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吸着剤を通してポンプで吸引することによって,サンプリング媒体内で濃縮される(ポンプサンプリング)。
サンプリング流量及び捕集量は,個々のVOCの破過量によって選択される(JIS A 1966参照)。
5.3 長期間測定
低流量のポンプサンプリングによる長期間測定を行うことも可能だが,長期間測定では,パッシブサン
プリングが選ばれる。[7][18]のパッシブサンプリングは,主として拡散原理に従い,設定した期間(数
日間から数週間)にわたる平均値として,積分された測定値を与える。この方法では,短期間の濃度のピ
ーク値は僅かに長期間の平均値を(JIS A 1967で与えられる)上げるのに寄与する程度である。
パッシブサンプリングを採用するときは,性能特性と測定の不確かさを含めて,適用した方法を記載す
るのが望ましい。
6 サンプリング及び測定計画
6.1 一般事項
室内空気の分析を行うときの手順は,測定目的と予想される放散源の放散特性に依存する。長期間にわ
たって連続的に放散する放散源が,最も重要な影響があるので,ここでは特に連続した放散源が存在する
場合を対象としている。
6.2 測定目的及び環境条件
6.2.1 一般事項
室内空気の測定を行う前に,その測定の目的を明確に定義しなければならない。
単一の有機化合物の濃度を定量するのか,あらかじめ定めた比較的少数のVOC濃度を定量するのか,
又はできる限り多数のVOC濃度を定量するのかを,前もって明らかにしなければならない。必要ならば,
目的に応じた測定方法を定めなければならない。
目的によって,測定前及び測定中に,それぞれの環境条件を維持したり記録する必要がある。この場合
の環境条件は,基本的に,換気条件,室温及び相対湿度に関連するものである。
6.2.2 日本のガイドライン値への適合性を確認するため
日本のガイドライン値への適合性を確認するための方法について,次に示す。
新築住宅の測定においては,15分間以上換気後に対象室内を5時間以上密閉し,その後おおむね30分
間空気をサンプリングする。サンプリング時刻は,午後23時頃が望ましい。換気後の密閉期間中は,外
気に面した開口部は全て閉鎖し,それ以外の室内の建具及び扉,並びに作り付けの家具,備品などの扉は,
全て開放とする。
なお,常時換気システムのある場合は,全てのサンプリング期間中,システムを稼動させてもよい。ま
た,その際,常時換気システムに関連した開口は,密閉期間中でも閉鎖する必要はない。
居住状態にある住宅の測定においては,日常生活を営みながらの状態で,24時間のサンプリングをする。
6.2.3 WHOガイドライン値への適合性を確認するため
6.2.3.1 一般事項
多くの場合,居住者による様々な形の苦情がきっかけとなり,室内空気の分析が開始される。苦情は,
未知の不愉快な臭いを頻繁に感じるところから,頭痛,吐き気,鼻,喉及び目の炎症に至るまで,様々で
ある。評価時間が決まっているVOC基準値がある場合,測定又はサンプリング時間は,規定の時間を考
慮しなければならない。VOC測定は,次の条件で実行する。
6.2.3.2 自然換気の室内について(機械換気を行っていない部屋)
事前に,十分な換気を15分間行った後,自然換気によって換気している部屋のドア及び窓を少なくとも
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約8時間(なるべく一晩)閉め切る。その際,窓及びドアの隙間にテープを張るなどして気密性を高める
ことはしない。その後で,ドア及び窓を閉じたまま(JIS A 1965参照),サンプリングを実施する。
換気の効果に関する情報を得るため,サンプリング後,5分間ドア及び窓を開けることによって部屋を
換気する。その後,ドア及び窓を再び閉め切り,1時間後に,更にサンプリングを行う。
6.2.3.3 機械換気の室内について
常時換気システムによって換気されている部屋であれば,サンプリングに先立って,その部屋の一般的
な動作条件又は他の標準的な条件で,3時間運転しなければならない。
換気システムの機能は,記録又は測定される必要がある(ISO 16000-8参照)。
特別に換気が定められた部屋では(例えば,学校及び幼稚園は一定時間経過後は窓を開放しなければな
らない),測定前に特定のサイクルを実施する必要がある。
居住者が通常でない特定の条件下で苦情を訴える場合は,解明のため,その条件下でも測定を行うこと
が望ましい。
換気システムの機能は,記録又は測定されることが望ましい(ISO 16000-8参照)。
調査対象の空間は,建築法規及び設計ガイドラインに従って運転されることが望ましい。そして,特に
苦情の場合にはどのような逸脱も記録しておくことが望ましい。
他の条件が一定の場合,VOC濃度レベルは,室内の気温に大きく依存する。また,相対湿度にも依存す
る可能性が大きい。したがって,意味のある室内空気中VOC濃度を求めるためには,調査対象の部屋が
通常使われている温湿度条件下で測定を行うことが重要である。それらの条件が快適とされる範囲外であ
った場合は,それらの条件に適合させることをVOC濃度低減のための手段に優先して行われるべきであ
る。
6.2.4 比較的長期間にわたる平均濃度を求めるため(暴露調査)
長期間の測定を行う場合,パッシブサンプラが一般に用いられる。測定時間が24時間を超える場合,部
