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b) 最小皮膜厚さは,各溶射材料に対し表1に規定する二重線で示した範囲の中から定める。溶射施工す
る部材の特別な条件(用途,環境,使用寿命など)に対応するため,二重線の範囲を超える厚さが必
要な場合には,受渡当事者間での協定によって,各溶射材料に対して表1の鎖線で示した範囲から,
最小皮膜厚さを定めてもよい。
c) 受渡当事者間の協定によって最小皮膜厚さを指定する場合,皮膜厚さの均一性を確保するための溶射
の方法,封孔剤の使用,試験方法及び中間値の指定について取り決めてもよい。
表1−溶射材料の種類及び最小皮膜厚さ
単位 m
溶射材料の 最小皮膜厚さの範囲a)
種類 最小皮膜厚さ
50 100 150 200 250 300
Zn99.99
Al99.5
AlMg5
ZnAl15
注記 ISO 2063-1には各溶射材料に対する防食システム(溶射皮膜だけ,溶射皮膜+封孔,
又は溶射皮膜+封孔+有機塗装)と種々の環境条件との組合せに対応した溶射皮膜
の厚さの推奨値が含まれている。これらの内容を,参考のため附属書Cに示す。
注a) 最小皮膜厚さの範囲は,その範囲を示す線の両端の値を含む。
6 施工工程
6.1 施工管理
a) 施工管理者は,溶射皮膜が溶射施工仕様書で定めた品質要求事項を満たすように施工を管理しなけれ
ばならない。
b) 施工管理者は,防食溶射施工における全ての個別作業及び検査,すなわち,清浄化,粗面化などの素
地調整,溶射,封孔など後処理,検査手順などを詳述した施工手順書を確定し,それに従って各作業
を実施する。
c) 施工手順書に記載する清浄化及び粗面化のための研削材,ブラスト条件,除せい(錆)度,表面粗さ,
溶射の距離,最小皮膜厚さなどは,あらかじめ用意された試験片に溶射した皮膜の特性などによって
決定するが,類似の溶射施工事例から採用してもよい。
d) 施工管理者は素地調整並びに溶射のパラメータ,及び溶射装置の変更に際しては,変更後のパラメー
タによって溶射された試験片皮膜で必要な皮膜品質が得られることを確認しておく。
e) 溶射作業員は施工の各段階において,実際に行った施工内容を清浄化,粗面化のための研削材,ブラ
スト条件,除せい(錆)度,表面粗さ,溶射の距離,最小皮膜厚さなど施工手順書に記載する項目に
従い施工管理記録に記録する。
――――― [JIS H 8300 pdf 6] ―――――
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6.2 ブラスト処理
6.2.1 表面調製
素材表面は,適切な研削材を用いたブラスト処理によって,十分な清浄化と粗面化とを行わなければな
らない。ブラスト処理作業において考慮する事項を,参考としてD.2に示す。
6.2.2 マスキング
溶射してはならない部材表面は,ブラスト処理の前及び溶射前にマスキングしなければならない。マス
キング材はブラスト処理に対しても,溶射時の高温粒子に対してもマスキング状態を保つだけの耐久性が
なければならない。ブラスト時及び溶射時において,それぞれに最適なマスキング材を用いるのが望まし
い。
6.2.3 ブラスト仕上げ度
ブラスト処理の仕上げ度は,JIS Z 0313の4.(目視による清浄度の評価)の規定によって,亜鉛溶射及
び亜鉛·アルミニウム合金溶射は除せい(錆)度Sa 21/2以上,アルミニウム溶射及びアルミニウム·マグ
ネシウム合金溶射は除せい(錆)度Sa 3とする。溶射法と溶射材とによって必要とする表面粗さに相違が
生じるが,表面粗さ(Rz)で50 μm以上が望ましい。
6.2.4 研削材
ブラスト処理には,次のいずれかの研削材を用いなければならない。
a) IS Z 0311に規定された鋳鉄グリット若しくは高炭素鋳鋼グリット,又は粗面化性能がこれと同等の
もの。
b) IS Z 0312に規定されたニッケルスラグ,フェロニッケルスラグ若しくは製鋼スラグ,又は粗面化性
能がこれと同等のもの。
c) IS Z 0312に規定された溶融アルミナ,又は粗面化性能がこれと同等のもの。
d) 受渡当事者間の協定に基づき,溶射皮膜の密着度を確保するのに必要な清浄度及び粗さを素材表面に
与えることが可能となる場合に限って,a) c)以外の研削材料を用いてもよい。
e) 研削材の粒度として,通常,0.5 mm1.5 mmの範囲のものを使用する。用いる研削材は,その種類が
いかなるものであっても,清浄かつ乾燥させたもので,異物を含まないものでなければならない。
6.2.5 ブラスト作業
a) ブラスト作業に際しては,ブラスト加工面は十分に明るいこと,加工素材表面温度が露点以下になっ
ていないこと,また,雨及び雪に素材表面をさらしてはならない。
b) 施工管理者又は溶射作業員は溶射する表面が乾燥し,ほこり,油脂類,酸化スケール,さび,その他
の汚染物質がない状態であることを,溶射直前に確認する。
