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Z 2353 : 2021
附属書B
(規定)
シングアラウンド法による音速の測定
B.1 測定原理
シングアラウンド法では,図B.1に示すとおり,接触型探触子又は水浸探触子を用いて,多重エコーを
検出し,多重エコーの中で,波形変化の少ない二つのエコーBiとBjとの組合せを選択し,超音波送信周期
が底面エコーBi及び底面エコーBjの超音波伝搬時間に依存する信号の巡回ループを形成し,その送信周期
を測定することによって,底面エコーBiと底面エコーBjとの超音波伝搬時間の差を測定する。多重反射の
次数が高くなると,波形の変形が大きくなるので,通常,B1とB2との組合せ又はB1とB3との組合せを選
択する。
例えば,超音波送信周期が第2回底面エコーの伝搬時間に依存する信号の巡回ループにおける送信周期
と超音波送信周期が第1回底面エコーの伝搬時間に依存する信号の巡回ループにおける送信周期との差が,
第2回底面エコーと第1回底面エコーとの伝搬時間差となる。送信周期の測定は,連続する数多くの送信
周期にわたり,クロックパルスをカウンタで積算して平均化するため,測定精度が向上する。
図B.1では,ゲート回路で切り出した第1回底面エコー及び第2回底面エコーがゼロクロスする時点で
タイミング信号を生成している。二つのエコーを用いた測定において,ゲート回路で目的のエコーを抽出
し,両エコー間で相似したゼロクロス点を検出しなければならない。
図B.1−シングアラウンド法のブロック図
B.2 装置の構成
装置の構成は,次による。
a) ゲート及びAGC増幅器 目的のエコーを切り出し,振幅が一定となる状態に自動的にゲインを調節
して増幅する。
b) ゼロクロス検出器 目的のエコーのゼロクロス点を検出してタイミング信号を生成する。
――――― [JIS Z 2353 pdf 26] ―――――
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Z 2353 : 2021
c) 遅延時間調節回路 多重エコーなど目的外のエコーと目的のエコーとの重なりを防ぐために適切な遅
延時間を与える。
d) 同期パルス発生器 パルサーにトリガ信号を入力する。
e) パルサー 探触子に励振パルスを供給して,超音波を発生させる。
f) カウンタ 同期パルス発生器が生成するトリガ信号が所定数に達するまでクロックパルスを計数する
ことによって送信周期を測定する。
B.3 測定
図B.1において,超音波送信周期が第i回底面エコーの超音波伝搬時間に依存する信号の巡回ループを
形成したときの超音波送信周期TCi及び超音波送信周期が第j回底面エコーの超音波伝搬時間に依存する信
号の巡回ループを形成したときの超音波送信周期TCjを測定する。このとき,測定精度を高めるため,カ
ウンタにおけるトリガ信号の計数が1万回程度になるまでカウンタで計時を行う。音速は,式(B.1)によっ
て求める。
2tS ji
−
V= ×1000 (B.1)
TCj−TCi
ここに, V : 試験体の音速(m/s)
tS : 試験体の厚さ(mm)
i : 試験体底面での超音波反射回数
j : 試験体底面での超音波反射回数(j>i)
TCi : 第i回底面エコーの超音波伝搬時間に依存する信号の
巡回ループを形成したときの超音波送信周期(s)
TCj : 第j回底面エコーの超音波伝搬時間に依存する信号の
巡回ループを形成したときの超音波送信周期(s)
――――― [JIS Z 2353 pdf 27] ―――――
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Z 2353 : 2021
附属書C
(規定)
電磁超音波共鳴法による横波音速の測定
C.1 測定原理
この方法では,バースト波を励振する電磁超音波探触子によって,試験体厚さ方向に連続した横波超音
波を発生させ,その周波数を掃引して鋭い共鳴ピークが発生する周波数を検出することによって,その周
波数及び試験体の厚さから横波音速を測定する。対象は金属などの導電性材料に限られるが,共鳴周波数
を高精度に測定することによって,音速測定精度が向上する(図C.1参照)。
周波数掃引
パーソナルコンピュータ 周波数−振幅図
励振用バースト波発生器 積分回路
ダイプレクサ 増幅&ゲート回路
電磁超音波探触子
(共鳴用)
振動方向
試験体
図C.1−電磁超音波共鳴装置
C.2 装置の構成
