JIS Z 8071:2017 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針 | ページ 7

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Z 8071 : 2017 (ISO/IEC Guide 71 : 2014)
とりする可能性のある最も小柄な人々及び最も大柄な人々並びにその人たちが使用する装備類の寸法及び
質量の値の範囲が利用できる。一部の人々の大きさ,体型又は質量に適合していないシステムは,それら
の人々にとって非常に不便で危険である可能性があり,全く利用できなくなるおそれがある。
7.4.2.2 機能障害及び活動制限
機能障害及び身体の大きさ並びにそれらに伴って必要とされるスペースの広さは多様であり,引き起こ
される困難も,軽度の不便さから重大な活動制限の範囲まで広範囲にわたる。アクセシビリティに関連す
る機能障害,身体の大きさ及び必要とされる空間の多様性による影響には,次を含む。
− 移動して,システムを制御する又はシステムとやりとりする能力の低下。これは,手足の切断,成長
程度の違い,座位でいなければならない姿勢上の制約などといった,身体の大きさ又は形状に影響を
与える機能障害に起因する。
− 非常に小さい身体又は背の低さ,及び体型の特性に起因する,システムに手を伸ばして届く,見る,
足で踏む又は別の方法でシステムとやりとりする能力の低下
− 非常に大きい身体又は背の高さ,及び体型の特性に起因する,システムの利用,身体への快適な適応
又はその他適切な方法でシステムとやりとりする能力,及び/又は距離を移動する能力の低下
− 必要な介護者,介助のための動物及び/又は設備を許容する空間の不足に起因する,環境に適応し,
システムとやりとりする能力の低下
7.4.2.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる大きさ,空間及びシステムの負荷能力に関する設計配慮点には,次
を含む。
− 建築環境における余裕のあるスペース
− 保護用スーツ及び個人用の保護装置のためのスペース
− 複数の大きさでの提供及び/又は調節可能性
− 背の高い人が入れる高さのスペース
− 太った人が通れる幅
− 背の低い人に適した段の高さ及び手の届く距離
− 福祉機器,支援機器,介助用の動物及び介助者のためのスペース
− 大きな質量(重量)に耐え得るシステム部品の適切な荷重容量
− 座位又は立位のユーザーから重要な部分に対して視線を遮るものがないシステム
− 座位又は立位のユーザーが全ての部位に楽に届くシステム
− ユーザーの身体の大きさ及び体型の多様性に適合するシステム部品の握りの寸法
7.4.3 動作 : 上半身構造の機能及び手を細かく使用する能力
7.4.3.1 概説
上肢の構造(ICF: s730)は,肩,上腕,肘,前腕及び手を含む。
手の細かな使用は,器用さ及び操作に関連し,次を含む。
− 物をつまみあげる,握る,操作する,放す及び物を扱うときの協調動作の実行
− テーブルから物をつまみあげたり,ダイアル又はノブを回したりするなど,自分の手及び指を使って
物をつまみあげる,操作する及び放す行為
7.4.3.2 機能障害及び活動制限
上半身構造の動作に関連する機能障害は,人の平衡,協調動作,感覚,及び頭・手・体の動きに影響を
与える。機能障害及び活動制限の影響には,次を含む。

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Z 8071 : 2017 (ISO/IEC Guide 71 : 2014)
− 物を回す又は曲げる能力の低下及び手を動かすことに関わる他の機能障害
− 親指と他の指とを近づける能力の低下又は大きく離す能力の低下
− 物を押しながら回すといった複雑な操作をする能力の低下
− 包装を開ける,留め金具を扱う,針に糸を通すなどの協調動作及び正確性を必要とする作業を行う能
力の低下
− 手の細かい動作を妨げる不注意による動作又は無意識の動き(震えなど)
− 肩の関節及び/又は肘の関節の動きの範囲が制限されることに起因する,離れたところにある又は床
にある物に手を届かせる能力の低下
− 上半身の弱さ又は筋骨格の一時的な傷害に起因する,重い又はかさばる物を扱う能力の低下
− 利き手でない手(左手又は右手)の使用を強いられることによる能力の低下
7.4.3.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる設計配慮点には,次を含む。
− 製品の質量(重量)を減らすための軽量又は低密度の製造素材の使用
− 片手又は両手でつか(掴)みやすく,持ち上げやすく,かつ,運びやすい形状の製品
− 握りやすく,手首を回す必要がなく,抵抗が最小限の手動操作具
− 複数の操作具を同時に操作する必要のない操作具
− 器用さに制約のある人々の握る動作又は操作の助けとなる滑りにくい表面
− 摩擦を大きくして,力を入れやすいように工夫したざらつきのある表面加工
− 不注意によって,意図せず制御装置を作動させてしまうことを防ぐ操作具の設計及び間隔設定
− 適度に弱い力での操作で簡単に開け閉めできる容器
− 製品の包装の開封から,製品の組立及び取付け,又は操作に至るまでの単純で簡単な手順
− 押しながら回すような,二つの動作を同時に行うことの回避
− 上半身動作の機能障害に適応するための代替操作部
注記 物の正確な配置が必要な場合,空間の方向を明確に感知して,手でそれを適切及び快適に持つ
ことができるよう配慮する(ISO/TR 22411:2008[10]の7.3.1.1参照)。
7.4.4 動作 : 下半身構造の機能
7.4.4.1 概説
下肢の構造(ICF: s750)には,次を含む。
− でん(臀)部,もも,膝,すね,足首及び足
下肢を使用する動作には,次を含む。
− 体の位置の維持若しくは変更又はある場所から他の場所への移動
− 歩行,階段の昇降,又は自由に移動する動作(装置,車椅子,歩行器などの福祉機器を必要とする場
合を含む。)
− 押す,蹴るなどといった,下肢を使った物の移動
7.4.4.2 機能障害及び活動制限
下半身構造の動作に関連する機能障害は,人間の平衡,協調動作,感覚並びに身体,もも,脚,足首及
び足の動作に影響を与える。その影響には,次を含む。
− 歩く,自由に移動する,階段又ははしごの昇降,及びある場所から他の場所へ移動する能力の低下
− 運転する能力又は他の交通機関を利用する能力の低下
− 向きを変える,体を曲げる又はバランスをとるときに身体を制御する能力の低下

