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Z 8462-7 : 2018 (ISO 11843-7 : 2012)
4 定量分析及びバックグラウンドノイズ
4.1 分析における誤差の原因
一般に,サンプルから測定値を求める定量分析は,調製,機器分析,データ解析及び検量で構成する。
分析における,これらの分析手順は,物理的に互いに独立であると同時に,確率論的にも互いに独立であ
る。
この規格は,機器分析だけに適用できる。ただし,上記以外の分析手順に起因する誤差も,同様に,最
終的な値である正味状態変数の誤差に影響する。すなわち,測定値の推定に関わる合成不確かさは,関与
する手順に関連する全ての不確かさの伝ぱ(播)に依存する。そのため,次の条件が,この規格を利用す
る際に必要である。
クロマトグラフィにおける検出可能な最小値に近い濃度では,測定機器へのサンプル注入に起因する誤
差(例えば,最近の機器ではCV=0.3 %)は,バックグラウンドノイズ(3.2によって,CV=30 %)ほど,
重要ではない。ノイズ以外の要素が,ノイズに匹敵する影響をもつ場合には,この規格の方法は適用でき
ない。
データ解析は,通常,ピーク高さ,面積などのような,雑音を含む機器出力からシグナル成分を抽出す
る処理である。ここで,ピーク高さとは山形のシグナルでの頂上の相対的な高さを,面積とはシグナル領
域における強度の積分を,それぞれ意味する。この処理の統計的影響をこの規格では扱う。シグナルをデ
ジタルフィルタ又はアナログフィルタ処理した後の分析にも適用できる。
4.2 バックグラウンドノイズの確率過程
応答変数の典型的な例は,クロマトグラフィにおいて測定する面積及び高さである。この規格では,出
力強度の差[式(6)]及び面積[式(10)及び式(11)]は,機器出力の強度Yiの差及び積算値としている。応
答変数は,同一機器での連続測定から得たものであっても,通常は互いに独立である。一方,一連の強度
Yiは,自己相関のある確率過程として定式化し,多くの場合,1/f(ノイズ)であると解釈している[1]。
1/f(ノイズ)のパワースペクトルP(f)は,式(3)のとおり周波数fに反比例する傾きをもつ。
1
Pf (3)
f
ここに, f : 周波数,ゼロに近い値
数学の理論では,最も簡単な確率過程のモデルは,ホワイトノイズである。wiをホワイトノイズのポイ
ントiにおける確率変数とする。定義によって,どのポイントiにおいても,ホワイトノイズの平均はゼ
ロ,そのSD,すなわちw~は一定である。i≠jの場合,ノイズ強度wi及びwjが互いに独立であることは,
ホワイトノイズの重要な特徴である。
マルコフ過程は,強度Mi及びMjが互いに独立ではない(i≠j)という数学的モデルである。機器出力の
変化に自己相関がある場合,マルコフ過程を,その変化の主要な成分とみなす[式(9)参照]。ポイントi
のマルコフ過程は,次の式(4)で定義できる。
Mi=ρMi−1+mi (4)
ここに, mi : ポイントiにおけるホワイトノイズの確率変数
ρ : 前の状態Mi−1を現状態Miがどの程度保持しているかを示す度
合い(−1<ρ<1)
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5 精度の理論
5.1 自己共分散関数に基づく理論
ワインフォードナー(Winefordner)及び彼の共同研究者が提案した理論[2][3][4]は,式(5)のとおり自己共
分散関数に基づいている。
ψ(τs ) (5)
E[Yt0+τs Yt0 ]
ここに, E[] : 角括弧内にある確率変数のt0における期待値
シグナル
ノイズ
図1−シグナル,ノイズ及び強度の差(t0及びt0+τsにおける)
図1の上半分は,シグナルをく(矩)形波(近似的な描写)として示す。シグナルに加わるノイズ(バ
ックグラウンドに相当する)は,図の下半分に描かれている振動する曲線で示される。t0は,シグナルの
バックグラウンド部分の時刻を表し,t0+τsはシグナル自身の時刻を表す。測定(シグナル検出)とは,時
刻t0及びt0+τsでの強度の差を求めることである。バックグラウンドノイズが存在しなければ,シグナル
の値は,t0において0となる。サンプルを測定した場合は,シグナルの値は,t0+τsにおいて有限の値をも
つ。この規格の測定モデルでは,シグナルとノイズとは重なり合い,このランダムな混合過程によって,
0tY及び tY
時刻tiにおける強度はYiとする。時刻t0及びt0+τsにおける強度をそれぞれ 0
sと表し,その強度
の差を式(6)で表す。
――――― [JIS Z 8462-7 pdf 7] ―――――
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図2−ノイズの自己共分散関数
時刻0及びτsにおける自己共分散関数Ψ(τ)の値の差は,式(7)の右辺に対応する。
分析化学的な分光測定では,強度の差は,バックグラウンドゆらぎに支配される検出可能な最小値の近
傍で,しばしば利用する。強度の差,例えば,バックグラウンド補正を行ったシグナル強度は,次の式(6)
で表す[2][3][4]。
ΔY Yt0τsYt0 (6)
ここに, ΔY : 応答変数Y
強度の差の分散を,式(7) [2][3][4]によって示す[式(7)の導出に関しては,附属書B参照]。
2
σY
Δ 2ψ 0 ψ τs (7)
図2に示すように,実際の自己共分散関数,Ψ(0)及びΨ(τs)をバックグラウンドノイズの観測から求めれ
ば,式(7)は実際の測定で利用できる。式(7)を式(2) (σY=σΔY)に代入すれば,検出可能な最小値が得られる。
自己共分散関数とパワースペクトル密度とをフーリエ変換によって関係付けるウィーナー・ヒンチンの
定理[5]が利用できる。
2
ψ τs Sb f Gf (8)
cos 2πfτs df
0
ここに, Sb(f) : 観測したバックグラウンドノイズのパワースペクトル
