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Y 24082 : 2021
記号説明
1 : カスタマージャーニー
2 : 通常の顧客体験
3 : 卓越した顧客体験
4 : サービス提供プロセス及びそれを支援するサービス提供者の組織活動
5 : 顧客接点
6 : データポイント
7 : 共創環境
a : カスタマージャーニーは,顧客がリピート購入することで継続され,サービス提供者は次の設計及びマネ
ジメントを継続する。
図4−エクセレントサービスの提供のための設計要素
5.2 エクセレントサービスに関する設計プロジェクトの計画
エクセレントサービスに関する設計プロジェクト計画には,DfES活動の前提条件となる次の事項を含
めることが望ましい。
− 対象となる顧客及び関連する利害関係者,並びにリスク及び機会を含む,エクセレントサービスの設
計範囲を決定する。
− サービス設計へのサービス提供者及び顧客の参加を確実にする。
− 5.35.7で規定している活動のための適切な方法を特定する。
− 5.35.7で規定している活動に,適切な時間,資源及び責任を割り当てる。
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注記 割り当てられたプロジェクト時間には,反復のための時間,顧客からのフィードバックを取
り込むための時間,及び設計したサービスが卓越した顧客体験を実現しているかどうかを評
価するために必要な十分な時間が含まれる。
5.3 顧客に対する理解及び共感
5.3.1 一般
組織は,顧客中心の視点を構築するために,顧客を理解し,共感することが望ましい。
注記 5.3.2は,JIS Y 23592の要求事項及び推奨事項を含んでいる。
5.3.2 顧客のニーズ,期待及び要望の理解
組織は,顧客の現在及び将来のニーズ,期待並びに要望を十分に理解するために,適切な調査及び分析
を行わなければならない。実施する活動には,次の事項を含む。
a) 顧客の声に耳を傾ける範囲及び深度
組織は,明示される期待及び明示されない期待,外部要因,顧客体験の合理的及び感情的な側面,
並びに既存の及び変化する顧客のニーズを含む,顧客が重視していることを特定するために,顧客の
声に耳を傾けることが望ましい。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− “顧客の声(VoC)”,ラダリング法,又はその他の形式の観察及びインタビューのような方法を用
いる(ISO 16355-2参照)。
− 顧客とのサービスの共創を構築する(例えば,共創ワークショップ)。
b) データ獲得及び利用の体制構築
組織は,個々の顧客ベースで様々なデータ(好み,意見,期待,苦情,提案及び賛辞)を収集及び
利用することが望ましい。これは,関係性の観点からだけでなく,カスタマージャーニーを通じて行
うことが望ましい。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− 顧客関係管理(CRM)の手法及びソーシャルメディアからの情報を用いる。
− フィールド調査からの情報を用いる(例えば,顧客のシャドーイング,サービスサファリ)。
c) 顧客のニーズ,期待及び要望への適応
組織は,市場及び顧客の要求に起こり得る変化を予測することが望ましい。組織は,顧客の聞き取
り調査[5.3.2 a)参照]の結果に基づいて,明示された顧客の要求事項及び明示されていない顧客の要
求事項をサービスの要求事項に変換することが望ましい。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− トレンド調査を実施し,トレンドを追跡及び予測する。
− VoCを主要なサービスの要求事項に変換し,優先順位をつけるために,ギャップ分析及び“顧客の
声”変換シートのような方法を用いる(JIS Q 9025,ISO 16355-1及びISO 16355-3参照)。
− 顧客の要求事項を満たす(又は満たさない)ものと顧客の認識との関係を理解する(ISO 16355-5及
びこの規格の附属書Bの狩野モデル[18]参照)。
5.3.3 顧客への深い共感の構築
組織は,洞察を深めるために,顧客に共感する感覚を育むことが望ましい。顧客への共感と,顧客が実
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際に行っていること及び/又は提供組織が推定していることとの違いを明らかにすることによって,卓越
した顧客体験の可能性を高めることが可能となる。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− 顧客に対する共感を見出し,顧客の感情的側面及び個々の状況をより理解するために,エスノグラフ
ィック調査を実施する。
− 顧客の典型的な一日を思い描き,顧客にとってうってつけの日を構築するために顧客インサイトを見
