JIS Y 24082:2021 サービスエクセレンス―卓越した顧客体験を実現するためのエクセレントサービスの設計 | ページ 2

           4
Y 24082 : 2021
3.1
エクセレントサービス(excellent service)
カスタマーデライト(3.2)につながる卓越した顧客体験を実現するために,組織と顧客との間で果た
される高いレベルのサービス提供を伴う組織のアウトプット
注釈1 高いレベルのサービス提供の例としては,サービスエクセレンスピラミッドの個別の優れたサ
ービスの提供(レベル3)及び驚きのある優れたサービスの提供(レベル4)がある。
(出典 : JIS Y 23592:2021の3.2)
3.2
カスタマーデライト(customer delight)
非常に大切にされている若しくは期待を超えているという強い感情,又はその両方に由来する,顧客が
体験するポジティブな感情
注釈1 驚きのような感情がより強くなると,カスタマーデライトは更に高まる。
(出典 : JIS Y 23592:2021の3.5)
3.3
エクセレントサービスのための設計(design for excellent service),DfES
個別の優れたサービス及び驚きのある優れたサービスの提供を通して,卓越した顧客体験を創出するた
めの体系的設計及び開発のアプローチ
注釈1 このような設計アプローチの背後にある方法論は,“Xのための設計”又は“DfX”方法論とし
て知られている。例えば,“環境適合設計(DfE)”については,JIS Q 0064を参照。
3.4
共創(co-creation)
サービスの設計,提供及びイノベーションにおける利害関係者の積極的な関与
注釈1 共創は,利害関係者の積極的な関与というプロセスに加えて,その結果としての価値創出まで
を含む場合がある。
注釈2 利害関係者には,サービス提供に関わる組織,要員及び顧客が含まれる。
(出典 : JIS Y 23592:2021の3.3を修正。注釈2を追加。)
3.5
共創環境(co-creation environment)
共創(3.4)を促進する環境
3.6
独自の価値提案(unique value proposition)
組織がどのような利益をもたらし,どのように顧客の問題を解決し,どのようにしてより良い感情的な
体験を引き出し,どのように競合他社と違うのかを明確にするステートメント
3.7
カスタマージャーニー(customer journey)
組織,組織の製品又は組織のサービスと関わる際の一連の顧客体験又は顧客体験の合計
注釈1 “一連”はプロセスに基づくものであり,“合計”は,結果に基づくものである。
(出典 : JIS Y 23592:2021の3.8)

――――― [ pdf 6] ―――――

                                                                                             5
Y 24082 : 2021
3.8
顧客接点(touchpoint)
顧客との接点,又は顧客が組織,その製品若しくはそのサービスと相互作用するための媒体
3.9
データポイント(data point)
サービス提供者(3.10)がいつ,どこで,顧客に関する情報を収集する若しくは観察する,又は顧客体
験のフィードバックを受け取るかという機会
注釈1 データポイントの内容の例としては,顧客の行動及び反応について捕捉した情報,提供プロセ
スについての情報がある。
3.10
サービス提供者(service provider)
顧客へのサービスを管理及び提供する組織
注釈1 組織には,請負業者,及び従業員などの要員を含む。
(出典 : JIS Q 20000-1:2020,3.2.24を修正。注釈1を追加。)
3.11
顧客中心(customer centricity)
価値創出及び価値獲得に重点を置いた顧客志向

4 エクセレントサービスのための設計の原則

4.1 概要

  図2の上部に示すサービスエクセレンスの効果の連鎖は,カスタマーデライトを達成することによって,
サービスエクセレンスがどのように組織にとってより高い利益をもたらすかを示している。サービスエク
セレンスの効果の連鎖にある次の要素は,エクセレントサービスを設計する上で重要な役割を果たす。
− エクセレントサービスの設計プロセス及び実現可能性を支援するサービスエクセレンスの実装
− 組織が設計するエクセレントサービス
− 対象化され,設計目標(goal)に取り込まれた卓越した顧客体験及びカスタマーデライト
継続的改善
サービス より高い財務面
サービスエクセレンスの エクセレント 卓越した カスタマー 顧客
エクセレンス 及び非財務面
効果の連鎖 サービス 顧客体験 デライト ロイヤルティ
の実装 での結果
エクセレント サービスの 対象化及び
サービスの 設計対象
設計プロセス及び 設計目標(goal)
設計との関係性実現可能性の支援 への取込み
図2−サービスエクセレンスの効果の連鎖及びエクセレントサービスの設計
この規格では,“エクセレントサービスのための設計(DfES)”という用語を使用する。図1に示すよう
に,DfESは,サービスエクセレンスピラミッドの上半分に対応している。基本的サービスのための一般的

