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B 7617 : 2021
3.1.17
試験車両の諸元
トラクタ,セミトレーラ及びコンテナの各仕様書における重心高及び質量に関するデータ。
3.1.18
試験車両の重心高の理論値
トラクタ,セミトレーラ,コンテナ及び分銅の諸元を用いて,モーメント法によって求めた試験車両の
重心高(7.1参照)。
3.1.19
試験車両の左右及び前後の重心位置の理論値
3次元トラックスケールを用いて,試験車両を静止状態で測定したときの,ロードセルの出力値によっ
て決定した,左右(前後)重心位置(7.2参照)。
3.1.20
試験車両の重心の表示値
3次元トラックスケールから出力された,試験車両の左右の重心位置(比率表示),前後の重心位置(比
率表示)及び重心高(メートル表示)の値。
3.1.21
ダイナミック計測
試験車両を3次元トラックスケール上で移動させながら動的に計測する方法。
3.1.22
モーメント法
重心位置は,トラクタ,セミトレーラ,コンテナ及び分銅の個々の重心位置の合成値となることから,
個々の質量及び重心位置から力の合成を行う方法。ここでは,重心高の理論値の求め方として利用する。
計算方法は,7.1を参照。
3.1.23
左右重心比率及び前後重心比率
左右及び前後の重心位置を,寸法ではなく比率(%)で示したもの。例えば,“50 %·50 %”の表示は,
重心位置が中央にあることを表し,“60 %·40 %”の表示は,左右の重心位置を示す場合には左寄りに,
前後の重心位置を示す場合には前寄りに,それぞれ重心が偏っていることを示す。
3.2 記号
この規格で用いる記号は,次による。ここで,小文字記号のx,y及びzは寸法表示,大文字記号のX及
びYは比率表示を表す。また,上付き添字は,それぞれ次を示している。“ ' ”は3次元トラックスケール
端(左右及び前後)からの測定値を,“T”は理論値を,“a”は試験車両の停車位置による補正を行うため
の水平距離を示す。
記号 説明
S 3次元トラックスケールの左右の長さ
V 3次元トラックスケールの前後の長さ
wS セミトレーラの質量
wC コンテナの質量
wT トラクタの質量
――――― [JIS B 7617 pdf 6] ―――――
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wwi 分銅iの質量
www 分銅の総質量(n個の分銅の合計質量=Σwwi)
hS 3次元トラックスケールの載せ台の上面からセミトレーラの重心高までの垂直距離
hC 3次元トラックスケールの載せ台の上面からコンテナの重心高までの垂直距離
hT 3次元トラックスケールの載せ台の上面からのトラクタの重心高までの垂直距離
3次元トラックスケールの載せ台の上面から分銅の合成重心までの垂直距離
hw
(hww+コンテナ床面のトラックスケール載せ台からの高さ)
hwi 分銅iの重心高さ
hww 分銅の合成重心高(コンテナ床面から分銅の合成重心までの垂直距離)
yL 左側の最後輪のタイヤ外側面から重心位置までのy軸方向の水平距離
yR 右側の最後輪のタイヤ外側面から重心位置までのy軸方向の水平距離
xF 最前輪車軸中心から重心位置までのx軸方向の水平距離
xR 最後輪車軸中心から重心位置までのx軸方向の水平距離
Ly
3次元トラックスケール左端から重心位置までのy軸方向の水平距離
Ry
3次元トラックスケール右端から重心位置までのy軸方向の水平距離
Fx
3次元トラックスケール前端から重心位置までのx軸方向の水平距離
Rx
3次元トラックスケール後端から重心位置までのx軸方向の水平距離
a
yL 3次元トラックスケール左端から最後輪のタイヤ外側面までのy軸方向の水平距離
a
yR 3次元トラックスケール右端から最後輪のタイヤ外側面までのy軸方向の水平距離
a
xF 3次元トラックスケール前端から最前輪車軸中心までのx軸方向の水平距離
a
xR 3次元トラックスケール後端から最後輪車軸中心までのx軸方向の水平距離
LY
3次元トラックスケール左端から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
YR 3次元トラックスケール右端から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
X F 3次元トラックスケール前端から重心位置までのx軸方向の水平距離の比率
XR 3次元トラックスケール後端から重心位置までのx軸方向の水平距離の比率
T
YL 左側の最後輪のタイヤ外側面から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
T
YR 右側の最後輪のタイヤ外側面から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
T
X F 最前輪車軸中心から重心までの重心位置のx軸方向の水平距離の比率
