JIS K 0117:2017 赤外分光分析通則 | ページ 4

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1 凹面鏡

2 窓板

3 試料

4 マイクロホン
図15−光音響測定附属装置の一例
l) 顕微赤外測定附属装置 試料の微小部分を測定する附属装置。光路及び対物鏡の切替えによって透過,
反射,ATR及び高感度反射測定が可能な附属装置もある。試料の測定部位をアパーチャーでマスクし,
測定部位内だけの透過光又は反射光を測定することで目的部位の赤外スペクトルを測定することがで
きる。光路を切り替えることによって透過測定及び反射測定が行える附属装置が一般的である。測定
の空間分解能は,約10 mである。フーリエ変換形赤外分光光度計の移動鏡の速度を高速にし,また,
複数の素子から成る検出器を用いて,個々の素子に割り当てられた測定部位を一度に,かつ,高速で
測定することによって,短時間で広い領域の試料のイメージング測定が行える附属装置もある。図16
に顕微赤外測定附属装置の一例を示す。

1 赤外線導入口

2 透過集光鏡

3 試料ステージ

4 反射対物鏡

5 アパーチャー

6 検出器

7 反射測定光路
図16−顕微赤外測定附属装置の一例
m) C-IR測定装置 ガスクロマトグラフ(GC)で分離された成分の赤外スペクトルを測定し,分析を
行う装置。GCのカラム出口からのガスをフローセルに導き,赤外域全体の吸収スペクトルの吸収又
は単一波数における吸収を測定し,時間軸に対して吸収強度を目盛ることでフローセルを通過する溶
離物のクロマトグラムを得ることができる。溶離物の赤外スペクトルを求めることができる装置もあ
る。

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図17にGC-IR測定装置のフローセルの一例を示す。

1 凹面鏡

2 窓板

3 フローセル

4 ヒーター

5 ガス導入口

6 検出器
図17−GC-IR測定装置のフローセルの一例
n) C-IR測定装置 液体クロマトグラフ(LC)で分離された成分の赤外スペクトルを測定し,分析を行
う装置。LC出口からの液をフローセルに導入して測定を行う。フローセルの代わりにATRを用いる
こともある。液体クロマトグラフの移動相として,求める赤外スペクトルの波数領域における吸収の
少ないものを選択する必要があり,フローセルに導入する方法は,主にゲル浸透クロマトグラフィー
(GPC)に応用される。
o) G-IR測定装置 熱重量測定装置(TG)からの発生ガスの成分の赤外スペクトルを測定する装置。
熱重量測定装置からの発生ガスを加熱保温されたフローセルに導入し,発生ガスの分析を行う。

4.4 付加機能

 測定したスペクトルを処理,解析するため,次のデータ処理機能がある。
a) データの保存 測定したスペクトル,処理を加えたスペクトルなどをコンピューターの記憶装置に保
存しておく機能。各装置独自の保存形式のほかに,特定の製造業者によらない形式,スペクトルの各
データポイントの値をテキスト形式で保存できる装置もある。また,2次元測定データ,3次元測定デ
ータ,プロファイリング測定試料の画像データなどをスペクトルデータとリンクさせて保存できる装
置もある。
b) スペクトルの拡大縮小表示 モニター上で,スペクトルの任意の部分を詳しく解析するために特定の
領域を拡大表示又は全体を調べるために縮小表示を行う機能。
c) スペクトルの重ね描き表示 データエリアにある複数のスペクトルを同じ画面上に重ねて表示する機
能。スペクトルの比較を行うときに用いる。スペクトルを縦にずらして表示する機能をもつ装置もあ
る。
d) スペクトル検索 測定したスペクトルと既知物質の標準スペクトルデータベースとを比較し,同定を
行うための機能。多くのデータベースが用意されており,使用目的に応じて使い分けることができる。
また,構造式,沸点などの情報も含めて検索できる装置もある。
e) データベース作成 スペクトル検索のためのデータベースを作成する機能。通常,スペクトルデータ
の検索は市販のスペクトルデータベースを使用して行うことができるが,使用目的によってはこれが
使用できない場合もある。このような場合,独自にデータベースの作成を行う必要がある。
f) 四則演算 スペクトルに対して指定した定数を加減乗除する機能。スペクトルの拡大,縮小,規格化
などに用いられる。
g) ベースライン補正 ベースラインが傾いていたり,湾曲しているスペクトルのベースラインを平らに