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Z 8071 : 2017 (ISO/IEC Guide 71 : 2014)
− ひざまずく,座る,起き上がる,立つ,歩く及び/又は階段若しくははしごを上ることの困難
− 物を動かすために,足全体を使った協調動作を実行する能力の低下
− 滑る,つまずくなど,転倒につながる平衡感覚障害の可能性の増大
注記 平衡感覚障害は,関節の回転及び肢の動作の敏しょうな反応を必要とし,バランス制御シス
テムに過大な負荷をかけることがある。ごく小さい隆起又は突起でもつまずくことがある。
また,前庭神経機能障害も,平衡感覚に異常をもたらすことがある。
− 平衡機能障害に起因する,転倒のおそれの増加
重い靴,底が滑りやすい靴,ハイヒールなどを履いているように,条件が良好でない場合は,動作が阻
害される可能性がある。
7.4.4.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる設計配慮点には,次を含む。
− 滑りにくい又は敷居のないレイアウト(建物内,舗装された屋外などの環境において)
− 床面の高さの急な変化,障害物,隆起又は突起の回避
− エレベータ,昇降システムなどの設備
− 車椅子,歩行器,歩行補助具などを操作及び使用できる適切な勾配及び十分な空間のある傾斜路
− 適切な寸法で手すりが両側にある階段
− 運動・移動に制限がある人々が自動ドアを通過したり,横断歩道を渡るのに十分な時間
7.4.5 筋力及び筋の持久性
7.4.5.1 概説
筋力の機能(ICF: b730)は,一つの筋又は筋群の収縮によって生み出される力に関連する。
筋の持久性機能(ICF: b740)は,筋肉収縮を必要なだけ持続させることに関連する。
関連する活動には,全身の心身機能を必要とする持ち上げる活動及び登る活動がある。
7.4.5.2 機能障害及び活動制限
身体の筋力の機能障害は,日常の活動及び生活の質に多大な影響を与える。機能障害及び活動制限の影
響には,次を含む。
− 筋力及び持久性の低下
− 握力の低下(システムを操作する際の抵抗又は回転による困難又は苦痛をもたらす。)
− システムの使用に長時間の動作が必要とされる場合の疲労
− 重い物を地面に下ろす,椅子に座るのが困難となるなどの受動的動作(重力のような外部の力が動き
を生み出す場合)をコントロールする能力の低下
床が滑りやすい若しくは平らでない,又は重い靴,底が滑りやすい靴,ハイヒールなどを履いているよ
うに,条件が良好でない場合は,上記と同種の影響の多くが,多数の人々にもたらされる。
7.4.5.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる設計配慮点には,次を含む。
− 手全体を使って握ることのできる仕組み(親指,及び人指し指又は中指を使用してつまむよりも少な
い力で負荷をかけることができる。)
− 持ち上げる,持つ,運ぶ,開くなどの,システムの取扱いに必要な動作に適したシステムの特性(大
きさ,質量など)
− 長時間にわたる取扱い及び不必要な反復操作の回避
− 長時間支えがなく,立ったまま待つ長い列の回避