屋の諸条件を整える必要はない。通常,サンプリング期間が1か月を超えることはない。いずれの場合も,
決定要因となるのは,サンプリング媒体の安定度及び使用サンプラの性能と,捕集された化学物質量であ
る。
長期間の測定の場合,居住者は,換気及び生活行動を通常どおりに続けることが望ましい。調査前に,
普段どおりの生活行動を居住者に求め,内容を記録することが望ましい。その際,特に重要なことは,一
時的な放散源に関する情報を得ることである。サンプリング期間中に異常が発生した場合,そのことも記
録する。
注記 JIS A 1960の附属書D(室内空気サンプリングの間に記録するべき情報の指針)に,室内空気
測定の際に記録する情報のガイドラインが記載されている。
6.2.5 特殊条件下で放散する濃度を求めるため
特殊条件下におけるVOC濃度レベルの情報を得ることが求められる場合もある。このような特殊条件
は,第一に,部屋が好ましくない気候条件下で使われる場合に発生する可能性がある。温湿度が快適とさ
れる範囲外になり,部屋の利用者がそれを変更することができないまま使われる場合がそうである。第二
に,例えば,溶剤が使われる場合のように,一時的な放散源からのVOCの放散も,特殊条件に該当する。
結果として,異常に高いVOC濃度になることが予想される条件下では,短期間の測定を行う。
注記 熱的に快適な室内環境については,ISO 7730 [19]に記載されている。極端な室内環境条件の場
合については,ISO 7243 [20],ISO 7933 [21],ISO/TR 11079 [22]を利用できる。
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6.2.6 放散源の特定
異常な濃度のVOCが放散した場合は,放散源を確認することが重要である。潜在的な放散源,例えば
建材,家具,事務用品及び住居用洗剤はしばしば室内空気における典型的な放散源となる。したがって,
材料及び製品の放散特性を知ることが重要である。
測定法に関しては,VOC放散源を探すために適切な手法は,次のとおりである。
− におい
− 部屋の中央における空気測定結果と,予想される放散源の近くにおける空気測定結果とを比較する。
− 建材由来の放散源の場合,平らな表面上に設定できる可搬型の放散試験容器を用いて疑わしい構造か
ら直接放散を測定する(ISO 16000-10 [23],参考文献 [24]参照)。場合によっては研究室での測定用に
建材からサンプルを抜き取る。
放散源の特定は,短期間の測定(JIS A 1965)によって実施される。
もし,連続的な放散源が他の放散源とは分離されて測定された場合は,間欠的な放散源の影響は除外又
は最小化されたりする可能性がある(表2参照)。
6.2.7 改修の効果を確認するため
改修の前後でサンプリングを行う。サンプリング条件は改修前と同じとする。
改修によって室内に新しく持ち込まれたものがあるかどうかを確認する。
注記 例えば床材のような新しい材料が室内に持ち込まれたとき,空間の換気効率によるが,室内空
気のVOC濃度は最初の212か月の間は高くなる。
6.3 サンプリング時期
サンプリング時期は,目的によって決まる。測定結果を解釈する際は,例えば,季節変動のように比較
的長期間で生じる濃度変化と,短期効果(放散源の強度,換気の変化)による濃度変化とがあることを考
慮しなければならない。測定結果を評価する際に,たばこの煙又は化学薬品(例えば,清掃用)を対象と
しない場合には,これらの汚染物質を除外する。表2は,VOCの重要放散源及び放散特性の概要を示す。
VOC濃度の時間変化を検討する場合には,2種類の放散源を区別するのがよい。すなわち,比較的長期
間(月,年)にわたって濃度が大きく変動する連続放散源と,短期間(日,時間)だけ濃度が大きく変動
する一時的な放散源である。放散パターンをさらに詳しく検討すると,さらなる細分化が可能である。2
種類の主放散源は,それぞれ2グループに細分できる。周期性があるグループと,周期性のないグループ
である。
6.4 サンプリング時間及び頻度
サンプリング時間は,第一に測定目的によって,第二に選択した分析方法の特性によって決められる。
分析方法の特性とは,例えば,選択した吸着剤に対して予想される検出下限及び破過容量である。
苦情を受けて測定する場合,測定計画では,サンプリング時間に特に注意しなければならない。例えば,
長期間で有効な平均値に関する結論を,短期間の測定から導くことはほとんど不可能なことを考慮しなけ
ればならない。一方,長期間のサンプリングは,VOC濃度の時間変化に関する情報,特に放散頻度及びピ
ーク濃度値に関する情報を失うことにつながる。測定頻度は,測定目的に応じて,また測定の不確かさに
基づいて,測定計画に組み込むことが望ましい。
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表2−VOC放散源の放散特性
放散特性及び室内空気中濃度 放散源の例 VOC放散例
連続 建築材料
− 長期間にわたって活性が高い − ポリ塩化ビニル 可塑剤,粘度調整剤,溶剤,酸化防止剤,スタ
− 放散速度は一様で短時間にあま ビライザー
り変動しない
− リノリウム 亜麻仁油,プロセス残留物としての酸化化合物
濃度
− コルク 接着剤,熱劣化生成物
