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図1−フーリエ変換形赤外分光光度計の構成の一例
図2−分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の構成の一例
図3−分散形赤外分光光度計(電気的直接比法)の構成の一例
4.2 赤外分光光度計
4.2.1 フーリエ変換形赤外分光光度計
図4にフーリエ変換形赤外分光光度計の光学系の一例を示す。赤外光源から放射された赤外線はだ(楕)
円面鏡で反射,集光されてアパーチャーを通り,放物面鏡で平行光に変換されてマイケルソン干渉計に入
射する。マイケルソン干渉計で干渉された赤外線は試料室前の放物面鏡で集光され試料に照射される。
試料を通過し,試料によって吸収された残りの赤外線は検出器前のだ(楕)円鏡で集光されて検出器で
電気信号に変換される。
――――― [JIS K 0117 pdf 6] ―――――
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○
1 赤外光源
○
2 だ(楕)円面鏡
○
3 アパーチャー
○
4 放物面鏡
○
5 マイケルソン干渉計
○
6 ビームスプリッター
○
7 補償板
○
8 固定鏡
○
9 移動鏡
○ 放物面鏡
10
○
11 試料室
○ 試料
12
○
13 だ(楕)円面鏡
○
14 検出器
○
15 レーザー
16○
○ 18 レーザーミラー
○
19 レーザー検出器
○
20 バリデーション用フィルター
図4−フーリエ変換形赤外分光光度計の光学系の一例
a) 光源部 光源部は次に示す赤外線の放射体,光源用電源,集光用の凹面鏡などで構成する。
1) 赤外線の放射体は,炭化けい素,セラミックなどを放射体材とし,目的とする赤外線を安定に放射
するものを用いる。
2) 光源用電源は,安定した赤外線を放射させるために,変動の少ない電圧及び電流を供給する機能を
もつものを用いる。
3) 集光用の凹面鏡は,放射体から放射された赤外線をアパーチャーに集光又はマイケルソン干渉計に
入光させるための平行光に変換するもの。集光鏡にはだ(楕)円鏡,放物面鏡,又は球面鏡などを
用いる。
b) 試料部 試料部は,次に示す試料セル,試料ホルダー,附属装置を取り付けることのできるジグなど
で構成する。フーリエ変換形赤外分光光度計の多くは単光束分光光度計である。複光束赤外分光光度
計の場合には,試料用光路及び対照試料用光路にそれぞれ試料ホルダーを設置する。
1) 試料部は,通常,赤外線光路及び試料を周囲の環境から隔離するための隔壁及びドアが備えられて
おり,乾燥ガスの導入口が設置され,試料部をガス置換することができるものもある。
2) 試料部の入り口には,マイケルソン干渉計から出射された平行光を試料部内で集光させるための放
物面鏡が配置されている。
3) 赤外線光路中にポリスチレンフィルム,ニュートラルフィルターなどを挿入し,装置の性能確認を
容易に,かつ,確実に行うためのバリデーション機構が備えられているものもある。
c) 分光測光部 分光測光部は,次に示す干渉計,検出器,増幅器,A/D変換器,サンプリング信号発生
器などで構成する。
1) 干渉計 一般に,マイケルソン干渉計を用いる。マイケルソン干渉計は,入射された平行光がビー
ムスプリッターによって透過光と反射光とに2分割され,それぞれ固定鏡及び移動鏡と呼ばれる2
枚の平面鏡で反射されて再びビームスプリッターに入射され,お互いの光が重なり合って干渉を生
――――― [JIS K 0117 pdf 7] ―――――
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じる。移動鏡は2分割された二つの光束が重なり合い干渉を生じるように,常にビームスプリッタ
ーと一定の角度を保つように走査される。ビームスプリッターから固定鏡までの距離と移動鏡まで
の距離とが等しい場合に全ての波長の光が強め合い,移動鏡の走査に従って特定の波長の光が強め
合うように干渉し,その結果,インターフェログラムと呼ばれる干渉パターンが得られる。
フーリエ変換形赤外分光光度計では,スペクトルの分解能は移動鏡の移動距離によって決定され,
