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など)
− ユーザーの使用言語で理解しやすい情報及び説明書
− システムがユーザーに期待することを明確に伝える。
− 取扱説明書なしで(可能な限り)使用できるシステム
− 学習を容易にする方法(一般的に,実際に行いながら学習する方が,説明書を記憶する又は繰り返し
読み聞きするよりは,簡単である。)
− 直観的かつ簡単にたどれるように設計された緊急避難経路,及び障害のある人々が利用できる代替経
路の明確な表示
− 関連する各種の支援,福祉機器及び支援機器の適用及び互換性
注記1 認知機能障害のある人々に対する福祉機器,支援機器及び支援の例には,補助者,専用の支
援ソフトウェアを組み込んだコンピュータ,携帯用コンピュータ,タブレット型コンピュー
タなどがある。
注記2 対応国際規格では,9番目の細別の内容が8番目の細別と重複しているため,この規格では,
省略した。
注記3 対応国際規格では,13番目の細別と18番目の細別との内容に重複している部分があるため,
この規格ではこれらの内容を統合して12番目の細別とし,ISO/IEC Guide 71の18番目の細
別を省略した。
様々な認知機能障害のある人々のための設計配慮点は,認知の負荷を軽減するので,大半の人々に便利
さをもたらす(簡単に記憶できるようにする,エラーを少なくする,複雑な問題を解決しやすくするなど。)。
8 規格でユーザーアクセシビリティニーズ及び設計配慮点を考慮するための方策
8.1 一般
規格作成者がアクセシビリティ到達目標のアプローチを使用してユーザーアクセシビリティニーズを特
定する場合,又は人間の能力及び特性のアプローチを使用して設計配慮点を特定する場合,いずれの場合
であっても,これらのニーズ及び配慮点は,規格の中でアクセシビリティの要求事項及び推奨事項として
規定することができる。
箇条8では,規格作成者が規格の中で特定のアクセシビリティの要求事項及び推奨事項を規定するため
に適用できる八つの方策を8.2.18.2.8に規定する。
これらの方策は,特定されたユーザーアクセシビリティニーズ又は設計配慮点を満たすことができる方
法である。規格作成者は,作成中の規格の背景及び詳細を考慮し,ユーザーアクセシビリティニーズ及び
設計配慮点から要求事項及び推奨事項を作成するために最もふさわしい方策を検討し,選択することが望
ましい。
特定された単一のユーザーアクセシビリティニーズ又は設計配慮点を満たすために複数の方策が必要な
場合もあり,また,単一の方策を適用することで,複数のニーズ及び配慮点に配慮できる場合もある。
さらに,これらの方策は,システム設計だけではなく,ユーザーとのやりとり,作業及び活動の計画に
も適用することができる。提示された方策は,ユーザーアクセシビリティニーズ及び設計配慮点に配慮す
るために広く使用される方策であるが,全てを網羅するものではない。
提示したそれぞれの方策の後には,ある作成規格の中でその方策を適用した結果として想定される要求
事項及び推奨事項の事例を一つ又は複数挙げた。これらの事例は,説明の目的で挙げたものであり,実在
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の規格に存在する指針を示すことは意図していない。実際には,規格の要求事項及び推奨事項の詳細さの
レベルは様々である。
8.2 ユーザーアクセシビリティニーズ及び設計配慮点に基づく要求事項及び推奨事項の作成
8.2.1 情報表示及びユーザーとのやりとりの複数の方法の提供
8.2.1.1 一般事項
目的の作業を実行する場合,活動を行う場合,又はサービスを受けたり使用する場合の,いずれの場合
においても,一つの情報を知覚できる二つ以上の表示方法,及びユーザーが目的を達成するためにシステ
ムとやりとりできる複数の方法を使用することが望ましい。
8.2.1.2 複数の情報表示方法の提供
一つの情報を知覚できる複数の表示方法の提供は,次のいずれか又は両方による。
a) 複数の感覚種類によって情報を提示する(例1参照)。
b) 同じ感覚種類の二つ以上の様式で情報を提供する(例2参照)。
この基本的な方策は,代替様式と呼ばれることがある。このように,同じ情報をユーザーに対して聴覚
及び視覚,視覚及び触覚,又は聴覚及び触覚といった組合せによって提供してもよい。また,さほど一般
的ではないが,他の感覚種類(例えば,味覚,嗅覚)を視覚,聴覚又は触覚との組合せで使用してもよい。
例1 ポケットベルシステムの規格で,ポケットベルの呼出しを振動,及び聴覚又は視覚によって提
示することを要求する。
例2 録画装置の取扱説明書の規格で,録画装置又はそのリモコンの取扱いに関する文章による説明
の記載とともに,同じ情報の視覚的な図解を提供することも要求する。
8.2.1.3 ユーザーとのやりとりの複数の方法の提供
