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ので試料をセルに密に充する必要がある。試料の量が少ない場合には,臭化カリウムなどのマトリ
ックス粉末を用いてデッドスペースを埋めるか,セルの大きさを試料量に合わせて選定する。対照試
料としてはカーボンブラックを用いる。
j) 顕微鏡法 微小な試料の場合,赤外線の照射領域を絞り込めることができる赤外顕微鏡を使用する。
顕微鏡法では,主にフィルム法,ATR法,正反射法による測定ができる。試料が厚い場合,金属板又
は赤外線透過材料と金属の棒材とで挟んでプレスし,薄膜化してから測定する。
k) C-IR法 試料の溶解に使用する溶媒は,試料の極性に合った溶解性の高いものを選択することが望
ましい。
l) LC-IR法 LCに用いる移動相としての溶媒は,赤外吸収が少なく,試料の極性に合った溶解性の高
いものを選択することが望ましい。
m) G-IR法 試料が塊状又は粒状の場合,より正確な測定を行うために微粉末にする。
5.3 粉体
粉体試料の調製方法には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合には,次によるほか,附属装置
の取扱説明書による。
a) 錠剤法 微粉とした試料を5.2 b) と同様に処理し,錠剤とする。
b) 溶液法 5.2 c) による。
c) ペースト法 乳鉢,乳棒のような器具を用いて微粉とした試料に適量の流動パラフィンを加えて,均
一に混ぜ合わせ,2枚の窓板の間に挟み薄く押し延ばす。
d) TR法 粒径が大きいもの及び硬いものは微粉末にしてATR結晶に平らに載せ,粉末上から圧力を
加えてATR結晶に十分に密着させる。ATR附属品はATR結晶の試料接触面積が小さい1回反射形を
用いる。ATR結晶にはダイヤモンドを使用するのが望ましい。
e) 拡散反射法 試料を粒径数十 下の微粉とし,試料皿に平らに盛る。一般に,正反射光による影
響を減少させるため,臭化カリウム,塩化カリウム又はふっ化カルシウムの粉末と混合する。
f) 光音響分光法 5.2 i) による。
g) 顕微鏡法 5.2 j) による。
h) C-IR法 5.2 k) による。
i) LC-IR法 5.2 l) による。
j) TG-IR法 5.2 m) による。
5.4 液体
液体試料の調製方法には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合,次によるほか,附属装置の取
扱説明書による。
a) 液膜法 試料の12滴を2枚の窓板の間に挟み,液層を形成させる。液層を厚くする場合は,適切な
厚さのスペーサーを用いる。
b) 溶液法 5.2 c) による。
c) TR法 プリズムの表面が覆われるように試料を設置する。
d) C-IR法 5.2 k) による。
e) C-IR法 5.2 l) による。
5.5 気体
ガスセルを10−1 Pa以下に排気するか,不活性ガス又は所定のガスで置換した後,ゲージ圧0.06 kPa1.0
kPaの適切な圧力で試料を導入する。気体中の微量ガス成分を測定する場合には,光路長1 m以上の多重
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反射ガスセルを用いることもある。精確に定量する場合には,セル温度及びセル内圧力を正確にコントロ
ールすることが望ましい。コントロールできない場合は,圧力及び温度を計測し,定量結果に対して別途
求めた補正式によって補正してもよい。
6 操作方法
6.1 装置の設置
装置の設置条件は,次のとおりとする。ただし,製造業者などによって装置の設置条件が定められてい
る場合にはそれに従う。
a) 腐食性ガスがなく,ほこりが少ない。
b) 測定波数範囲において,吸収を示すガスが少ない。
c) 相対湿度は,60 %以下で,結露しない。
d) 設置場所の温度は,15 ℃30 ℃で,温度変化が少ない。
e) 直射日光が当たらない。
f) 振動が少ない。
g) 電源の電圧及び周波数の変動が少ない。
h) 電源に高周波及びスパイク状雑音が少ない。
i) 電磁誘導の影響を与える装置が近くにない。
j) 設置場所が傾斜していない。
k) 空調機からの風が直接当たらない。
l) 装置周囲に保守のためのスペースを確保する。
6.2 測定操作
装置の取扱いは,取扱説明書などによる。装置の使用に当たっては,あらかじめ定められた手順に従っ
て点検を行い,異常のないことを確認した後,電源を入れ,暖気運転を行って安定化を図る。また,必要
に応じ,標準物質を用いて測定を行い,測定値,繰返し性などが所定の値の範囲内にあることを確認する。
装置の操作条件の設定は,次による。
6.2.1 フーリエ変換形赤外分光光度計
次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定などを行う。
a) 操作プログラムの起動 操作パラメータには次のものがあり,必要に応じて適切に設定する6)。
1) 波数範囲
2) 分解能
3) 積算回数
4) 増幅器のゲイン
