JIS Z 8521:2020 人間工学―人とシステムとのインタラクション―ユーザビリティの定義及び概念 | ページ 3

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その他の利用の成果には,アクセシビリティ(6.6.2参照),利用における危害の回避(6.6.3参照),ユー
ザエクスペリエンスの一部(6.6.4参照)などがある。
注記4 その他の利用の成果はコンピュータシステムの出力ではない。

6.2 効果

6.2.1  概要
効果の下位構成要素は,ユーザが特定の目標を達成するための正確性及び完全性である。
注記1 効果とは実際の成果が意図した成果に一致する度合いを表す。
注記2 効果の欠如は利用における危害を引き起こす可能性がある(6.6.3参照)。
6.2.2 正確性
正確性とは実際の成果が意図した成果に一致する度合いである。
正確性は意図した成果の具体性に基づく。しかし,成果が正しいか否かで正確性が決まる場合もある。
例1 ユーザが録画したいテレビ番組をハードディスクレコーダで録画できた。
その他の場合,正確性は意図した成果のレベルに達したかどうかに基づく。正確性が意図した成果のレ
ベルに達しない原因には,次の場合がある。
a) ユースエラー又は難しさ
例2 券売機で列車の安価な切符を購入しようとするが,往復切符ではなく割高な片道切符を購入し
てしまう。
b) ユーザのタスクを妨げる不必要なシステム出力
例3 券売機で列車の切符を購入すると,切符に加えて領収書なども券売機から出てくる。その中か
ら切符を見付けることは容易ではない。
c) 不正確又は不完全な出力に基づいて行われた不適切な決定
例4 ユーザは,オンラインショップBよりも低価格であるオンラインショップAから,商品を購入
することを決定した。このとき,オンラインショップAには在庫がない(そのため,納期がか
なり遅れる)状態にあったが,その情報はユーザに表示されていなかった。
6.2.3 完全性
完全性とは,システム,製品又はサービスのユーザが,全ての意図した成果を達成できる度合いである。
注記1 意図していない有益な成果が加わることがある。
例1 博物館へ行く前に入場料金を調べるためウェブサイトを確認した結果,その日は閉館日である
と分かった。
注記2 成果の相対的な重要性は,完全性の程度に影響することがある。
注記3 完全な成果が得られなくても個々の成果は正確であることがある。
例2 レシピに載っている食材を入手するためにウェブショップで食材の注文をした。ウェブショッ
プは在庫切れではなかった食材だけを配送した。配送された食材は正しかったが,レシピに必
要な食材は完全にはそろわなかった。
注記4 全ての成果が完全に正確ではなくても完遂できることがある。
例3 ユーザの目標はパソコンを使って保険を申し込むことであった。申し込みの最後のアンケート
には不正確な回答をしたが,保険の申し込みは完了した。

6.3 効率

6.3.1  概要
効率とは達成される成果に関して利用される資源である。

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これらの資源は,時間,人的労力,資金及び資材を含む。
これらの資源は,利用状況において利用可能な資源とみなす(7.5.3を参照)。
システム,製品又はサービスの利用は,資源をほとんど利用しなければ効率的であるが,意図した成果
を達成する側面においては効果的ではないことがある。一方,膨大な資源を消費して非効率な場合でも,
目標を達成できれば非常に効果的なこともある。
例1 プログラム作成時に多くのコメント行を挿入することは,膨大な作業時間を必要として非効率
ではあるが,バグの少ないプログラムを作成する目標においては効果的である。
あるユーザは満足していなくても効率的に利用できたり,又は効率的に利用できないにもかかわらず満
足している可能性もある。
効率の下位構成要素は,ユーザビリティを考慮する目標によって決まる。
例2 娯楽(例えば,ゲームで遊ぶこと)において,楽しく時間を費やすことは目標の一つである。
その場合,時間の増加は非効率とならないため,ほかの関連する資源を効率の尺度とする(例
えば,娯楽費が安い方が効率的となる。)。
6.3.2 所要時間
所要時間とは,目標達成のために費やされた時間である。
注記 所要時間は次による。
− 意図した成果を達成するための所要時間(エラーが生じたときの所要時間を含む。)
− 意図した成果を達成するための所要時間及び準備作業に含まれる時間(例えば,準備作業
とは,意図した成果を達成するためにシステム,製品又はサービスを利用する前に完遂す
る必要のある訓練及び学習のこと)
− 意図した成果の達成に関連する活動の開始から終了までの総経過時間
6.3.3 消費された労力
消費された労力とは,特定の作業を完了するために費やされた精神的及び身体的労力である。
注記 労力は個々のユーザへの精神的及び身体的な影響を対象とする。労力の消費は過度な要求及び
負荷不足の両方を含み,いずれも否定的な影響を引き起こす可能性がある。
6.3.4 消費された資金
資金には,システム,製品又はサービスを利用する費用を含む。例えば,賃金の支払い,光熱費,通信
費などである。費用には,使用済みの機器及びゴミの処分に掛かる費用を含む。
注記 設備,施設,情報又は専門技術など,システム,製品又はサービスを利用するために獲得した
再利用可能な資源の費用の一部を含む(7.5.2参照)。
6.3.5 消費された資材
資材とは,タスク(保守作業を含む。)のための材料として使われ,システム,製品又はサービスによっ
て使用される物品(例えば,原材料,水,紙)のことである。

