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Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
る約10 Vの全平均値の周辺で管理されているという結論が導かれる。更なる標準的な分析で,工程は安定
しているが,仕様要求事項を満たすことができないということが明らかとなる。ただし,この分析そのも
のは,なぜ要求事項を満たすことができないかについての手がかりを与えることはない。
個々の観測値の標準的な管理図(例えば,X管理図)が意義のあるものとなり得ない理由は,管理限界
が工程変動を基準にしていて,望まれる又は指定された要求事項を基準にしていないことである。したが
って,工程が自然に大きな変動を示せば,それに応じて管理限界は広くなる。要求されているのは,変動
の原因を特定又は除去するために,パターン及び傾向を示す,又は変化点を指し示すより優れた方法であ
る。
注記 個々の観測値及び移動範囲管理図(例えば,X-Rm管理図)のようなツールを追加して使用すれ
ば,専門家は他の工程変動の問題に取り組むことができる。
6.4 累積和図-全体像
推奨するもう一つの選択肢は,累積和図をプロットするものである。同じデータを使用する累積和のプ
ロットを,図1 c)に示す。
前の二つの図からは,工程の水準に有意な変化がどこで発生したのか,それとも,そもそも変化が発生
したかどうかがすぐには分からないのに対して,累積和図は,明確なパターンを示している。(目視による)
フィッティングは,10番,18番,それに32番2)のモータの後で,工程の水準に四つの変化が起きている
ことを示している。
箇条4に示すように,上向き又は下向きの傾きは,推奨値よりも高い又は低い値を示し,水平の線は,
推奨値における工程を示している。したがって,この工程は,おおよそ11番18番のモータの短い区間
に限って,目標に近いことが見てとれる。1番10番のモータは,33番以降のモータと同じように目標値
よりも高く,おおよそ19番32番のモータは電圧の低いモータになっている。
こうした変化及びその意味については,6.6で規定し,詳しい解釈を行う。
現実の状況では,生産のこうした点で作業上,何が起きて,このような電圧性能の変化を引き起こした
かを解明することが,次のステップとなる。これは,特に10 Vレベルでの性能の一貫性の改善に向けた一
定の疑問を提起する。例えば,32番のモータの特性が,なぜ33番のモータの特性と異なるものになって
しまったのか,又はこの点で試験歯車の校正に何が起きたのか,シフト又はバッチ変更によるものなのか,
などの疑問である。状況はいかなるものであれ,累積和図をこのように使用すると,優れた診断ツールと
なる。改善への時間的情報を特定しているのである。
注2) 対応国際規格の31番の記載は誤りであり,32番に修正した。
6.5 累積和図の作成
次の例にあるような個別の値を使用する累積和図は,箇条5に示す非常に簡易なステップで作成できる。
ステップ1 : 参照値RVを選択する。ここでの推奨値又は参照値は,10 Vとなる。
ステップ2 : 生産順に結果(電圧)を表形式にして,表1にあるようなモータ番号を基準に,第2列(及
び第6列)に電圧を記入する。各結果から参照値の10を差し引いたものを,表1の第3列(及
び第7列)に記入する。
ステップ3 : 表1の第3列(及び第7列)の値の累積和をとり,それを第4列(及び第8列)に記入する。
第4列(及び第8列)の値を,ステップ4及びステップ5の軸のスケールに関するコメント
に注意しながら,図1 c)に示すように観測(モータ)番号を基準にして打点する。
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表1−一系列の個別の値から累積和値を計算するための表
(1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8)
モータ番号 電圧(V) 電圧−10 累積和 モータ番号 電圧(V) 電圧−10 累積和
(V) (V)
1 9 −1 −1 21 3 −7 +11
2 16 +6 +5 22 9 −1 +10
3 11 +1 +6 23 7 −3 +7
4 12 +2 +8 24 14 +4 +11
5 16 +6 +14 25 2 −8 +3
6 7 −3 +11 26 6 −4 −1
7 13 +3 +14 27 4 −6 −7
8 12 +2 +16 28 12 +2 −5
9 13 +3 +19 29 8 −2 −7
10 11 +1 +20 30 8 −2 −9
11 12 +2 +22 31 12 +2 −7
12 8 −2 +20 32 6 −4 −11
13 8 −2 +18 33 14 +4 −7
14 11 +1 +19 34 13 +3 −4
15 14 +4 +23 35 12 +2 −2
16 8 −2 +21 36 14 +4 2
17 6 −4 +17 37 13 +3 5
18 14 +4 +21 38 10 0 5
19 4 −6 +15 39 13 +3 8
20 13 +3 +18 40 13 +3 11
6.6 累積和図の解釈
6.6.1 一般
この例にあるように,累積和図を遡及的な診断に使用するとき,通常は個々の打点を重視するのではな
く,図1 c)に示すようにデータの間を通る,工程の水準ごとに目で見て最も当てはまる直線を引くほうが
よい。
こうした線の傾き又は縦軸を基準にした線の相対的な位置を,通常のデータと同じように解釈しないよ
うに注意しなければならない。縦軸は,もはや実際の電圧を表すものでないことに注意する。
上向き又は下向きの傾きのある直線は,通例のように工程の水準が増大又は減少していることを示すも
のではなく,参照値より大きい又は小さい値で一定であることを示している。傾きが大きくなればなるほ
ど,差は大きくなる。水平の線は,工程の水準が参照値で一定であることを示す。次に,モータの累積和
図の解釈について,詳細に考察する。
6.6.2 “ノイズを伴わない仮想的”データを用いた累積和図の解釈の基本
1番18番のモータの電圧系列が,表2の第2列に示すように10,10,10,13,13,13,10,10,10,