出す[例えば,“申し分のないサービスを受けた日(a perfect day of a customer)”]。
− 特定のタイプの顧客について知っていることを,設計チーム内で明確にし,共有する(例えば,共感
マップ及びペルソナ)。
− 重要なイベント又は行動(ポジティブ又はネガティブのいずれか)に関する豊富で定性的な情報を,
実際に体験した顧客本人から得る(例えば,クリティカル·インシデント法)。
5.4 設計課題及び独自の価値提案の明確化
5.4.1 一般
組織は,卓越した顧客体験に向けて,設計課題及び独自の価値提案を明確化することが望ましい。
5.4.2 設計課題の明確化
設計課題は,組織が解決しようとしている問題を明確にする。これは,組織が適切な業務範囲を設定す
るのにも役立つ(すなわち,狭すぎたり,広すぎたりしない。)。
実施のための適切な取組みには,例えば,次の事項を含む場合がある。
− 顧客体験に関する洞察を形づけるために,適切な質問を設定する[例えば,“どうしたらできるか(How
might we)”の問いかけ(HMWステートメント)]。
− 設計チームが解決する問題について合意可能なように,“顧客問題ステートメント”を構築する。これ
らは顧客に関する問題であり,組織に関する問題ではない[19]。
5.4.3 独自の価値提案の構築
組織は,顧客にもたらされるポジティブな感情を明確に理解しながら,独自の価値提案を構築しなけれ
ばならない。
実施のための適切な取組みには,例えば,次の事項を含む場合がある。
− 顧客にとって魅力的又はデライトとなる品質,特徴又は特性を特定する(ISO 16355-5,狩野モデル[18]
及びこの規格の附属書B参照)。魅力的品質を創出するために,アイデア創出の技法を組み合わせる
場合がある(例えば,品質要素を再定義するためのSCAMPER及びTRIZの適用[20])。
− 顧客のペイン(pain)を和らげるもの,及び想像も実現もしなかった顧客のポジティブな感情を創造
するものを描く。これは,顧客プロファイル分析に基づくものである(例えば,価値提案キャンバス)。
− 重要な顧客の問題又は機会が,非常に高いレベルで解決された“理想的な状態を明文化したもの(理
想的な状態のステートメント)”を作成する[19]。その一つの理想的な状態に基づいてアイデアを得る
ためのブレインストーミングを行う。
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5.5 顧客接点及びデータポイントによる卓越した顧客体験の設計
5.5.1 一般
組織は,顧客接点及びデータポイントによる卓越した顧客体験を計画することが望ましい。
注記 5.5.2は,JIS Y 23592の要求事項及び推奨事項を含んでいる。
5.5.2 提供する卓越した顧客体験の文書化
独自の価値提案に対応して,組織は,サービスの提供方法,顧客接点及びサービスの内容を通して提供
する卓越した顧客体験を文書化することが望ましい。目指す顧客体験は,顧客ニーズ,カスタマージャー
ニー並びに顧客及びスタッフ双方の感情の結果を含めて,顧客の視点から計画することが望ましい。組織
は,顧客体験を効率的かつ効果的に文書化することが望ましい。その文書は,顧客の期待の変化,競合他
社の活動,イノベーションの傾向及び外部環境の著しい変化に対応するために,定期的に更新することが
望ましい。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− 目指す顧客体験につながるカスタマージャーニーを開発するためのワークショップに顧客を巻き込む。
− カスタマージャーニーにおける感情を研究しながら,カスタマージャーニーマップを開発及び使用す
る(例えば,附属書Eで説明しているカスタマージャーニーマッピングの方法)。
− ブランド価値に沿ったサービス姿勢を定義し,それをサービス提供者の行動及びカスタマージャーニ
ーの要求事項に取り込む。
− サービスブループリントを開発及び使用する。
5.5.3 効果的かつ感情的に働きかける顧客接点の配置
組織は,サービス提供者と顧客との間で複数の顧客接点にまたがってどのようにサービスを提供するの
かを設計することが望ましい。サービス提供者と顧客との間で相互作用が発生し,これらの顧客接点にお
いて様々な顧客体験が発生する。エクセレントサービスを実現するために,組織は,サービスの提供前,
提供中及び提供後にポジティブな感情を呼び起こす,効果的な一連の重要な顧客接点を計画し,全体とし
て優れたパフォーマンスを確保するよう,相互作用をマネジメントする準備を整えなければならない。組
織は,ブランド及び価値提案のための一貫した顧客接点の設計を行い,顧客から感情的な体験を引き出す
ことが望ましい。組織は,物理的な顧客接点だけでなく,仮想的な顧客接点も考慮することが望ましい。
顧客からの感情的な反応を引き出す顧客接点を配置するためには,次の四つのアプローチを使用するこ
