JIS Z 2357:2019 超音波探傷によるライニング材の剥離検出試験方法及び評価方法 | ページ 2

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5.2.2 留意部の場合
例えば,内容液が母材金属に触れ,母材金属が面的にひろ(拡)がりのある凹凸状に腐食した部位があ
ると,超音波の反射信号はこの腐食面で散乱して小さくなる。このように反射信号が散乱する腐食部では,
反射に伴う超音波の減衰率が健全部及び離部よりも大きい。この結果,反射回数が増えるほど,腐食部
の反射信号の強さは健全部及び離部の信号と比較して顕著に小さくなり,多重反射信号のピーク値を結
んだ減衰曲線から,健全部又は離部とは異なり,留意部として判別することができる(図2参照)。
図2−健全部,離部及び留意部の減衰曲線

5.3 判定方法の概要

5.3.1  一般
エコー高さは,探触子走査,塗膜厚さなどの影響によって±6 dB程度変動することがあるため,エコー
高さの比較だけでは健全部と留意部との判定が困難な場合がある。図2に示したように,健全部,離部
及び留意部では減衰率に差が見られることから,反射信号の減衰率を評価することでこれらの判別は可能
となる。減衰率の評価には,DACを用いる。
5.3.2 DACを用いた評価方法
図3にDACの例を示す。ここで,基準感度における健全部のDACを基準DACと呼ぶ。また,基準DAC
の上下に引いた点線を補助DACと呼ぶ。補助DACは,基準DACに対して各多重反射エコーを一定の量
(dB)で増減したものである。基準DACと補助DACとは全て同一の減衰率をもつ曲線である。図3には
留意部におけるDACのイメージを併記した。DACの作成方法は,8.1.2に示す。
塗膜厚さの異なる試験対象物の検査において,エコー高さが基準DACに対して上下した場合であって
も,健全部では減衰曲線の減衰率は基準DAC及び補助DACと同一になる。
離部では,健全部よりもエコー高さが大きくなる。また,多重反射エコーの各ピークをつないだ減衰
曲線の減衰率は,基準DAC及び補助DACよりも小さくなる。
留意部では,健全部よりもエコー高さが小さくなる。また,多重反射エコーの各ピークをつないだ減衰
曲線の減衰率は,基準DAC及び補助DACよりも大きくなる。

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注記 基準DACと補助DACとは,全て同一の減衰率である。これらのDAC上に多重反射エコーのピークが重なっ
た場合,当該部位は健全部と評価される。
図3−基準DAC及び補助DACの例

6 装置及び材料

6.1 超音波探傷器

 Aスコープ表示方式のものを使用する。

6.2 探触子

 通常,JIS Z 2345-3に規定する5 MHzでφ20 mmの垂直探触子を使用する。ただし,試験
対象物の寸法,形状及び想定する離寸法に応じて振動子寸法を選定してもよい。

6.3 接触媒質

 グリセリンペーストなどの超音波探傷試験用接触媒質を使用する。

7 超音波探傷器の調整

7.1 調整用試験片

7.1.1  対比試験片A
対比試験片Aは,試験対象物と同じ板厚,同じ材質の母材金属,同じ構成のライニング材を用いて作製
した,健全部と離部とがあるものを試験片とする。試験対象物に塗膜がある場合は同じ仕様の塗装を行
い,塗膜がない場合は対比試験片Aも塗装をしてはならない。超音波探傷器の時間軸調整及び感度調整に
使用する。
7.1.2 対比試験片B
対比試験片Bは,JIS G 0801の附属書JA[二振動子垂直探触子用E形対比試験片(RB-E)]に規定する
対比試験片(RB-E)とする。超音波探傷器の時間軸調整及び感度調整に使用する。ただし,母材金属と同
様の材質が望ましい。
7.1.3 対比試験片C
対比試験片Cは,母材金属の材質,板厚及び曲率半径が試験対象物と同じ試験片とする。ライニング施
工は行わない。曲率半径が小さい試験対象物の場合に,超音波探傷器の時間軸調整及び感度調整に使用す

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る。

7.2 反射回数の選定

  試験に用いる反射回数の選定は,次による。
ある媒質中を超音波が伝搬するとき,媒質の密度をρ(kg/m3),超音波の音速をC(m/s)とすると,音
響インピーダンス(Z)は,式(1)によって表される。
Z C (1)
二つの異なる媒質があり,媒質1を伝搬してきた超音波が媒質2に垂直に入射するとき,各媒質中にお
ける音響インピーダンスをそれぞれZ1及びZ2とすると,媒質の境界面での超音波の音圧反射率(R)は,
式(2)によって表される。反射波のエコー高さは音圧反射率に対応する。
Z2 Z1
R (2)
Z1 Z2
ライニング材の離検出試験において,媒質1は母材金属,媒質2はライニング材(健全部)又は空気
(離部)に対応する。探触子から母材金属に入射させた超音波は,ライニング材又は空気層との境界面
でその一部が反射し,この反射波の一部が母材金属内で多重反射する。
媒質2が空気(離部)の場合には音圧反射率を1とみなせるため,離部のエコーに対する健全部エ
コーの強度差は,反射回数をnとすると式(3)によって表される。
強度差=20×log10(Rn) (3)
種々のライニング材と母材金属との境界における超音波の音圧反射率(表1参照)によって,健全部及
び離部における多重反射信号の反射回数による強度差(dB)を求め,この強度差と反射回数とをグラフ
にプロットする。一例としてポリエチレンの場合を図4に示す。試験対象物のライニング材が決まれば,
反射回数及び強度差から,空気(離部)とライニング材(健全部)とのエコー高さの差が十分大きくな
る反射回数を求めることができる(図4参照)。ただし,同材でも下地処理による母材金属の表面粗さな
どを含む種々の因子の影響によって,エコー高さは変動する。変動があっても健全部と離部とのエコー
高さが重ならない反射回数として,12 dB以上の差(補正値a)が得られる最初の反射回数を選定する。

