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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)
b) 身体 巧ち(緻)性,動作,筋力及び発声
c) 認知 知的能力・記憶,及び言語・読み書き
d) アレルギー 接触
JB.2.2.2 能力レベル
能力及びレベルの分類例を,表JB.1表JB.6に示す。ここに示した数量的なスケールを普遍的に用い
ることが可能になるためには,研究を重ねて評価の手順が開発される必要がある。
注記 国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health, ICF)は,次の
共通スケールを定めている。JIS S 0024の附属書1(参考)“身体能力のレベル分けリスト”は,
この共通スケールを用いて,各能力とそのレベルとを区分している。
a) レベル0 問題なし(なし,存在しない,無視できる···)
b) レベル1 軽度の問題(わずかな,低い···)
c) レベル2 中等度の問題(中程度の,かなりの···)
d) レベル3 重度の問題(高度の,極度の···)
e) レベル4 完全な問題(全くの···)
表JB.1−身体能力とレベルの分類の例(視覚)
レベル 症状例 状態(解説)
・近視 ・眼鏡及びコンタクトレンズを使用すれば日常生活に支障なし。
レベル0 ・乱視
・老眼
・老眼(+) ・眼鏡なしでは新聞を見るのに苦労する。遠近両用を使用するか,読書用の
・白内障 眼鏡を携帯している。
・色覚障害 ・水晶体の白濁及び黄変は始まっている。コントラストの少ない表示は見え
レベル1 にくく,白-黄色,青-黒を判別しにくい。
・暗い所ではものが見えにくくなり,明るい所ではグレア感の増加を自覚す
る。
・特定の色の組合せが識別しにくい。
・老眼(++) ・老眼がかなり進んだ状態。近点距離はほぼ無限大である。
・白内障(++) ・読書に眼鏡は欠かせない。中間距離(60 cm5 m)の読取りは困難である。
レベル2 ・弱視 ・水晶体の白濁及び黄変は更に進み,照度の低い所では視力が更に落ちる。
・階段の段差認識が困難となる。
例 : 視覚障害 5級,6級相当
・弱視 ・眼鏡又はコンタクトレンズでは視力は矯正しきれず,天眼鏡などを使用し
ないと文字が読めない。
レベル3 ・緑内障などによる視野狭さく(窄)もある。
・色の識別が正確でなくなる。
例 : 視覚障害 3級,4級相当
・全盲 ・強度の弱視から視力がない(明暗感知不能)のレベルまでを含む。ただし,
レベル4 点字,スクリーンリーダ使用者とする。
例 : 視覚障害 1級,2級相当
注記1 障害の視力は,矯正視力を示す。
注記2 障害等級は身体障害者福祉法の身体障害者障害程度等級表によるが,これは目安であり,等級と能力の
レベルとが必ず一致するわけではない。
――――― [JIS X 8341-1 pdf 41] ―――――
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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)
表JB.2−身体能力とレベルの分類の例(聴覚)
レベル 症状例 状態(解説)
レベル0 耳が遠くなったと自覚するが日常生活及び業務では支障はない。
・耳が遠い ・聴力は落ちるが生活及び業務に支障を来すほどではない。ただし,高音域
(4 000 Hz以上)の聴力は低下している。
レベル1
・会話を聞き取りにくい場合がある。
・耳が遠いことを自覚し,他人も認識している。
・難聴 ・聴力は明らかに低下し,テレビの音が大きくなる。高音域の聴力低下は更
に進み,2 000 Hz以上は聞き取りにくくなる。低音の騒音が耳鳴りになる。
レベル2 ・後ろから声をかけられても分かりにくい(補聴器を使用する人もいるが,
常時装着しているとは限らない。)。
例 : 聴覚障害 6級相当
・難聴(+) ・耳介に接しなければ言葉を理解しない(補聴器を使用する場合が多いが,
レベル3 補正後のレベルは様々。)。
例 : 聴覚障害 3級,4級相当
・両耳全ろう(聾) ・音は感じるものの,意味のある情報として聞くことができない。
レベル4
例 : 聴覚障害 2級相当