人々が目的の作業若しくは活動を完了するため,又は同じ目標に向けてシステムとやりとりするために,
複数の方法を利用できることが重要である。規格作成者は,これらの複数の方法を提供することを規格に
規定することができる(例1例4参照)。
例1 ソフトウェアの規格で,キーボード又は音声入力のいずれかをユーザーが選択して,システム
にデータを入力することを可能にすることを要求する。
例2 家電製品の規格で,器具の操作具を左右どちらの手でも操作可能にすることを要求する。操作
具は,いずれの手でも同様に使用できるようにするのがよい。
例3 顧客サービスの規格で,電話又はEメールのいずれでも顧客サービスへ連絡可能とすることを
要求する。
例4 建築の規格で,建物のある階から他の階に移動するための階段とエレベータとの両方を提供す
るように規定する。
8.2.2 より多くのユーザーに適用するための固定変数の設定
例えば,公共の建物のドアの最小幅など,設計変数をある値に固定する必要がある場合,アクセシビリ
ティが制限される人々の数を最も少なくできる値に設定することを考慮することが望ましい。
設計変数の多くは,一つの特定の値だけにしか設定することができない。例えば,ある建物の標準的な
ドアの幅は一つであり,タブレット型コンピュータのような,ある消費者生活用製品の質量には,特定の
値がある。
このような場合,規格作成者は,設計値として選択した値が,より多くのユーザーに適用するために最
適な選択かどうかを考慮することが望ましい(例1例4参照)。
最後に,固定値として考えられていた設計値が,次の例3で説明するように,より多くのアクセシビリ
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ティニーズを満たすために,実際に調整できるかどうかを検証することが望ましい。
例1 洗濯物が乾燥したことを示す洗濯乾燥機の報知音に対する要求事項では,報知音を,中心周波
数を400 Hz2 000 Hzの間とする複数の周波数で設定することを規定する。規格作成者は,よ
り多くのユーザーが報知音を聞くことができるように,この仕様が適切であるか検討する。
例2 公共の建物の規格では,太った人及び/又は車椅子使用者の通過が可能なように,ドアの幅と
して適切な最小幅を規定している。
例3 医療では,診察室の検査台の高さが固定されている場合が多い。患者と診察者との視点からユ
ーザーアクセシビリティニーズ及び設計配慮点を評価したところ,規格作成者は,検査台の高
さを調節可能とする必要があることを認識した。この場合,固定設計値だったものが調整可能
な設計変数となり,規格の要求事項は,これを反映した方法で規定することになる。
例4 郵便サービスの規格で,より多くの郵便職員が郵送された小包を持ち上げ,運ぶことができる
ように,配達の小包の質量を(例えば,27 kgでなく18 kgに)制限する。
8.2.3 より多くのユーザーに適用するための調整可能な変数の設定
調整可能な変数の範囲が,より多くのユーザーのアクセスを可能とするために十分かどうかを検討する
ことが望ましい。
調整の可能性を提供することは,特に,アクセシビリティニーズが特定の設計変数に関して多様である
場合に,アクセシビリティニーズに配慮するために,一般的に使用される方策の一つである(例1及び例
2参照)。
例1 自動車の運転席の前後調整の制御は,身体とハンドルとの間に通常よりも広い空間が必要な
人々も,足が最も短い又は最も長いドライバーでも快適に適応できるように設計されている。
例2 ヘッドフォンに提供する音量設定の範囲を,できるだけ多くの聴覚障害に適用できるようにす
る。
8.2.4 不必要な複雑さを最小限とする
8.2.4.1 一般事項
ユーザーの作業,活動及びその作業を実行するシステムが複雑になればなるほど,人々はアクセシビリ
ティの問題に悩まされることが多くなり,目的の達成を妨げるエラーを起こしやすくなる。
複雑さが必要な場合もあり,それが望ましい場合もある。しかし,より多くの人々が目的の作業を遂行
し,サービスにアクセス・利用し,製品を使用し,建築環境を移動又は利用することができるように,不
必要な及び/又は望ましくない複雑さを取り除いて,多くの設計を単純化し,合理化することが重要であ
る。
システムが複雑で,多くの機能をもつ場合,基本的なシステムの機能を分かりにくくしないように設計
することが重要である。
設計が全体の複雑さに影響を与える側面は多いので,次に記載するように,不必要な複雑さを減少させ
るために規格作成者が利用できる方法も多数存在する。
8.2.4.2 言葉の単純化
システムの説明書が,専門用語,稚拙な文章構造又はユーザーが理解できる範囲を超える用語を用いた
ものである場合,ユーザーのシステム理解及び使用が阻害される可能性がある。巧みに構成された文章及