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する機能。補正点と補正量とを指定することによってスペクトルを補正する。自動的にベースライン
を補正する機能をもつ装置もある。
h) スムージング ノイズの多いスペクトルについて,ピーク形状を滑らかにするため,データの高周波
成分を除去し,スペクトルのノイズを軽減する機能。スムージングには,データ点ごとにその前後の
数点のデータの平均値を求め,新たなデータポイントとする移動平均法,サビツキー・ゴーレイ法な
どが用いられる。必要以上にスムージングを行うと,ピークの変形又は分解能の低下があるので注意
しなければならない。
i) 微分 微分変換したスペクトルを作成する機能。微分を求める方法として,データ点及びその前後の
データと微分の次数に対応する重み係数とを使って計算的に求めるサビツキー・ゴーレイ法などが使
われている。大きなピークのショルダーとなったピーク,鋭いピークの裾に隠れた弱いピークなど,
明瞭でないピークを検出する場合に用いる。散乱などの影響でベースラインが変動しているスペクト
ルを用いて定量を行う場合にも用いられることがある。
j) データ補正 スペクトル上の不要な部分を直線で結んでスペクトルを補正する機能。スペクトル上の
補正ができない二酸化炭素ピークの除去などに用いられる。
k) 軸単位の変換 スペクトルの軸の単位を,必要に応じて種々の単位に変換する機能。
1) 軸単位の変換 スペクトルのY軸(縦軸)の単位を変換する機能。単位としては,透過パーセン
ト,吸光度,反射パーセント,クベルカ・ムンク変換などがある。ランバート・ブーゲの法則及び
ベールの法則を用いて定量分析を行う場合には,吸光度単位に変換する必要がある。
2) 軸単位の変換 スペクトルのX軸(横軸)の単位を変換する機能。単位としては,波数(cm−1),
波長(m)などがある。また,指紋領域(2 000 cm−1400 cm−1)を拡大表示できる装置もある。
通常,赤外領域のスペクトルを表示するための単位には波数が用いられている。しかし,光学分
野などでは波長単位でスペクトルが表示されていることがあり,比較のために波長単位に変換する
必要のある場合がある。
l) ピーク検出 スペクトルの各吸収ピークの波数及び吸収強度を検出する機能。モニター上又は印刷さ
れたスペクトルのピーク位置に表示するもの,波数,吸収強度などの数値をリストとして表示する装
置もある。
m) 面積計算 波数,波長などの範囲を指定して面積を計算する機能。モニター上又は印刷されたスペク
トル上に表示するもの,波数範囲,面積などの数値をリストとして表示する装置もある。
n) 膜厚計算 薄膜の試料内部での反射によってできる干渉スペクトルから,その試料の厚さを計算する
機能。ただし,測定光の入射角,試料の屈折率が既知で,計算する波長範囲で屈折率が一定であると
仮定する必要がある。
o) 差スペクトル 二つのスペクトルの差スペクトルを計算する機能。二つのスペクトルの微小な差の検
出,主成分のスペクトルの差引きによる不純物の測定,溶媒スペクトルの除去,大気中の水分,二酸
化炭素のピークに起因するスペクトルの除去などに用いられる。
p) データ演算 二つのスペクトルの加減乗除を計算する機能。加算は,二つのスペクトルの合成に使わ
れることがある。除算は,バックグラウンドのパワースペクトルと試料のパワースペクトルとを除算
することで透過率スペクトルを得るのに使われることがある。
q) 一致度 二つのスペクトルの類似性を示す機能。一致度は二つのスペクトルがどの程度似ているかを
相関係数,強度比などを用いて示すことができる。
r) フーリエ変換 測定したインターフェログラムに対して周波数分解を行い,パワースペクトルを出力