− 寄せ木の床,木製家 木材抽出物,ニスからの溶剤,表面処理オイル
具 及びワックス
時間
連続 塗料,塗装剤,接着剤 有機溶剤,融合助剤,薄膜を形成する反応生成
− 不規則,減衰 (改修工事) 物,薄膜劣化生成物
濃度
時間
間欠 調理 燃焼生成物,脂,油,香辛料からのVOC
− 短時間で大きく変動する
− 一様 喫煙 不完全燃焼から生じる数百のVOC
− 周期性がある
濃度
時間
間欠 清掃・メンテナンス用薬木材から採る各種の油,精油,香料,補助溶媒
− 不規則 剤
− 周期性がない
趣味用品 溶剤,可塑剤
濃度
時間
屋外放散源 交通機関,工業地域,汚放散源由来の多種のVOC
染場所
室内濃度は,換気,放散源からの距離,
建物特性,気象条件に依存する。
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6.5 サンプリング場所
比較的大規模な建物でも,集合住宅でも,最初から全ての部屋を調査することは一般に必要とされない。
測定開始前に,VOCを測定する部屋を決める必要がある。部屋を選ぶときの主な判断基準は,苦情の有無
又は部屋の使用状況による。例えば,居間及び寝室,教室及び保育室並びに事務所のように,居住時間が
比較的長い部屋は,特に対象となる。
部屋の中での測定場所も,測定結果に影響する。したがって,放散源のすぐ近くでは,その室内で最も
高い濃度が観測されることがよくある。放散源を突き止めるためには,室内の放散源に近い場所と,放散
源から遠い場所の両方でサンプリングを行うことが有効である。
ガイドライン値への適合性を確認するときには,壁から1 m以上離し,高さ0.751.5 mで,サンプリ
ングを行う。この場合,サンプリング場所は一部屋1か所で通常は十分である。
特別の目的がある場合,例えば,室内の濃度を外気の濃度と比較する必要がある場合,自然換気の建物
では,可能ならば,建物から少なくとも2 m離れた位置の,室内の対象箇所とほぼ同じ地上高さで,また
空調設備がある建物では外気取入口の近くで,外気をサンプリングする。
注記 ときどき,空間の圧力差によって,階段室のような隣接した空間から汚染物質が測定対象の部
屋に移動することがある。
また,空調設備がある建物では外気取入口の近くで,外気をサンプリングする。
6.6 結果及び測定の不確かさの表示
6.6.1 個別のVOC化合物及びTVOC濃度の結果表示
測定計画では,測定報告書で結果を表示するために使う基本パラメータ,及び測定の不確かさを記載す
る方法について規定しなければならない。
定量結果は,ガスクロマトグラフ法によって分離されたVOCを含めて,個別の化合物の濃度として報
告する。
パッシブサンプラを使用した場合は,拡散係数又は拡散取込み速度を含めて,結果を計算するために使
用した換算式も示すことが望ましい。
全体の状況を評価するため,総揮発性有機化合物(TVOC)濃度による基準として,単一の濃度値を使
用する。
この方法で定量されたTVOCには,室内空気中に存在する全てのVOCは含まれてはいないことを記載
しなければならない。特に,低分子量のアルデヒド類,アミン類及び高極性VOCに関しては,VOCのガ
スクロマトグラフ法による定量で現在一般的に行われている方法を用いても,意味ある分析ができない可
能性があるため,適切な方法を使って,別途定量しなければならない。
6.6.2 測定の不確かさ
測定の不確かさは避けられない。全ての測定の不確かさは,測定数,並びにサンプリング及び分析結果
における個々の不確かさによって決まる。報告された結果の不確かさにおけるサンプル数の影響の例は,
JIS A 1961 [29]の附属書D(信頼区間のサンプル数への依存性)に挙げられる。さらに,一つの測定結果だ
けでは,時間及び場所による濃度変化の影響を受ける。
測定報告書では,使用した分析方法を記載するだけでなく,分析が行われたときの分析系の性能につい
ても述べなければならない。特に,検出下限及び定量下限に関するものが重要である。
測定結果では,最後の小数位(有効位)が測定の不確かさの程度を同時に表すような数値データを常に
報告する。
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JIS A 1964:2015の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 16000-5:2007(MOD)
JIS A 1964:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.040 : 気質 > 13.040.20 : 雰囲気
JIS A 1964:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA1960:2015
- 室内空気のサンプリング方法通則
- JISA1965:2015
- 室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量
- JISA1966:2015
- 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―ポンプサンプリング
- JISA1967:2015
- 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―パッシブサンプリング