c) 圧縮空気を使用するブラスト作業に際しては,研削材及び溶射する素材表面を汚染しないよう,十分
に清浄かつ乾燥した空気を使用しなければならない。
6.2.6 ブラスト処理面の検査
a) 除せい(錆)度の検査 施工管理者は溶射施工の前に,ブラスト処理を終えた素材表面の除せい(錆)
度を確認し,また,目視によって均一な清浄面であることを確認しなければならない。除せい(錆)
度の確認は,JIS Z 0313の4.による。
――――― [JIS H 8300 pdf 7] ―――――
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b) 表面粗さの検査 施工管理者は溶射施工の前に,ブラスト処理を終えた素材表面粗さを検査しなけれ
ばならない。表面粗さの確認は,JIS Z 0313の7.(表面粗さの試験評価)による。特に受渡当事者間
の協定がない場合には,ISO 8503-1に規定する比較板を用いる。
6.3 溶射
溶射施工は,次による。なお,溶射施工の詳細を,参考としてD.1D.5に示す。
a) 溶射前の部材表面に何らかの問題点が認められる場合,再度前処理を実施しなければならない。
b) ブラスト処理後の部材表面が,清浄かつ乾燥の状態を保持し,更に,目視によって酸化が認められな
い状態を持続できる時間内に溶射を施工しなければならない。環境条件にもよるが,通常ブラスト処
理完了後4時間以内に施工することが望ましい。
c) 部材表面に水分の凝縮が起こるような状態では,露点よりも3 ℃以上高い温度に部材表面を保つ。ま
た,大気中の相対湿度は,85 %以下が望ましい。
d) 施工管理者又は溶射作業員は,次の溶射パラメータ及び溶射皮膜の特性を適切な時間間隔で管理しな
ければならない。
1) 電流,電圧,ガス流量及びガス圧力の値
2) 機械式溶射における溶射ガンの移送速度
3) 部材の表面温度
4) 溶射施工仕様書で定めた溶射材料の使用
5) 皮膜の厚さ及び外観
e) 溶射施工中に発生する粉じん(塵)及び遊離粒子が,皮膜中へ巻き込まれるのを最小限に抑えるため,
溶射される部材表面付近から,可能な限り粉じん(塵)及び遊離粒子を取り除くことが望ましい。
f) 溶接される部材に溶射を行う場合,溶射の前に溶接作業を済ませておく必要がある。その場合,溶射
前に溶接スラグ,アルカリ残さ(渣)及びその他の溶接残さ(渣)を溶射施工範囲から除去しなけれ
ばならない。溶接部及び溶接部周辺には,アンダーカット,ピット,凹部,及び溶接スパッタがあっ
てはならない。これらの存在が確認された場合は,除去しなければならない。さらに,溶接部付近の
塗膜の下地及びその残留物は,溶射前に除去する。なお,D.4に,溶接された箇所に対する注意を示
す。
g) 施工管理者は,溶射施工上必要な作業空間の確保及び長期の防食効果の実現のため,溶射施工する部
材の形状について発注者と協議することが望ましい。参考のために,溶射施工をする部材の形状に対
する注意を,D.6に示す。
6.4 封孔
6.4.1 封孔の目的は,溶射皮膜特有の開気孔を充することによって,開気孔を通じて水分又は腐食性物
質が基材表面に達するのを防ぐことである。防食を目的とした溶射皮膜は封孔することが望ましい。
6.4.2 溶射皮膜の封孔は自然封孔又は人工的な封孔処理による。
注記 自然封孔は,通常の大気環境条件に暴露された溶射皮膜において,開気孔内部で水分などによる
酸化によって生成する酸化物,水酸化物などによって,気孔が充されることをいう。
人工的な封孔処理は,皮膜表面のりん酸塩処理などによる化学的な改質,又は皮膜の気孔を充
するための適切な封孔剤によって,気孔が充されることをいう。
6.4.3 人工的な封孔処理は溶射施工が終了し,溶射皮膜が冷えた段階で直ちに,表面の酸化が見られる前
――――― [JIS H 8300 pdf 8] ―――――
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に行わなければならない。封孔剤を塗付する前に溶射粉じん(塵)及び遊離粒子を溶射面から除いておか
なければならない。封孔作業の詳細については,附属書Eを参照する。
6.4.4 施工管理者は施工手順書に従い封孔剤の貯蔵,使用,及び処分を行わなければならない。
6.5 安全衛生対策
ブラスト処理作業,溶射作業及び封孔処理作業を行う際には,関係法令を遵守し,常に安全衛生及び環
境保護に配慮する。配慮することが望ましい事項の例を,D.5に示す。
6.6 検査
検査員は箇条7の品質を評価するため,箇条8の試験方法によって検査を行う。このとき,検査員は合
否判定を溶射施工仕様書に従って行い,検査結果記録を作成しなければならない。施工管理者は検査結果
記録にのっとり,最終的な合否判定を行い,発注者へ報告する。
7 品質
7.1 最小皮膜厚さ
a) 溶射皮膜の厚さは,溶射施工仕様書で定めた最小皮膜厚さの数値を下回ってはならない。
