JIS B 9650-1:2011 食料品加工機械の安全及び衛生に関する設計基準通則―第1部:安全設計基準 | ページ 2

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a) アレルギ反応 食材として用いられる小麦粉,そば粉などのじんあい,又は蒸発物によってぜん(喘)
息などの敏感・アレルギ反応が生じる危険がある。このような反応は,機械・装置から放出されるア
レルゲンの濃度が非常に低くても起こり得る可能性がある。
b) 発酵による中毒・酸欠 食料品の多くは有機物であることから,これらが発酵して放出する毒性物質
による中毒の危険,又は二酸化炭素によって作業環境が酸欠状態となる危険がある。
c) 臭気 一部の食材から生じる悪臭によって健康障害を被る危険がある。
d) 吸込み及び窒息 貯蔵中及び加工中の食材を吸込み窒息する危険がある。容器内で作業者が身体又は
身体の一部を入れて作業しなければならない場合,呼吸困難及び食材の吸込みによる窒息の危険があ
る。
4.6.2 洗浄剤及び清掃剤及びその他の薬剤
作業者は,清掃作業に用いる洗剤などの洗浄・清掃用物質,及びその他の薬剤,又はそれらの揮発ガス
を吸飲したり接触することによって健康障害を被る危険がある。
4.6.3 爆発及び火災
食料品の食材又は製品の中で,じんあいを生じる粉体状のものは,じんあいの濃度が一定の濃度に達す
ると爆発及び火災の危険がある。また,可燃性液体及びガスを使用する場合,又は酸化作用をもつ物質を
食料品の加工及び清掃に使用する場合にも,引火の危険がある。
4.6.4 生物学的及び微生物学的な要因
食料品の生産に微生物を用いる場合,又は微生物が意図せず作業環境に存在する場合,作業者に対して,
生物学及び微生物学上の健康障害をもたらす危険がある。

4.7 人間工学的な危険源

  作業者の頻繁な繰返し動作,機械・装置を用いて,食料品の加工・処理を行うための動作,及び機械・
装置を停止させずにコンベア上の製品の配置調整を行う,又は残留物を除去するなどの動作によって,身
体に傷害を被る危険がある。

4.8 危険源の組合せ

  食料品の連続処理において,運転を突然停止すると食料品の滞留によって危害が生じる可能性がある。
例えば,稼働中のトンネルオーブンのコンベア停止は,たとえオーブンの火が消えている状態であって
も加工中の食料品が発火する危険がある。加工中の食料品が加工装置内に滞留することによって発火,又
は毒性・爆発性のガス,蒸気,じんあいの発生などによる危険がある。

5 リスクの見積り及び評価

5.1 一般

  食料品加工機械のリスク低減目標達成のための手順は,JIS B 9700-1の5.5(リスク低減目標の達成)に
従う。また,リスクの見積り及び評価についてはJIS B 9702,制御システムの安全関連部の設計について
はJIS B 9705-1にそれぞれ従う。食料品加工機械のリスクアセスメントにおけるリスク見積りと評価は,
機械的安全面の危害だけでなく衛生面の危害も考慮し,検討しなければならない。衛生リスク3) を考慮せ
ず,安全リスクだけを対象にリスク低減のための保護方策を決定すると,洗浄しやすさ及びその確認しや
すさなどの衛生面の安全性に関わる要素を著しく損なう可能性が考えられる。
安全リスク低減のために保護方策を採用する場合,機械的安全面及び衛生面相互の相対的なリスク評価
によって最適な保護方策を選定しなければならない。安全及び衛生のリスクは,表面構造,駆動部のエネ
ルギ,ガードの形状,制御システムの安全関連部など,様々な要素に起因するリスクの組合せを考慮し見

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積もる。
保護方策を講じた後の機械的安全面及び衛生面の残留リスクが,目標とするレベルにどうしても到達し
ない場合は,機械の制限に関する仕様4) の変更を検討し,残留リスクを許容可能(Tolerable)なレベル5) 以
下とする(図1参照)。
注3) 衛生リスクについては,JIS B 9650-2:2011の3.4参照。
4) 機械の制限に関する仕様については,JIS B 9700-1の5.2参照。
5) 許容可能なレベルについては,JIS C 0508-5の附属書B参照。

