JIS Z 9020-4:2018 管理図―第4部:累積和管理図 | ページ 8

                                                                                             33
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
ステップ4−試行期間データの収集
9.2.3に示すように,累積和スキームが適切にチューニングされるように,また,必要ならば,目標
値の設定の手がかりが得られるように工程の変動の特徴を示しているようなデータを取るのが望まし
い。
工程変動の全ての要因が観測されるように,試行期間を決定する。この期間は,少なくとも25個の
群が得られるだけの十分な長さにするか,又は期間を決めた上で十分に高いサンプリング頻度にする
ことが望ましい。
この期間に工程調節のような新たな変動要因が入り込まないように気を付けなければならない。な
ぜならば,変動パターンが崩れてしまうおそれがあるからである。データ収集の中断がある場合,試
行期間を再び設ける必要があるのか,それとも短縮された試行期間に十分なデータが生成されたかを
判定することが望ましい。一般に,集められた群の数が20以上で,考えられる変動要因の全てが20
個の群までの間に観測されたと判断された場合は,その群の数で十分であり,試行期間を終了する。
次に,試行期間時のデータを用いて,累積和管理図が実行されるときの変動のレベルを定めることが
望ましい。この点については,ステップ5及びステップ6に記載する。
ステップ5−試行期間データからのσeの推定
a) 一般 σeを推定する方法の概要を,次のb)及びc)に示す。別のアプローチが必要になる,特殊な状況
が現れることがある。別なアプローチでは,サブグループ平均間の標準偏差を調べて,σeを評価する
必要がある。
b) 群の大きさが2以上の場合(n>1)
i. 各群における範囲(最大値−最小値)を計算する。
ii. 全ての郡における範囲の平均(R)を計算する。
iii. 範囲の平均を表11に示す適切なd2値で除して,群内の標準偏差( 0σ)を推定する。
0σを群の大きさの平方根で除してσeを推定する。すなわち,σe=
iv. σ/
0 n。
表11−範囲から群内の標準偏差を推定するための係数d2
群の大きさ,na) d2
2 1.128
3 1.693
4 2.059
5 2.326
6 2.534
7 2.704
8 2.847
9 2.970
10 3.078
注記 群が10を超える場合,群内の標準偏差の推定には他の方法の方が効率的な場合
がある。
注a) 2の値はn>10の場合でも与えられている。JIS Z 9020-2又はその他の文献若し
くは規格を参照するのがよい。
群の範囲を用いる方法の代わりに,群内標準偏差(s)を用いる方法を使用することができる。Rの
代わりに,群内の標準偏差の平均sを計算する必要があり,σ0はs/c4によって推定される。c4の値を,

――――― [JIS Z 9020-4 pdf 36] ―――――

34
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
表18に記載する。
c) 群の大きさが1の場合(n=1) σの推定に用いられるアプローチは,階差をとる方法(二つの観測
値の移動範囲と呼ぶこともある。)を用いるものである。
試行期間中に収集したデータは,収集した順に入力することが望ましい。最初のデータと次のデー
タとの範囲(差)を計算し,2番目のデータから3番目のデータまでの範囲というように計算をする
ことが望ましい。
k個のサブグループがあれば,範囲の数はk−1となる。これらの範囲の平均(R)を計算する。
σの推定値は,平均範囲を1.128で除して得られる。
ステップ6−目標値Tの決定
9.2に記載したように,目標値は,所定の値又はデータから求めた実績ベースの値である。
a) 所定の値 目標値は指定された値である。仕様書又は図面によって決められることもあれば,製品特
性の場合は公称値,非製造工程の場合はマネジメントの観点から定めたある種の期待されるパフォー
マンスのこともある。
b) 実績ベースの値 ここでは,目標値を,試行期間中に得たデータから次によって決めることが望まし
い。
i. サブグループ別に平均値(x)を計算する。
ii. これらの平均の平均(x)を計算する。
iii. xを目標値Tとする。
ステップ7−累積和管理図のための様式の作成
a) 一般 累積和管理図のための様式の作成ガイダンスを,箇条5に示す。
b) 累積和表 累積和管理図を作成するために記入でき,読取りができる適切な表を用意する。そのよう
な表の一部を,表12に示す。
表12−累積和管理図を作成するための計算表
サブグループ番号 x x−T 累積和値,C
以下省略
群の大きさが1の場合は,xを表中の個々のデータxに置き換える。
c) 累積和グラフ用紙 格子線間の間隔が適切な,グラフ用紙を選択する。グラフ用紙の種類の選択は,
壁に貼るか,公示に用いるかなど,用途によって異なる。
適切なスケールを選ぶ。スケールの大きさは,グラフの置かれる場所で異なる。例えば,壁に貼る
又は公示に用いるグラフでは,横軸の群の番号間の間隔は10 mmでよいが,デスク用であれば,間隔
は5 mmでよい。
累積和(C)軸に適切な間隔は,横軸に選択した間隔と同じ約2σeに等しい間隔にすると決まるが,
適宜,数値を丸める。このスケールで顕著な傾向が不自然に平たん(坦)になったり,重要でない傾
向が誇張されたりすることはまずない。