b) 磁力式膜厚計による測定法においては,溶射面のどの測定位置においても皮膜厚さの読取値は,最小
皮膜厚さの数値を下回ってはならない。
c) 最小皮膜厚さは,部材の上で非破壊的に測定する。部材上での厚さ測定が形状的又は材質的な理由で
できない場合は,同時試験片上で確認してもよい。
7.2 外観
皮膜表面は,8.2によって試験を行い,皮膜に膨れ,割れ,その他使用上有害な欠陥があってはならない。
7.3 密着性
溶射皮膜と基材との密着性は,次のいずれかを満足しなければならない。
a) 8.3に規定するグリッド試験を実施したとき,皮膜の基材からの離,又は金属皮膜の内部離が生じ
てはならない。
b) 8.3に規定する引張密着強さ試験によって試験したとき,密着強さは受渡当事者間の協定による数値
を下回ってはならない。
注記 ISO 2063-2に記載された密着強さの典型的な数値を,参考として表2に示す。
表2−無封孔の溶射皮膜の密着強さの典型的な値(ISO 2063-2)
溶射材料 密着強さ
MPa
種類 名称 ガスフレーム式溶射·アーク式溶射
Zn99.99,ZnAl15亜鉛,亜鉛·アルミニウム合金 4.0
Al99.5,AlMg5 アルミニウム,アルミニウム·マグネシウム合金 4.5
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8 試験方法
8.1 皮膜厚さ測定
8.1.1 一般
皮膜厚さ測定は,磁力式膜厚計測定方法による。ただし,受渡当事者間の協定によって顕微鏡断面測定
方法を用いてもよい。
8.1.2 磁力式膜厚計測定方法
a) 磁力式膜厚計測定方法は,JIS H 8401の7.(磁力式試験方法)による。磁力式膜厚計測定方法による
皮膜厚さ測定は,厚さが最も小さい値を示すと推測される複数点で実施する。
b) 磁力式膜厚計測定における厚さ測定点の位置及びその数は,試験結果が部材へ溶射された面全体を代
表するようにしなければならない。測定点の位置及びその数は,受渡当事者間の協定によって定めた
溶射施工仕様書による。受渡当事者間の協定がない場合,これらの測定点の選定は,附属書JAを参
考に検査員が行ってもよい。
8.1.3 顕微鏡断面測定方法
顕微鏡断面測定方法は,JIS H 8401の6.(顕微鏡断面試験方法)による。
8.2 外観試験
外観試験は,明るさ200 lx以上の場所で,試験面から約600 mm離れた距離から肉眼で溶射皮膜を観察
する。
8.3 密着性試験
皮膜の密着性試験は,F.1によるグリッド試験,又はF.2による引張密着強さ試験のいずれかによる。試
験方法の選択,及び使用する接着剤,試験機,その他の器具類の選択は,受渡当事者間の協定による。
9 表示
送り状などに,次の事項を表示する。
a) この規格の名称又は規格番号
b) IS H 8250による溶射の記号
例1 TS-WF/Zn99.99(80) SE 溶線式フレーム溶射,亜鉛,80 μm,封孔処理
例2 TS-ES/AlMg5(150) アーク溶射,アルミニウム·マグネシウム合金,150 μm
c) 加工業者名又はその略号
d) 加工年月日
――――― [JIS H 8300 pdf 10] ―――――
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JIS H 8300:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 2063-1:2019(MOD)
- ISO 2063-2:2017(MOD)
JIS H 8300:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 25 : 生産工学 > 25.220 : 表面処理及び被覆加工 > 25.220.40 : 金属被覆
- 25 : 生産工学 > 25.220 : 表面処理及び被覆加工 > 25.220.20 : 表面処理
JIS H 8300:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISG4404:2015
- 合金工具鋼鋼材
- JISH8200:2006
- 溶射用語
- JISH8250:2007
- 溶射の記号による表示方法
- JISH8261:2007
- 溶射用の線材,棒材及びコード材
- JISH8401:1999
- 溶射皮膜の厚さ試験方法
- JISH8402:2004
- 溶射皮膜の引張密着強さ試験方法
- JISZ0311:2004
- ブラスト処理用金属系研削材
- JISZ0312:2016
- ブラスト処理用非金属系研削材
- JISZ0313:2004
- 素地調整用ブラスト処理面の試験及び評価方法
- JISZ1524:2009
- 包装用布粘着テープ
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方