G(f) : 測定機器の周波数応答
式(8)は,測定値のSD,つまり式(7)のパワースペクトルによる推定を表す。
5.2 パワースペクトルに基づく理論
ベースラインのパワースペクトルから,機器分析で測定した面積及び高さのSDを導く理論を,FUMI
(function of mutual information)理論[6][7][8]という。これらの測定値は,図3に示すように,機器出力を,
積分範囲で積分した値である。シグナル(形状及び大きさ)が一定で,面積又は高さの測定値の誤差の要
因がノイズだけなら,積分範囲内のノイズの面積又は高さと誤差は等しい。簡単にいうと,面積又は高さ
の測定誤差は,ノイズの面積又は高さに等しい。ノイズによって生成された面積のSDは,高さ測定値又
は面積測定値のSDと一致する。
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Z 8462-7 : 2018 (ISO 11843-7 : 2012)
Y
シグナル
ノイズ
Z S
ekt t
t−b+1
t0
I
kt fkt
c 1
Z : ゼロウィンドウ(ベースラインのノイズデータの平均を取るための区間。
この区間のデータポイント数をbとする。)
S : シグナル領域(シグナルが立ち上がってから立ち下がるまでの領域)
I : 積分範囲
kc : 積分範囲の開始のデータポイントから一つ前のデータポイント
ke : シグナル領域の最終データポイント
kf : 積分範囲の最終データポイント
(他の記号は附属書Aに示す。)
図3−シグナル,ノイズ,ゼロウィンドウ及び積分領域
積分範囲のデータポイント数は,kf−kcである。
FUMI理論では,ポイントiにおけるノイズ強度Yiは,式(9)のとおりホワイトノイズとマルコフ過程(Mi)
とをランダムに足し合わせた値としている。
Yi=wi+Mi (9)
FUMI理論の目的は,積分範囲内のノイズの面積AFのSDを求めることである(図3参照)。
実際の測定において,特にクロマトグラフィにおいて,図4に示すように,様々な積分手法が用いられ
る。その方法には,シグナルが立ち上がったデータポイントからシグナルが立ち下がったデータポイント
まで水平のベースラインを引き,その領域を積分する方法と,シグナルが立ち上がったデータポイントと
シグナルが立ち下がったデータポイントとを直接斜線で結び,その領域を積分する方法とがある。測定値
は,領域[kc+1, kf]内における,水平又は斜めのベースラインを基準とした強度の積分である。水平なベー
スラインは,ゼロポイント(t0)の(補正された)強度から水平に引き,斜めのベースラインは,シグナ
ル領域の両端(0, ke)の強度を直線で結ぶ。後者は,緩やかに変化するバックグラウンド(クロマトグラ
フィでは,“ドリフト”という。)に対して,しばしば有効である。
――――― [JIS Z 8462-7 pdf 9] ―――――
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Z 8462-7 : 2018 (ISO 11843-7 : 2012)
水平のベースライン
a)
I
斜線のベースライン
S
tke
S : シグナル領域
I : 積分範囲
注a) 式(11)で用いる台形の面積とは,この部分をいう。
t f ]での積分様式
図4−水平線(破線)及び斜線(実線)を用いた領域[ tkc1,k
ベースラインが水平の場合,ノイズによって生成された面積は,シグナルがない場合の積分範囲でノイ
ズによるランダムな軌道と水平線とに挟まれた面積であり,式(10)で表す。
kf
AF Yit
Δ (10)
ikc1
ここに, Yi : ノイズ強度
Δt : 連続するデータの時間間隔
AF : Yの応答変数
ベースラインが傾いている場合,ノイズによって生成された面積は,式(11)で表す。
kf
AF YiΔt AT (11)
i kc 1
ここに, AT : 積分範囲の両端(kc+1及びkf)を通るそれぞれの垂直線と,
斜線及び水平線とで囲まれた台形の面積(図4参照)。積分範
囲で斜線が水平線より上にあれば正,下にあれば負である。
図4に示す台形の面積の符号は,負である。
ノイズによって水平線の周囲に生成された面積AFのSDであるσFの一般的表現は,次の式(12)によって
表す。
σF E AF寰
2
1
(pdf 一覧ページ番号 )
ここに, E[] : 角括弧内にある確率変数の期待値。
ノイズによって生成された面積の水平線(破線)上での集合
平均[式(11)の右辺第1項]はゼロであり,かつ,台形ATの
集合平均もゼロであるから(附属書C参照),E[AF]=0となる。
上記の導出は,ゼロレベル,すなわちY0=0には不確かさが存在しないという仮定に基づいている。し
かし,このタイプの不確かさは,実際には存在するため,考慮しなければならない。クロマトグラフィで
――――― [JIS Z 8462-7 pdf 10] ―――――
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JIS Z 8462-7:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 11843-7:2012(IDT)
JIS Z 8462-7:2018の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.020 : 度量衡及び測定一般
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 8462-7:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用
- JISZ8101-3:1999
- 統計―用語と記号―第3部:実験計画法
- JISZ8402-1:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第1部:一般的な原理及び定義