注記 障害等級は身体障害者福祉法の身体障害者障害程度等級表によるが,これは目安であり,等級と能力のレ
ベルとが必ず一致するわけではない。
表JB.3−身体能力とレベルの分類の例(触覚)
レベル 症状例 状態(解説)
レベル0 ・日常生活に支障なし。
・感覚が鈍り,突起又はノッチを判別しにくくなる。
・加齢による触覚の衰
レベル1
え
・軽度の触覚障害 ・スイッチ類の操作時に“入/切”を感知しにくくなり,無用の力を加えて
レベル2
しまうおそれがある。
レベル3 ・触覚障害(+) ・ほとんど圧感なし
・触覚障害(++) ・圧感なし。
レベル4
・スイッチ類の感触なし。
表JB.4−身体能力とレベルの分類の例(身体・巧ち性)
レベル 症状例 状態(解説)
レベル0 ・日常生活に支障なし。
・ポジショニング及び微調整が難しくなる。
・加齢に伴う巧ち作業
能力の低下 ・建具の開閉及び施錠・解錠が難しくなる。
レベル1
・スイッチ判別がしづらい。
・握る,つかむ,押す,まわす,引く動作が苦手。
・ポジショニング及び微調整が難しくなる。
・脳血管性疾病,関節
・機器のダイアルを回す,マウスのダブルクリック,マウスのドラッグ動作
リウマチなど,老人
レベル2
性疾患による巧ち などが苦手。
能力の低下
・巧ち性に著しい障害あり。
・脳血管性疾病,関節
・機器のつまみをもつ,目盛を合わせる,正確な位置への移動が困難。
リウマチなど,老人
レベル3
性疾患による巧ち
能力の低下(+)
――――― [JIS X 8341-1 pdf 42] ―――――
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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)
表JB.4−身体能力とレベルの分類の例(身体・巧ち性)(続き)
レベル 症状例 状態(解説)
・巧ち動作不可。
・脳血管性疾病,関節
リウマチなど,老人
レベル4
性疾患による巧ち
能力の低下(++)
表JB.5−身体能力とレベルの分類の例(身体・上肢の動き)
レベル 症状例 状態(解説)
レベル0 ・日常生活に支障なし。
・日常生活において,特別の不自由を感じないものの,ものを取る,運ぶ,
・加齢による全面的身
体機能の低下に伴 操作するなどの日常生活において,動作が緩慢になる。
う上肢の動きの衰 ・緊急時の対応,とっさの作業に十分な対応ができない。
え ・ながら動作(押し回しなど)がうまくできなくなる。
レベル1
・脳血管性疾病,関節
リウマチなど,老人
性疾患による軽度
の身体機能低下
・ものを取る,運ぶ,操作するなどの日常生活において,作業はできるが不
・加齢による全面的身
体機能の低下に伴 自由を感じ,敏しょう(捷)性もなくなる。
う上肢の動きの衰 ・緊急時の対応,とっさの作業に十分な対応ができなくなる。
え(+) ・可動域が少なくなる。
レベル2
・ながら動作ができなくなる。
・脳血管性疾病,関節
リウマチなど,老人
性疾患による身体
機能低下(+)
・上肢機能に著しい障害がある。又は上肢の指を欠き,巧ち動作をはじめ,
・加齢による全面的身
体機能の低下に伴 日常生活全般にわたり著しい障害がある。
う上肢の動きの衰 ・身辺作業全般にわたり部分的介助が必要。
え(+) (自助具などの使用)
・脳血管性疾病,関節
レベル3 リウマチなど,老人
性疾患による身体
機能低下(+)
・身体(上肢)の損傷
・車いす使用による制
限
・加齢による全面的身 ・左右上肢の機能が全廃であるか,又は上肢を欠く。日常生活全般にわたり,
体機能の低下に伴 全面介助を必要とする。
う上肢の動きの衰 (代替手段の操作)
え(+)
・脳血管性疾病,関節
リウマチなど,老人
レベル4
性疾患による重度
の身体機能低下
(+)
・身体(上肢)の損傷
・車いす使用による制
限(++)
――――― [JIS X 8341-1 pdf 43] ―――――
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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)
表JB.6−身体能力とレベルの分類の例(認知・記憶)
レベル 症状例 状態(解説)
・健常 ・日常生活に支障なし。