装置の構成は,次による。
a) 電磁超音波探触子 コイルと永久磁石とで構成され,コイルに高周波バースト電流を流すことによっ
て,ローレンツ力に基づく作用又は磁わい(歪)効果によって試験体の厚さ方向に伝搬する横波超音
波を発生する。また,電磁超音波探触子直下の表面に横波の振動が加わると,超音波発生と逆の作用
で,コイルに電圧が発生し,横波が検出される。
b) ダイプレクサ コイルに励振電流を加える回路とコイルに発生した受信電圧を増幅する回路とを切り
換える。
c) 増幅及びゲート回路 電磁超音波探触子の励振終了後の部分を切り出し,検出電圧を増幅する。
d) 積分回路 電磁超音波の励振終了後の受信超音波を積分し,振幅を増大させる。
e) パーソナルコンピュータ 励振用バースト波の周波数を掃引し,また,積分回路の値を取り込み,周
波数スペクトル(周波数−振幅図)を作成する。
f) 励振用バースト波発生器 パーソナルコンピュータから設定された周波数の励振用バースト波を生成
する。
――――― [JIS Z 2353 pdf 28] ―――――
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Z 2353 : 2021
C.3 測定
試験体に特定の振動方向の横波を送受信する方向性コイル(トラック状コイル)を備えた電磁超音波探
触子(図C.2参照)を置き,電磁超音波探触子(以下,探触子という。)の向きを変えて共鳴スペクトルの
変化を観測する。掃引周波数は,共鳴スペクトルの形状が崩れない範囲で適切に選択する。
異方性がない材料では,探触子の向きを変えてもスペクトルに変化はなく,図C.3 a)の周波数スペクト
ルが得られる。隣接するピークの低い方の周波数f1及び隣接するピークの高い方の周波数f2を測定し,式
(C.1)によって音速Vを求める。試験体の厚さtSは,7.1によって測定する。
2 ft
2 S
V= ×1000 (C.1)
r
ここに, V : 音速(m/s)
f1 : 隣接するピークの低い方の周波数(MHz)
f2 : 隣接するピークの高い方の周波数(MHz)
r : f2
−を四捨五入した整数(次数)
f2 f1
tS : 試験体の厚さ(mm)
材料に異方性がある場合,横波の二つの独立な振動成分間で音速が異なるため,横波の振動方向によっ
ては共鳴スペクトルに隣接した二つのピークが現れる[図C.3 b)参照]。二つの周波数ピークに対応する二
つの異なる音速をVS1及びVS2(VS1>VS2)とする。高いピーク周波数成分が最大となる振動方向[図C.3 c)
参照]及び低いピーク周波数成分が最大となる振動方向[図C.3 d)参照]で,それぞれピークの周波数を
測定し,二つの方向の音速VS1及びVS2を計算する。
図C.2−電磁超音波探触子の方向性コイル(トラック状コイル)
――――― [JIS Z 2353 pdf 29] ―――――
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Z 2353 : 2021
a) 異方性がない場合
b) 異方性がある場合(ピークが二つに分離する方向)
c) 異方性がある場合(高いピーク周波数成分が最大になる方向)
d) 異方性がある場合(低いピーク周波数成分が最大になる方向)
注記 模式的な説明図であり,実際とは異なる。
図C.3−共鳴測定結果の説明
――――― [JIS Z 2353 pdf 30] ―――――
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JIS Z 2353:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.140 : 音響及び音響測定 > 17.140.01 : 音響測定及び雑音除去一般
JIS Z 2353:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ2300:2009
- 非破壊試験用語
- JISZ2300:2020
- 非破壊試験用語
- JISZ2305:2013
- 非破壊試験技術者の資格及び認証
- JISZ2350:2002
- 超音波探触子の性能測定方法
- JISZ2352:2010
- 超音波探傷装置の性能測定方法
- JISZ2355-1:2016
- 非破壊試験―超音波厚さ測定―第1部:測定方法
- JISZ2355-2:2016
- 非破壊試験―超音波厚さ測定―第2部:厚さ計の性能測定方法