38
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
δ
r
図14−目標値からのシフトを見るためのルックアップグラフの概略例
c) 工程調節−ハンティング防止 “ハンティング”の概念は,9.1.5で示した。目標値からの計算された
シフト量の100 %を調節値に用いると,ハンティングを引き起こすことが,経験的に分かっている。
そのような調節の後,累積和は,調節が強すぎたかのように,反対方向で管理外れとなり,更に工程
調節が必要なことを示す。工程調節して,最後に示されたシフトに等しい量だけ元に戻すと,その後,
反対方向でまた調節が必要なことを示すことがある。この現象を“ハンティング”という。
ハンティングは,実際のシフトを過大に推定している短期間の累積和勾配によって引き起こされる
ことがあり,マスク設計の修正,又は必要とされる現実的な調節によって直ることがある。
一つの実用的な解決策は,工程調節を示唆されたシフトの100 %未満にとどめることである。この
100 %未満の比率を“ハンティング防止係数”と呼ぶ。これは,累積和のハンティング傾向を弱める。
研究を含めて,経験上,ハンティング防止係数を75 %にするとうまくいくと分かっている。したがっ
て,少なくともはじめは,示唆されたシフトの75 %だけを調節することを推奨する。
図14に示すようなグラフは,ハンティング防止係数を含めて描くことができる。多くの人が累積和
管理図による工程管理の操作に関与する場合,こうすることが望ましい。
他のハンティング防止係数にr/(r+1)があり,rは基準点と異常(管理外れ)を示す点との間の点の
数である。この係数を用いて,工程調節量φは,次のようにして計算する。
1
ここに,Crは,基準点と異常(管理外れ)を示す点との累積和値の差である。
段階的変化が発生した場合,この方法はハンティングの防止に有効である。
9.3.2 標準スキーム−制限事項
9.3.1に記載する基本的な累積和スキームは,大半の用途で良好な値を提供し,多くの場合,それ以上の
変更は必要ない。ただし,少数の用途では,多少の時間が経過すると,重要なサイズのシフトを検出する
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 41] ―――――
39
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
ためのARLが大きすぎたり,“誤報”の頻度が高すぎたりするという理由で,選択した基本スキームに改
善の余地が出てくることに注意するとよい。
9.3.3 “特定の目標に合った”累積和スキーム
“特定の目標に合った”累積和スキームは,次による。
注記 具体的な累積和スキームの設計には,9.3.1に記載する基本スキームよりも多くの知識及びイン
プットが必要になる。累積和管理図で工程管理をしたい人は,専門家に相談して設計を手伝っ
てもらうとよい。
a) 検出すべき目標値からの(重要な)シフトのサイズを決める。
b) 9.3.1のステップ5のようにして,標準誤差σe(又は,群の大きさが1の場合は標準偏差)を推定する。
c) シフトのサイズが9.3.1のステップ3に示す変化の大きさに対して望ましいARLすなわちLδを指定す
る。
d) シフトがゼロのときの望ましいARL(“誤報”の頻度)すなわちL0を指定する。
e) 標準化シフトΔ=δ/σeを計算する。
f) 図15のグラフに記入し,Lδ及びL0の値を考慮しながら,計算値Δに対するhを読み取る。
g) の値は,グラフ上の計算値Δに該当するところから読み取ってもよい。
h) 先に示したh及びfの新しい値に従って,累積和管理図のマスクを修正する。
.
検出すべき標準差,Δ
規準化した決定区間,h
図15−Vマスクパラメータのインターセプトチャート(正規分布を仮定する。)
9.4 群内変動のモニタリング用の累積和スキーム
9.4.1 一般
工程の平均のモニタリングに加えて,大半のケースで短期的な変動となる工程変動のモニタリングが必
須である。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 42] ―――――
40
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
変動の尺度として最も適切なものは,群内の範囲及び群内の標準偏差の二つである。いずれかを選択す
ることが望ましい。その決定は,計算に携わる人々にとっての計算のしやすさ及び尺度の理解水準に左右
される。管理図の操作に携わる人の多くは,その計算のしやすさ及び単純さから範囲を推奨尺度として選
んでおり,しばしば選択される群の大きさ(例えば,5サンプル)においては,その範囲の効率性は標準
偏差とほとんど変わらない。
群の大きさが1の場合,採用する尺度は,連続的な結果間の差を基準にした範囲とすることが望ましい。
9.4.2 群内の範囲用の累積和スキーム
群内の範囲を用いて,工程変動をモニタリングするのに適したスキームを設定するために,次のステッ
プを踏むことが望ましい。ステップの中には,平均値のモニタリング用累積和スキームが実行された場合
に完了するものがある。
ステップ1−累積和管理図の対象の決定
9.3.1のステップ1による。
ステップ2−群の大きさの決定
9.3.1のステップ2による。
ステップ3−範囲用累積和スキームの選択
表13は,範囲用累積和スキームに求められる一般的要求事項を定めた一連の標準スキームについて
規定している。9.3.1に記載したように,表13は二つの基本的スキームを示している。一つは,期待
変動レベルでの平均連長(ARL)が比較的大きいCS1スキームであり,もう一つはARLが比較的小
さいCS2スキームである。CS2スキームは,工程レベルのシフトをCS1スキームよりも迅速に検出す
るが,“誤報”に起因する費用が多くなる。表14は,二つの標準スキームの性能の差を示したもので
ある。
表13−群の範囲用標準累積和スキーム
群の大きさ CS1スキーム CS2スキーム
h f h f
2 2.50 0.85 2.50 0.55
3 1.75 0.55 1.75 0.35
4 1.25 0.50 1.25 0.30
5 1.00 0.45 1.00 0.30
6 0.85 0.45 0.85 0.30