――――― [ pdf 7] ―――――

           6
Y 24082 : 2021
なサービス設計は,このアプローチ及びこの規格のいずれでも規定していない。
箇条4では,次のa) d)のDfESの原則について規定する。
a) 感情面
b) 適応性
c) 顧客との共創性
d) 組織と顧客の視点との整合性
注記 箇条4のDfESの原則とは異なるサービスデザイン思考の一般原則については,附属書Aを参照
[17]。基本的サービスを確保するために,エクセレントサービス全体を設計する上では,これらの
一般原則及び関連する手法を適用することが可能である。

4.2 感情面

  エクセレントサービスは,顧客にポジティブな感情をもたらすように設計することが望ましい。カスタ
マーデライトは,顧客の個々の状況に合わせてサービスがカスタマイズされていると感じること若しくは
顧客として非常に大切にされていると感じたりすること,又はその両方のような,ポジティブな感情によ
って達成することが可能である。驚きは,顧客が感じるデライトを高める感情となることがある。組織は,
エクセレントサービスの提供において,顧客満足と対比してカスタマーデライトの重要性及び役割を理解
し,カスタマーデライトを更に高める方法を模索することが望ましい。

4.3 適応性

  エクセレントサービスは,組織が顧客,顧客の状況及び環境の様々な変化に適応し,迅速に対応可能な
ように設計することが望ましい。これは,サービス提供プロセス及び継続的改善を通じて行うことが望ま
しい。
注記 環境には,組織に影響を及ぼす規制上,経済上,政治上,社会上,及び世界的に影響を与える変
化のような外部要因が含まれる。

4.4 顧客との共創性

  エクセレントサービスは,サービス設計プロセス若しくはサービス提供プロセス又はその両方に顧客を
関与させ,価値を共創することが望ましい。組織は,共創プロセスを理解し,促進し,準備することが望
ましい。組織は,顧客にとって価値のある成果を創出することを意図した価値提案を行う。価値はまた,
顧客の経験及びフィードバックを通じて共創することが可能であり,利益は,組織と顧客との双方によっ
て実現される。共創した価値は,カスタマーデライト及び顧客ロイヤルティを創出する可能性を高めるこ
とが可能である。

4.5 組織と顧客の視点との整合性

  エクセレントサービスは,組織の能力を活用し,顧客の視点に沿うように設計することが望ましい。エ
クセレントサービスを確実に提供するために,組織は,サービスエクセレンスピラミッド(図1)を用い
て,現在のレベルを特定することが望ましい。組織は,顧客がカスタマーデライトを得られるようにサー
ビスを向上させるために,その能力を強化することが望ましい。

