる人又は物件への危害を避け
るよう設計しなければならない。
5.5.2 本質的安全設計方策
次の安全設計を適用しなければならない。
a) 無人航空機操縦者が操縦方式,及び燃料又はバッテリの状態を確認できること
b) 無人航空機操縦者が操縦方式,及び燃料又はバッテリの状態を確認できない場合は,速やかに帰還又
は強制的に不時着できること
5.5.3 安全防護及び付加保護方策
必要に応じて,次の方策を適用しなければならない。
a) 危機回避機能(例えば,自動帰還機能,電波が復帰するまでの空中で位置を維持する機能などのフェ
ールセーフ機能)をもつよう設計しなければならない。
b) その他,電波,操縦系統,推進系統,電源及び自動操縦のフェールモードに対し,暴走させないフェ
ールセーフ機能をもつよう設計しなければならない。
5.5.4 使用上の情報
使用上の情報は,地上局,電波及び灯火類に対する説明として,次の事項を含んでいなければならない。
a) バッテリ,燃料などの運用時の管理方法
b) 飛行に当たっての禁止事項
c) フェールセーフシステムの仕組及び非常時の対応操作手順
5.5.5 検証及び妥当性確認
通常,5.1.3のC(設計検証試験)によるが,それによらない場合は,適切な方法,又は複数の方法の組

――――― [JIS W 0711 pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS W 0711:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS W 0711:2021の関連規格と引用規格一覧