移動鏡と固定鏡との光路差をLとしたとき,分解能は1/Lで得られる。例えば,光路差が0.5 cmで
あれば分解能は2 cm−1になる。
ビームスプリッターは,一般的に中赤外の領域においてはKBr基板に蒸着させたゲルマニウム薄
膜が用いられ,測定する全ての波長において固定鏡側と移動鏡側との光路長が等しくなるように,
薄膜を蒸着していない同じ厚さのKBr基板を補償板として配置している。ビームスプリッターの基
板をCsIに換えることによって測定領域を長波長領域に拡張でき,ZnSeの薄膜を蒸着させたCaF2
基板などを用いることによって短波長領域に拡張することができる。
インターフェログラムの信号は,干渉計に組み込まれたHe-Neレーザー光の干渉によって生じる
正弦波から得られる信号を用いて正確に等しい距離間隔でサンプリングを行い,A/Dコンバータで
デジタル信号に変換してコンピューター上に取り込む。このHe-Neレーザー光の干渉信号は移動鏡
を一定速度で走査するための制御にも利用される。
干渉計では,ビームスプリッターに対する固定鏡と移動鏡との角度を常に一定に保つことが重要
であり,高品質のデータを収集するためには測定時にビームスプリッター又は鏡の角度調整を行う
必要がある。He-Neレーザー光のインターフェログラムの位相をモニターし,鏡を電気的に調整す
ることなどによって干渉計の調整を連続的に自動で行うものもある。
通常の測定では,移動鏡を一定速度で動かしながらデータを収集するリニアスキャン測定モード
が用いられるが,試料のサブミリ秒以下での時間変化を測定する時間分解測定又はパルス変調され
ている試料を測定することのできる装置では,移動鏡を各サンプリング位置で停止させてデータを
収集するステップスキャン測定モードを備えたものもある。
マイケルソン干渉計の入り口には,光源からの放射光をマイケルソン干渉計で必要とする平行光
に変換するための放物面鏡などを配置する。
また,高分解能の測定時に入射孔の大きさを制限するためのアパーチャーを備えたものもある。
2) 検出器 入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,焦電形検出器,半導体検出
器,光音響検出器などを用いる。フーリエ変換形赤外分光光度計に用いられる検出器は,次に示す
条件などを満たす必要があるが,これら全ての条件を満たす検出器はないので,目的によって使い
分ける。
− 高感度である。
− 波長感度特性が測定波数範囲内で平たん(坦)である。
− 周波数特性が測定するフーリエ周波数内で平たん(坦)である。
− 入射光の強度に対する信号出力強度が広い範囲にわたり直線性をもつ。
− 光学系のビーム径に見合う大きさの受光面をもつ。
− 取扱いが簡単である。
検出器の前には,試料部からの赤外線を検出器に集光させるためのだ(楕)円面鏡などを配置す
る。
3) 増幅器 検出器からの電気信号を,以降の信号処理系において処理しやすい大きさに増幅するもの。
――――― [JIS K 0117 pdf 8] ―――――
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4) /D変換器 増幅器からのアナログ電気信号を,コンピューター上でデータ処理するためのデジタ
ル信号に変換する機能をもつもの。
フーリエ変換形赤外分光光度計の検出器で検出されるインターフェログラム信号を取り扱うには大
きなダイナミックレンジが要求されるため,24 bit程度の高い分解能のA/D変換器が用いられてい
るものもある。
5) サンプリング信号発生器 インターフェログラムの測定におけるデータサンプリングのリファレン
ス信号として用いる信号発生器。リファレンス信号のインターフェログラムを得るための単色光源
には,通常ヘリウム−ネオンレーザーが用いられる。その他,固体レーザーが用いられているもの
もある。
d) フーリエ変換部 デジタル化されたインターフェログラムをフーリエ変換によってスペクトルに変換
するための機能をもつ部分。
e) データ処理部 得られたスペクトルデータの変換及び分析を行うもの。赤外顕微鏡などのイメージン
グ計測機能によって収集された2次元データは,個々のスペクトルのデータ処理に加え,主成分分析,
多変量スペクトル分解などの多変量解析及び測定された各成分が占める領域の位置,個数,面積の計
