JIS A 1969:2015 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・溶媒抽出・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―パッシブサンプリング | ページ 3

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附属書B
(参考)
拡散取込み速度の算出
B.1 一般
この附属書は,パッシブサンプラの性能試験を行う際に必要な器具,校正ガスの調製方法,試験条件及
び試験方法などについて記載する。今後,集積される新たな知見及びそれらに基づく国際的な評価の進展
に伴い,将来必要があれば変更されるべきものである。
B.2 器具 既知濃度のVOCを調製,混合,送出するための動的システム。
B.2.1 暴露チャンバー
パッシブサンプラの拡散取込み速度(Diffusion uptake rate),再現性試験,妨害ガス試験などの性能試験
を行う際に必要なチャンバーである。チャンバーの材質は,ガラス,ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
又はステンレス製などの不活性材料が望ましい。内容積は,試験対象サンプラが20個以上設置できる容積
が必要である。チャンバーにはガスの入口と出口を備え,かつ,チャンバー内のガス濃度が測定できるよ
うな複数個のサンプリング口を設ける。温度,湿度などを調節できる機器が接続できるようにする。図B.1
に試験装置の一例を示す。
B.2.2 制御設備 暴露チャンバーを通り抜ける空気の流量,ガス濃度,温度,湿度などを制御し,それら
のパラメータを測定し,変化させるための設備。
B.2.3 測定機器 捕集したVOCを分析するための機器。気流,温度,湿度などを測定するための機器。

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1 ボンベ又は空気清浄装置 7 ファン 13 恒温槽
2 減圧器 8 温・湿度計 14 オーバフロー
3 流量計(ニードルバルブ付) 9 風速計 15 ポンプサンプリング用サンプラ
4 加湿器 10 パッシブサンプラ 16 ポンプ
5 ガス発生装置 11 インナーチャンバー 17 ガスメータ
6 混合容器 12 アウターチャンバー
図B.1−試験装置の例
B.3 基準測定法
調製したVOCの暴露チャンバー内濃度を確認するための測定法。暴露チャンバー内の濃度はJIS A 1965
によって求める。
B.4 校正ガスの調製
B.4.1 概要
B.2.1に記載した器具を用いて,一般的な濃度範囲,温度,湿度などにおいて,VOCガスを調製する。
暴露チャンバーを通り抜ける流量は,全ての試験対象サンプラと基準測定法のサンプリング流量を合計し
たものを,上回るようにする。同時に濃度の平衡状態を保持する。標準雰囲気の調製は,温度が5 ℃を下
回り,相対湿度が80 %を上回る状態では実現が困難と考えられているため,こうした範囲外で試験する場
合(範囲外の使用がサンプラの用途からみて適切な場合に限る。),そのための設備も試験用設備の一部と
する。
B.4.2 校正ガスの調製
VOCガスは,ディフュージョンチューブ法,ボンベガス法などによって調製する。
なお,濃度保証が取れない場合は,これら発生ガス濃度は基準測定法によって濃度を決定する必要があ
る。
B.4.3 暴露チャンバーの入口濃度及び出口濃度の測定

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基準測定法を用いて暴露チャンバーの入口と出口濃度とを測定する。このとき,チャンバー内の全ての
サンプラがサンプリングしている状態で行う。出口濃度と入口濃度とに5 %を超える差がある場合は,濃
度差が5 %以下になるように各部を点検する。濃度差が5 %以下になれば,次の実験に備える。
B.5 試験条件
B.5.1 拡散取込み速度の算出又は評価のための試験条件
暴露チャンバーはB.2.1,ガスの調製はB.4.2に従う。試験対象サンプラは1セット(6個)以上,基準
測定法用の装置は一式。試験条件は,B.5.2に示すような条件が望ましい。
試験濃度範囲は,厚生労働省の室内ガイドライン値が存在する物質は,これを参考にするとよい。
注記 例えば,ガイドライン値の50 %,100 %,150 %,200 %及び300 %の5段階程度の濃度範囲を
選定し,試験する。暴露時間は,824時間程度が考えられる。サンプラの向きは,製造業者
の指定どおりとする。また,気流は0.022 m/sの範囲,温度は25 ℃±2 ℃,相対湿度は(50
±5)%とする。ただし,濃度,温度,その他の変動パラメータについて示した範囲は,あくま
でも参考である。試験対象サンプラの指定使用範囲が参考範囲より,広いか,狭いかが分かっ
ている場合は,そうした指定範囲に合わせて調整を加えなければならない。
B.5.2 屋外試験条件
サンプラの試験場所は,単数又は複数の適切な場所を選定する。考慮すべき事項は,使用場所(都市,
地方),地勢(土壌被覆,林野化),環境条件(気温,湿度,風速),化学物質の干渉などである。こうした
変動要素の起こり得る範囲内で,少なくとも2回の試験を行う。
各試験は,少なくとも1セット(6個)のサンプラで,1週間暴露(週変化を捉える)させる。サンプラ
は同じ空気を捕集できるように配置する。同時に6個のトラベルブランクを取る。
注記 屋外試験はサンプラを野外で使用した場合,使用に起因して増大する誤差のうち,実験室試験
では捉えられない誤差要因を明らかにすることである。
B.6 試験方法
B.6.1 概要
一定タイプの拡散サンプラが,ある環境要素の影響を受けないことが試験前に分かっている場合は,影
響を及ぼす可能性のある要素に限り試験を行う。
注記 拡散取込み速度[ng/(μL/L)/min]は,大気圧に左右されないこと,また,mL/min表示されてい
る拡散取込み速度は,大気圧に左右されないことが知られているため,大気圧試験を行う必要
はない。
B.6.2 抽出効率の測定
抽出効率の測定は,標準溶液添加法による。
B.6.2.1 手順
保管容器から取り出したサンプラの隔膜近傍に置いたろ紙に既知濃度の分析対象物質(例えば,トルエ
ンの二硫化炭素溶液)を添加する。添加量は,中間暴露時間に相当する吸着量(例えば,ガイドライン付
近濃度で12時間暴露相当量)とする。それを直ちに保管容器に戻し,密封する。ろ紙から吸着剤に移行す
るのに十分な時間(例えば,24時間),室温で放置する。サンプル数は1セット(6個)とする。溶剤で抽
出後,各抽出液について3回分析する。
B.6.2.2 計算