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表1−各種ライニング材と母材金属(鋼)との境界における
多重反射信号の健全部と離部との強度差(例)
ライニング材 鋼に対する 健全部と離部(空気)との強度差(dB)
音圧反射率 B1a) B5a) B10a) B15a) B20a)
健全部 エポキシ樹脂 0.87 −1.2 −6.1 −12.2 −18.3 −24.3
硬質ゴム 0.89 −1.1 −5.3 −10.6 −15.8 −21.1
ポリ塩化ビニル 0.86 −1.3 −6.3 −12.7 −19.0 −25.4
ポリエチレン 0.93 −0.7 −3.3 −6.7 −10.0 −13.4
軟質ゴム 0.94 −0.6 −2.8 −5.6 −8.4 −11.3
離部 空気 1.00 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
(参考) 水 0.94 −0.6 −2.8 −5.7 −8.5 −11.3
注a) 境界部における反射回数を示す。例 B1 : 1回反射,B20 : 20回反射
出典 : 超音波探傷試験III(一般社団法人日本非破壊検査協会)
図4−多重反射信号の強度差による反射回数の選定例(ポリエチレンの場合)

7.3 基準感度の設定

7.3.1  対比試験片A(試験対象物と同じ仕様)を用いる方法
対比試験片Aを用いる場合の設定手順は,次による。
a) 対比試験片Aの健全部に接触媒質を塗布し,探触子を当てる。健全部の多重反射信号をAスコープ上
に表示し,7.2で求めた反射回数の反射信号を特定する。
b) この特定した反射信号のエコー高さがAスコープ上で40 %となるように調整して,これを基準感度
とする。
c) 基準感度設定後,同じ対比試験片Aの離部に接触媒質を塗布し,探触子を当てる。エコー高さが
100 %を超えることを確認する。100 %を超えない場合は反射回数を増やしてb) を繰り返し,エコー
高さが100 %を超えることを確認する。

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7.3.2 対比試験片B(階段状試験片)及び対比試験片Cを用いる方法
7.3.2.1 試験対象物に塗膜がない場合
試験対象物に塗膜がない場合の設定手順は,次による。
a) 対比試験片B(離部に相当)のうち,母材金属と同程度の厚さ部位を選定する。接触媒質を塗布し,
探触子を当てる。多重反射信号をAスコープ上に表示し,7.2で選定した反射回数の反射信号を特定
する。この特定した反射信号のエコー高さを40 %に調整する。
b) 超音波探傷器の感度を,7.2で求めた補正値a(dB)だけ高める。接触媒質を試験対象物に塗布し,探
触子を試験対象物に当て反射信号をAスコープ上に表示する。この場合,表示した多重反射信号が少
ない反射回数で急激に大きく減衰しないことを確認するとともに,選定した反射回数のエコー高さが
40 %より小さくなる部位を求める。
c) このb) で求めた部位は健全部であり,この部位のエコー高さが40 %となるように調整し,基準感度
とする。
d) この基準感度で対比試験片Bのエコー高さが100 %を超えることを確認する。また,100 %を超えな
い場合は反射回数を増やしてb) 及びc) を繰り返し,エコー高さが100 %を超えることを確認する。
7.3.2.2 試験対象物に塗膜がある場合
試験対象物に塗膜がある場合には塗膜の影響による感度低下量を調べ,基準感度設定の際にこれを補正
する。設定手順は,次による。
a) 接触媒質を試験対象物に塗布し,探触子を試験対象物に当て,エコー高さを80 %に設定し,このとき
の超音波探傷器の感度を記録する。この感度をb(dB)とする。さらに,同部位の塗膜を離し,エ
コー高さを80 %に設定し,この感度をc(dB)とする。これらの操作は,腐食がない部位において行
う。塗膜による減衰量をαとすると,α=b−c(dB)となる。
b) 7.3.2.1 a) と同様の操作を行う。
c) 超音波探傷器の感度を,7.2で求めた補正値a(dB)分及びa) で求めた塗膜による減衰量α分だけ高
める。
d) 塗膜のある部位における平均的なエコー高さが40 %になるように感度を調整し,基準感度とする。
7.3.3 試験対象物における変動量の確認
試験対象物における変動量の確認は,次による。
a) 7.3.17.3.2の基準感度設定後,エコー高さの変動があっても健全部と離部とにおけるエコー高さの
大小関係が確保できることを確認する。
b) 変動量が大きくてエコー高さの大小関係が確保できない場合は,更に大きな反射回数を選定して,7.3.1
7.3.2の基準感度調整を再度行い,健全部と離部とのエコー高さの大小関係が確保できることを確
認する。

7.4 時間軸の調整

  選択した反射回数の反射信号をAスコープ上に表示する方法は,次のいずれかを用いる。
a) 多重反射信号の全てを表示する方法
b) 選定した反射信号を含む数個の反射信号を表示する方法

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