測などのイメージングデータの画像解析を行う部分。
f) 表示・記録部 表示・記録部は,分析結果,データ処理結果などをモニターに表示,プリンターによ
って印刷し,外部記憶装置に保存するための部分で,通常フーリエ変換,データ処理などと合わせて
コンピューターで行う。
4.2.2 分散形赤外分光光度計
a) 光源部 4.2.1 a) による。
b) 試料部 4.2.1 b) による。ただし,分散形赤外分光光度計は,通常,複光束分光光度計であり,試料
用光路及び対照試料用光路にそれぞれ試料ホルダーを設置する。
c) 分光測光部 分光測光部は,次に示す減光器,分光器,検出器,増幅器,演算器などで構成する。
1) 減光器 光学的零位法において,減光のために使用される光学素子。対照光束中に設置され,試料
を通過した光束の強度と対照試料を通過した光束の強度とが等しくなるように調節するもの。
2) セクターミラー 試料光束と対照光束とを切り換えるための回転鏡。
3) 分光器 スリット,ミラー,分散素子などから構成する。一つの光源からの光を分散させて一つの
焦点面上に波長順にスリット像を結ばせる機器でスペクトルを観察できるようにしたもの。分散素
子にはプリズム,回折格子又はそれらを組み合わせた光学系から構成され,特定の波長の単色光を
取り出すモノクロメーター及び多波長の光を同時に取り出すポリクロメーターがある。通常は回折
格子5) を用いる。
注5) 回折格子形分光器では,高次光を分離するため,通常,波数選択フィルターを組み合わせ
る。
4) 検出器 入射光をその強度に応じた電気信号に変換するためのもので,真空熱電対,焦電形検出器,
半導体検出器などを用いる。
5) 増幅器 検出器からの信号を,以降の信号処理系において,処理しやすい大きさに増幅するもの。
光学的零位法では,前置増幅器,主増幅器,同期整流器,変調器及び電力増幅器からなる。また,
電気的直接比法では,前置増幅器,主増幅器及び同期整流器で構成する。
6) 演算器 電気的直接比法に用いる信号処理系であり,試料光束による電気信号と対照試料による電
気信号とを分離し,両者の信号強度比を算出するもの。
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分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例を図5に示す。
○
1 赤外光源 ○
7 回折格子
○
2 凹面鏡 ○
8 検出器
○
3 平面鏡 ○
9 対照試料
○
4 集光鏡 ○
10 試料
○
5 入射スリット ○
11 セクターミラー
○
6 出射スリット ○ 減光器
12
図5−分散形赤外分光光度計(光学的零位法)の光学系の一例
d) データ処理部 透過率の吸光度への変換,検量線の作成,差スペクトルの演算などの機能をもつもの。
e) 表示・記録部 4.2.1 f) による。
4.3 附属装置
附属装置には次のものがあり,必要に応じて使用する。
a) 錠剤成型器 粉末とした試料を臭化カリウムなどのハロゲン化アルカリとを混合し,加圧・成型して
錠剤とする装置。錠剤成型器には減圧下で加圧して錠剤を作製する装置及び加圧して錠剤を作製する
簡易形装置がある。図6 a) に減圧下で作製する錠剤成型器,図6 b) に簡易形錠剤成型器の例を示す。
○
1 基台
○
2 Oリング
○
3 排気口
○
4 Oリング
○
5 ばね
○
6 試料台
○
7 試料
○
8 錠剤枠
○
9 プランジャー案内金具
○
10 プランジャー
a) 減圧下で作製する錠剤成型器の例
図6−錠剤成型器の例
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JIS K 0117:2017の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0117:2017の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0050:2019
- 化学分析方法通則
- JISK0211:2013
- 分析化学用語(基礎部門)
- JISK0212:2016
- 分析化学用語(光学部門)
- JISK0215:2016
- 分析化学用語(分析機器部門)