5) 検出器
6) 移動鏡の移動速度
7) アポダイゼーション
注6) 操作パラメータの設定が自動化されている装置もある。装置においては,波数範囲,分解能,
積算回数,増幅器のゲイン,検出器,移動鏡の移動速度,アポダイゼーションなどが任意に
設定できる。しかし,正しい測定を行うには,これらの条件を任意に設定するのではなく,
諸条件の間には定まった関係が保たれていなければならない。諸条件のうち幾つかが決まれ
ば,ほかはおのずと決まる。分解能などの主要な条件を設定すれば,ほかの条件は目的に応
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じて自動的に設定されるようになっている装置もある。
一般に,液体,固体などの試料では,吸収バンドの幅が広いので,分解能を高く設定する
必要がない。気体の場合には,吸収バンドの幅が狭いので,高い分解能が得られるように設
定を行う。
b) 透過率,透過パーセント,吸光度などの計算 フーリエ変換形赤外分光光度計は,単光束方式7) であ
るため,試料及び対照スペクトルを測定し,試料側及び対照側の両スペクトルの演算処理によって試
料スペクトルを得なければならない。多くの場合,空気中の水蒸気及び二酸化炭素のスペクトル領域
の変動が大きく,試料スペクトルの演算の妨害となるため,分光光度計内部を乾燥空気又は乾燥窒素
で置換することが必要である。
注7) 分散形赤外分光光度計では,セクターミラーを用いて光束を試料側及び対照側に短時間に相
互に切り換え測定する複光束方式が多い。
c) スペクトルのモニターへの表示,データの保存及び記録紙への記録 スペクトルを記録紙上に描かせ
る場合は,スペクトルの横軸,縦軸共に,測定目的に応じて自由にスケールを設定することができる
ため,必ずスケールの幅及び単位を,確認及び記録しておかなければならない。
d) データ処理 4.4による。
6.2.2 分散形赤外分光光度計
次の事項のうち,必要なものについて装置の調整,条件設定などを行う。
a) 光源電流の確認又は調節
b) スリットプログラムの設定
c) 測定波数範囲
d) 走査速度
e) 表示・記録計の調整
f) データ処理 4.4による。
6.3 分光光度計の補正及び検査方法
6.3.1 波数
装置の波数目盛又は指示値の正確さは,吸収ピークの波数が確定された物質8) の吸収ピークの位置と装
置の指示値とのかたよりから求める。ヘリウム−ネオンレーザー,ダイオードレーザーなどの単色光を用
いてデータサンプリングしている通常のフーリエ変換形赤外分光光度計では,一つの波数で波数の正確さ
が確認されれば全波数領域でも波数の正確さは原理的に保証される。
注8) 波数の標準となる物質としては,二酸化炭素,水蒸気,ポリスチレン,アンモニア,インデン
などがある。
6.3.2 透過%0
測定波数範囲で,光を透過しない物質を試料として透過率を測定し,透過%0とする9)。表1に透過%0
測定に用いる物質を示す。
注9) 迷光及び試料の二次放射スペクトルによる誤差の検査。
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表1−透過%0測定用物質
物質名 適用波数範囲 cm−1 厚さ mm
金属板 4 000 2 000 −
ガラス板 2 000 1 000 2
ふっ化リチウム 1 000 700 5
ふっ化カルシウム 700 400 5
6.3.3 透過%100
試料を入れずに透過率を測定し,透過%100とする。
6.3.4 直線性
赤外域に吸収をもつ成分の濃度が段階的となるように試料を調製し,吸光度と濃度との関係線を作成し,
その直線性を調べる。
6.3.5 分解能
アンモニア,二酸化炭素などを用い,吸収ピークの中から透過%が20 %80 %の範囲にある近接した二
つの吸収ピークの分離の度合いから求める。
6.3.6 繰返し性
安定な試料を,同一条件で短い時間内に2回以上測定し,波数又は透過率の測定値のばらつきが規定の
範囲内にあることを確認する。
7 定性分析
この通則では,吸収スペクトルを用いる定性分析方法について規定する。赤外吸収スペクトルは分子の
振動に基づくものである。分子内の官能基及び原子団(以下,部分構造という。)は特有の振動モードに基
づく特性吸収バンド(以下,バンドという。)をもつ。分子全体のスペクトルはそれらの吸収の重ね合わせ
として示されるため,スペクトル全体を既知化合物のデータと比較し,その類似性を見い出すことによっ
て分析試料の化学構造を推定することができる。また,混合物の場合は必要に応じて分別操作によって分
画した後,各画分の赤外吸収スペクトルを測定することによって,各成分の官能基又は原子団の判別を行
う。これは波数領域によって,異なる官能基又は原子団が類似した波数にバンドをもつため,解析が困難
なことが多いためである。分別の手段にはクロマトグラフによる分画,沸点,融点などの物理的性質,溶
解度及び化学反応性の違いを利用した方法などが用いられる。定性分析においては,大別して二つの方法,
