JIS Z 8462-7:2018 測定方法の検出能力―第7部:分析機器ノイズの確率論的性質に基づく方法 | ページ 3

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Z 8462-7 : 2018 (ISO 11843-7 : 2012)
は,実際の強度と,ゼロレベルつまりゼロウィンドウ区間でのバックグラウンド強度の平均値との差を測
定するのが,一般的である(図3参照)。
ゼロウィンドウを用いて測定した面積(ノイズに生成された面積)のSDの二乗は,次の式(13)によって
表す[6][7][8]。
σY2=σZ2+σF2 (13)
ここに, σZ2 : ゼロウィンドウに起因する分散
σF2 : 面積測定値に起因する分散[σFについては式(12)参照]
式(14)及び式(15)の導出を,附属書Cに要約する。式(13)を式(2)に代入すれば,検出可能な最小値を計算
できる。
分散σZ2は,次の式(14)によって表す[6][7][8]。
2 2
2 kf kc ~2 kf kc 1 ρb 1 ρ2b~2
σZ w 2 b 2ρ ρ2 2 m (14)
b b2 1 ρ 1 ρ 1 ρ
シグナル領域における積分の影響は,次の式(15)によって表す[6][7][8]。
kc ~w
2 2
σF kf (15) 第1項
kf kc
1 1 ρkf kc 21 ρ2 ~2
2 kf kc 2ρ ρ m (15) 第2項
1 ρ 1 ρ 1 ρ2
2
2k k kc
1
2 ρ c
1 ρf ~2
ρ m (15) 第3項
1 ρ2 1 ρ
2~w
2
α (15) 第4項
2k k k 2k
1 ρe
1 ρfc
kkc 11 ρ c
α2 2 2α ρe 2
1 ρ 1 ρ 1 ρ ~2
m (15) 第5項
kf kc kf kc 1 i
1 ρ kc 1
ρke
i1 1 ρ
ここに, kf kc kf kc 1
α (16)
2ke
w~ : ホワイトノイズのSD
m~ : マルコフ過程に含まれるホワイトノイズのSD
ρ : マルコフ過程のパラメータ(定数)
kc,kf,ke : 図3及び図4によって定義
b : ゼロウィンドウ内[−b+1, 0]での連続するデータポイン
ト数
式(15)の五つの項は,測定の不確かさに対して次のような確率論的な寄与がある。
− 第1項 : 積分範囲(データポイント数 : kf−kc)におけるホワイトノイズに起因する誤差
− 第2項 : 積分範囲(データポイント数 : kf−kc)におけるマルコフ過程に起因する誤差
− 第3項 : ゼロポイント(t0)と積分の開始ポイントとの間にあるkc個のデータポイントの影響
− 第4項 : 斜めのベースラインにおけるホワイトノイズの影響
− 第5項 : 斜めのベースラインにおけるマルコフ過程の影響

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6 FUMI理論の実践的な利用法

6.1 ノイズパラメータの推定

  式(13)式(16)で示すFUMI理論を適用する場合に必要な全てのパラメータは,実験データから決定する。
図3に示すとおり,シグナルパラメータ(b,kc,kf,ke)は,選択したピークの形から設定できる。一方,
ノイズパラメータ(w~,m~及びρ)は,次に示すように,ノイズパワースペクトル密度から自動的に決定
される。
ノイズパワースペクトル密度は,ノイズデータYiのフーリエ変換から求める。フーリエ変換及び逆フー
リエ変換は,次の式(17)及び式(18)によって表す。
N 1
Yk YiWki (17)
i 0
1N 1 ki
Yi Yk W (18)
Nk 0
ここに, N : フーリエ変換領域に含まれるデータポイント数
W : exp[−j(2 一一
j : 虚数単位
確率過程Yiのパワースペクトル密度P(k)は,次の式(19)によって表す。
k
Y Yk
Pk (19)
N
ここに, Y : Yの共役複素数
k k
式(9)で示すモデルノイズを採用する場合は,式(19)のパワースペクトル密度は,次の式(20)によって表す
[6][7][8]。
~2
m
Pk ~2
w (20)
2 2 2
1( ρ) [(1ρ) 4 π (k/N)
FUMI理論に必要なノイズパラメータ(w~,m~,ρ)は,式(20)を実際のバックグラウンドノイズのパワ
ースペクトル密度に非線形最小二乗法を当てはめることによって求める。
0Yは直流成分であり,対応するパワースペクト
式(19)及び式(20)に含まれているフーリエ変換の第1項
ル密度P(0)を無視する。式(20)の周波数kは整数であり,1からナイキスト周波数であるN/2までの範囲に
わたる。式(20)の典型例を,図5に示す。
実際の測定では,周波数kをHz(ヘルツ)で表すことが多い。Δtを,連続するデータの時間間隔(デ
ータYiの収集に使用したアナログ−デジタル変換器のサンプリング間隔)とする。k(=1, 2, ···, N/2)に
対応する周波数は,k/(Δt N)である。

