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K 7170 : 2008 (ISO 17282 : 2004)
表 1 典型的な使用条件,材料挙動及びモデル形式
使用条件 重要変数 材料挙動の形式 モデル形式(下欄参照)
弾性 A,B
より単純な条件 −
弾塑性 C
長期荷重 時間 C1,D1,E1
周期的荷重 周波数 粘弾性又は粘塑性 C2,D2,E2
高速荷重 ひずみ速度 C3,D3,E3
モデル形式 :
A: 線形弾性は,少なくとも最初の解析には,最も簡単で最も普通に用いる材料モデルである。
B: 非線形亜弾性モデルによって,非線形挙動のひずみレベル下の近似解析が得られる。超弾性モデルは,エラスト
マー材料に利用可能であるが,この規格では考慮しない。
C: 金属用弾塑性モデルは,ほとんどのFEAソフトウェアの利用が可能で,非線形の条件及び三次元応力の条件を扱
うことができる。フォン・ミーゼス(von Mises)降伏則に基づくこれらモデルは,プラスチックには用いられて
こなかったかもしれない。また,ここでは,静水圧に敏感な降伏基準のより一般的な形式[線形ドラッガー・プ
ラガー(Drucker-Prager)モデル]を,考慮する。弾塑性モデルの幾つかのバージョンでは,弾性,塑性及び時間,
周波数又は速度の影響を混ぜ合わせている。これらの後者の形式のモデル(C1,C2及びC3)をこの表に示して
いるが,この規格では,C3だけを考慮する。
D: 線形粘弾性は,微小ひずみ挙動に限定されるが,時間,周波数又は速度のいずれが重要な使用変数であるかによ
って,3種類の異なる形式のモデル(D1,D2,D3)にデータを使用できる。
E: 一般的な使用条件での非線形粘弾性モデルは,利用可能な形式のものがないが,特別の条件下で使用できるモデ
ルが存在する。これらは,等時曲線に基づくクリープ形式(E1),大振幅振動のための有限線形形式(E2)及び速
度依存形式(E3)を含むが,後者の二形式(E2,E3)は,これ以上この規格では言及しない。
既に述べたように,応力解析には,等方性特性又は異方性特性,線形挙動又は非線形挙動,及び温度の
影響を考慮する必要がある。したがって,明らかに,基本的に材料特性が必要となる多くの組合せがあり,
最も重要な組合せに焦点を合わせることが必要である。このことを,表1に示す形式モデルに関連して論
じている。
これらのモデル形式を更に考慮することで,熱機械性能の設計に必要なデータを特定することできる。
等方性材料については,これらデータを,表2に要約している。異方性材料については,材料の方向の特
性の変化を示す追加データが必要となる。最も単純な状況は,応力が平面に限定され,厚さ方向の応力が
無視できる平板又はパネル状の成形品に荷重を加える場合である。表3は,これを想定している。プラス
チックについては,複数の軸方向に応力がかかり,荷重履歴が定まらない場合,材料がいつ破裂するかを
求めるための基準は,確立されていない。異なる荷重履歴を与えたときの引張試験から得られる極限値を,
表4に示す。この表で用いる記号は,3.による。
材料挙動が実質的に等方性かつ線形弾性である場合には,表2のモデルAに示すデータがすべてである。
挙動がより複雑であるが,等方性線形弾性解析を実行する場合には,他のモデルによるデータが,“有効な”
特性を選択するのに必要となるかもしれない。例えば,モデルD及びEのデータによって,粘弾性の影響
を表すために有効な特性が得られ,モデルC及びEのデータは,非線形に処理するために有効な特性を選
択するのに用いることができ,また表3のデータは,横方向等方性の効果をみるために有効な特性を選択
するのに用いることができる。設計解析のために,これらの要素をすべて考慮する場合には,モデルC,
D及びE並びに表3のデータが独自に必要となる(ただし,表3の備考を参照)。
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表 2 応力解析に必要なデータ(等方性材料)
挙動 モデル形式 特性 変数
線形弾性 A E ,ν T
非線形弾性 B E ,ν T
σ ε, T
e
非線形(弾塑性) E ,ν T
C σT p
ε ,T
p
p
λ,ν ,ψ ε ,T
線形粘弾性 D1 D ,ER ,ν t ,T
D2 E,E ( 又は G,G ),ν f,T
ρ T
D3
E ,ν ε T
非線形粘弾性 E1 D ,ν ,
tσ ,T
ER ,ν ,
tε,T
e
速度依存弾塑性 E ,ν ε T
pεp
C3 σT ε , ,T
p pεp
λ,ν ,ψ ε, ,T
表 3 応力解析に必要なデータ(横方向等方性材料)
挙動 モデル形式 特性 変数
線形弾性 A Ep ,En ,νpn ,Gp T
非線形(弾塑性) Ep ,En ,νpn ,Gp T
p
C ε,
Tpσ
Tn ε ,T
p
σ,
Spσ
Sn
ε ,T
線形粘弾性 D1 Dp ,Dn t,T
非線形粘弾性 E1 Dp ,Dn t ,σ,T
速度依存弾塑性 Ep ,En ,νpn ,Gp ε T
pεp
C3 σ,
Tpσ
Tn ε, ,T
σ,
Spσ
Sn
pγp
ε, ,T