6.4 満足

6.4.1  概要
満足は,システム,製品又はサービスの利用に起因するユーザのニーズ及び期待が満たされている程度
に関するユーザの身体的,認知的及び感情的な受け止め方である。
注記1 満足はユーザの行動及び結果に影響を及ぼす。
注記2 満足は一般にユーザからの評定に基づいて評価する。
満足の下位構成要素は,身体的,認知的及び感情的な反応であり,ユーザビリティを考慮する際に用い

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る下位構成要素は状況によって異なる。
6.4.2 身体的反応
快適又は不快の感覚は満足の身体的反応である。それらは,システム,製品又はサービスを利用した身
体的経験による結果である。
例1 画面のまぶしさは不快感を引き起こす。
例2 マウスを使わずにノートパソコンを長時間利用すると,腕及び指が疲れる。
6.4.3 認知的反応
態度,し(嗜)好及び知覚は,満足の認知的反応である。それらはシステム,製品又はサービスの利用
経験の結果であり,類似のシステムを利用した経験及びほかの人の意見によっても影響を受ける可能性が
ある。
例 あるユーザは,レンタカー会社のウェブサイトでの車の予約に“すごく時間が掛かる”と嘆く。
注記 信用,認識された安全度,認識されたセキュリティの度合い及び認識されたプライバシーの度
合いも認知的反応である。
6.4.4 感情的反応
情緒的要素は満足の感情的反応である。それらはシステム,製品又はサービスを利用している間の経験
から生じる。これらの反応は,類似のシステムを利用した経験及びほかの人の意見によって影響を受ける
可能性がある。
注記1 感情は,生理的反応を生じさせる又は生理的な反応から生じる。
注記2 インタラクティブシステムは,ゲームの興奮及び楽しさ又はウェブショップへの信頼のよう
な意図的に豊かな感情的反応を作る。感情的反応が目標の一部である場合,それらの達成度
は効果として扱う(5.3.3参照)。
注記3 感情的反応は,評価尺度を用いた自己評価と同様に,顔の表情及び皮膚抵抗のような生理的
反応によっても評価する。

6.5 ユーザビリティの概念の用途

  用途の例を次に示す。
a) 保守性 保守性は,システム,製品又はサービスを維持する目標を達成する場合に,効果,効率及び
満足の観点で考慮する。
b) 習熟性 習熟性は,システム,製品又はサービスを利用することを学ぶ目標を達成する場合,効果,
効率及び満足度の観点で考慮する。
注記 JIS X 25010:2013は,保守性又は習熟性を達成するために役立つ製品属性を規定している。JIS
Z 8520:2008は,学習への適合性の原則がどのようにインタラクティブシステムの設計及び評価
に適用されるかについて規定している。

6.6 その他の利用の成果

6.6.1  概要
その他の利用の成果には,アクセシビリティ,利用におけ危害の回避,ユーザエクスペリエンスの一部
などが含まれる。
注記1 これらの利用の成果は独立しているものではなく,利用の成果に対する様々な視点から考え
たものである。
注記2 ユーザエクスペリエンスは,利用中及び利用後だけでなく利用前についても対象としている。
また,ブランドイメージなど利用以外の要因も含まれるため,利用による成果となるのはユ

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ーザエクスペリエンスの一部である。
6.6.2 アクセシビリティ
アクセシビリティとは,製品,システム,サービス,環境及び施設が,特定の利用状況において特定の
目標を達成するためにユーザの多様なニーズ,特性及び能力で使える度合いである。アクセシビリティの
ために設計する狙いは,対象とする母集団をより大きくすることである。ひいては,より多様な利用状況
において,より多くの人々にとってアクセシビリティが高い製品,システム,サービス,環境及び施設を
作ることである。
6.6.3 利用における危害の回避
利用における危害の回避は,不十分な効果,効率若しくは満足又はアクセシビリティの欠如,及び/又
は望ましくないユーザエクスペリエンスによって否定的な影響が生じるリスクを最小化することである。
否定的な影響は次を含む。
a) ユーザ又はそれ以外の人々への危害(例えば,身体的な危険,心的損害,金銭的損害又はプライバシ
ーの侵害)
b) システムを利用している組織への危害(例えば,経済,セキュリティ,環境,社会的評価又はブラン
ドイメージに対する損害)
c) システムを開発,提供又は取得した組織への危害(例えば,ユーザビリティが意図した目標と合って
いないシステムによって受けた経済的又は社会的損害)
6.6.4 ユーザエクスペリエンスの一部
ユーザエクスペリエンスは,利用前,利用中及び利用後におけるユーザの全ての経験を対象とする。た
だし,その他の利用の成果におけるユーザエクスペリエンスの一部は,利用中及び利用後の経験だけを対
象とする。