とが可能である。
− 既存の顧客との顧客接点を最適化する。これは,顧客の心に残るような印象を与える重要な顧客接点
(いわゆる“真実の瞬間”)に特に関連している。
− ポジティブな感情を引き起こす卓越した新たな顧客接点を構築する。
− 顧客接点間のフローを最適化する。
− 不要な顧客接点を排除する。
実施のための適切な取組みには,次の事項が含まれる。
− カスタマージャーニーにおける顧客接点間の関係(例えば,感情的側面)を示す顧客接点マップを作
成する。
− インターネット,センサ及びデジタル技術を駆使して,顧客がサービス提供者に関与する機会を構築
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する仮想的な相互作用を提供するための様々な選択肢を検討する。
− 様々な顧客接点の分類を理解することによって,サービス提供者と顧客とが直接相互作用する顧客接
点以外の顧客接点を認識する。
注記 カスタマージャーニーの顧客接点には,ブランド所有の顧客接点,パートナー所有の顧客接点,
顧客所有の顧客接点,及び社会又は外部の顧客接点がある[21]。
5.5.4 効果的なデータポイントの構築
組織は,サービス提供プロセス及び組織マネジメントにおけるフィードバックの提供,サービスの個人
化,導入,改善及び学習を含むデータの利用を可能にするデータポイントを特定しなければならない。効
果的なデータポイントは,サービス提供プロセス中における顧客の感情的な体験を捕捉するために不可欠
である。エクセレントサービスを実現するためには,この内容の分析及び適切な使用が重要である。組織
は,十分なデータを効率的に収集して提供するために,カスタマージャーニー全体及びサービス提供プロ
セスのデータポイントを処理する計画を立てなければならない。
実施のための適切な取組みには,次の事項を含む場合がある。
− 顧客接点を含むカスタマージャーニーマッピング若しくはサービスブループリント又はその両方の結
果に基づいて,データポイントを明確にする。
− 特に,顧客接点において顧客体験が低下しないように,データポイント及びその観測方法を適切に構
築する。
− サービス提供者が頻繁に観察する箇所若しくは顧客がカスタマージャーニーで認識する箇所又はその
両方をデータポイントとして配置する。
− 低コストで迅速な共有及び処理を可能にするために,可能な限りデジタルデータで収集することを標
準とする。
− 顧客のニーズを支援するために,自動化したデータ収集を(例えば,レポーティングに)組み込む。
また,サービス提供者の継続的な監視又は保守のニーズを支援するために,自動化したデータ収集を
組み込む。
− 個人の特定が可能な情報を処理する際の標準のアプローチとして,プライバシーバイデザイン
(privacy-by-design)アプローチを採用する[22]。
注記 データポイントによって可能になるデータ収集の効果は,附属書Dのカスタマーデライトのため
の共創環境のてこの原理に統合されている。
5.6 共創環境の設計
5.6.1 一般
組織は,エクセレントサービスを効果的かつ持続可能にするために,顧客とサービス提供者との協働に
基づいた共創環境を設計及びマネジメントしなければならない[23]。優れた共創環境は,顧客接点での高
いレベルの緊密な協力及びデータポイントの活用によって構成される。サービス提供者と顧客との間の関
与を推進することで,エクセレントサービスの提供及びマネジメントプロセスの詳細を柔軟に補うことが
可能である。
5.6.2 サービス提供プロセスにおけるサービス提供者の顧客中心性の推進
組織は,サービス提供者の顧客中心性を推進しなければならない。そうすることで,サービス提供プロ
セスにおいて,顧客に対する柔軟で個別的なサービスが実現される。これを達成するためには,組織は従
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JIS Y 24082:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO TS 24082:2021(MOD)
JIS Y 24082:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.080 : サービス > 03.080.99 : その他のサービス
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.080 : サービス > 03.080.30 : 消費者へのサービス
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.080 : サービス > 03.080.01 : サービス業務一般
JIS Y 24082:2021の関連規格と引用規格一覧
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