備考 横方向等方性材料に関する上記モデル及びデータ要求事項は,等方性材料に比べて
明らかに複雑であり,線形弾性の場合以外は,有効な特性を選定する目的を除くと
使われることはまれである。
ある状況下では,表2及び表3に示す特性データに追加が必要となる。荷重時に温度変化のある場合の
解析では,熱膨張係数α(異方性材料ではαp及びαn)が必要となる。荷重による加速度が大きく,慣性
力を無視できない場合は,材料の密度ρが,必要である。ひずみが大きく,ひずみ速度が速い場合,プラ
pcのデータも必要となる。
スチック材料に内部発熱が生じ,その影響を予測しなければならないため,比熱
さらに,吸水量に敏感な材料の場合には,その用途に見合った湿度に状態調節した材料のデータが必要
である。
――――― [JIS K 7170 pdf 12] ―――――
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表 4 異なる荷重履歴の引張試験によって生じる応力及びひずみの極限値
特性
荷重条件 モデル形式 変数
等方性 異方性
単純条件 A,B,C σ,
uε
u
σ,
upε
up T
定伸び速度 σ,
unε
un
長期荷重 D1,E1 σc
σ,
cpσ
cn t ,ch ,T
周期的荷重 D2 σf
σ,
fpσ
fn N , R ,T
高速荷重 C3 σ,
uε
u
σ,
upε
up ε T
σ,
unε
un
プラスチックの破壊特性は,様々な劣化過程によって引き起こされる材料の分子構造又は結晶構造の,
長期間での変化に敏感であることに注意を要する。特筆すべきものとしては,高温暴露による,物理的老
化(自由体積の緩和),熱劣化,及び太陽光暴露による紫外線劣化がある。
4.3 成形工程解析用設計
4.3.1 成形工程のシミュレーション プラスチック成形品の成形に用いる各種加工方法の中で,射出成形
は,実用上最も普及している方法である。それだけに,射出成形工程のシミュレーションのためのコンピ
ューター支援エンジニアリング(CAE)ツールは,入手可能なソフトウェアの数及びその洗練度合いの点
でより進んでいる。最近,押出成形,ブロー成形及び熱成形のような他の加工方法のシミュレーションの
ためにCAEツールの開発が盛んとなっている。
4.3.2 射出成形シミュレーション用データ 射出成形シミュレーション用ソフトウェアは,多くのソフト
ウェア供給者から入手可能である。一般に,これらのソフトウェアのほとんどは,三次元の温度分布を反
映した二次元の解析を提供するものである。完全な三次元のシミュレーションを可能とする機能が強化さ
れたソフトウェアが,ごく最近導入されている。これらの二つのシミュレーションソフトウェアは,成形
品形状の厳密な定義を必要とし,溶融高分子の流動挙動を説明するために様々な粘度モデルを利用するこ
とから,本質的にかなり複雑となり,更に,これらのソフトウェアを使うためには,専門知識が必要であ
る。そのような厳密な解析の必要性を克服するために,単純な二次元のシミュレーションのソフトウェア
が,幾つか現在市場に出ている。
これらの方法の主目的は,成形品の製造を最適化するために,充てん工程及び保圧工程をシミュレーシ
ョンすることにある。射出成形シミュレーションには,主として次の3つのタイプがある。
− 金型キャビティに充てんすることができるかどうかを決め,必要な圧力を評価するための単純な金型
充てん解析
− 加工条件を最適化するため,又はゲートの数,適切なゲートの寸法,ゲートの位置などの成形品及び
金型要素設計を評価するために行う,金型充てん,保圧及び冷却の高度な解析
− 許容差を満たし,かつ,製造された成形品の寸法安定性を予測する収縮及びそりの解析
単純な金型充てんシミュレーションのために必要な材料特性を,表5に示す。
――――― [JIS K 7170 pdf 13] ―――――
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表5 射出成形のシミュレーションに必要なデータ−
熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーの単純な金型充てん解析
特性 変数
η T,γ
ρm ―
km ,cpm ―
Ts ,Tej ―
ソフトウェアパッケージによっては,固化温度Tsの代わりに,“非流動温度”又は“転移温度”も,基
準とすることがある。またTejが必要かどうかもソフトウェアパッケージによる。充てん,保圧及び冷却工
程の高度な解析のために必要な材料特性を表6及び表7に示す。材料特性の要件は,熱可塑性プラスチッ
クス用と熱可塑性エラストマー用とは基本的には同じである。熱硬化性などの反応性材料の場合,主な違
いは,反応動力学データを含むこと及び溶融粘度データの代わりに反応性樹脂粘度データを用いることで
ある。
表6 射出成形シミュレーションに必要なデータ−
熱可塑性プラスチック及び熱可塑性エラストマーの金型充てん,保圧及び冷却の高度な解析
特性 変数
η T,γ p
V p,T,T
k ,cp T
Ts p,T
Tej ―
既存の適切なデータがないときは,粘度の圧力依存性,熱伝導率及び比熱の温度依存性は,解析に含め
ない。
