JIS Z 8071:2017 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針 | ページ 9

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ソフトが利用できなければならないと規定している。
例2 病院建築設計の規格では,病院のどの区域が車椅子に対してアクセシブルでなければならない
かを規定している。
8.2.8 システムの代替版の提供
規格を作成するかなり前に,企業がシステムの代替版(ある状況においては,製品のシリーズと呼ばれ
る。)の開発に関する決定をしてしまう可能性が高いが,その決定は,アクセシビリティの配慮点に基づい
たものではないかもしれない。規格作成の活動自体によって,アクセシビリティ配慮点に基づく設計変更
の必要性,又はやむを得ず,システムの追加版の必要性が確認される可能性が高い。このため,この方策
をここに提示するものであり,この方策は,規格作成者が設計プロセスで特定されなかった又は満たされ
なかったユーザーアクセシビリティニーズ又は設計配慮点への対応を行うときに利用できる。この方策自
体を実行できるのは設計者だけであることは明らかであるため,規格作成者の役割は,アクセシビリティ
を高める設計のアプローチにおける必要事項を特定すること,及びそれらを実施するために適切な指針を
設計を担う人々に提供することである(例参照)。
例 ある規格作成委員会は,園芸用具に関する規格を作成するときに,比較的小さな手の人のアクセ
シビリティニーズが,現在入手できる園芸用具の設計では満たされていないことを認識した。こ
のニーズに配慮するために最善な方法を検討したところ,ユーザー全体では手の寸法に非常に大
きな差があるため,代替製品群の導入が最善の案であり,問題解決の唯一の方法であると委員会
は決定した。

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附属書A
(参考)
アクセシビリティを支援する世界的傾向
A.1 一般
ここ何十年の間に,障害及びアクセシビリティに関する理解及び表現には,著しい変化があった。世界
的な高齢化とますます多様化する世界的な消費者市場に対応して,様々な障害のモデルが生まれ,また,
新しい法律・規則,政策及び規格が作られ,設計の動向が出現した。
注記 対応国際規格では,A.1の箇条が重複していたため,この規格では次の箇条番号を繰り下げて
記載している。
A.2 世界の人口統計の傾向及び市場の多様性
“障害に関する世界報告書[27]”(2011年6月に世界保健機関と世界銀行とによって発行された。)による
と,世界人口の約15 %(10億人以上)に,一時的又は恒久的な障害があり,この人達の80 %が発展途上
国で生活している。個人が社会に十分に参加することを妨げる多くの障壁が存在する。
高齢化に伴い,アクセシブルでユーザブル(使うことができる)なシステムに対する需要は,増大して
いる。
さらに,様々な国,地域,文化及び人種のユーザーで構成される世界市場においては,様々なシステム
の設計の中で,ユーザーの様々な能力,特性,知識基盤及び期待に配慮することが必要となる。ユーザー
の認識及び経験に基づくシステムのアクセシビリティの要求事項は,システム設計及び開発の重要な原動
力である。
A.3 障害のモデル
世界的な障害及びアクセシビリティに対する考え方の変化は,過去何十年の間に生まれた“障害のモデ
ル”に反映されてきた。
最も初期のモデルは“医学モデル”であり,障害の原因になるとみられる医学的状態を参照して記載し,
障害を説明した。障害管理の焦点は,その原因となっている状態を治療する,又は処置する専門家に当て
られた。
医学モデルに対応して作成されたもう一つのモデルが,障害の“社会モデル”である。障害は,主とし
て機能障害によって起こるのではなく,社会の成り立ち及び障害のある人々に対応する方法によって起こ
るのであるという主張で,障害の理解に革新をもたらした。社会モデルでは,障害は社会に存在する物理
的,組織的及び考え方による障壁の産物である。
これらのモデルは,障害の“人権モデル”の作成に影響を与えた。“人権モデル”は,主として国,国家
及び組織が,障害のある人々に対して果たすべき道徳的及び政治的な責任を表している。
A.4 規制の枠組み,政府の政策及び規格の傾向
国際連合の“障害者の権利に関する条約(UNCRPD[24])”は,障害のある人々の権利に配慮する基本的
な国際的枠組みである。条約は,2014年末までに約160か国が署名し,約150の国が国内法として批准し
ており,公共施設及びサービスのアクセシビリティの向上を推進することを国の義務としている。

