58
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
この累積和は,“初期値を変更した(FIR)”累積和管理図を使用しているので,初期値は“上側”及び
“下側”の列の“0日目”に示されている。この値はそれぞれ+2.5s及び−2.5sであり,+15.0及び−15.0
に等しい。同様に0日の“上側の打点数”及び“下側の打点数”は0である。h=5sなので累積和管理図
の管理限界は,それぞれ+30及び−30となる。
“1日目”の値は25.8である。第(3)列目の計算は,次のとおりである。
25.8−35−3=−12.2
この値“−12.2”は一つ上の“上側”の値“15.0”に加算され,和は“2.8”となる。“2.8”は正の値なの
で,“上側の打点数”列の一つ上の値“0”に“1”が加算される。新しい“上側の打点数”のカウントは“1”
となる。
第(6)列の計算は,次のとおりである。
25.8−35+3=−6.2
この値“−6.2”は一つ上の“下側”の値“−15.0”に加算され,和は“−21.2”となる。“−21.2”は負
の値なので,“下側の打点数”列の一つ上の値“0”に“1”が加算される。新しい“下側の打点数”のカウ
ントは“1”となる。
これらの計算は単純に見えるかも知れないが,その実行にはコンピュータの使用が想定されている。
“2日目”の値は“33.4”である。第(3)列の計算は,次のとおりである。
33.4−35−3=−4.6
この値“−4.6”は一つ上の“上側”の値“2.8”に加算され,和は“−1.8”となる。これは負の値なの
で,“上側の打点数”の値は“0”に変わり,“上側の打点数”のカウントも“0”に変わる。すなわち,累
積和のこちら側では“プラス”の累積和値だけが“カウント”される。
第(6)列の計算は,次のとおりである。
33.4−35+3=1.4
この値“1.4”は一つ上の“下側”の値“−21.2”に加算され,和は“−19.8”となる。前と同じように
“−19.8”はマイナスなので,“下側の打点数”列の一つ上の値“0”に“1”が加算され,新しい“下側の
打点数”のカウントは“2”となる。
この手順は“上側”又は“下側”が値h(この例では“30”又は“−30”)を超えるまで続けられる。こ
れは“上側”値が“37.6”となる“24日目”に生じる。
いつ“シフト”が発生したか,及びその“シフト”の量の推定値は,表形式の累積和から得られる。表
B.1から,初期値の変更の影響は工程平均が目標の近辺にあると“上側”及び“下側”の両方で比較的早
くなくなることに注意する。そうでなければ,初期値が“0”の“上側”又は“下側”の累積和が得られる。
この例では,“上側”が30以上になったとき,“下側の打点数”は“8”である。これは“16日目”と“17
日目”の間に変化が起きたことを示唆している(附属書C参照)。推定シフト量は初期値の変更はないと
仮定して,次のようになる。
“上側”
F
“上側の打点数”
明示された“シフト”がマイナスであれば,推定値は次の式で表される。
“下側”
F
“下側の打点数”
上側はh=30を超えているので,推定シフト量は次のようになる。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 61] ―――――
59
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
“上側” 376.
F 上側の打点数”
3 .770
8
注記 オリジナルデータの最後の八つの値の母平均は,おおよそ1倍の標準偏差だけ,すなわち,6.0
シフトしている。累積和管理図は,変化点の正確な位置を推定し,推定シフト量を“7.7”と算
定した。これは“6”とそれほどかけ離れていない。
図B.3に,表形式による累積和管理図のグラフを示す。
図B.3−表形式による累積和管理図のプロット
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 62] ―――――
60
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
附属書C
(参考)
段階的変化が発生したときの変化点の推定
工程が正常であるか否かは,特定の基準を用いて管理図から判断することができるが,管理図では明確
な原因を特定できない。ただし,管理図の過去の打点の軌跡が,正しい原因を発見するための情報をもた
らすことがある。これが,変化点の推定がもたらす重要な役割である。
T時点の工程平均μ(t)の段階的な変化の場合,真の変化点は次の式のτで表される。
T t ,1 ,
t
T t ,1
累積和管理図は,変化点の推定に関しては高い性能をもっている。変化点の推定量は,図C.1に示すよ
うに累積和の経路がVマスクのアーム外に外れ出る時点となる。
図C.1−Vマスク法を用いた変化点の推定
図C.2は,CS1のスキームの場合に(h=0.5,f=0.5),累積和管理図による推定量の分布を示している。
変化点は管理図が異常を示した後にだけ推定できるので,タイプ1のエラーを検討することが望ましい。
そのため,図C.2の分布はタイプ1エラーが発生していないという条件で計算されたものである。
分布は単峰形分布であり,そのモードは真の変化点τ=10と同一である。図C.2の場合,シフト量δ=
1.0σe=Δはそれほど大きくないが,このアプローチを推奨できる。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 63] ―――――
61
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
.
.
P
.
t
注記 パラメータがh=5.0,f=0.5のVマスク法の場合。
図C.2−累積和による変化点の推定量の分布
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 64] ―――――
62
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
参考文献
[1] Nishina, K. Estimation of the change-point from cumulative sum tests. Reports of Statistical Application
Research, JUSE, 33(4), 1986
[2] Nishina, K. Estimation of the amount of shift using cumulative sum tests. Reports of Statistical Application
Research, JUSE, 35(3), 1988
[3] Nishina, K. A comparison of control charts from the viewpoint of change-point estimation. Quality and
Reliability Engineering International, 8, 1992
[4] JIS Z 8402-5 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第5部 : 標準測定方法の精度を求め
るための代替法
注記 対応国際規格 : ISO 5725-5,Accuracy (trueness and precision) f measurement methods and results
−Part 5: Alternative methods for the determination of the precision of a standard measurement
method
[5] JIS Z 9020-1 管理図−第1部 : 一般指針
注記 対応国際規格 : ISO 7870-1,Control charts−Part 1: General guidelines
[6] JIS Z 9020-2 管理図−第2部 : シューハート管理図
注記 対応国際規格 : ISO 7870-2,Control charts−Part 2: Shewhart control charts
[7] ISO 9000,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary
[8] BS 5703,Guide to data analysis, quality control and improvement using cusum techniques
[9] ISO 7870-6:2016,Control charts−Part 6: EWMA control charts
JIS Z 9020-1:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 9020-4:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用