9,9,9,10,10,10,8,8,8となるものと仮定する。参照値は,依然として10 Vである。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 12] ―――――
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表2−累積和図の基本的な解釈を説明するための仮想的モータデータ
(1) (2) (3) (4)
モータ番号 電圧(V) 電圧−10(V) 累積和
1 10 0 0
2 10 0 0
3 10 0 0
4 13 +3 +3
5 13 +3 +6
6 13 +3 +9
7 10 0 +9
8 10 0 +9
9 10 0 +9
10 9 −1 +8
11 9 −1 +7
12 9 −1 +6
13 10 0 +6
14 10 0 +6
15 10 0 +6
16 8 −2 +4
17 8 −2 +2
18 8 −2 +2
結果としての累積和図は,図2のようになる。
図2−解釈方法を説明するための仮想的モータ電圧の累積和図
表2の第2列の実際の電圧を図2の累積和図と比較すると,次のことが分かる。
a) 1番3番,7番9番及び13番15番のモータは全て,参照値の10 Vになっており,これらのモー
タは累積和図では全て,水平の線で表されている。垂直スケールにおける水平な線の位置は,実際の
モータではなく,それまでの累積和の値に関係していることも分かる。
b) 4番6番のモータは,参照値より値が高く,13 Vであり,これらのモータは累積和図では上向きの
傾きによって表されている。問題を複雑にするモータ間の電圧の差がないので,これは明らかである。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 13] ―――――
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ノイズがある場合,特定の傾きからその区間全体で平均値を求める式は,次のようになる。
直線の末端部の累積和値−直線の先頭部の累積和値
平均電圧=参照値+
観測間隔の数
9 30
Vavg=10+ =13
c) 同様に10番12番のモータの場合
6 9
Vavg=10+ 9
3
d) 16番18番のモータの場合
0 6
Vavg=10+ 8
3
要約すると,累積和図上の異なる傾きは,次のことを示している。
− 1番3番,7番9番及び13番15番のモータでは,電圧は一定で,その値は10である。
− 4番6番のモータでは,電圧は一定だが,その値は13である。
− 10番12番のモータでは,電圧は一定で,その値は9である。
− 16番18番のモータでは,電圧は一定で,その値は8である。
これは,“ノイズのない”データを基準にしているので明らかである。ただし,表1の(2)列及び(6)列に
ある実際の“ノイズのある”データを基準にすると,すぐに明らかというわけにはいかない。
6.6.3 “実際の”データを用いた解釈
図1 c)の累積和図は,次のことを示している。
a) 1番10番のモータの平均電圧レベルは,参照電圧より高い値になっている。したがって,計算値は
傾きによって示される。
直線の末端部の累積和値−直線の先頭部の累積和値
平均電圧=参照値+
観測間隔の数
20 0
Vavg=10+ =12
10
b) 同様に,11番18番のモータでは,線が水平なので,平均電圧=10である。
c) 19番31番のモータの場合
12 20
Vavg=10+ =7.5
13
d) 32番40番のモータの場合
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 14] ―――――
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11 ( 12)
Vavg=10+ =12.6
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要約すると,累積和図を使用すると,実際の工程変動に対応した工程平均の変化を計算することができ
る。この点は,一般に広く用いられているあらかじめ定められた柔軟性のない標準的な移動平均によるア
プローチよりも,はるかに進んでいる。結果を要約した推定量を表3に示す。
表3−変動移動平均期間によるモータの平均電圧
モータ番号 モータの平均電圧(V)
110 12.0
1118 10.0
1931 7.5
3240 12.6
この累積和の傾きと平均電圧との関係から計算する方法に代わり,累積和図の各一定レベル部分の部分
的に平均を計算するだけの方法がある。
例えば,1番10番のモータの場合は,次によって計算を行う。
9 16 11 12 16 7 13 12 13 11
Vavg= =12.0
10
個々の電圧の値を使用すると,傾きによる方法とは結果がやや異なることがある。これは,個々の打点
から直線を引くと,データの部分的な変動を平滑化してしまうことから生じる。
6.7 マンハッタン図
電圧レベルの変化点及びその値を推定したら,表現方法を更に簡易化して,実際の電圧を縦軸にとり“ノ
イズを伴わない”形式でデータを表示すると都合がよい。この表現方法は,マンハッタンの直線的な建物
の輪郭を思わせることから,マンハッタン図と呼ばれている。
マンハッタン図は,6.6.3のa) d)によって計算した電圧をモータの生産順に従来の方法で打点して単純
に表示したものである。これを図3に示す。図3によって,図1 c)の累積和データと図1) )の本来のノイ
ズのあるデータとの比較ができる。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 15] ―――――
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JIS Z 9020-1:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 9020-4:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用