JIS Z 2353:2021 超音波による固体中の音速の測定方法 | ページ 5

           18
Z 2353 : 2021

10.2 パルサーレシーバシステムなどによる方法

  パルサーレシーバシステムに接触型探触子又は水浸探触子を接続して,多重エコーを検出する。多重エ
コーの中で,波形の相違が小さく,ノイズが小さい二つの底面エコーBi及び底面エコーBjの組合せを選択
し,起点から測定した伝搬時間TSi及びTSj,又は二つの底面エコーBiとBjとの伝搬時間差ΔTijを附属書A
のスライスレベル法,ゼロクロス法又はパルスオーバラップ法で求める。多重反射の次数が高くなると,
波形の変形が大きくなるので,通常,B1及びB2の組合せ又はB1及びB3の組合せを選択する。
二つの底面エコーBi及び底面エコーBjのそれぞれについて,起点から測定した伝搬時間TSi及びTSjを測
定する場合は,音速Vを式(1)によって計算する。
二つの底面エコーBi,Bjの伝搬時間差ΔTijを測定する場合は,音速Vを式(2)によって計算する。
時間分解能が2.5 ns以下のデジタル探傷器及び超音波厚さ計を用いる場合にも,パルサーレシーバシス
テムに接触型探触子又は水浸探触子を接続して音速を測定する場合に準じて音速を測定する。

10.3 シングアラウンド法による方法

  附属書Bによる。

10.4 電磁超音波共鳴法による方法

  附属書Cによる。

11 測定結果の表示方法

  測定した音速は,縦波の場合には記号VL,横波の場合には記号VSを用いて表現し,メートル毎秒(m/s)
の単位で表す。横波で異なる二つの音速値が得られた場合には,それぞれをVS1及びVS2とし,その振動方
向も含めて表示する。
また,音速測定の再現性確認を行った場合には,音速の平均値,最大値,最小値などを表示する。
記録には,次の事項を記載する。
a) 測定した音速の値
b) 可能ならば,音速値の測定に使用した超音波波形
c) 伝搬時間測定に用いる波の検出方式及び伝搬時間の測定方法
d) 使用した機材の種類及び形式
e) ゼロ点調整用試験片を使用した場合には,試験片の型名,材質及び寸法
f) 測定面及び裏面の仕上げ状態
g) 試験体の厚さ測定結果
h) 使用した接触媒質
i) 試験体温度

――――― [JIS Z 2353 pdf 21] ―――――

                                                                                            19
Z 2353 : 2021
附属書A
(規定)
伝搬時間の測定方法
A.1 一般的注意事項
A.1.1 波形の確認
超音波の伝搬時間(超音波がある点から別の点へ伝搬するのに要する時間)を測定するためには,ある
点と別の点とで観察される二つの超音波波形にそれぞれ測定ポイントを決めて,その間の時間差を測定す
る必要がある。減衰の小さい材料では,伝搬中の波形の変形が小さいため,波形内の相似な点を測定ポイ
ントとして選ぶことによって,伝搬時間の測定が高精度となる。
減衰が大きい材料では,超音波の高周波成分が多く失われる傾向にあるため,伝搬中に波形の変形が生
じて伝搬時間の測定に誤差が発生する。これを回避するため,通常,より低い周波数の超音波を利用する,
試験体の厚さを薄くするなどの対策で,波形の変形を最小に抑えて伝搬時間を測定する。
測定において二つの波形が微妙に異なる場合には,波形の立上がり部分を波形相似点と考えて測定する
こと,又は大きな振幅部に波形相似点を見出して測定することが多い。前者は,最も早く到達する波形先
頭部には外乱が少ないことを利用し,後者は,最もエネルギーの大きな部分が波形主要部とみなせること
を利用している。
A.1.2 位相反転時の対応
遅延材付き探触子を用いて,表面エコーと底面エコーとの伝搬時間差を測定する場合に,底面エコーの
波形が表面エコー(S)の波形に対して位相反転している場合が多い。樹脂製の遅延材と金属製の試験体
との組合せでは,音響インピーダンスの大きさは,大きい順にZT(金属試験体),ZD(樹脂遅延材),ZA
(空気)となる。このときに,樹脂遅延材と金属試験体との境界からの表面エコー(S)では位相反転が
起きないが,金属試験体と空気との境界面からの底面エコー(B)には位相反転が生じる(図A.1参照)。
位相反転はRF波形を用いた測定における誤差の原因となるため,二つのエコーの片方について正負反転
した波形を用いて測定を行う。全波検波波形での測定では位相反転に注意する必要はない。
なお,直接接触型探触子でも,前面板の音響インピーダンスが試験体の音響インピーダンスより大きい
と,B1エコーの位相とB2エコーの位相とが反転する場合がある。
図A.1−遅延材付き探触子における反射波の位相変化
A.1.3 伝搬時間の測定方法の選択
伝搬時間の測定方法は,必要な精度に応じて,表A.1から選択する。