すなわち,吸収スペクトルの解析によって行う方法と,既知化合物のスペクトル比較による方法とがある。
これらを併用することによって詳細な解析ができる。
7.1 吸収スペクトルの解析によって行う方法
この方法では,バンドの有無によって分析対象物中の官能基及び原子団の存在を推定する。定性分析で
は,部分構造とバンドの既知の関係から推定された種々の部分構造を組み合わせて物質全体の構造を推定
する。部分構造とバンドの吸収位置との関係を集め,図表化したデータベースには,市販されているもの,
Web上に公開されている公共のもの,装置に内蔵されているものなど多数ある。実際の定性分析ではこれ
らの情報に加え,関連化合物のスペクトルとの比較及び他の分析方法による知見も加えて未知化合物の構
造の確認を行う。この方法では次の事項に注意する必要がある。
a) 定性分析においては官能基及び原子団と特性吸収基との関係を一覧できるデータ集などを用いるが,
対象とする官能基,原子団などの赤外吸収の波数はそれらの近傍に結合している原子,分子などの影
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響によってピーク波数,強度,形状などが異なることを考慮に入れる必要がある。
b) 一般に,同じ物質でも,測定時の状態が気体,液体(又は溶液)又は固体(又は固溶体)のいずれで
あるかによって,バンドの位置,形状が変化することが多い。これは低圧の気体,無極性溶媒中の希
薄溶液のスペクトルは,分子間相互作用がない本来のスペクトルといえるが,その他の状態における
測定では,分子間相互作用の影響を無視できないためである。例えば,溶液状態の測定では,試料分
子と溶媒分子との相互作用(溶媒効果)のため,試料のバンドの位置がずれることがある。このよう
な場合には,2種類以上の異なる溶媒を用いた溶液についてスペクトルを測定し,検討することが望
ましい。
c) 回転異性体をもった有機化合物などでは,気体,液体又は固体状態で異性体存在比が変化することが
多く,各状態で測定されたスペクトルに顕著な相違が認められることがあるので注意する必要がある。
また,錯体化合物の場合,固体状態と溶液状態とでは構造が異なることがあるため,両者のスペクト
ルに差異が認められることがある。これらの点については,解析の目的と取り扱う試料の性質とに応
じて注意を払う必要がある。
d) 吸収スペクトル以外の情報,例えば,物理化学的性質,分析化学的知見などの情報も利用して,吸収
の帰属の妥当性を確認する。
7.2 既知化合物のスペクトル比較による方法
この方法は,測定によって得られたスペクトルを既知化合物のスペクトルと比較することによって解析
を行う。データベース化された大量の既存データが必要となる。吸収スペクトルの解析による方法及び既
知化合物のスペクトル比較による方法のいずれもコンピューターが用いられることが多い。コンピュータ
ーによるデータ比較のためには測定データと既存データとを共通のフォーマットで取り扱えることが望ま
しい。
8 定量分析
定量分析には,吸収,ATR,拡散反射スペクトルなどを用いることができる10)。
定量分析においては,吸収スペクトルを用いることが多いため,この規格では,吸収スペクトルを用い
る方法についてだけ規定する。その他の方法については,個別規格又は装置の取扱説明書による。
注10) 定量分析に利用できる赤外スペクトルには,吸収,ATR,クベルカ・ムンク変換を行った拡散
反射,金属板上に形成されたフィルム状試料の反射吸収スペクトル,及び高感度反射法で得ら
れたスペクトル,光音響スペクトル,放射スペクトルなどがある。正反射スペクトルは,定量
分析に利用し難い。
赤外吸収スペクトルを用いる定量分析は,吸光度又はそれに比例した値について,濃度既知の試料と測
定試料の吸収スペクトルとを比較して行う。
なお,精度よく定量するためには濃度既知の試料と測定試料との間で,表面の粗さ,粒度,厚さなどの
試料性状,手法,分解能などの測定条件を合わせることが必要である。
8.1 定量方法
8.1.1 検量線法
濃度既知の検量線用試料を用いて,次の手順で,ある一定の波数における吸光度又はそれに比例する数
値で表したピーク高さ,面積強度などと濃度との関係線を作成して検量線とする。この検量線を用いて,
被検試料の分析種の濃度を算出する。
a) 吸収バンドの選択 事前に定量に用いる各成分の標準物質のスペクトルを取得し,定量に用いる吸収
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JIS K 0117:2017の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0117:2017の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0050:2019
- 化学分析方法通則
- JISK0211:2013
- 分析化学用語(基礎部門)
- JISK0212:2016
- 分析化学用語(光学部門)
- JISK0215:2016
- 分析化学用語(分析機器部門)