レベル0 ・固有名詞が出てこないなどの,“ど忘れ”,“物忘れ”を時々するなどの良
性記憶障害。
・良性記憶障害でも60代になると固有名詞だけでなく一般名詞も出てこな
・軽度の良性記憶障
害(物忘れ) くなる傾向。記憶とは記銘⇒保持⇒再生の手順で記憶するが,良性記憶障
レベル1
害では記憶の再生機能が衰える。
・新しいものへの適合性が低下。
・良性記憶障害(+) ・良性記憶障害でも記銘,保持,再生の全体機能が衰える。時に,短期記憶
障害が顕著となる。
レベル2
・機器に関しても操作方法の取得が困難であり,かつ,いったん覚えても忘
れてしまう傾向。
・短期記憶障害のほか,時として失語,失行,失認などが現れる。
・脳疾患による記憶
レベル3 障害 ・機器誤動作が多くなる。
・認知症
レベル4 ・認知症(+) ・重度の認知症など。
JB.2.3 試験の対象となる機器等の特性
JB.2.3.1 機器等の構成
試験の対象となる機器等の構成は,単独で実現している場合,オプションを追加して実現している場合,
又は支援技術等を併用して実現している場合があり,その構成を明確にする必要がある。
支援技術を併用する場合は,市販又は公開されており,利用者が容易に入手して利用できるものを用い
ることが望ましい。
JB.2.3.2 機器等の特性
試験の対象となる機器等が,公衆に供される場合,又は不特定の利用者が想定される業務用機器などの
場合には,可能な限り多様な利用者特性に対応することが求められる。逆に,個人で所有,又は占有して
利用する形態の機器等の場合には,一つの製品で多様な利用者特性に対応するよりも,製品群で多様性に
対応したほうがよい場合もある。試験の対象となる機器等の特性を明確にする。
JB.3 試験方法
JB.3.1 試験方法の分類
JB.3.1.1 測定及び自動化試験
測定は,情報の提示に関する何らかの変量を測定すること,又は算出することを指す。適合性は,測定
から得られた値を,配慮事項での値と比較することで判定する。自動化試験は,規格又は業界標準等でそ
の仕様が明確であり,ヒューリスティックなアルゴリズムを必要とせず,人を介することなく,機械的に
確認できる配慮事項に対して適用できる。ヒューリスティックなアルゴリズムを使用した自動化試験を行
う場合には,その結果を人が確認する必要があるため,次に示す観察,又は専門家評価に分類される。
JB.3.1.2 観察
観察は,ある観察可能な条件が満たされているか又はある観察可能な特徴をもつかについて,検討又は
点検することを意味する。観察した結果から,利用者自身も意識していない要求又は願望を発見し,その
意図を探ることができる。また,実際の使用環境で観察を行った場合には,時間,人,環境及び文化の影
響を探ることも可能となる。
――――― [JIS X 8341-1 pdf 44] ―――――
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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)
JB.3.1.3 資料的論拠
資料的論拠は,配慮事項に対して,試験対象が適合しているかに関連して資料化された文書情報すべて
を指す。資料化された文書情報には,仕事の要求事項又は特性,作業の流れ,利用者の技能・適性・習慣
又は癖,プロトタイプでの試験データ,類似システムの設計からの試験データ,国際規格,JIS,業界団体
標準などのデータが含まれる。
JB.3.1.4 専門家評価
専門家評価は,試験対象についての適切な専門家による“有識者的”判断のことである。この方法は,
他の情報及び知識の文脈でだけ判断できるような特徴の評価に用いる。ほかにも,専門家評価は,システ
ムが設計文書の形でだけ存在したり,利用者評価用に利用者の十分なサンプルが得られなかったり,時間
及び資源に制約がある場合に,適合性を判定する適切な方法となる。
例1 商品そのもの,サービスそのもの,それらのプロトタイプのインタフェースなどに問題がない
かどうかを,各配慮事項に基づいて専門家の経験則によって調べていく方法。専門家の幅広い
知識と経験とに基づき様々な問題点を発見することを目的とする。
例2 簡易プロトタイプなどのデザイン案を特定の利用者及び文脈を基に利用者シナリオを作成し,
利用者が操作,利用できるかを検討していく方法。