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Z 8071 : 2017 (ISO/IEC Guide 71 : 2014)
− 下半身の動きで操作できる,自動車の代替的な運転手段
7.4.6 音声及び発話
7.4.6.1 概説
声は,発声器官で生み出される音であり,通常は発話(ICF: s398)となる。
音声機能(ICF: b310)には,構音[話し言葉(音声言語)の音声を産生する機能],音量,流ちょう(暢)
性,速度,韻律,リズムなどの種々の側面がある。
機能障害は,失声(発声不能),不完全な発声(発声困難),がらがら声,耳障りな声(しわがれ声),及
びきつ(吃)音を含む。
関連する活動には,話すこと及び会話をすることが含まれる。
7.4.6.2 機能障害及び活動制限
発声及び発話の機能障害は,発話によって意思疎通し,情報を伝える能力に影響を与える。機能障害及
び活動制限の影響には,次を含む。
− 社会的なやりとりの減少
− 社会活動への参加の減少
− 音声入力を使用するシステムとやりとりする能力の低下
周囲の騒音のレベルが高いなど,環境条件が良好でない場合にも,上記と同様の影響が生じることがあ
る。
7.4.6.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる設計配慮点には,次を含む。
− 文章,顔の表情,手の動き又はジェスチャー,姿勢,その他のボディランゲージなど,コミュニケー
ションのための代替様式
− シンボル,補助具,技法及び/又は方策に基づく拡大・代替コミュニケーション
− 音声合成装置,コミュニケーション用アンプ,コミュニケーション用ビデオなどの福祉機器の使用に
対する支援
− 対話形の音声システム及びインターホンシステムとやりとりするための,リアルタイムテキスト(要
約筆記を含む。)などの代替方式の提供

7.5 認知能力

7.5.1  概説
認知は,情報の理解,統合及び処理を行う能力であり,これには,観念の抽象化及び組織化,推論,分
析及び統合(ICF: b164)が含まれる。認知は,複雑であり,次を含む多くの精神機能(ICF: b1)による。
a) 知性,意識,活力及び動機付けのような全般的精神機能
b) 次のような個別的精神機能
− 知覚(刺激を認知し,解釈する能力)
− 注意(注意を維持,移動,配分及び/又は共有する能力)
− 学習
− 記憶(情報を登録し,貯蔵し及び/又は必要に応じて再生する能力)
− 言語(メッセージを作る能力,及び理解する能力)
− 推論
− 問題解決
− 意思決定

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Z 8071 : 2017 (ISO/IEC Guide 71 : 2014)
− 読解
c) 感情(情動)機能
7.5.2 機能障害及び活動制限
7.5.1に示した,全般的精神機能,個別的精神機能及び/又は感情機能の障害は,知的機能が平均的又は
それ以上である人々を含むどのような人にでも発生し,活動制限をもたらす可能性がある。
認知機能障害は,活動遂行能力の低下及び/又は社会的参加の困難さに関連することがある。
機能障害と関連した活動制限は,次に影響を及ぼす。
− 活動を計画,開始,遂行及び終了する能力
− 思考及び活動を整理する能力
− 注意を維持し,重要な刺激又は情報に集中し,注意が散漫にならない能力
− 複数の作業を平行処理する能力(複数の操作,作業又は作業の各要素に対して注意を配分する能力)
− 技能を維持する能力(車の運転技術など)
− 作業又は活動を遂行し,タイミングよく反応する速度
− 情報を貯蔵し,再生する能力(時間に関連した出来事を思い出す,事実を思い出すなど)
− 情報を知覚する能力(正確でスムーズな言葉の認識など)
− 学習能力
− 一般化及び関係付けの能力
− 問題の認識,解決策の確認,選択及び実行,並びに結果の評価を含む,問題解決能力
− 理解する能力及び/又は自分の考えを表現する能力[理解すること,伝えること,話すこと,流ちょ
う(暢)性,書くこと,反復すること,正確な名称で呼ぶこと,記号及びシンボルを使用することな
ど]
− 自己制御及び自己動機付けの能力(怒りやすさ,頑固さ,低ストレス耐性,混乱,見当識障害,不安,
孤独及び憂鬱の増幅など)
− 文章を使用する方法,図形を使用する方法などの様々な学習又は情報理解の方法のし(嗜)好
刺激が強い環境下[例えば,せん(閃)光の明滅,人混みの中]など,環境条件が良好でない場合,多
くの人々が当惑又は混乱し,上記と同様の影響が多数の人々にもたらされる。
7.5.3 設計配慮点
アクセシビリティの促進につながる設計配慮点には,次を含む。
− 時間及び場所に関する情報
− 活動の開始と終了とを示すスケジュール,構成及び合図
− 詳細情報の提供前に,次に起こることの概要をユーザーに知らせる。
− プロセス実行中にユーザーの注意が持続するように,支援する適切な反応・合図・催促
− ユーザーのニーズ及びし(嗜)好に合わせて調節可能な反応
− 刺激を与えるだけでなく,同時に注意が散漫にならないようにする環境又は表示
− 個人の状況,能力及びし(嗜)好に適応可能なシステム及び手順
− 類似種の製品に関する,配置(レイアウト),反応及び制御論理の設計を同じようにする。
− 操作の順序に関するエラー許容性
− 情報を理解・吸収し,反応するための柔軟な時間設定
− 製品包装の開封,組立,取付け,操作などの単純で簡単な手順
− 複数の情報表示方法(文章の読み上げ,文章への図の追加,広く認識されているシンボルによる提示

――――― [JIS Z 8071 pdf 35] ―――――

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JIS Z 8071:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC Guide 71:2014(IDT)

JIS Z 8071:2017の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8071:2017の関連規格と引用規格一覧