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c) 法令に基づいて,ビジネスの一部として電子化プロセスの組織を構成する。
4.5 計画
電子化プロセスの作業実施などの計画を策定するとき,4.2に掲げる課題及び4.3に規定する要求事項を
考慮し,意図した成果を達成できることを確実にする。また,望ましくない影響を防止及び低減するよう
に計画する。さらに,課題が明確化した際には,継続的に改善を実施する。具体的には,次による。
a) 組織目標に従って,電子化プロセスでのリスク(間違い,不正操作など)を洗い出しておく。
b) 電子化プロセスの対象とする文書及び書面を明らかにしておく。
c) 対象とする文書,書面の品質条件などを明らかにし,条件(目標)などに伴って,作業などを監視し,
継続的改善を実施する。
4.6 支援
組織は,電子化プロセスを確立し,実施及び維持していくために必要となる資源(組織,人員,機材な
ど)を決定し,提供する。
なお,電子化プロセスの確立のためには,次の項目を考慮する。
a) 電子化プロセスに関わる適格な人員,機材を導入する。
− 電子化プロセスに関連する人員に必要な力量を決定する。
− 適切な教育,訓練に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
− 必要な力量を身につけるための処置をとり,とった処置の有効性を評価する。
− 力量の証拠として文書化した情報を保持する。
− 電子化プロセスに関連する機材などの品質基準を決定する。
− 関連する機材を使用する際に該当の品質基準を満たしていることを確実にする。
− 品質基準を満たしていることを確認した証拠として文書化した情報を保持する。
b) 電子化プロセスの品質基準を定めておく。品質基準作成の場合は,次の項目を考慮する。
− 品質基準は,法に基づいた基準を適用する。基準がない場合には,文書の重要度などから判断し,
品質確認の方法(プロセス)及び品質基準(精度,色など)を選択する。
− 機器は,関連した品質基準,プロセスを維持できる仕組みを選択する。
− 電子化作業には,スキャニング担当者が,データの偽造がないことを確認する作業など確認のプロ
セスを設ける。
− スキャニングする文書が複写物(フォトコピーなど)である場合は,オリジナル文書と同一である
ことを保証する手段を提供する。
− 規定された文書ファイル形式を利用する。
− 適時に新しい情報を取り入れて法的な要件,技術要件を維持するようにする。
− 業務品質を維持するための監査者及び監査基準を規定する。
c) 文書管理業務の管理規程を作成し,作業管理を明文化する。管理規程を作成する場合は,次の項目を
考慮する。
− 組織構造(電子化業務を実施する場合の組織構造を定める。)
− 文書の生成及び受取(対象とする文書の生成方法,受取方法)
− 文書の保存及び処分(対象とする文書の保存方法,最終的な破棄,廃棄方法)
− 文書の利用に関する情報(文書の利用目的,利用期間,利用者など属性の構造など)
− 文書の保存に関する情報(文書の保存期間,法律で定められた保存期間以外にも組織的に規定する
場合もある。)
――――― [JIS Z 6016 pdf 6] ―――――
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− 文書の重要度などに関する情報(該当の文書の,組織活動にとっての重要度,リスク観点からの重
要度などを定める。)
− 文書の品質に関する情報(スキャニングされた文書又は電子化文書の見読性の基準)
文書に関する情報(属性)を整理し設定することは,検索など文書を利用することを容易にしたり,
保存期間中に文書を整理することを容易にする。属性には,文書の内容を示す情報,文書の品質,作
成の由来などを示す情報,文書の保存状態を示す情報などがある。電子化などの際の電子化文書の属
性を,管理台帳などに反映し保存する場合には,属性情報を活用する。
これら管理台帳に記載された情報は,索引として利用する。JIS Z 6017では管理台帳の項目をダブ
リンコアの基本要素に従って作成している。そのため,電子化される前の文書の作成時にダブリンコ
アの基本要素に従い索引付けすることは,電子化プロセスでの管理台帳の作成を自動化するうえで有
効な方法となる。
d) 作業内容をマニュアル化し,明文化する。作業工程の組立及びマニュアルを作成する場合は,次の項
目を考慮する。
1) 作業工程の組立は,次による。
− 電子化プロセスが設計されており文書化されている。
− 作業の手続きは,組織のコントロール下でなければならない。
− 手続きを遵守することができるように,日々の作業についてトレーニングする。
2) 作業マニュアルは,次による。
− 作業マニュアルには,電子化プロセスの詳細を表す。
− いろいろな文書の種類に基づく手続きの全てを作業マニュアルに記載する。
− 作業マニュアルは文書化されており,全ての利用者から参照できるようにする。
− 作業マニュアルは,最新の状態を維持し,作業者が作業内容を理解しているように維持する。
− 作業マニュアルは適切な時期に見直しするようにしなければならない。見直しの結果は,上位組
織などによって,レビューされ,承認されていなければならない。