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P(f)
f
注記 この図は,連続ノイズをモデルにしている。
図5−モデルノイズのパワースペクトル密度
実際には,パワースペクトル密度は,図5の理論曲線が示すほど,滑らかではない。観測されたものは,
滑らかな理論曲線の回りを振動するように見える場合がある。

6.2 SD推定の手順

  FUMI理論は,測定した面積のSDを推定するために,機器出力を使い,検出可能な最小値を導出する。
その手順を,図6に示す。
デジタル機器出力,例えば,クロマトグラム及びスペクトルは,シグナルパラメータ及びノイズパラメ
ータを抽出するために必要である。シグナルパラメータは,シグナルの立ち上がりをデータポイント0と
し,そのデータポイント0からデータポイントkeの範囲にわたるシグナル領域,データポイントkc+1か
らデータポイントkfの範囲にわたる積分領域,及びデータポイント0からデータポイント(−b+1)の範
囲にわたるゼロウィンドウを含む(図3参照)。シグナル領域のデータポイント数は(ke+1),積分領域の
データポイント数は(ke−kc),ゼロウィンドウのデータポイント数はbデータポイントで,それぞれを構
成する。
シグナルパラメータは,任意であるが実践では次の指標が有用である。図3に示すようなガウス型ピー
クでは,σを標準偏差(幅)及びシグナルの中心をガウス型ピークの平均とすると,シグナル領域の範囲
は,ピークの中心から±3σ,±4σなどの範囲がよく用いられる(ke=6σ又は8σ)。多くの場合,ピーク高
さ又は全面積が典型的な測定値である。ピーク高さ測定においては,(kf=kc+1)である。全面積測定では,
(kf=ke−1)及び(kc=0)である。いずれの場合においても,積分領域のデータポイント数は,(kf−kc)
である。精度の観点からは,図3に示すように,シグナル領域の一部だけを積算することも有効である。
図3に示すように,経験的に,ゼロウィンドウは,シグナル領域よりかなり狭い領域として,設定できる。
注記 図3のほか,図4も参照するのがよい。
シグナルパラメータとは異なり,ノイズパラメータ(w~,m~及びρ)は,バックグラウンドノイズの確率
論的性質に従って,一意に決定する。液体クロマトグラフィの例を,表1に示す。第1段階は,シグナル
が存在しないバックグラウンド領域を識別することである。

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表1−液体クロマトグラフィ[6]におけるノイズパラメータ推定の例
w~ m~
実験A 14 3.7 0.99
実験B 12 9.0 0.94
実験C 14 5.6 0.99
第2段階は,この領域のバックグラウンドノイズをフーリエ変換し,式(19)に従って,パワースペクト
ル密度を得ることである。ドリフトなどの低周波ノイズを評価するには,データ数はシグナル領域のデー
タ数の10倍あった方がよい。また,高速フーリエ変換[FFT(fast Fourier transform)]のデータポイント
数は通常2の累乗(又は2のn乗)である。シグナル領域のデータ数が50又は100で,FFTを用いてバッ
クグラウンドノイズのパワースペクトル密度を計算する場合,式(19)のデータポイント数Nは,512又は
1024が適切である。
第3段階は,上記の計算によって得られたバックグラウンドノイズのパワースペクトル密度に,理論曲
線[式(20)]を最小二乗法に当てはめることである。FFT領域のデータポイント数が少ない(例えば,32)
と,ノイズパラメータの推定に支障が生じることがある。
上記のように決定したシグナルパラメータ及びノイズパラメータを式(13)式(16)に代入し,FUMI理論
の最終的な値(精度)を得る。
FUMI理論の適用範囲はかなり広いが,次の二つの典型的な状況には適用できない。
− バックグラウンドノイズが主要な誤差原因ではない場合である。例えば,質量分析において,イオン
化がノイズよりも大きな誤差を生じる場合,FUMI理論は面積測定値のSDを過小評価する。
− 実際の機器ノイズがホワイトノイズとマルコフ過程との混合過程では,適切に近似できないノイズを
含んでいる場合である。一例は,強いスパイクノイズである。
検出可能な最小値は,正味状態変数のCVが30 %を示す正味状態変数の値として,精度プロファイルか
ら作図によって求める。検量線が線形の場合は,正味状態変数の精度プロファイルと応答変数の精度プロ
ファイルとは同一である[9][10]ため,応答変数のCVにも,この方法を同様に適用可能である。しかし,非
線形の検量線の場合は,応答変数の精度プロファイルと正味状態変数の精度プロファイルとは異なる。こ
の場合は,JIS Z 8462-5の方法を用いて精度プロファイルを変換することによって,検出可能な最小値を,
同様に推定できる。

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Z 8462-7 : 2018 (ISO 11843-7 : 2012)
機器出力
シグナル ノイズ
フーリエ変換
パワースペクトル
式(20)への当てはめ
シグナルパラメータ ノイズパラメータ
式(13)
精度
図6−FUMI理論の手順

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JIS Z 8462-7:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 11843-7:2012(IDT)

JIS Z 8462-7:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8462-7:2018の関連規格と引用規格一覧