――――― [JIS B 9650-1 pdf 7] ―――――

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開 始
機械類の制限の決定(使用者入力)
YES
他の危険源は生じるか?
衛生的危険源の同定 NO
機械的危険源の同定
リスク見積り リスク見積り
リスク評価 リスク評価
リスクは
適切に低減されたかa) ? YES
安全リスクと衛生リスクとは
検証 終 了
相反しないか?
NO
NO
リスク低減活動(3ステップメソッド)
危険源は YES
除去できるか?
NO 本質的安全設計方策
によるリスクの低減
リスクは本質的
安全設計方策で
低減できるか? YES 意図した YES
リスク低減は
達成したか?
NO
NO
リスクは YES 安全防護による
保護装置で リスクの低減
低減できるか? 意図した YES
リスク低減は
NO 達成したか?
NO
YES 使用上の制限の
再指定は可能か?
NO 使用上の情報による
リスクの低減
意図した YES
リスク低減は
達成したか?
NO
注a) 目標として設定する“許容可能なリスク”レベルの達成を示す。リスク低減目標の達成は,JIS B 9700-1
の5.5参照。
図1−食料品加工機械のリスク低減プロセス

――――― [JIS B 9650-1 pdf 8] ―――――

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5.2 機械類の使用上の制限に関する仕様の決定

  機械の使用上の制限に関する仕様(制限仕様)は,JIS B 9700-1の5.2(機械の制限に関する仕様)及び
JIS B 9702の5.(機械類の制限の決定)に規定する要求に従い,設置から廃棄までの全ての局面について
定めなければならない。顧客情報に基づき規定する制限仕様には,主に次のようなものがある。
a) 使用上の制限 運転モード,使用目的,作業者の能力,全ての使用局面における意図する使用,及び
合理的に予見可能な誤使用。十分に訓練を受けた作業者と頻繁に入れ替わるパートタイム労働者とで
は,予見可能な誤使用は多くの場合同一にならない。
b) 空間上の制限 動作範囲,機械の保全に必要な空間上の要求など。
c) 時間的制限 意図する使用を考慮した,機械及び構成品の寿命上の限界。

5.3 機械的危険源の同定

  危険源の同定については,JIS B 9702の6. 参照。
代表的な手法は,JIS B 9702の附属書B参照。最も簡便な手法としてチェックリスト法が知られており,
代表的なチェックリストは,JIS B 9702の附属書A参照。

6 安全のための要求事項及び保護方策

6.1 機械的危険源

6.1.1  物理的要因
機械的危険源は,機械を設計するときに除去する。技術的に除去できないときは,十分な保護ガード及
び保護装置をJIS B 9700-2の5. に従って設けなければならない。JIS B 9700-2の5.2を食料品加工機械に
適用する場合,正常運転とは,次の作業も含むものとする。すなわち,製造中の洗浄・清掃作業,食料品
をスムースに流れるようにする作業又は詰まった食料品を除去する作業である。これらの作業は,食料品
加工機械を使用中に,通常,予見できるものである。
製造中の洗浄・清掃は,箇条4で規定した危険源を想定し,次のa) で定められる保護方策で保護する。
作業終了時などに実施する洗浄・清掃は,機械の分解が必要なことがあり,製造中の洗浄と区別する。JIS
B 9700-2の5.2.4で規定した保護方策は,清掃のため危険区域に接近する必要がある場合に適用されるが,
食料品加工機械の場合は,作業終了時などに実施する洗浄・清掃に限って適用する。これは次のb) で拡
張されている。
a) 正常運転中の清掃 清掃・調整などのため,正常運転中に作業者が頻繁に食料品加工機械の危険区域
へ接近する必要がある場合,保護方策はJIS B 9700-2の5.2.3から適切な方策を選ばなければならない。
一般に固定式ガードは適さない。
b) ガードの構造 頻繁に取り外すガードは付け忘れをしやすいため,一般にインターロック付きガード
の方が適している。
c) スイッチの構造 作業場,特に飛まつ(沫)の生じる作業場で安全に関連するスイッチを用いる場合,
密閉構造のものとする。食料品加工機械に使用するインターロック装置のスイッチは,危険側へ故障
する6) ものは避けなければならない(JIS B 9710参照)。
注6) IS B 9700-2の4.12.2参照。
d) 作業終了時などに実施する洗浄・清掃のための危険区域への接近 保護手段をJIS B 9700-2の4.11.9
から選ぶとき,機械設計者は,作業終了時などに実施する洗浄・清掃をどのようにして行うかリスク
分析を行う。
次に示すように機械・装置の動力源を遮断し,これらの作業を行う場合は,エネルギを消散させた