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試料に標準溶液を添加し,定量操作を行った後,回収した平均質量を求める。この平均質量を添加質量
で除することによって,抽出効率を算出する。抽出効率は80 %以上が望ましい。
B.6.3 拡散取込み速度の算出試験
B.6.3.1 手順
温度25 ℃±2 ℃,湿度 (50±5) %,気流0.1 m/secの条件下で,VOC濃度として主測定濃度(例えば,
環境基準,ガイドライン値)及び,その50 %,100 %,150 %,200 %,300 %付近のガスを調製する。各々
のガス濃度について,チャンバー内に試験対象サンプラを1セット(6個)設置し,24時間暴露する。同
時にチャンバー内濃度を基準測定法で24時間サンプリング(サンプリング流量はマスフローメータを用い
て毎分100 mLに合わせる。)の後,定量する。試験結果は,表B.1に従い整理する。表中の暴露濃度と暴
露時間との積を横軸,捕集量を縦軸にとり,両者の相関を算出する。このとき,得られた一次回帰式の傾
き [ng・(ng/L) ]・minが拡散取込み速度qv(L/min)に相当する。また,qvをmL/min表示にすれば,式(4)に
よって,qv′[ng/(μL/L)/min]で表示する拡散取込み速度への換算が可能である。
表B.1−拡散取込み速度の算出試験例
暴露濃度 暴露時間 濃度×時間 サンプラに捕集された
(ng/L) (min) (ng/L)×min VOC捕集量(ng)
135 24×60 194 400 2 320
270 24×60 388 800 4 100
500 24×60 720 000 8 230
1 020 24×60 1 468 800 1 620
注記 qv : 11.2(mL/min)
B.6.3.2 計算
各暴露条件につき,1セット(6個)のサンプラを供して試験を行い,拡散取込み速度の公称値を用いて,
各々の測定濃度(C)を次の式によって算出する。この計算で得られた計算値及び校正用ガス濃度が±10 %
以内であれば,拡散パラメータの影響がないと考えてよい。
ma mb
C
D qv t
ここに, C : 測定濃度(ng/m3)
ma : サンプル中のVOC質量(ng)
mb : ブランク中のVOC質量(ng)
D : 抽出効率
qv : 拡散取込み速度(mL/min)
t : 暴露時間(min)
注記 最大値及び最小値で試験した場合の計算値(公称値を用いて求めた濃度)が,校正用ガス濃度
と比較して±10 %以内であれば,この条件下において拡散取込み速度は環境パラメータの影響
はないと考えてよい。
B.6.4 保管試験
B.6.4.1 手順
2セット(1セットは6個のサンプラ)のサンプラを準備する。標準的条件,例えば,トルエン260 μg/m3
で24時間サンプリングし,1セット目は1日以内に分析する。2セット目は室温に2週間放置後,分析す
る。ブランクについても同様に操作を行い,分析する。

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B.6.4.2 計算
2セットの試験結果の平均値を算出する。ブランク試験については,保管したブランクサンプルの標準
偏差も算出する。平均値を比較(差の検定)し,保管の影響を検討する。
B.6.5 サンプラの破過試験
2セット(1セットは6個のサンプラ)のサンプラを準備する。代表的VOCトルエンのガイドライン値
の10倍濃度前後の(3 000 μg/m3)の雰囲気中に8時間及び24時間暴露する。サンプラを分析し,測定値
に異常がないか否かを検討し,サンプラの破過を判定する。ただし,これより沸点の低い物質を測定する
ときには,当該物質で行う。
B.6.6 ブランク測定
未使用サンプラを6個分析し,平均値及び標準偏差を算出する。
B.6.7 屋外試験
B.5.2に記載されたとおり暴露する。平均値及び標準偏差を算出する。
参考文献 JIS A 1965 室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA吸着剤を用いた
ポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラフィーに
よる定量

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