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“障害者の権利に関する条約”への対応の一環として,多くの国の政府調達規則は,公共調達への参加
資格の前提条件として,製品及びサービスが一定のアクセシビリティの要求事項を満たすことを要求して
いる。
これらの政府の政策は,アクセシブルな製品及びサービスの市場規模拡大に貢献する。“障害者の権利に
関する条約”の4条(f) 一般的義務は,製品,サービス,設備及び施設に対する規格及び指針の作成におい
て,ユニバーサルデザインを推奨している[24], [25]。
世界的にみると,一般的な傾向として,アクセシビリティに対するアプローチは,障害のある人々を分
類し,分離するという国家的なアプローチから,ユーザーを様々な個別のニーズをもつ個人として認識す
る,国際的な統合アプローチに移行している。このことは,W3Cウェブコンテントアクセシビリティの指
針[26],米国リハビリテーション法第508条[23],ISO/IEC JTC 1アクセシビリティの特別ワーキンググルー
プ[15]の作業,欧州指令376,420,及び473[17]並びにこの規格を含み,アクセシビリティと密接に関連した
アプローチを考案するための主導的な取組が発展したことによって示されている。
A.5 デザインの傾向
ユニバーサルデザイン及びこれと同じような概念(インクルーシブデザイン,デザイン・フォー・オー
ルなど)は,システムを最も広い範囲のユーザーにユーザブル(使うことができる)にすることを指して
いる。これらの概念は,障害のある人とない人との区別をなくすことによって,また,全ての人々を多様
なグループにおける潜在的なユーザーとして含めることによって,バリアフリーデザインのような概念を
超えるものとなっている。これらの概念が意図するのは,“主流な”システムができるだけ多くの人々にユ
ーザブル(使うことができる)になるということである(ただし,全てのユーザーが同じ方法でシステム
を使用することが期待できることを意味するものではない。)。
これらの概念では,生活の様々な状況で人間がアクセシブルなシステムから利益を受けることが認識さ
れている。製品及びサービスを障害のある人々にとってユーザブル(使うことができる)にする機能は,
その他の全ての人にとっても,便利かつ簡単な使用を可能にする。これは,人々が眼鏡をなくした,足を
骨折した,ベビーカー又はかさばった荷物を持って旅行する場合など,一時的に困難がある場合に特に役
立つ。このため,アクセシビリティ及びユーザビリティが向上すれば,全ての人にとってよりよい製品及
びサービスとなることが多い。
注記 これらのそれぞれの用語の意味は,世界中で使用する多くの人々及び組織の間で若干の違いが
ある。ただし,近年,ユニバーサルデザイン,アクセシブルデザイン,デザイン・フォー・オ
ール,バリアフリーデザイン,インクルーシブデザイン,トランスジェネレーショナルデザイ
ンなどの用語は,同じ意味で互換的に使用されることが多い。

