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図1−計測器の構成例
7.3 試料採取部
試料採取部は排ガス中のダストを除去し,必要に応じて水分,硫化水素などの腐食性ガスを除去又は一
定量に保つ機能をもち,測定対象成分の損失を可能な限り抑制しつつ必要な試料ガスの一定量を連続的又
は断続的に分析計に供給するものである。さらに,排ガス中の二価水銀をあらかじめ還元して原子蒸気化
する。試料採取部は次に示すa) k) で構成し,各部の材料は排ガス及び試料ガスの性状に応じて選択する。
a) 採取管 煙道壁などに取り付けて排ガスを採取する管で,チタン管,セラミックス管,石英管などを
用いる。
b) 一次フィルタ 排ガス中のダストを除去するためのもので,水分が凝縮しないように120 ℃以上に加
熱する。フィルタの材料は,ガラス繊維などを用いる。一次フィルタに捕捉された炭素粒子が水銀を
吸着するおそれがある場合は,吸着による測定影響が出る前に一次フィルタを交換する。
注記1 採取管直後に還元部がありフィルタの効果を兼ねる場合は,一次フィルタを削除してもよ
い。
c) 還元部 排ガス中の二価水銀を還元して原子蒸気化する。アルカリ金属塩,アルカリ土類金属塩又は
塩化第一すずなどの固体還元剤をガラスなどの容器に入れて,還元反応を促進するために加熱する。
注記2 排ガス中の硫黄酸化物,窒素酸化物などの酸性ガスが多いと固体還元剤の中和を早める。
固体還元剤が中和されると,酸性ガスは還元部を破過して原子吸光に干渉したり分析計の
吸収セルの窓への汚れの原因となるので,固体還元剤を早めに交換する。
d) 導管 還元部から試料ガス導入口まで試料ガスを導く管で,四ふっ化エチレン樹脂製のものなどを用
いる。水分が吸引経路の途中で凝縮することを防止するため,必要に応じて加熱する。
e) 除湿部 試料ガス中の水分を除去する装置で,空冷(外気温),電子冷却などの方式,水蒸気の選択浸
透による半透膜気相除湿方式などを用い,試料ガスの性状に応じて複数個設置する。
f) 二次フィルタ 試料ガス中の微細ダストを除去するためのもので,ガラス繊維,四ふっ化エチレン樹
脂などの材料を用いる。分析計へのダスト影響が十分小さい場合は,分析計直後に取り付けてもよい。
g) 校正ガス導入口 図1の2か所又はいずれか1か所とし,目的に応じて適宜選択し使用する。
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h) 切替弁 手動弁又は電磁弁を用い,その材料は耐食性のあるものを用いる。
i) 吸引ポンプ 試料ガスなどを吸引するポンプで,一般にダイアフラムポンプを用いる。接ガス部は,
耐食材料,例えば,硬質塩化ビニル樹脂などの材料を用いる。
j) 流量調整弁 ニードル弁などを用い,その材料は耐食性のあるものを用いる。
k) 流量計 耐食性を考慮する。JIS B 7551に規定するフロート形面積流量計などを用いる。
7.4 分析計
排ガス中の金属水銀及び排ガス中の二価水銀が還元部で原子蒸気化した水銀の濃度を,原子吸光分析法
で求める。分析計は,光源部,吸収セル,検出部,データ処理部などから構成する。高感度化及び高安定
化のために,ダブルビーム方式で測定光と参照光との比を取って光強度の変動影響を抑制する,ゼロガス
の吸光度と試料ガスの吸光度とを交互に測定しその比を取って光強度の変動影響を抑制する,光源部の温
度を一定にして光強度変化を抑制するなどの機能をもつものもある。原子吸光分析法では多環芳香族炭化
水素などが干渉する場合があるので,必要に応じて干渉成分影響の補正処理をする。
a) 光源部 水銀分析のためのスペクトルを発光する低圧水銀ランプなどを用いる。
b) 吸収セル 両端に石英ガラス窓などをもつガス流通構造とする。
c) 検出部 検出器への入射光の光強度をその強度に応じた電気信号に変換するもので,光電管,半導体
検出器などが用いられる。
d) データ処理部 データ処理を行い,吸光度,濃度,検量線,測定結果などを表示及び記録する。表示
には,ディスプレー,プリンタ,記録計などを使用する。
8 性能試験
8.1 試験条件
試験条件は,次による。
a) 周囲温度 535 ℃の間の任意の温度で,試験中の温度の変化幅は5 ℃以下とする。
b) 湿度 相対湿度は85 %以下とする。