――――― [JIS B 9650-1 pdf 9] ―――――

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り,可能な場合は,適切な保護装置を使用する。また,安全を確保するための手段について取扱説明
書に記載する。
1) 安全防護物7) を取り外すことなく製造ラインの調整・保守,詰まった食料品の除去並びに,アクセ
スポイントから奥に位置する箇所及び隅の洗浄・清掃などが困難な場合,リスク分析を行い,機械・
装置に次の装置を一つ以上装備する。
注7) IS B 9700-1の3.24参照。
1.1) 動力を遮断して機械を手動で操作できる手段。
1.2) IS B 9700-2の4.11.9及び4.11.10に定められた事項で,“洗浄・清掃,保守制御”に当てはまるも
の,及びJIS B 9700-1の3.25.43.26に規定されている保護方策。
1.3) 上記の“洗浄・清掃,保守制御”を行う操作部は,全ての危険区域へのアクセスポイントが見え
る作業場所に設置する。この制御は,該当場所に限って安全防護物を外して可動部を動かすこと
ができる。
“洗浄・清掃,保守制御”を行う者は,権限をもつ関係者に限定される構造とする。また,“洗
浄・清掃,保守制御”を行う操作部は,局所的な制御装置に固定するか,又は連結し,次によっ
て構成する。
1.3.1) 限定作動制御装置。この装置を働かせると,機械・装置は,あらかじめ限定した作動をした後に
停止する。限定作動を繰り返すためには,制御装置のボタンを押し直す必要がある。
1.3.2) 速度限定装置。この装置は,動作速度を限定するもので,機械・装置は,非常に低速でしか作動
しない。
2) 小形軽量(例えば,卓上形)の機械・装置については,清掃・洗浄が必要な可動部を手又は手回し
ハンドルなどで操作できるよう考慮する。
e) 刃の取扱い 大多数の食料品加工機械では,刃を定期的に取り外す必要がある。刃は鋭利であるから,
取扱いに危険がある場合,設計者は,刃に道具を取り付けて手が触れないようにするとともに,箱又
は保護容器を備えて輸送中に鋭利な刃を保護するなどの特別の手段をとらなければならない。
f) 補助装置の設計と供給 補助装置とは,押出し装置を備えて食料品の送り出しを助けるような補助的
装置を指す。このような補助装置は,食料品を安全に送り出すことができるよう設計し,機械に付け
て供給しなければならない。
6.1.2 蓄積エネルギ
蓄積エネルギについては,次による。
a) 圧力 機械類の空圧及び液圧設備の危険源防止の一般原則については,JIS B 9700-2の4.10を適用す
る。
b) 位置 高所へ食料品又は機械の一部を持ち上げる機能をもつ機械は,停電又は構造の物理的破壊など
によってそれらが,意図しない落下又は降下しない構造とする。例えば,上方への階層構造をもつチ
ェーンコンベアのチェーン破断,リフタのヒンジ部の破損,スクリュージャッキの破壊,油圧シリン
ダの漏れなどがある。
c) 圧力と熱との複合 加圧・加熱されたレトルト殺菌装置などの圧力容器の扉を開放する場合,インタ
ーロック装置を設けて圧力及び温度が適切なレベルになるまで扉を開放できない構造とする。
6.1.3 滑り,つまずき及び転倒
滑り,つまずき及び転倒については,次による。
a) 設計者は,食料品が機械・装置からこぼれることを予見し,こぼれを防止するために,次のような対

――――― [JIS B 9650-1 pdf 10] ―――――

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