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附属書B
(参考)
専門用語の情報源としての国際生活機能分類(ICF)
B.1 専門用語の情報源としてのICFの機能
この規格の一部において,人間の能力及び特性を説明するために,ICF 2001に記載されている専門用語
及び関連参照コードを使用している。ICFの分類は,規格のある部分で使用できる専門用語の情報を提供
する。
ICFの専門用語は,健康,障害,リハビリテーション(社会復帰),保健医療福祉,保険,社会保障制度,
雇用,教育,経済,社会政策,法令,建築環境設計・変更などの広い分野で使用されている。
B.2 ICFの情報ツール
ICFを初めて使用する規格作成者は,ICFの使用開始に当たり,次のウェブサイトの紹介及びユーザー
ガイド(利用者手引)の情報を確認することができる。“ICFブラウザー”は,規格で使用する専門用語を
確認するために使用できる用語の検索ツールである。
ICFの紹介及びユーザーガイド(利用者手引)教材は,“ICFイラスト(図解)図書館”で参照できる。
http://www.icfillustration.com/icfileng/top.html
ICFの用語及びコードの場所を確認する用語検索ツールは,“ICFブラウザー”で参照できる。
http://apps.who.int/classifications/icfbrowser/
ICFブラウザー検索ツールは,世界保健機関の主たるウェブサイトからも参照できる。
www.who.int
B.3 ICF構成要素の専門用語及び参照コード
ICF構成要素の用語の定義及びその参照コード文字は,次による。
− 心身機能('b')とは,身体系の生理的機能(心理的機能を含む。)である。
− 身体構造('s')とは,器官,肢体,その構成部分などの,身体の解剖学的部分である。
− 活動('d')とは,課題又は行為の個人による遂行のことである。
− 活動制限とは,個人が活動を行うときに生じる難しさのことである。
− 参加('d')とは,生活・人生場面への関わりのことである。
− 参加制約とは,個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさのことである。
− 環境因子('e')とは,人々が生活し,人生を送っている物的な環境,社会的環境,及び態度による環
境を構成する因子のことである。
− 機能障害とは,著しい変異,喪失などといった,心身機能又は身体構造上の問題である。
ICF参照コード文字の後ろには,ICF構成要素の一連のコード番号が続く。ICFコード番号のそれぞれの
追加の桁は,ICF分類の,より詳細な情報の下位レベルを示している。ICF分類の第1レベルの例は,“b2
感覚機能”であり,第2レベルは,“b230 聴覚機能”である。
B.4 ICFで検索用語として使用する人間の能力及び特性
表B.1は,ICFで使用する専門用語の検索を容易にするため,“ICFブラウザー”の検索語入力欄で使用

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することができる用語の一覧表によって,この規格の一部で使用する能力及び特性用語の一覧表を示す。
表B.1−この規格の人間の能力及び特性のICFブラウザーで使用する検索用語
この規格で使用する “ICFブラウザー”の検索語入力欄に入力する検索用語 :
能力及び特性用語 http://apps.who.int/classifications/icfbrowser/
感覚能力 感覚
視覚機能 b210 見る,視野,目,凝視する,コミュニケーション
聴覚機能 b230 聞く,耳,音,傾聴する,コミュニケーション
触覚 b265 触る,肌,触覚の,振動,圧力
味覚及び嗅覚 b250,b255 味,匂い,舌,感じること,臭気
免疫系の機能 b435 免疫のある,アレルギー性の,感受性,物質
身体的能力 構造,機能
体の大きさ 神経筋骨格,体重,空間
上半身 s730 動作,関節,腕,手,手の届く範囲
下半身 s750 動作,移動,筋,足,歩行
強さ・持久性 b730,b740 動作,筋,持久性
音声及び発話 b398,b310 音声,発話,高低
認知能力 精神機能
全般的精神的 b110b139 見当識,知的,個性,活力
個別的精神的 b140b189 注意,記憶,知覚,言語
B.5 専門用語参照枠組みのICF以外の追加の情報源
規格中で概念を表現するための適切な専門用語がICFに記載されていない場合は,個人的要素又は建築
環境に関する用語に対する,次の国際的な用語分類の利用を推奨する。
個人的要素を記載する用語は,国際医療用語集(SNOMED-CT)[19]で参照できる。
http://www.ihtsdo.org/snomed-ct/
物理的環境及び建築環境の構成要素を記載する用語は,オムニクラス[21](建設産業分類システム)及び
ユニクラス[22](建設産業統合分類)の枠組みで参照できる。
http://www.omniclass.org/background.asp

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JIS Z 8071:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO/IEC Guide 71:2014(IDT)

JIS Z 8071:2017の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8071:2017の関連規格と引用規格一覧