7 利用状況

7.1 利用状況の構成要素

  利用状況は,システム,製品又はサービスが使われる際の,ユーザ,目標,タスク,資源,並びに技術
的,身体的,社会的,文化的及び組織的環境の組合せで構成したものである。
注記1 利用状況は,システム,製品又はサービスと,ほかのシステム,製品又はサービスとの間の
インタラクション及び依存関係を含む。
ユーザビリティは,システム,製品又はサービスの利用状況の構成要素の性質によって決まる。したが
って,実際の利用状況,又は意図された利用状況に関連する特性を特定することが重要である。利用状況
によって,システム,製品又はサービスのユーザビリティは異なる。
注記2 利用状況における特定の性質がユーザビリティの変化に与える影響の大きさは様々である。
利用状況及びユーザビリティに影響する特性を特定することが重要である。利用状況はインタラクショ
ンの過程で変化し(例えば,ユーザの目標が変化していく又はユーザが上達していく。),ユーザビリティ
の達成に影響を及ぼすことがある。
利用状況の構成要素及びそれらに要求される具体的なレベルは,取り組む問題の範囲によって決まる場
合がある。ISO/IEC 25063:2014は,利用状況に規定すべき情報を記載している。
ユーザビリティは,網羅する必要のある利用状況の範囲に応じて考慮する。

7.2 利用状況におけるユーザ

  ユーザビリティを考慮するユーザは,特定のシステム,製品又はサービスの様々な要素とインタラクシ

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ョンする人々であり,次の人々を含む。
− システム,製品又はサービスを使う人々(システム,製品又はサービスを利用し互いにインタラクシ
ョンする人々を含む。)
− システム,製品又はサービスを使わずに,その出力を利用する人々
例 銀行の顧客は,銀行員用のシステムを直接扱うユーザではなく,銀行員を介してシステムを利用
するユーザである。例えば,コールセンタを利用したり,支店の窓口を利用したりすることで,
間接的にシステムを利用する。
− システム,製品又はサービスを支える又は維持する人々(例えば,管理者,訓練要員又は保守要員)
注記1 JIS X 25010:2013では,直接,間接,一次,二次の四つのカテゴリにユーザを分類している。
これらのカテゴリは,システム,製品又はサービスとインタラクションする人々を分類する
ために用いる。
ユーザは,異なるニーズ,目標,タスク,役割,環境,ユーザの特徴,生理的・心理的な能力状態又は
その他の個人差による要因に基づいて,一般的に複数のグループに分けられる。ユーザの特徴には,身体
的,感覚的,心理的及び社会的要因を含む。
注記2 市場調査の分野で用いられる市場区分とは,一般に,利用行動よりもむしろ購買行動に関係
した個人の特徴に基づいて定義される(8.6参照)。
利用状況に含まれるユーザグループは,ユーザビリティを考慮する特定のユーザグループよりもはるか
に大きいことがある(5.3.2参照)。
多様な特性及び能力をもつユーザグループも考慮に入れて,ユーザグループ及びユーザビリティに関係
するユーザの特性を明確にすることが重要である。

7.3 利用状況における目標

  目標とは,達成すべき特定の結果である。目標は,それらを達成するために使う手段ではない。目標は,
必ずしも想定する基準(効果,効率,満足度のレベルなど)を必要とせず,達成する成果に焦点を当てて
いる。
目標は,次を含む様々な要因に基づく。
− ユーザ自身
− その他のステークホルダ
− 組織
− 規制
異なるユーザは,異なる目標をもつ。
注記1 目標は,機能的,認知的,情緒的又は意識的な行為による成果に焦点を当てている。
利用状況は,潜在的な要因に基づく目標も含む。
注記2 ユーザビリティに関する特定の目標及び利用状況が,ユーザではなくステークホルダに基づ
く場合,そのユーザビリティは,実際の利用状況におけるユーザの目標には適さない可能性
がある。
目標は,途中結果を含む副目標に分解される。副目標及び途中結果も利用状況の一部である。
注記3 目標は目標を達成するために使われる手段ではなく,タスクが目標を達成するための詳細な
手段である。

目標 : 目的地へ行く(現在とは異なる場所)。

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