3) 品質基準は,次による。
− 精度(密度,色など)の取扱方法(文書の重要度によって精度を選択することなど),スキャニン
グするデータを品質確認する精度,方法などをマニュアルに記載しておく。
− 作業した結果などが検証できるよう作業台帳などに作業内容,品質検証結果などを記載しておく。
4.7 オペレーション
日常の業務オペレーションは,次による。
a) 詳細のオペレーション組立方法は,箇条5に示す。
b) 作業マニュアルの作成,更新などの記録を取得する。
c) 作業者が作業マニュアルに基づいて,作業したことを記録する。
d) システムの動作証跡を取得する。システムの監査証跡の全データに対して,関与するプロセス,イベ
ントの日付及び時刻がそれぞれ何であるかを認識できる。
5 電子化プロセス
5.1 電子化の流れ
標準的な電子化プロセスは,次の手順に従う。
――――― [JIS Z 6016 pdf 7] ―――――
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電子化プロセス管理規程の作成(箇条4)
↓
電子化のための準備(5.2)
↓
スキャニング(5.3)
↓
索引の入力(5.4)
↓
検証(5.5)
↓
電子署名及びタイムスタンプの付与(5.6)
↓
登録(5.7)
↓
電子化文書の活用(5.8)
↓
長期保存及び媒体移行(5.9)
↓
文書の廃棄(5.10)
5.2 電子化のための準備
5.2.1 スキャニング作業前の準備及び点検
5.2.1.1 文書に対する準備
文書のスキャニングを行う場合は,その前に次の準備を行う。
a) スキャニング作業をスムーズに進めるために,作業開始前に,スキャニングする文書にクリップ,ス
テープル,付箋紙,紙折れ,しわ,汚れ,紙粉の付着などがないことを確認する。
b) 白黒文書とカラー文書とが混在しているか,かつ,カラーでスキャニングする場合は,作業効率を高
めるため全体の文書量及び混在頻度を事前に確認し,白黒文書とカラー文書とを分けてスキャニング
してもよい。
c) 文書が汚損,破損しているなど,文書の保存状態又は形状に応じる処置について,その要否を確認し,
必要であれば複製することが望ましい。
5.2.1.2 入出力装置などに対する点検
入出力装置などに対する点検は,次による。
a) スキャナの読取り部及び自動文書送込み装置の給紙・搬送部に紙粉などのごみ及び汚れがないことを
確認する。
b) 文書管理システムにとっての適正を確認した上で,文書を電子化し,ファイルを作成する。
なお,文書管理システムにおける適正を確認するための文書の電子化仕様は,附属書Aによる。
画像品質,文字の可読性,入力作業効率,活用時の伝送効率,操作性能などに問題があれば,解像
度,階調,ファイル形式及び圧縮を再検討し,適正な値を決定する。
c) スキャニングに際して,自動文書送込み装置の妥当性を判断する際,ISO 12653-3の試験標板を利用
し,検査項目を満たしていることを確認することが望ましい。
――――― [JIS Z 6016 pdf 8] ―――――
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5.3 スキャニング
5.3.1 電子化する文書及びそのスキャニング方法
電子化する文書及びそのスキャニング方法は,次による。
a) 紙文書の場合 紙文書には,白と黒とだけで表現する白黒文書と,様々な色で表現されているカラー
文書とがあり,紙文書は,一般にスキャナを用いてスキャニングを行う。
b) マイクロフィルム文書の場合 マイクロフィルム文書は,一般にマイクロフィルムスキャナを用いて
スキャニングを行う。また,一度紙に出力後,スキャナでスキャニングを行ってもよい。
5.3.2 紙文書などの電子化文書へのスキャニング
紙文書などを電子化文書としてスキャニングして共用サーバ又は電磁的記録媒体に格納する方式は,次
のいずれかによる。
なお,電子化文書に変換するとき,それらの文書の入力準備作業は,5.2による。
a) 手作業によるスキャニング方式 紙文書などを電子化文書に手作業でスキャニングする場合は,スキ
ャナを利用して紙文書をパソコンなどに電子化文書として取り込んだ後,文書名,共用サーバ,電磁
的記録媒体の登録先のフォルダ名などをオペレータが入力し,電子化文書として共用サーバ又は電磁
的記録媒体に格納する。
b) 自動変換方式 紙文書などを電子化文書に自動変換する場合は,次による。
1) 事前準備 システムの導入時にシステム運用管理者が,スキャニングをする紙文書の種類によって
文書管理データベース又は共用サーバのフォルダ名との関連を決める。
2) 自動変換 登録票,スキャニングをする紙文書などをセットにしてスキャニングし,ネットワーク
に接続された共用サーバ又は記録媒体に自動的に格納する。
5.4 索引の入力
5.4.1 索引の項目
箇条4の管理規程で定めた項目を入力するが,次の索引項目は必須である。
− 作業日時
− 作業者
− 監督者
− ページ数(適切なスキャニングが行われたことを証明するため)
− キーワード
5.4.2 入力の方法
索引の入力には,次に示す3通りの方法があり,利用する目的に応じていずれかを選択する。