7 0.70 0.45 0.70 0.30
8 0.55 0.40 0.55 0.25
9 0.55 0.40 0.55 0.25
10 0.50 0.35 0.50 0.25
注記1 CS1スキームは,6001 000の範囲で工程が予想変動レベルで動作するときの,平均連長L0を示す。
注記2 CS2スキームは,150210の範囲で工程が予想変動レベルで動作するときの,平均連長L0を示す。
CS1スキーム又はCS2スキームのいずれかを選ぶ。群の平均値と範囲の累積和用スキームとの選択
に用いる選択基準は,同一のものを当てはめることが望ましい。変化が起きていないときに比較的大
きいARLが必要となると場合は,CS1スキームを選ぶ。そうでなければCS2スキームを選ぶ。
いずれのスキームを選ぶにせよ,これらのパラメータの値に推定された変動量Rを乗じて,マスク
の実際のサイズ及び形状を決めることが望ましい。この点については,ステップ8に記載する。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 43] ―――――
41
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
ステップ4−試行期間データの収集
位置について示した指示を,ここにも適用する。
ステップ5−試行期間データによるRの推定
9.3.1のステップ5に記載した方法の一つを用いて,Rを計算する。
表14−群の範囲用標準累積和スキームの性能(ARL)比較
群の大きさ 実際の工程変動レ CS1スキーム CS2スキーム
ベル
R 779.0 170.0
2 2R 7.2 5.5
4R 2.3 2.1
R 893.0 196.0
3 2R 4.5 3.6
4R 1.6 1.5
R 918.0 157.0
4 2R 3.3 2.7
4R 1.3 1.2
R 771.0 179.0
5 2R 2.7 2.3
4R 1.2 1.1
R 942.0 204.0
6 2R 2.4 2.0
4R 1.1 1.1
R 893.0 162.0
8 2R 2.0 1.7
4R 1.0 1.0
R 635.0 184.0
10 2R 1.7 1.5
4R 1.0 1.0
注記 ここに示す値は,平均連長(ARL)である。実際の変化を検出するためにとった
実際の連長は変化し,ARLよりも長くなることもあれば,短くなることもあるの
で注意する。特に関心があるときは,目標から特定のシフトの連長の分布を調べ
て,遭遇する可能性のある連長の予想範囲を知ることが望ましい。
ステップ6−目標値Tの決定
a) 所定の値 統計的品質管理又は工程管理の場合,目標値を設定する最も一般的な方法は,次のb)に示
すようなものである。ただし,想定したレベルから目標値を設定することが優先される場合がある。
そうであれば,目標値は範囲内の所定の値に等しくなる。
変動が所定の標準偏差によって記述できる場合,目標範囲はT=d2σとして計算してもよい。d2は採
用する群の大きさに依存する値で,表11を用いる。
b) 実績ベースの値 試行期間中に得たデータから,Rに等しい目標範囲を設定する。
ステップ7−累積和管理図のための様式の作成
累積和表を設定(又は既存の累積和表に追加)し,9.3.1のステップ7に記載するようにして,累積
和グラフ用紙を作成する。
範囲用累積和をプロットする累積和グラフ用紙は,平均値のモニタリングに選択するものに合わせ
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 44] ―――――
42
Z 9020-4 : 2018 (ISO 7870-4 : 2011)
て,異なる尺度が必要となることがある。適切な尺度は,次の計算によって得ることができ,最も都
合のよい値に切り上げ又は切り下げる。
範囲用の累積和尺度間隔はaRであり,ここに,aは表15に記載している値である。
表15−範囲用累積和グラフ用紙の目盛係数
群の大きさ a
2 1.50
3 1.00
4 0.85
5 0.75
6 0.65
8 0.55
10 0.50
ステップ8−累積和マスクの設定
ステップ3で選択した値h及びfを使用して計算する。
a) =hR
b) =f R
計算値h及びfを使用してマスクを構成し,累積和グラフ用紙用に選択した尺度に従ってマスクを
拡大縮小する。
ステップ9−試行データでの累積和の計算
ステップ6で求めた目標値及び表12に示すような表を用いて,試行データの範囲で累積和値を計算
する。
ステップ10−試行データの累積和のプロット
範囲の累積和を,9.3.1のステップ7及びステップ10に記載したような範囲について,累積和グラ
フ用紙にプロットする。
ステップ11−異常に対する試行データの累積和プロットの検討
9.3.1のステップ11に記載したように,累積和プロットを検討する。
ステップ12−“異常原因”の特定及び除去
a) 一般 累積和プロット上の異常点を調べ,“異常原因”を特定することが不可欠である。
b) d)の一つに従い目標範囲の修正が必要となる場合は,マスクの修正も必要となり,場合によっ
ては,平均値の管理用の累積和グラフ用紙を修正する必要がある。
b) “異常原因”が特定され,再発が防止された 異常原因が特定され,再発防止策がとられたら,目標
範囲値の修正が必要になることがある。観測された異常点が一つだけで,a)に記載するようにして十
分に対処された場合は,それまで目標値に割り当てられていた値を,当初の試行期間データから異常
な群のデータを取り除いたものを使用して修正してもよい。累積和グラフ用紙の尺度及びマスクの寸
法の計算をやり直し,必要に応じて用紙及びマスクの尺度を修正する。
試行データに複数の異常点がある場合は,より多くの工程に関する問題があることを示しており,
工程を再検討し,是正し,改めて試行期間を開始し,新しいデータで累積和設定プロトコルをやり直
すことを推奨する。
――――― [JIS Z 9020-4 pdf 45] ―――――
次のページ PDF 46
JIS Z 9020-1:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 9020-4:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用