び一般的に使用されている用語を使用すること,並びに専用用語の回避によって,アクセシビリティが高
められる(例参照)。
例 家電製品の取扱説明書に関する規格では,“取扱説明書は12歳の子供のレベルに合わせた文章で
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書くことが望ましい”と規定している。
8.2.4.3 活動及び作業の単純化
作業を完了するために,ユーザーに長い連続したステップを実行すること,及びそれらのステップを特
定の順番で実行することをシステムが要求すると,エラーの可能性が増大し,一部のユーザーが目的を達
成できる可能性が減少する。不必要なステップを省略できるか,又はユーザーがステップを実行するとき
に柔軟性(休止する,保存して後で再開するなど)がある場合,アクセシビリティは高まる(例参照)。
注記 この方策は,実行する技術に対してある作業ステップ又は活動を割り当てし直すことが必要と
なる場合がある。
例 携帯電話の規格で,人の名前を言うか,電話帳に表示された人の名前又は写真を触るだけで電話
をかけることができるようにすることが望ましいと規定する。こうすることで,電話をかけると
きに,電話番号を正しく読む又は覚えることが困難な人,及び身体的に電話に番号を入力するの
が困難な人にとって,厄介な電話番号を入力する作業を省略することができる。
8.2.4.4 基本的な機能への容易なアクセス
任意に選択できる機能が,システムの基本的な機能が分かりにくくなるような方式で組み込まれている
と,アクセシビリティの問題が発生することがある。このような場合,主要なシステムの基本的機能とし
て意図した機能へのアクセス及び使用の妨げとなる。
この問題を回避する一つの方法は,基本的なシステムの機能をアクセシブルであり,かつ,使いやすい
ものにすることである。すなわち,一部のユーザーにとっては注意をそらす,又は混乱させるだけの任意
選択機能によって,基本機能が分かりにくくならないようにすることである。この方策を実際に適用する
方法は多数あり,その幾つかは,この箇条で紹介する他の方策の使用を必要とするものである(例参照)。
例 消費生活用製品の取扱説明書作成に関する規格では,基本的な機能の使用に関する説明を最初に
提示し,選択機能又は特殊な機能の説明は,主要なシステム機能性に対する説明とは明確に分離
し,後半部分に掲載することを要求している。複雑な製品に対しては,製品の基本的な操作だけ
に対応する“クイック・スタート”の手引を提供することも規定している。
8.2.4.5 情報を使用し決定するための明確な選択肢の提供
作業又は活動中及びシステム使用中のある時点で,ユーザーがどのような選択肢を利用できるか理解で
きなければ,ユーザーがその選択を決定することは難しい。ユーザーによる情報の利用,及び意思決定を
支援することは,アクセシビリティを高め,全てのユーザーが確実にその目的を達成できるようにするた
めに役立つ。言葉を用いないコミュニケーションの手段(音,ビデオ,アイコンなど)を提供することが
望ましい(例1及び例2参照)。
例1 音声メッセージシステムの規格では,その時点でどのような選択肢が利用できるか,ユーザー
がいつでもシステムに確認できる機能を,提供すべきであると規定している。
例2 病院設計の規格には,訪問者を病院内の主要な診療科に案内するための,視覚及び触覚表示に
特化した要求事項が含まれている。
8.2.5 システムにアクセスするための個々のニーズへの対応
個々のニーズへの対応は,個々のユーザーによって異なるユーザーアクセシビリティニーズを満たすこ
とに関係する。この方策を使用することによって,個人に特定なニーズを確実に満たすことができる。個々
のニーズに対応するためには,個人に特有なニーズを確認しなければならない。情報通信技術(ICT)に
制御されているか,又はICTを組み込んだシステムは,個人の要求事項(電子的に蓄積されているか又は
アクセスできる。)に対するアクセスが比較的容易であること,並びに多くのシステム自体の順応性によっ
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て,個々のニーズへの対応によく適した性質を備えている(例1例4参照)。多くのサービスも,そのユ
ーザーのユーザーアクセシビリティニーズが確認できる場合には,容易に個々のニーズに対応できる。
この方策を適用する理由には,個人の安全,機密性,商業的な利便性,尊厳の保持,個々のニーズの対
立などがある。
例1 タブレット端末のオペレーティング・システムに関連する規格では,一連のプリファレンスを
複数の機器で利用できるようにするため,個人的なアクセシビリティのプリファレンスをクラ
ウド(ネットワーク上のサーバー)に蓄積するためのデータモデル様式を規定している。
例2 大学の学習管理システムは,それぞれの個人の学習者のアクセシビリティのし(嗜)好及び受