――――― [JIS Z 2353 pdf 22] ―――――

           20
Z 2353 : 2021
表A.1−測定方法の選択
要求条件 使用波形 伝搬時間の測定方法
スライスレベル法
高精度 RF波形 ゼロクロス法
パルスオーバラップ法
普通精度 RF波形 ピークポイント法
内容はA.2を参照
(減衰小) 全波検波波形 スライスレベル法
RF波形 パルスオーバラップ法
普通精度
ピークポイント法
(減衰大) 全波検波波形
スライスレベル法
A.2 伝搬時間の測定方法
A.2.1 ピークポイント法
伝搬時間の測定ポイントを最大エコー高さ点とする(図A.2参照)。検波波形に適用する場合及びRF波
形に適用する場合がある。RF波形を利用する場合には測定ポイントを同じ位相の点に設定し,波形の変形
の影響を避ける。
RF波形の利用は精度的に有利であるが,測定ポイントを同じ位相の点に設定しなければならない。検波
波形の利用は,普通精度測定に限る。
デジタル探傷器が時間測定機能をもつ場合には,その機能を使って,デジタル表示される値を用いる。
図A.2−ピークポイント法
A.2.2 スライスレベル法
スライスレベル法では,エコー高さをフルスケールの80 %程度に設定して,エコー高さを基準にスライ
スレベルを規定する(例えば,エコー高さ−6 dB)場合(図A.3参照)と,エコーを高利得増幅して大振
幅とし,スライスレベルをノイズを拾わない範囲内でなるべく低いレベルとする場合がある。この方法で
は,スライスレベルを超えた点を測定ポイントとして伝搬時間を測定する。立上がりが明瞭な波形につい
ては伝搬時間測定精度が高い。デジタル探傷器が時間測定機能をもつ場合には,その機能を使って,デジ
タル表示される値を用いる。

――――― [JIS Z 2353 pdf 23] ―――――

                                                                                            21
Z 2353 : 2021
図A.3−スライスレベル法
A.2.3 ゼロクロス法
ゼロクロス法は伝搬時間の測定ポイントをゼロクロス点に設定し(図A.4参照),エコーの伝搬時間を高
精度で求める方法であり,測定対象の二つの波の安定した相似部分に設定する。波形をパーソナルコンピ
ュータに取り込み,ゼロクロス法を適用することもできる。測定ポイントとするゼロクロス点には幾つか
の候補点があるので,図A.4ではこの複数の候補点を示す。
図A.4−ゼロクロス法
A.2.4 パルスオーバラップ法
パルスオーバラップ法は,二つのエコーの時間差を高精度で求める方法であり,第1の波の表示波形と
第2の波の表示波形とを遅延時間を調整して重ね合わせ,両者の位相の一致度合いを目視で確認しながら
最適の遅延時間を求めることによって,時間差測定を行う。図A.5に示すパルスオーバラップ装置は,波
形の記録表示機能をもつデジタルオシロスコープを利用して構成している。
具体的には,初めに同期信号からの遅延時間を調整して第1の波をデジタルオシロスコープに表示し,
このときの遅延時間TP1をカウンタで測定する。次に,遅延時間を増し,第2の波の表示が既に表示して
いる第1の波に丁度重なる状態とし,このときの遅延時間TP2をカウンタで測定する。このようにして,

――――― [JIS Z 2353 pdf 24] ―――――

           22
Z 2353 : 2021
第1の波と第2の波との伝搬時間差を両者の差(TP2−TP1)で求めることができる(図A.6参照)。音速を
1 m/sの桁まで測定できるように,時間間隔の測定に使用するカウンタの精度は少なくとも10−3 s(1 ns)
以下であることが望ましい。
この方法は,位相の一致度合いを確認しながら時間測定を行うことが可能なため,時間測定精度が高い。
また,波形の相似度を正確に判断できるので,信頼性も高い。
高精度の時間差測定では小さな誤差要因にも注意が必要であるが,この方法は誤差要因に対処しやすい
方法であり,その例を附属書Dに示す。
図A.5−パルスオーバラップ法のブロック図
図A.6−パルスオーバラップ説明図

――――― [JIS Z 2353 pdf 25] ―――――

次のページ PDF 26

JIS Z 2353:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 2353:2021の関連規格と引用規格一覧