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b) 人工水晶
図9−水晶の結晶軸及び面の表示(続き)
7.2.2 種結晶
種結晶の方位は,水晶振動子製造の経済効率を考慮して決める。Zカット及びrカットの種結晶で育成
した人工水晶からは,高周波帯域の厚みすべり振動に用いる振動子及び中間周波数帯域の輪郭振動に用い
る振動子を製造する。X軸回転系の種結晶は,低周波帯域の伸縮振動又は屈曲振動を用いる水晶振動子に
利用する。育成した結晶の種結晶の表面には,異物などで構成される薄い層(シードベール)が存在する
ことがある。
7.2.3 形状及び寸法
アズグロウン人工水晶は,特徴的な成長面で覆われている。アズグロウンY棒水晶の外観を,図10に
示す。人工水晶の形状は,種結晶の形状及び切断方位に依存する。人工水晶の寸法は,X軸方向,Y軸又
はY´軸方向,及びZ軸又はZ´軸方向の寸法で規定する。ただし,人工水晶の面は平たんでないため,図
10に規定するように,各軸方向の寸法を測定する。人工水晶の寸法は,育成効率及び水晶片製造の歩留ま
りを考慮して規定するので,人工水晶の製造業者と使用者とで十分に協議するのがよい。人工水晶はY軸
又はY´軸方向の両端にm,R及びrの各面が現れるため,振動子の切出し可能な有効長は短くなる。Z´軸
方向の最小寸法の正確な測定は,Z面が平たんでなく,かつ,平行でないため,煩雑で誤差も大きくなる。
したがって,人工水晶使用者の仕様が生産者の誤差範囲よりも厳しい場合は,プレディメンションド人工
水晶又はランバード人工水晶で対応するのがよい。
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注記 種結晶の寸法Xの高さの割合,又は種結晶の方位によって結晶は別の形状をとる。
図10−アズグロウンY棒水晶
7.2.4 成長領域
成長領域は,種結晶を中心に種結晶の方位で定まる固有の成長面によって決定され,成長領域ごとに特
性も異なる。この規格に記載する一般的な成長領域内では,Z領域が最も高品質で,+X領域及びS領域
がこれに次ぎ,−X領域が最も品質が悪い。したがって,振動子の製造に当たっては,電極の下にはZ領
域だけを含むように製造することが望ましい。ATカット板水晶片及びXカット板水晶片を切断した場合,
各成長領域が水晶片にどのように含まれるかを,図3のa) 及びb) に示す。
7.3 一般試験による人工水晶の品質評価
人工水晶の欠陥及び不純物量は,育成条件,添加物及び成長速度に依存する。特に成長速度は,α値と
周波数温度特性という人工水晶の重要な特性に影響を及ぼす。すなわち,成長速度が速いとα値が増加し,
周波数温度特性にばらつきが生じる。人工水晶の品質指標は,以前には水晶振動子のQ値であった。5次
オーバトーン5 MHz振動子が,水晶片の保持及び振動子製造上の諸条件によるばらつきの影響を受けにく
く,そのQ値が人工水晶自体の内部損失をより正確に反映することから用いられた。ただし,この方法で
は直径の大きい水晶片を用いるため,目的とする振動子をZ領域から製造できないこともあった。
振動子製造によるQ値の測定には,多くの時間及び労力を必要とするため,現在ではα値を測定してQ
値を推定する方法を採用している。この方法は,微小成長領域の測定ができ,成長による変化も検出でき
る。さらに,労力及び費用がかからず,簡便に測定できるという特徴がある。等級C以上の人工水晶は,
良質な天然水晶と同等の周波数温度特性を示す(表8A参照)。したがって,このような結晶は,良好な周
波数温度特性を要求する高周波帯域の水晶振動子に用いる。よく制御され,かつ,育成工程がよく管理さ
れた同一ロット内では,α値のばらつきは小さい。特定の製造ロットから試料を抽出するときには,ロッ
ト内で寸法Z又は寸法Z´が最も大きい人工水晶を選択する。α値は成長速度に比例して大きくなるので,
寸法Z又は寸法Z´が最大の結晶は,同一ロット内で最大のα値を示す。したがって,α値の検査を,全て
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の製品で行う必要はない。
人工水晶の品質評価方法として,水晶振動子の周波数温度特性の測定がある。切断角度は周波数温度特
性の直線的に変化する部分であるため,切断角度に対して最も鋭敏に変化が現れるように規定している。
水晶片の形状及び寸法は,切断角度を正確に測定できるように規定している。ただし,水晶振動子のQ値
は,保存又は製造上の影響を受けるので,人工水晶材料自体のQ値とはならない。
7.4 その他の人工水晶品質評価方法
7.4.1 概要
7.3の方法以外にも,結晶構造の完全性を評価する様々な方法が提案されているが,水晶振動子の電気的