――――― [ pdf 8] ―――――

                                                                                             7
Y 24082 : 2021

5 エクセレントサービスの設計活動

5.1 全体的なプロセス

5.1.1 一般
箇条5では,組織が新しいサービスを開発する場合若しくはサービスの改善を目的として既存のサービ
スをレビューする場合又はその両方の場合の,DfESの主要な活動について規定する。カスタマーデライト
のためにエクセレントサービスを構築することを決定した場合,組織はサービスの設計プロジェクトを計
画しなければならない。
サービスの設計プロジェクトの計画をした後,組織は,次に示すDfES活動を実施しなければならない。
− 顧客に対する理解及び共感
− 設計課題及び独自の価値提案の明確化
− 顧客接点及びデータポイントによる卓越した顧客体験の設計
− 卓越した顧客体験を高めるための共創環境の設計
− エクセレントサービスのための設計の評価
組織は,基本的サービスの保証及び強化のために,DfES活動を組織の設計アプローチに組み込まなけれ
ばならない。DfES活動は,望まれる成果が達成されるまで,周期的に繰り返す必要が生じる場合がある。
注記 設計アプローチの例として,デザイン思考[15]及び人間中心設計(例えば,JIS Z 8530,ISO 9241-
220)がある。これらは,協調的で反復的なプロセスを表している。その中でも五つの活動(共感,
問題定義,創造,プロトタイプ,テスト)がよく知られている。
5.1.2 エクセレントサービスの設計における活動間の相互依存性
顧客分析から開始して,全てのDfES活動を実施した場合のエクセレントサービスを設計するプロセス
を,図3に示す。図3のDfES活動で囲った部分は,必要な情報がどこにアウトプットされ,どこからイ
ンプットされるかを示す,DfES活動間の相互依存性を示している。例えば,“5.4(設計課題及び独自の価
値提案の明確化)”では,対象となる顧客プロファイル及び顧客インサイトに関する情報が必要であり,こ
の情報は“5.3(顧客に対する理解及び共感)”によってアウトプットされる。“5.2(エクセレントサービス
に関する設計プロジェクトの計画)”によるプロジェクト計画は,5.35.7の全ての活動で共有され,参照
される。これらの活動は,特に評価活動の結果に基づいて,必要に応じて繰り返される。これらの設計活
動の結果,エクセレントサービスが創出される。エクセレントサービスの提供及びマネジメントによって,
新しい評価活動のきっかけとなるフィールドデータが生成される。フィールドデータには,そのサービス
の運用データ,並びにそのサービスが卓越した顧客体験及びカスタマーデライトをどの程度実現している
かのデータが含まれており,これらのデータはサービスエクセレンスの効果の連鎖に示されている。

――――― [ pdf 9] ―――――

           8
Y 24082 : 2021
DfES活動
例 :
“どうしたらできるか(How might we)”
の問いかけ(HMWステートメント),
独自の価値提案
5.4 設計課題及び
例 :
独自の価値提案の明確化
顧客プロファイル,
顧客の声(voice of the
customer),
5.2エクセレント 顧客インサイト
サービスに関する設計
プロジェクトの計画 5.5 顧客接点及び
5.3 顧客に対する理解及び共感 データポイントによる
DfES活動
の前提条件 卓越した顧客体験の設計
例 :
新しいカスタマージャーニー,
適切な箇所へ 顧客接点,データポイント,
戻り,反復 サービスブループリント
5.7 エクセレントサービス 5.6 共創環境の設計
のための設計の評価
例 :
顧客の積極的な参加,
サービス提供者の顧客中心性,
共創環境
フィールド
評価報告を含む
設計結果 データ
エクセレントサービス
及びその提供
記号説明
: 相互依存(インプット·アウトプット)
: 繰返し
注記 5.25.7は細分箇条の番号を表している。
図3−エクセレントサービスの設計プロセス及び設計活動間の相互依存性
DfES活動を実施するために,要求される順序はない。顧客がデライトを感じていない理由を知るために
実施された分析の結果によって,プロジェクトの設計の焦点及び実施するプロセスを決定することが望ま
しい。開始点は,5.3に限定されない。5.3以外の活動から開始する場合には,既存のサービスシステム及
び設計情報に基づいて,DfES活動を開始するために必要なインプットを準備することが可能である。
5.1.3 エクセレントサービスの提供のための設計要素
顧客の視点から描いたエクセレントサービスの要素を,図4に示す。この詳細については,5.35.7に
規定する。図の内側の円形矢印はカスタマージャーニーを表し,外側の円形矢印はサービス提供プロセス
及びそれを支援するサービス提供者の組織的な活動を表している。サービスは,顧客中心のネットワーク
内の請負業者を含むサービス提供者間の協働を通じて用意及び提供される。顧客及びサービス提供者は,
二つの円形矢印で共有される顧客接点で相互に作用する。カスタマーデライトは,カスタマージャーニー
における個別の優れたサービス及び驚きのある優れたサービスの提供を通じて,卓越した顧客体験が創出
されるときに達成され得る。顧客がリピート購入をする間,カスタマージャーニーは続く一方,サービス
提供者は,次なる設計及びマネジメント活動を続ける。5.5.4で規定するデータポイントは,図4のカスタ
マージャーニー,サービス提供プロセス,及び顧客接点での相互作用を通じて収集される。5.6で規定して
いるように,共創環境は,共創を促進するためにエクセレントサービスを取り囲んでいる。
注記 カスタマージャーニーマッピングの方法については,附属書E参照。

――――― [ pdf 10] ―――――

次のページ PDF 11

JIS Y 24082:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO TS 24082:2021(MOD)

JIS Y 24082:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Y 24082:2021の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称