T
X R 最後輪車軸中心から重心までの重心位置のx軸方向の水平距離の比率
LY T
3次元トラックスケール左端から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
YRT
3次元トラックスケール右端から重心位置までのy軸方向の水平距離の比率
X FT 3次元トラックスケール前端から重心位置までのx軸方向の水平距離の比率
XR
T
3次元トラックスケール後端から重心位置までのx軸方向の水平距離の比率
hz
3次元トラックスケールの載せ台の上面から試験車両の重心高までの垂直距離の表示値
T
hz
3次元トラックスケールの載せ台の上面から試験車両の重心高までの垂直距離の理論値
GLeft 左側重心比率
GRight 右側重心比率
GFront 前側重心比率
GRear 後側重心比率
――――― [JIS B 7617 pdf 7] ―――――
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B 7617 : 2021
T
GLeft 左側重心比率の理論値
T
G Right 右側重心比率の理論値
T
G Front 前側重心比率の理論値
T
G Rear 後側重心比率の理論値
4 3次元トラックスケールの構成及び試験の原理
4.1 構成要素及び重心の計測
3次元トラックスケール上を試験車両が移動する非自動はかりとしての要素,及び荷重の重心位置を検
出する要素からなる。
主な装置として,3次元トラックスケールの荷重受け部(載せ台),荷重伝達装置,荷重計量装置及び重
心位置を検出するための周辺機器がある。
重心の計測に当たっては,試験車両を載せ台に侵入走行中に継続的に測定を行い(ダイナミック計測),
加振方式においては定められた停止位置に停車した試験車両に加振した後,傾斜方式においては傾斜した
載せ台上の停止位置に停車後に,3次元トラックスケールは,試験車両の左右及び前後の重心位置,並び
に重心高を表示する。
また,これとは別に侵入走行中,ロードセルの値の変化が継続的に表示される。試験車両が載せ台上の
定められた停止位置に停車すると,この表示値は安定する。この値を読み取ることによって,停車時の左
右及び前後の重心位置が得られる。ただし,この値は載せ台上の位置を示すものであるため,試験車両の
重心位置を得るためには,載せ台上での試験車両の停止位置を補正する必要がある。補正方法については,
7.2に記載する。
4.2 重心位置測定試験の原理
4.2.1 評価の考え方
重心位置の測定精度を評価するには,試験車両の“真の重心位置”が必要であるが,試験車両がトラク
タ,セミトレーラなどの車両部分及びコンテナ,分銅などの積載物の複合体であるため,“真の重心位置”
は不明である。
分銅又は試験車両の真の重心位置については,入手したそれらの諸元及びそれらを3次元トラックスケ
ールに載せた位置の寸法測定などから得た数値を用いて,計算で求めた重心位置を重心の“理論値”とす
る。
この規格では,評価の基準となる“真の値”を“理論値”に置き換えることとし,これをあらかじめ測
定又は計算によって求めておき,試験で求めた結果と比較する方法を採用している。
このため,この試験は,3次元トラックスケールの重心位置測定機能の絶対的な性能評価をするもので
はなく,理論値と表示値とを並べて示すにとどめ,その評価及び判断は使用者に任せることとした。
4.2.2 3次元トラックスケールがもつ左右及び前後の重心位置の測定精度の確認
箇条8の試験車両を用いた試験を行う前に,分銅だけを用いて,箇条6の3次元トラックスケールのも
つ“左右及び前後の重心位置の測定精度の確認”を行う。
3次元トラックスケールの載せ台の定められた位置に,おもりそのものの重心位置及び質量が既知の“分
銅”を置く。この位置が左右及び前後の重心位置の理論値となる。
そのときの3次元トラックスケールの測定表示値とこの理論値とを比較することによって,スケールの
“左右及び前後の重心位置の測定精度”を確認しておく。
――――― [JIS B 7617 pdf 8] ―――――
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4.2.3 試験車両の左右及び前後の重心位置の理論値
試験車両を用いた試験の始め又は途中において,7.2.3の方法で理論値を求める。
試験車両を3次元トラックスケール上に静止させた状態で,まず,3次元トラックスケールの“左右及
び前後の重心位置”の表示値を得る。この表示値は,3次元トラックスケール積載面(載せ台)における
水平位置を示すため,巻尺,レーザ距離計などによって試験車両の静止位置による補正を行い,試験車両
における重心の水平位置を求め,これを試験車両の“左右及び前後重心位置の理論値”とする。
4.2.4 試験車両の重心高の理論値
試験車両の“真の重心高”を求めるのは困難である。ここでは,7.1によって,対象となる試験車両の“重