特性との定量的な相関関係は,必ずしも明確ではない。唯一の例外が,7.3のα値を測定してQ値を推定
する方法であり,この方法は有効な品質評価方法である。
7.4.2 目視検査
水晶に屈折率の近い液体中,又はこのような液体を塗布した状態で強い側面照明を当て,目視で検証す
る。多数の異物を含む人工水晶は,目視検査によらないほうがよい。
7.4.3 赤外線吸収による方法
結晶格子内のOH結合は,赤外領域の特定の波数を吸収する。人工水晶中に含まれる最も一般的な不純
物であるOH基は,赤外領域の3 500 cm−1及び3 585 cm−1の吸収係数から,その含有量を算出できる。OH
基の量が水晶の機械的損失と関連があるので,α値とQ値との相関を見い出すことができる。3 500 cm−1
のα値及びQ値測定用振動子から得た両者の相関の例を,図11に示す。通常,α値はZ領域で測定する。
また,−X領域の吸収はZ領域とは異なる。α値は,測定条件によって変化するので,次の事項を考慮す
る。
− 赤外線の光路に置かれた窓の寸法
− 測定点として選択した箇所が,成長過程のどの部分に相当するか。
− 測定時の偏光面
− 測定時の温度及び湿度
− 赤外分光光度計の個々の特性
3.0
2.0
1.0
6
Q×10
0.6
Q
0.4
0.2
0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5
愀 cm1)
図11−α値とQ値との相関の例(波数3 500 cm−1)
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7.4.4 その他
天然水晶内部の双晶の検出に広く用いる化学的エッチングによる検査法は,双晶の存在が人工水晶で非
常にまれなため,必要としない。この方法は,転位の数を示すエッチピット及びエッチチャンネルを明確
にするために用いられることがある。
なお,エッチピットとは,固体の表面を化学腐食剤などで腐食する場合に生じるくぼみをいう。
不純物の全体の分布を観察するために,ガンマ線又はX線の照射を行う。照射による暗色化(暗褐色の
着色)は,不純物濃度及び成長領域に関係する。X線散乱のパターンは,結晶の完全性を示す有用な情報
になる。α値が低い場合は,散乱X線ビームを用いることによって,より明瞭なラウエパターンが得られ
る。ラング法によるX線トポグラフィーは,結晶欠陥の分布を検出するのに有効となる。ただし,これら
の方法の全ては,水晶振動子完成品の電気的特性との定量的相関性に欠けていることに注意する。
7.5 人工水晶のα値等級
α値等級には,6等級ある。等級Aa,等級A及び等級Bは,高品質な水晶振動子に適している。等級C
は,主に高い等級のα値と同等の優れた温度特性を要求する高周波産業用水晶振動子に適している。等級
D及び等級Eは,主に低価格の低周波用水晶振動子に適している。
なお,人工水晶では,品質の管理及び規定には物理的な測定値としてα値が用いられるが,Q値との対
応関係を示すことが望ましい。Q値は,α値を測定し,経験的な相関から得ることができる。α値の等級
と従来のQ値との相関を,表8Aに示す。
表8A−振動子用人工水晶のα値等級とQ値との相関関係
等級 各等級のα値の最大値 1987年以前のQ値
α3 500 α3 585 (×106)
Aa 0.026 0.015 3.8
A 0.033 0.024 3.0
B 0.045 0.050 2.4
C 0.060 0.069 1.8
D 0.080 0.100 1.4
E 0.120 0.160 1.0
7.6 人工水晶の異物及びエッチチャンネルの等級選択(要求があるときだけ適用),アルミニウム含有量
並びにスエプトクォーツ
7.6.1 人工水晶の異物の等級選択
異物密度には,5等級ある。等級Ia,等級Ib及び等級Iは,主にフォトリゾグラフ工程用に適している。
等級IIは,主に高周波で,かつ,高品質のバルク波用,SAW素子用などに適している。等級IIIは,大部
分の産業用水晶振動子に適している。
7.6.2 人工水晶のエッチチャンネルの等級選択
エッチチャンネル密度には,6等級ある。等級1aa及び等級1aは,長時間の化学エッチングが必要な厚
い水晶のセンサに適している。等級1及び等級2は,次の高品質な水晶振動子に適している。
− 高周波を基本波とする水晶振動子
− 高周波数のSAWデバイスに用いる水晶振動子
− 化学的エッチングのような工程を必要とする水晶振動子
等級3は,主に産業用水晶振動子に,また,等級4は,主に一般用水晶振動子に適している。
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7.6.3 人工水晶のアルミニウム含有量