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する機能。一度測定したインターフェログラムから,波数範囲及びアポダイゼーションを変更してス
ペクトルを得たい場合などに用いられる。
s) クベルカ・ムンク変換 拡散反射法で測定したスペクトルを試料濃度に相関した縦軸に変換する機能。
t) ATR補正 ATR測定装置を用いて測定したスペクトルピークの強度の波数依存性を補正する機能。
ATR測定装置を使用して測定したスペクトルの強度には,波数依存性がある。透過スペクトルと比較
した場合,高波数(短波長)側の吸収に比べて低波数(長波長)側の吸収強度が大きくなる。さらに,
試料とプリズムの屈折率,光の入射角,反射回数とを設定することで,光の異常分散の影響によるピ
ークの低波数(長波長)側へのシフト,入射光の潜り込み深さの変化を同時に補正する装置もある。
u) クラマース・クローニッヒ解析 反射測定装置を使用して測定したスペクトルを吸収スペクトルに変
換する機能。測定装置に得られるスペクトルは,吸収ピークのある波数位置において光の異常分散に
よって起きる屈折率の変化が原因で,透過スペクトルとは異なった形状のスペクトルとなる。
v) 波形分離 重畳したピークを,複数のピークに分離する機能。複数のピークが近接しているため分離
されず,一つのピーク又は変形したピークとして表示される場合がある。
w) 大気補正 測定したスペクトルから大気中の水蒸気及び二酸化炭素の影響を除去する機能。中赤外領
域には水蒸気及び二酸化炭素の各々で二波数域ずつ,計四波数域に吸収があり,各々の領域に対して
特定のパラメータを設定することによって補正処理が行える装置もある。
x) 定量計算 スペクトルの吸収の強さから成分濃度を計算する機能。ある波数における,吸光度で表し
た吸収ピークの高さ又は面積と濃度とは比例関係にあり,ランバート・ブーゲの法則及びベールの法
則が成立し,定量分析を行うことができる。また,ベールの法則に従わない場合でも,統計学的手法
によって定量分析を行うことができる装置もある。
y) フォトメトリック測定 スペクトルの指定された波数の吸光度,透過率,ピーク高さ,ピーク面積な
どを読み取り,式に当てはめて計算できる機能。反応率,成分比などの計算ができる装置もある。
z) 時間変化測定 試料を一定の時間間隔で継続して測定し,スペクトルの形状の変化を確認することが
できる機能。特定のピークの大きさの変化で試料の反応追跡,時間変化などのグラフを表示できる装
置もある。
aa) マッピング測定 試料の表面の吸収分布を測定する機能。ラインマッピング,エリアマッピングがで
きる装置もある。
ab) 自動検査 測定結果と規格値とを比較し,装置の基本性能が規定を満たしているかどうかを自動で確
認する機能。
ac) マクロ編集 定型操作を自動化する機能。登録する一連の操作手順を自由に選択できる。画面上でコ
マンドを編集して手順を指定する装置,コマンドを表すアイテムをマウスでドラッグアンドドロップ
して,操作を実行する順に並べることでマクロプログラムが完成するような簡単マクロをもつ装置も
ある。

5 試料調製方法

5.1 一般的注意

  赤外分光分析を行う際には,分析の目的,分析試料の状態,分析手法,使用測定附属装置の性能など種々
の条件を考慮して,目的に合った結果が得られる試料調製方法を選択する必要がある。定性分析において
は,最も強い吸収バンドの透過パーセントが5 %以上になるように試料濃度を調節することが望ましい。
定量分析においては,測定しようとする吸収バンドの吸光度と試料濃度との関係が,直線となる範囲に入