信する機器の特性に合わせたオンラインでの教育内容を配信する。このような学習管理システ
ムは,“学習内容は,し(嗜)好に関する特定の国際規格で規定された様式で提示する個人のニ
ーズ及びし(嗜)好を満たさなければならない”と規定している国内規格に従う。
例3 ある規格では,クレジットカード及びデビットカード(即時決済取引用カード)の支払いシス
テムが,カードとは別に記録されたアクセシビリティのし(嗜)好を特定し,アクセスする方
法を規定している。これによって,ATM(現金自動預け払い機),支払端末などの機器が,異
なった使用状況で個人の同じし(嗜)好を適用できるようにする。同じ規格の他の部分では,
一連のアクセシビリティのし(嗜)好を作成,編集及び蓄積する方法を規定している。
例4 支援サービスの提供に関連する品質規格で,“大学管理システムにおいては,特定の授業で特定
の学生に対して手話通訳者及び講義で話されたことを書面による記録で提供できる筆記サービ
スを予約できることが望ましい”,と規定している。可能な場合には,同じ通訳者が,継続して
特定の学生を担当する。また,個々のユーザーアクセシビリティニーズによって必要とされた
場合には,筆記を提供することが望ましいとされている。
8.2.6 システムとやりとりする場合の不必要な制限又は制約の排除
人々は,様々な方法で作業又は活動に従事している。ユーザーがシステムに関わる方法又はシステムと
やりとりする方法を制限してしまうと,アクセシビリティを低下させ,又は一部のユーザーにはアクセス
を不可能にしてしまうことさえある。最も頻繁に遭遇し,しかも不必要なことが多い設計制約の一つは,
ユーザーが目的の作業又は活動を完了させなければならない時間に関する制約である。物事を行うペース
は個人によって異なるので,規格作成者は,アクセシビリティを高める方法の一つとして,時間に関する
制約を排除することを検討してもよい。与えられた制限時間をユーザーが延長できるシステムは,アクセ
シビリティを高める可能性がある(例参照)。
アクセシビリティを高めるために,規格作成者が排除することを検討できる制約は,そのほかにも存在
する(空間の制約,知識に基づいた制約など)。
例 電話を使用する顧客サービスの規格では,電話のキーパッド(小形のキーボード)を使用して口
座番号を入力することを要求している。その規格では,口座番号を入力できる時間の長さには制
限がなく,キー入力の速度にかかわらず,口座番号を全桁入力するまでソフトウェアがキー入力
の処理を続行することを規定している。
8.2.7 福祉機器及び支援機器との互換性の提供
システムにアクセスするために,福祉機器及び支援機器を使用する必要がある状況では,規格作成者の
責務は,ユーザーが目標を達成できるように,一般的に使用されている福祉機器及び支援機器との互換性
の提供を確保することである(例1及び例2参照)。
例1 ソフトウェア製品の規格では,アプリケーションが提示する全ての情報に対して画面読み上げ
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JIS Z 8071:2017の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO/IEC Guide 71:2014(IDT)
JIS Z 8071:2017の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.180 : 人間工学
- 11 : 医療技術 > 11.180 : 心身障害者用の介護用具 > 11.180.01 : 心身障害者用介護用具一般
- 01 : 総論.用語.標準化.ドキュメンテーション > 01.120 : 標準化.一般規則
JIS Z 8071:2017の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISS0137:2000
- 消費生活用製品の取扱説明書に関する指針
- JISX8341-3:2016
- 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ
- JISX8341-6:2013
- 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第6部:対話ソフトウェア
- JISZ8051:2015
- 安全側面―規格への導入指針
- JISZ8520:2008
- 人間工学―人とシステムとのインタラクション―対話の原則
- JISZ8521:2020
- 人間工学―人とシステムとのインタラクション―ユーザビリティの定義及び概念
- JISZ8531-1:2007
- 人間工学―マルチメディアを用いるユーザインタフェースのソフトウェア―第1部:設計原則及び枠組み