表7 成形シミュレーションに必要なデータ−
熱硬化性を含む反応性材料の金型充てん,保圧及び冷却の高度な解析
特性 変数
ηreactive
T,t,γ
ρreacted −
k ,cp T
ΔHr ,R T,T
αgel ―
収縮及び反りの解析に必要な材料特性を,表8に示す。
――――― [JIS K 7170 pdf 14] ―――――
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表8 射出成形シミュレーションに必要なデータ−
収縮・反りの解析用の追加データ
特性 変数
SMp,SMn h,pcH
X(準結晶性材料) T
X 準結晶性材料) T,T
Ep,En T
ν,
pn ν,Gp
np ―
αp,αn T
4.3.3 押出成形シミュレーション用データ 押出成形のシミュレーションには,一般的に,固体輸送,バ
レル内のポリマーの溶融挙動,ダイ内の溶融流動及び押出物の冷却の要件を含む。既存のCAEソフトウェ
アは,溶融ポリマーの流動挙動の特徴を表すために異なった複数の粘度モデルを採用し(附属書B参照),
様々な単純化仮定を行っている。単純化仮定は,一般的には,伸長流動の寄与を無視するもので,これに
よって,単軸の伸長粘度及び第一法線応力差データの必要性がなくなる。
これらの解析を取り入れて押出成形シミュレーションに必要な特性を,表9に示す。
表9 押出成形シミュレーションに必要な特性
解析のタイプ 特性 変数
Tm,ΔH(準結晶性材料)
f ―
Tg (非晶性材料) ―
ρm,ρs ―
固体輸送及びポリマーの溶融
μb,μs p,T,vs
ρB p
k,cp T
ρm ―
km,cpm T
ダイ内の溶融流動
η,N1 T,γ
ηeu
T,t,ε
Tc, ΔH(準結晶性材料)
C T
押出物の冷却
X T,T
実用上は,正確さの低下を許容するならば,k及びcpの温度依存性は,しばしば無視される。
4.3.4 ブロー成形,熱成形,押出ブロー成形及びインフレーションフィルム成形のシミュレーション用デ
ータ
射出ブロー成形及び熱成形の工程には,軟化状態でのプリフォーム又はシートの変形過程があり,一方,
押出ブロー成形及びインフレーションフィルム成形の工程には,溶融状態での変形過程がある。これらの
シミュレーションに必要な材料特性を,表10及び表11に示す。
――――― [JIS K 7170 pdf 15] ―――――
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JIS K 7170:2008の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 17282:2004(IDT)
JIS K 7170:2008の国際規格 ICS 分類一覧
- 83 : ゴム及びプラスチック工業 > 83.080 : プラスチック > 83.080.01 : プラスチック一般
JIS K 7170:2008の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK7108:1999
- プラスチック―薬品環境応力き裂の試験方法―定引張応力法
- JISK7112:1999
- プラスチック―非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法
- JISK7115:1999
- プラスチック―クリープ特性の試験方法―第1部:引張クリープ
- JISK7139:2009
- プラスチック―試験片
- JISK7140-1:2008
- プラスチック―比較可能なシングルポイントデータの取得及び提示―第1部:成形材料
- JISK7140-2:2007
- プラスチック―比較可能なシングルポイントデータの取得及び提示―第2部:長繊維強化プラスチック
- JISK7141-1:2006
- プラスチック―比較可能なマルチポイントデータの取得及び提示―第1部:機械的特性
- JISK7141-2:2006
- プラスチック―比較可能なマルチポイントデータの取得及び提示―第2部:熱特性及び加工特性
- JISK7141-3:2002
- プラスチック―比較可能なマルチポイントデータの取得と提示―第3部:特性への環境影響
- JISK7152-3:2006
- プラスチック―熱可塑性プラスチック材料の射出成形試験片―第3部:小形角板
- JISK7162:1994
- プラスチック―引張特性の試験方法 第2部:型成形,押出成形及び注型プラスチックの試験条件
- JISK7199:1999
- プラスチック―キャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法
- JISK7244-2:1998
- プラスチック―動的機械特性の試験方法―第2部:ねじり振子法
- JISK7244-3:1999
- プラスチック―動的機械特性の試験方法―第3部:曲げ振動―共振曲線法
- JISK7244-4:1999
- プラスチック―動的機械特性の試験方法―第4部:引張振動―非共振法
- JISK7244-5:1999
- プラスチック―動的機械特性の試験方法―第5部:曲げ振動―非共振法