c) 大気圧 95106 kPaで試験中の変化幅は5 kPa以下とする。
d) 電源電圧 定格電圧とする。
e) 電源周波数 定格周波数とする。
f) 暖機時間 取扱説明書に記載された時間とする。
8.2 試験に用いるガス
8.2.1 ガスの種類
試験に用いるガスの種類は,校正用ガス,スパン試験用ガス,ゼロ試験用ガス及び中間点ガスとする。
これらのガスの種類及び適用する試験項目は,表2による。ゼロ校正用ガス及びゼロ試験用ガスとして高
純度空気[不純物として含まれる多環芳香族炭化水素の許容体積濃度は1 vol ppm(炭素原子数を基準とし
て表した炭化水素濃度の単位),水銀の許容濃度は0.01 μg/m3とする。]を用いる。例えば,ゼロガス精製
器などを用いて空気を精製したものをゼロ校正用ガス及びゼロ試験用ガスとして用いる。
――――― [JIS B 7994 pdf 7] ―――――
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表2−試験に用いるガス
ガスの種類 成分濃度 適用試験項目
校正用ガス スパン校正用ガス 最大目盛値a) の80100 % 8.3 b),c)
ゼロ校正用ガス 最大目盛値a) の0 % 8.3 a),c)
スパン試験用ガス 最大目盛値a) の8095 % 8.4 a),c),e),f),g)
ゼロ試験用ガス 最大目盛値a) の0 % 8.4 a),b),e)
中間点ガス 最大目盛値a) の50 %付近 8.4 d)
注a) 選択した測定範囲の最大目盛値。
8.2.2 校正用ガスの調製
水銀の容器詰め校正用ガスは入手が困難なため,スパン校正用ガス,中間点ガス及びスパン試験用ガス
は,図2図4に例を示すように水銀ガスを一定濃度で連続的に発生できる校正用ガス調製装置から得ら
れたガスを用いる。
図2は,水銀標準液を還元気化して水銀ガスを発生する校正用ガス調製装置の構成例であり,吸引ポン
プ,流量調整弁,水銀標準液タンク,溶液定量注入部,還元部,除湿部などで構成する。塩化水銀の水銀
標準液と空気とを設定流量で還元部に導入する。還元部は,L-アスコルビン酸などの還元剤を容器に入れ,
水銀標準液を還元気化し水銀ガスを生成する。水銀を除去した空気を還元部の容器に通気し,除湿部で水
分を除去する[JIS K 0222の7.2.1(試薬)(2)(水銀標準ガスの調製)(a) の注(20) 参照]。
図3は,飽和水銀蒸気を希釈して水銀ガスを発生する校正用ガス調製装置の構成例であり,圧力制御部,
流量制御部,水銀気化部,混合部などで構成する。水銀気化部に水銀を入れて一定温度にし,水銀を一定
の飽和蒸気圧に気化させる。水銀気化部の温度を温度計で読み取り,JIS K 0222の表1(飽和水銀ガス濃
度表)によって気化部内の水銀濃度を求める。気化させた水銀蒸気を混合部内で希釈し,必要な校正用水
銀ガスを調製する。
図4は,パーミエーションチューブ法による校正用ガス調製装置の構成例であり,恒温槽,水銀除去活
性炭,流量計などで構成する。金属水銀を封入したパーミエーションチューブを,恒温に保持すると,単
位時間に管壁を浸透拡散するガス量(浸透速度)が一定となる。したがって,そこに水銀を除去した窒素
などの希釈ガスを定流量送れば,微量濃度の校正用ガスが連続的に得られ,必要な校正用水銀ガスが調製
される。
図3及び図4の校正用ガス調製装置から発生する水銀ガス濃度は,JIS K 0222に規定する水銀分析方法
によって相互確認する。
図2−水銀校正用ガス調製装置の例(1)
――――― [JIS B 7994 pdf 8] ―――――
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図3−水銀校正用ガス調製装置の例(2)
図4−水銀校正用ガス調製装置の例(3)
8.3 校正
計測器の校正は,暖機運転終了後,表2に示すゼロ校正用ガス及びスパン校正用ガスを用いて,次の方
法で行う。
a) ゼロ調整 ゼロ校正用ガスを設定流量で計測器に導入し,指示が安定した時点でゼロ調整を行う。
b) スパン調整 スパン校正用ガスを設定流量で計測器に導入し,指示が安定した時点でスパン調整を行
う。
c) 必要に応じてa) 及びb) を繰り返し,ゼロ値及びスパン値のそれぞれが合うまで行う。
8.4 試験方法
計測器の性能試験は,次による。