a) 索引及び文書の入力を同時に行う方法 この方法は,登録票及び仕切紙を使用する方法で,大量入力
に適する。また,登録票にあるキーワードなどをOCRで読み取り,自動登録すると効率がよい。
b) 索引の入力を先行する方法 あらかじめ文書の分類を行い,ファイルのタイトルとして入力し,後で
該当するファイルに電子化文書を格納する方法である。この方法は,帳票類及び定型文書に適する。
c) 文書の入力を先行する方法 文書の入力を先行し,後から格納された文書を見ながら索引を付けてい
く方法である。
5.5 検証
5.5.1 一般
電子化文書は,共用サーバ又は記録媒体の電子化文書を開いて一時保管用フォルダの中に格納した文書
が存在しているかを確認することで,入力した文書が確実にスキャニングされたかを調べなければならな
――――― [JIS Z 6016 pdf 9] ―――――
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い。
このとき,スキャニングされた元の文書,電子化文書の索引単位の総ページ数,索引などの検索性に加
え,スキャニングによって得られた画像のずれ,画像の鮮明さなどの視認性も確認する(5.5.2を参照)。
問題があった場合は,5.5.5を参考に再格納する。
5.5.2 電子化文書の画像品質検査方法
白黒変換及びカラー変換した電子化文書の主な検査項目及び検査は,次による。
なお,必要に応じて検査項目を省略してもよい。
また,スキャナの性能が電子化文書の画像品質に影響を及ぼすおそれがあるため,スキャナの性能検査
を適宜行う。スキャナの画像品質を確認するための検査項目及び検査方法は,附属書Bによる。
a) 画像欠損 画像の周辺部をスキャニングされた元の文書と比較し,周辺部の画像欠損,余分な枠など
がないことを確認する。
b) 傾き 画像をスキャニングされた元の文書と比較し,傾きが許容内であることを確認する。
c) 濃度 下地かぶり又は裏写りがなく適正な濃度であるか,文字につぶれ及びかすれがなく判読可能で
あることなどを確認する。
d) ごみ及びしわ 画像全面にわたり,ごみ又はしわがあることによって文字,記号及び画線が読み取れ
なかったり,見誤ったりすることがないことを確認する。
e) すじ スキャニングされた元の文書の濃度の高い部分と画像とを比較し,白すじのないことを確認す
る。また,スキャニングされた元の文書の余白部と画像とを比較し,黒いすじなどのすじのないこと
を確認する。
f) 色再現性 スキャニングされる文書の中から色再現が問題になると思われる文書を選び,B.2 k) と同
様の色再現性が許容内であることを確認する。
g) カラー線の色のずれ スキャニングされる文書の中からカラー線の色のずれが問題になると思われる
文書を選び,B.2 l) と同様の色のずれが許容内であることを確認する。
h) モアレ 規則正しい細かい模様部分に,周期的なしま(縞)状のパターン(モアレ)がないこと,又
はそのレベルが許容内であることを確認する。
5.5.3 検査記録の保管
5.5.2で行った画像品質の検査記録は,保管しなければならない。
検査記録の管理は,所定の管理規程で定められたやり方に従い,検査記録としての紙保存は任意とする。
5.5.4 索引の検査など
電子化文書が登録票に従って正しく格納されているかの検査は,必要に応じて全数検査又は少なくとも
次に示す抜取検査をあらかじめ定めた方法で行うのがよい。
抜取検査を行う場合には,全検査対象に対して適切な数をランダムに抜き取り,正しく入力されている
ことを確認する。誤りがあれば,その誤りを訂正し,再度,同様な抜取検査を行う。
5.5.5 電子化文書の再電子化
最初にスキャニングされた電子化文書について,可読性の観点又は他の要因において不適合であれば,
再度,スキャニングの必要がある。また,文書の再スキャニングの手順を文章化することが望ましい。
なお,再スキャニングに伴い,最初にスキャニングされた電子化文書が差し替わっていること,バッチ
番号付与及び監査証跡手順に影響を及ぼさないように注意を要する。
さらに,電子化文書を差し替えた場合には,差し替えるときに実施したことを記録に残すことが望まし
い。
――――― [JIS Z 6016 pdf 10] ―――――
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JIS Z 6016:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 35 : 情報技術.事務機械 > 35.240 : 情報技術(IT)の応用 > 35.240.30 : 情報,ドキュメンテーション及び出版業務におけるITの応用
- 01 : 総論.用語.標準化.ドキュメンテーション > 01.140 : 情報科学.出版 > 01.140.30 : 行政,商業及び産業における文書
JIS Z 6016:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISX9205:2005
- 電子製版画像データ交換用タグ付きファイルフォーマット(TIFF/IT)
- JISZ6015:2016
- 文書情報マネジメント用語
- JISZ6017:2013
- 電子化文書の長期保存方法