JB.3.1.5 利用者評価
利用者評価は,想定する利用者の参加を得て,試験対象が操作及び利用できるかを確認する方法である。
この方法は,プロトタイプ又は実際の製品が利用でき,想定する利用者層を代表する利用者の参加が得ら
れる場合に最適である。利用者評価を行うことで,単に試験項目を確認できるだけでなく,更なる改善項
目を見つけることができる。高齢者及び障害者は,機能低下又は障害の内容及び程度,並びに機器使用の
経験及び知識に関する個人差が大きく一般化が難しいので,参加者は利用者層を代表するできるだけ多く
の人数が望ましい。利用者評価を行う場合には,利用者が実際に使用する場面に合わせ,利用者が用いる
支援技術等補助手段の併用を検討する。
JB.3.2 利用者シナリオの構成方法
利用者シナリオは,想定する利用者層が行うと予想される代表的な操作手順に基づいて,利用環境に配
慮して構成する。また,利用者シナリオは,機器等の操作に関する事項だけでなく,初期設定,準備,終
了,保守に至る,利用者が機器等を使用する場合に必要となる一連の作業に基づいて構成する。専門家評
価に用いる利用者シナリオを構成する場合には,操作手順を詳細化した上で,その各操作ステップが想定
した利用者にとって操作可能かどうか,及び利用可能かどうかの判断を行う。利用者評価における利用者
シナリオは,課題を利用者に提示し,一連の操作が可能か確認する。利用者が利用者シナリオを完遂でき
ない場合には,適切な操作の指示をしてもよい。
JB.3.3 評価者
試験対象がこの規格群の配慮事項を満たしているかどうかを評価する者(以下,評価者という。)は,試
験対象,該当規格,試験方法,利用者,支援技術などに関する知識が求められる。複数の評価者で分担し
てもよい。評価者には,試験方法に応じて次の資質が求められる。
a) 測定及び自動化試験 試験装置及び/又はソフトウェア等を設置,操作し,結果を分析する技能を保
持している。
b) 観察 観察は自明の特徴を判定する能力があるときには,だれにでも可能な手法である。より効果的
な観察を実施するためには,観察対象及び利用の状況に関する知識が求められる。
――――― [JIS X 8341-1 pdf 45] ―――――
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JIS X 8341-1:2010の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 9241-20:2008(IDT)
JIS X 8341-1:2010の国際規格 ICS 分類一覧
- 35 : 情報技術.事務機械 > 35.180 : IT端末設備及びその他の周辺設備
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.180 : 人間工学
JIS X 8341-1:2010の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8515:2002
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―ワークステーションのレイアウト及び姿勢の要求事項
- JISZ8522:2006
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―情報の提示
- JISZ8523:2007
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―ユーザー向け案内
- JISZ8524:1999
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―メニュー対話
- JISZ8525:2000
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―コマンド対話
- JISZ8526:2006
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―直接操作対話
- JISZ8527:2002
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―書式記入対話