なお,指示誤差,耐電圧及び絶縁抵抗を除く各項目については,その計測器の最小目盛範囲における試
験結果をもって全レンジの性能としてもよい。
a) 繰返し性 計測器にゼロ試験用ガスを設定流量で導入し最終値を記録計などで確認した後,スパン試
験用ガスを同様に導入し,最終値を確認する。この操作を3回繰り返し,ゼロ値,スパン値の各々の
平均値を算出し,各測定値と平均値との差の最大目盛値に対する百分率を求める。
b) ゼロドリフト ゼロ試験用ガスを設定流量で導入し,必要な場合はゼロ指示値を最大目盛値の5 %程
――――― [JIS B 7994 pdf 9] ―――――
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度に設定して24時間連続測定を行う。この間におけるゼロ指示値の初期の指示値からの最大変動幅の
最大目盛値に対する百分率を求める。
c) スパンドリフト ゼロドリフト試験において,試験開始時,試験終了時(24時間後)及び中間に2回
以上1),ゼロ試験用ガスに代えてスパン試験用ガスを導入し,指示値を記録する。この間におけるス
パン指示値の初期の指示値からの最大変動幅の最大目盛値に対する百分率を求める。
注1) 各スパン測定点の測定時間間隔は,4時間以上離す。
d) 指示誤差 ゼロ校正,スパン校正を行った後,中間点ガスを導入し,指示値を記録する。この指示値
と中間点ガスの濃度との差の最大目盛値に対する百分率を求める。
e) 応答時間 設定流量のゼロ試験用ガスを導入し,指示安定後,流路をスパン試験用ガスに切り替える。
このときの指示記録において,スパン試験用ガス導入の時点から最終指示値の90 %に達するまでの時
間を測定し,応答時間とする。
f) 試料ガスの流量の変化に対する指示値の安定性 設定流量のスパン試験用ガスを導入し,指示が安定
したときの値をAとする。次に流量を設定値から+5 %変化させ,指示が安定したときの値をBとす
る。さらに,流量を設定値から−5 %変化させ,指示が安定したときの値をCとする。B−A及びC−
Aの値の最大目盛値に対する百分率を求める。
g) 電圧変動に対する安定性 電源電圧を定格電圧にしてスパン試験用ガスを導入し,指示が安定したと
きの値をAとする。次に電源電圧を定格電圧の+10 %に変化させ,指示が安定したときの値をBとす
る。さらに,電源電圧を定格電圧の−10 %に変化させ,指示が安定したときの値をCとする。B−A,
C−Aの値の最大目盛値に対する百分率を求める。
h) 耐電圧 計測器電源スイッチ“入り”の状態で,電源端子一括と外箱(接地端子)との間に定格周波
数の交流1 000 Vを一分間加えて,異常の有無を調べる。
i) 絶縁抵抗 計測器電源スイッチ“入り”の状態で,電源端子一括と外箱(接地端子)との間の絶縁抵
抗を,JIS C 1302に規定する500 V絶縁抵抗計で測定する。
9 試験成績書
試験成績書には,次の項目を記載する。
なお,記載項目は,受渡当事者間の協定によって省略してもよい。
a) 試験条件,試験に用いたガスの種類
b) 校正方法
c) 試験結果(表1に示す項目)
d) 特記事項
10 表示
計測器には,見やすい場所に容易に消えない方法で,次の事項を表示しなければならない。
a) 計測器の名称及び製造業者が指定する形名
b) 測定対象成分
c) 測定濃度範囲
d) 使用温度範囲
e) 定格電圧,定格周波数及び容量
f) 製造業者名又はその略号
――――― [JIS B 7994 pdf 10] ―――――
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JIS B 7994:2016の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.040 : 気質 > 13.040.40 : 固定施設からの発生ガス
JIS B 7994:2016の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB7551:1999
- フロート形面積流量計
- JISC1302:2018
- 絶縁抵抗計
- JISK0212:2016
- 分析化学用語(光学部門)
- JISK0215:2016
- 分析化学用語(分析機器部門)
- JISK0222:1997
- 排ガス中の水銀分析方法
- JISZ8103:2019
- 計測用語