――――― [JIS Z 9020-4 pdf 37] ―――――

                                                                                             35
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
累積和軸の中心点を0とし,グラフ用紙のこの点を通る太字の水平線を引く。グラフ用紙に,垂直
の累積和の目盛を記入する。
このような用紙の例を,図13に示す。
ステップ8−Vマスクの設定
8.2.1に汎用Vマスクの形状を記載し,図5に汎用Vマスクの構成要素及びその目盛の刻み方を示
す。
h,f及びσeの値は,ここに記載するようにして求めることが望ましい。
a) =hσeを計算する。
b) =fσeを計算する。
マスクは,累積和管理図用に選択した目盛で描く。事前に決めたサイズの変化が発生したかどうか
について,正しい判断を下す目的でマスクを使用するのであれば,これは不可欠である。
注記2 マスクによっては,アセテートのように透けて見える素材のものがある。マスクの輪郭は,
消えないインクでトレースすることができる。ときには,カードから切り抜いて作ること
もある。この場合でも,H及びFの値は,累積和管理図に用いられる目盛に従って,印を
付ける。
注記3 尺度を自動調整して累積和プロットを表示し,その上にマスクを描くようにしたコンピュ
ータプログラムがある。
ステップ9−試行データでの累積和の計算
ステップ6で決めた目標値及び表12に示すものに類似した表を用いて,試行データの累積和値を計
算する。
ステップ10−試行データでの累積和のプロット
ステップ9までのようにして作成され,表に記載された累積和値は,図13と類似した適切なグラフ
用紙にプロットすることが望ましい。プロットの開始は左側で,そこから右側方向に伸びていく。プ
ロットされた点を全てつなぐ。こうすると,マスクを重ね合わせたときに傾向が読み取りやすくなり,
管理外れの特定に役立つ。
ステップ11−試行データの累積和プロットでの管理外れの検討
累積和プロットの上に,マスクを重ね合わせる。
これは,用紙のゼロ軸に平行なマスクの中心線が変わらないように注意しながら,最後にプロット
された累積和値の上側に,図7 a)に示した“基準点”を合わせて行う。こうすると,マスクが正しい
向きにそろ(揃)うようになる。
最後にプロットされた点が判定ラインの外側ではなくとも,また,最後にプロットされた点が判定
ライン内に戻っている場合でも,判定ラインの外側に点があれば,それは工程に異常があることを示
している。図7 b)を参照する。

――――― [JIS Z 9020-4 pdf 38] ―――――

36
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
+


和 0

-
図13−累積和管理図用紙の例
ステップ12−“異常原因”の特定及び除去
a) 一般 累積和プロットの異常(管理外れ)の点を調べ,“異常原因”を特定することが不可欠である。
b) “異常原因”の特定及び再発防止 異常原因が特定され,再発防止策がとられたら,目標値及び標準
誤差(又は標準偏差)の修正が必要になることがある。観測された異常点が一つだけで,原因に十分
に対処した場合は,それまで目標値,及び標準誤差又は標準偏差に割り当てられていた値を,当初の
試行期間データから異常なサブグループのデータを差し引いたものを使用して修正してもよい。累積
和管理図のグラフ用紙の目盛及びマスクの大きさの計算をやり直し,必要に応じて,用紙及びマスク
の尺度を修正する。
試行データに複数の異常な点がある場合は,どちらかといえば工程に問題があることを示しており,
工程を再検討し,是正し,改めて試行期間を開始し,新しいデータで累積和設定プロトコルをやり直
すことを推奨する。
c) “異常原因”が特定されたが,再発防止策がとれない 経済的又は技術的な問題のために,異常原因
に再発防止策をとれない場合がある。
そのような状況の場合は,全ての試行データに基づいて累積和管理図のパラメータを定め,進行中
のモニタリングに使用する。言い換えれば,このような異常原因を工程の不規則変動の一部とみなす

――――― [JIS Z 9020-4 pdf 39] ―――――

                                                                                             37
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
のである。
d) “異常原因”が特定できない “異常原因”が特定できないでいるままになることがある。これは工
程の改善ができないので,極めて不満足なことである。異常原因の特定にあらゆる努力を払い,他の
統計的手法及び問題解決法を用いて特定に当たることが望ましい。この点に関しては,実験計画法の
ような手法が特に有効である。
異常原因が特定できないでいる場合は,上記c)に記載するステップに従う。
ステップ13−進行中の図表作成の継続
a) 一般 試行データで“統計的管理状態”が得られる場合,又は“異常原因”が満足のいくように解決
されてから新しいデータを収集する場合,累積和管理図は,工程パラメータ又は製品特性の,進行中
のモニタリングを行える準備ができたことになる。用紙の目盛,マスクパラメータ及びマスクの尺度
を使用して,今後,サブグループから得られるデータのモニタリングを行う。
その後に管理外れが出現したら,工程にどういう措置を施すかを検討し,決定することが不可欠で
ある。その措置は,工具などに伴う工程調節から,工程をより好ましい位置に移動させる場合の新し
い目標値の採用に至るまで,様々である。
b) 工程調節 必要な調節量は,次のように累積和プロットから決定することができる。
i) 最後にプロットされた点の累積和の値を求める。
ii) 累積和プロットがマスク上の判定ラインの外に出た場所の,累積和の値を求める。複数の逸脱があ
る場合は,最新の,すなわち,マスク上の基準点に最も近い位置にある管理外れをとる。
iii) これらの2点間の累積和値の差を計算する。
iv) 基準点から異常を示す点との間にプロットされた点の数(r)をカウントする。
v) ii)で計算した差を,iv)でカウントした点の数で除す。すなわち,累積和プロットの局所勾配を計算
する。これは,工程の目標値からのシフト量の推定値である。
vi) 同じ大きさの調節を工程に行ってもよい。行った変更を累積和管理図に記録する。
vii) 累積和値をゼロに戻して,モニタリングを継続する。
注記4 ここに記載する計算を実行しないで,マスク及び累積和管理図用紙の形状的性質によっ
て,“ルックアップ”グラフを生成し,目標からのシフト量を読み取ることが可能である。
その例を図14に示す。

――――― [JIS Z 9020-4 pdf 40] ―――――

次のページ PDF 41

JIS Z 9020-1:2016の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 9020-4:2018の関連規格と引用規格一覧