人工水晶はアルミニウムを含有する場合,それと対になったLi+及びNa+イオンが増加し,それらの動
きによって,振動子用として用いたとき,放射線照射による周波数変動が生じやすい。そのため,アルミ
ニウム含有量を制御する必要がある。
水晶のアルミニウム濃度の測定は,専門的な技術並びに専用の設備及び実験室が必要となり,通常の工
業的な生産での評価試験に用いるのは困難である。ただし,特別な場合又は技術評価が必要な機会が増え
てきているので,次に標準的なアルミニウム不純物含有量の測定方法の概要を記載する。
アルミニウム濃度は,Si原子百万個中に含むアルミニウム原子の個数で表し,化学分光法及び物理的方
法によって測定できる。化学分光法には,原子吸光法(AA),ICP発光法(ICP)及び直流プラズマ法(DCP)
があり,ふっ酸(HF)で水晶試料を溶かし,扱いやすくすることによって測定が容易になる。これらの方
法は,特にアルミニウム含有量が低いときには,正確な結果を得るために,かなり熟練を要する。物理的
方法としては,電子スピン共鳴(ESR),電子常磁性共鳴(EPR)及び液体窒素温度雰囲気中の試料の赤外
線吸収法がある。これら以外にも,簡易的に定性的な情報を得る手段として,X領域の放射線照射による
着色部を比較する方法もある。
7.6.4 スエプトクォーツ
7.6.4.1 概要
スイーピングした水晶を,スエプトクォーツという。スイーピングとは,高温で安定したZ成長の水晶
のZ軸方向に,高い直流電圧を印加する,電界による拡散処理のことである。この処理後,放射線照射に
よってアルカリイオンが解離されるとき,水晶中の欠陥Al3+−M(一価の補完イオン)は,アズグロウン
結晶中の水に由来するOH基によって,Al3+−OHに変換する。M+は電界によって,負の電極に拡散する。
スエプトクォーツは,放射線照射に起因する周波数変化の低減,エッチチャンネル密度の低減及び光学製
品用に放射線の照射に起因する黒ずみの低減のために,広く用いられている。
7.6.4.2 周波数変化の防止
放射線による周波数変化は,水晶中のアルカリイオンがAl3+−M+からAl3+−OH又はAl3+−e−への変
換の原因となる。スイーピングによってアルカリイオンを事前に取り除くことによって,Al3+M+センター
における弾性緩和は消失し,弾性定数における変化は減少する。これによって,周波数の変化を低減でき
る。スエプトクォーツは,周波数変化の原因となりやすい宇宙の放射線環境下において,人工衛星を作動
させる水晶振動子として用いられている。
7.6.4.3 エッチチャンネルの低減
スエプトクォーツは,薄い水晶片が強力なエッチング液にさらされたとき,微細なエッチチャンネルを
減らす手段であると考えられてきた。微細なエッチチャンネルは,転移(線欠陥)及び転移を取り囲むゆ
が(歪)みの領域の不純物が多い部分の集積の結果である。エッチング液は,ゆが(歪)みが多い部分を
選択的にエッチングする。スイーピングは,この傾向を不動態化することが分かっている。この理由は完
全に調べられていない。ただし,一つのよく知られた説明は,ゆが(歪)み領域から電荷補償M+を取り
除き,Al3+−M+からAl3+−OH又はAl3+−eに変換することによって,例えばふっ化水素(FH)のような
強い酸性のエッチング液と反応する可能性が取り除かれる。このようにして,チャンネルは不動態化する。
ただし,エッチングされた面では,転位跡及びエッチピットができる。幾つかの応用製品については,エ
ッチチャンネルの除去はこれで十分であるが,デバイスの小形化が進むにつれて,このエッチピットの存
在には問題であることが明らかになってきた。フォトリゾグラフの生産技術を用いて,大部分の水晶デバ
イスの生産をしているため,生来の低転位密度による人工水晶が必要となった。
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JIS C 6704:2017の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60758:2016(MOD)
JIS C 6704:2017の国際規格 ICS 分類一覧
- 31 : エレクトロニクス > 31.140 : 圧電素子及び誘電素子
JIS C 6704:2017の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC6701:2007
- 水晶振動子通則
- JISC6701:2021
- 水晶振動子の通則及び試験方法
- JISZ9015-1:2006
- 計数値検査に対する抜取検査手順―第1部:ロットごとの検査に対するAQL指標型抜取検査方式