心高の理論値”を,トラクタ,セミトレーラ,コンテナなどの構成部分の諸元及び分銅の諸元並びに積載
位置を用いて,モーメント法によって“試験車両の重心高”を計算し,これを理論値として用いることと
する。
この理論値と“3次元トラックスケールの表示値”とを比較することとする。
5 試験に用いる試験車両
5.1 試験に用いる試験車両の構成要素
5.1.1 一般
試験車両として用いる国際海上コンテナ積載セミトレーラ連結車は,5.1.2,5.1.3及び5.1.4でそれぞれ
規定する中から選択し,それらを組み合わせたものとする。
試験車両の組合せ及び推奨する組合せを5.2に示す。また,試験車両に積載する分銅の組合せについて,
5.3で規定する。
5.1.2 コンテナの種類
コンテナは,次に示す種類の中から選定する。
a) ドライコンテナ 長さが20 ft(6.058 m)又は40 ft(12.192 m)のコンテナで,高さが8.6 ft(2.591 m)
又は9.6 ft(2.896 m)のいずれかのドライコンテナ。
b) フラットラックコンテナ 長さが40 ft(12.192 m)のフラットラックコンテナ。
c) オープントップコンテナ 長さが40 ft(12.192 m)のオープントップコンテナ。
5.1.3 セミトレーラの種類
コンテナを積載するセミトレーラは,次のいずれかを用いる。
a) リーフサス2軸
b) リーフサス3軸(シングルタイヤを除く。)
注記1 リーフサスとは,リーフ式サスペンションの略称。車台と車軸とをつなぐサスペンション
方式の一種で,リーフスプリング(重ね板ばね)によって車台を支えるものをいう。
注記2 ここで示す軸数とは,セミトレーラの軸数を指す。
5.1.4 トラクタの種類
2軸エアサストラクタを使用する。
注記1 エアサスとは,エアサスペンションの略称。空気のばね(サスペンション)で車体の高低を
調整し,走行中の衝撃を和らげる車両専用の装着部品のことをいう。
注記2 ここで示す軸数とは,トラクタの軸数を指す。
5.2 試験車両の編成
試験に用いる試験車両としてのトラクタ,セミトレーラ及びコンテナの組合せは,表1から選択するも
――――― [JIS B 7617 pdf 9] ―――――
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のとする。
なお,組合せとして次のa) c) を推奨するが,これに限定するものではない。ただし,トラクタ,セミ
トレーラ及びコンテナについては,諸元によってそれぞれの重心高が把握できるものでなくてはならない。
a) トラクタ 2軸エアサストラクタ
b) セミトレーラ リーフサス車,40 ft(12.192 m)/3軸
c) コンテナ 40 ft(12.192 m)ドライコンテナ
表1−試験車両の組合せ
トラクタ セミトレーラ コンテナ
リーフサス
2軸 40フィートドライコンテナ
40フィートコンテナ用
リーフサス
3軸 40フィートドライコンテナ
40フィートコンテナ用
リーフサス
2軸 20フィートドライコンテナ
20フィートコンテナ用
リーフサス
3軸 20フィートドライコンテナ
2軸エアサスト 20フィートコンテナ用
ラクタ リーフサス
2軸
40フィートコンテナ用 40フィート
リーフサス フラットラックコンテナ
3軸
40フィートコンテナ用
リーフサス
2軸
40フィートコンテナ用 40フィート
リーフサス オープントップコンテナ
3軸
40フィートコンテナ用
注記 JIS Z 1610では,コンテナの寸法ごとに,40フィートコンテナを“4024”,20フィートコンテ
ナを“2024”などとして記号を用いて種類を表すこととしている。
5.3 分銅
5.3.1 一般
使用する分銅は,JIS B 7609に基づくM3級のもの又はこれと同等以上の精度をもつ分銅を用いる。
5.3.2 分銅の積載量
積載する分銅の総質量は15 000 kg以上とし,3次元トラックスケールのメーカの仕様によって異なるた
め,使用者との協議によって,性能に合わせた適切な分銅の質量を設定する。
6 分銅による3次元トラックスケール固有の測定精度の確認試験
6.1 一般
これは,試験車両の測定試験の前準備として,3次元トラックスケールの重心位置測定がどの程度の精
度をもつかをあらかじめ知るために行う試験である。負荷する荷重の重心位置には,左右,前後及び高さ
があるが,ここでは,左右位置及び前後位置についてだけ,静止計測によって把握する。
重心の高さ位置は,3次元トラックスケールの測定技術の関係によって,車両を用いなければ測定でき
ないため,分銅を用いた測定精度の確認試験は行わない。
なお,重心の高さの理論値はモーメント法で求める。この結果は,試験車両の重心測定試験結果を検討
――――― [JIS B 7617 pdf 10] ―――――
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