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るよう,適切な試料濃度,試料の厚さ又はセルの光路長を選ぶことが望ましい。ただし,個別規格に規定
されている場合には,それによる。附属装置などを用いて,反射,放射,光音響,TG-IR,GC-IR,LC-IR
などの測定を行う場合の試料調製については個別規格によるほか,装置の取扱説明書による。

5.2 固体

  固体試料の調製には,次の方法がある。附属装置などを用いる場合には,次によるほか,附属装置の取
扱説明書による。
a) フィルム法 フィルム法は,次による。
1) 固体試料をメタノール,アセトンなどの揮発性が高く,溶解性の大きい溶媒に溶解し,その溶液を
赤外線透過性材料の板上,ガラス基板又はアルミホイル上に滴下して広げ,溶媒を蒸発させて薄膜
とし,そのまま又はがして測定する。
2) 熱に安定で熱可塑性の固体試料は2枚の加熱板に試料を挟み,加圧・成型して薄膜とする。
3) 試料の状態をできるだけ変えずに測定したい場合,ミクロトームなどを用いて薄膜切片とする。
4) ゴム状物質,発泡スチロールのように弾力のある試料の場合は,ダイヤモンドなどの赤外線透過性
材料を使用したアンビルセルによって圧力をかけたまま薄膜の状態に保って測定する。
b) 錠剤法 塊状及びか(顆)粒状の試料は,乳鉢,粉砕機などを用いて試料を微粉化し,微粉試料を臭
化カリウム,塩化カリウムなどの粉末と混合し,錠剤成型器を用いて,大気圧又は減圧下で加圧・成
型し,均一な錠剤とする。
c) 溶液法 測定対象と吸収バンドとが重複しない溶媒,例えば二硫化炭素,シクロヘキサンなどに試料
を溶解し,溶液とする。
d) 熱分解法 試料を試験管などに入れ不活性ガス(窒素)などで空気を置換後,試験管の外側から試料
部分を加熱し,熱分解を行い試験管上部で液状化した熱分解試料を赤外線透過材料に塗布して測定す
る。
e) TR法 粉末になりにくく,適切な溶媒がない物質(例えば,ゴム状物質),厚い板状試料上の表面
処理層などの測定には,試料表面を十分平滑にし,ATRプリズムに試料を載せ,試料の裏面から圧力
を加えてプリズムに均一に密着させる。また,試料の屈折率を考慮し,適切なプリズム材質,赤外線
の入射角を選ぶ必要がある。対照試料としてはプリズムだけを用いる。
f) 正反射法 試料の照射面を平滑にする。また,試料の裏面からの反射が試料スペクトルに影響を与え
ないよう厚い試料を用いるか,適切な試料ホルダーを用いるなどの考慮が必要である。対照試料とし
てはステンレス板,又は反射鏡が最も適している。
g) 高感度反射吸収法 高反射率の金属基板上の薄膜(約100 nm以下)試料の測定に用いる。基板金属
の平面性を考慮して,赤外線の照射面積をできる限り大きくとるようにする。適切な赤外線入射角は
基板金属の種類及び表面状態によって異なるので,幾つかの入射角で測定を行う。対照試料としては,
測定試料の薄膜の付いていない金属板が望ましいが,それが得られないときは,ステンレス鋼板又は
反射鏡を用いる。高感度反射吸収法では,入射面に対して平行な偏光を利用するため,適切な偏光子
を使用することが望ましい。
h) 放射法 試料の平面性の影響は少ないが,試料が厚すぎると自己吸収が起こり,スペクトルにひずみ
が生じるので,試料の厚さを十数 下にする。試料ホルダーなどからの放射が重ならないよう,
反射率の高い金属の上に試料を置く。スペクトル強度は,試料と同一温度の黒体放射を測定して強度
補正する必要がある。
i) 光音響分光法 試料の形態の影響は少ないが,セル内に空間が多いとスペクトルのSN比が悪くなる

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