JIS G 0558:2020 鋼の脱炭層深さ測定方法

JIS G 0558:2020 規格概要

この規格 G0558は、鋼の脱炭層の深さを測定する方法について規定。

JISG0558 規格全文情報

規格番号
JIS G0558 
規格名称
鋼の脱炭層深さ測定方法
規格名称英語訳
Steels -- Determination of depth of decarburization
制定年月日
1966年1月1日
最新改正日
2020年12月21日
JIS 閲覧
‐ 
対応国際規格

ISO

ISO 3887:2017(MOD)
国際規格分類

ICS

77.040.99, 77.080.20
主務大臣
経済産業
JISハンドブック
‐ 
改訂:履歴
1966-01-01 制定日, 1969-01-01 確認日, 1971-12-01 確認日, 1974-12-01 確認日, 1977-08-01 改正日, 1983-02-01 確認日, 1988-10-01 確認日, 1994-06-01 確認日, 1998-02-20 改正日, 2003-05-20 確認日, 2007-08-20 改正日, 2011-10-20 確認日, 2016-10-20 確認日, 2020-12-21 改正
ページ
JIS G 0558:2020 PDF [16]
                                                                                   G 0558 : 2020

pdf 目 次

ページ

  •  序文・・・・[1]
  •  1 適用範囲・・・・[1]
  •  2 引用規格・・・・[1]
  •  3 用語及び定義・・・・[2]
  •  4 測定方法の種類・・・・[3]
  •  5 試験片・・・・[4]
  •  6 測定方法・・・・[4]
  •  6.1 顕微鏡による測定方法・・・・[4]
  •  6.2 硬さ試験による測定方法・・・・[5]
  •  6.3 炭素含有率による測定方法・・・・[7]
  •  7 表示方法及び表示記号・・・・[9]
  •  8 試験報告書・・・・[9]
  •  附属書A(参考)典型的な脱炭ミクロ組織の例・・・・[10]
  •  附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表・・・・[12]

(pdf 一覧ページ番号 1)

――――― [JIS G 0558 pdf 1] ―――――

           G 0558 : 2020

まえがき

  この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本鉄鋼連盟(JISF)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業
標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格である。これによって,JIS G 0558:2007
は改正され,この規格に置き換えられた。
  この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
  この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

(pdf 一覧ページ番号 2)

――――― [JIS G 0558 pdf 2] ―――――

                                      日本産業規格                            JIS
                                                                              G 0558 : 2020

鋼の脱炭層深さ測定方法

Steels-Determination of depth of decarburization

序文

 この規格は,2017年に第3版として発行されたISO 3887を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本産業規格である。
  なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。

1 適用範囲

  この規格は,鋼の脱炭層の深さを測定する方法について規定する。
    注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
          ISO 3887:2017,Steels−Determination of the depth of decarburization(MOD)
            なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
          ことを示す。

2 引用規格

  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
    JIS G 0201 鉄鋼用語(熱処理)
    JIS G 0202 鉄鋼用語(試験)
    JIS G 1211-3 鉄及び鋼−炭素定量方法−第3部 : 燃焼−赤外線吸収法
    JIS G 1211-4 鉄及び鋼−炭素定量方法−第4部 : 表面付着·吸着炭素除去−燃焼−赤外線吸収法
    JIS G 1253 鉄及び鋼−スパーク放電発光分光分析方法
    JIS K 0144 表面化学分析−グロー放電発光分光分析方法通則
      注記 対応国際規格 : ISO 14707,Surface chemical analysis−Glow discharge optical emission
             spectrometry (GD-OES)−Introduction to use
    JIS K 0189 マイクロビーム分析−電子プローブマイクロ分析−波長分散X線分光法のパラメータの
        決定方法
      注記 対応国際規格 : ISO 14594,Microbeam analysis−Electron probe microanalysis−Guidelines for the
             determination of experimental parameters for wavelength dispersive spectroscopy
    JIS Z 2244-1 ビッカース硬さ試験−第1部 : 試験方法
    JIS Z 2251 ヌープ硬さ試験−試験方法

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G 0558 : 2020

3 用語及び定義

  この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,JIS G 0201及びJIS G 0202による。
3.1
脱炭層(decarburization)
  鋼の熱間加工又は熱処理によって,表層部の炭素含有率が減少した部分。
    注記 部分脱炭層深さd3と表面から炭素が検出されるまでの距離として測られる完全脱炭層深さd1
          とがある(図1参照)。
3.2
全脱炭層深さ,d4(depth of total decarburization)
  鋼材の表面から,脱炭層と生地との化学的性質又は物理的性質の差異が,もはや区別できない位置まで
の距離。ここでいう化学的性質は,ミクロ組織又は炭素含有率で判定し,物理的性質は,硬さで判定する
(図1参照)。
3.3
フェライト脱炭層深さ
  鋼材の表層部において,脱炭してフェライトだけとなった層の表面からの深さ。ここでいうフェライト
脱炭層深さは,ミクロ組織で判定する。
3.4
特定残炭率脱炭層深さ
  鋼材の表面からある一定の残炭率(生地の炭素含有率に対し残存している炭素含有率の割合)をもつ位
置までの距離。ここでいう残炭率脱炭層深さは,ミクロ組織で判定する。
3.5
実用脱炭層深さ,d2
  鋼材の表面から実用上差し支えない硬さが得られる位置までの距離。実用上差し支えない硬さとは,材
料規格などに規定された最低硬さなどとする。
    注記 対応国際規格では,鋼材の表面から実用上差し支えない炭素含有率又は硬さが得られる位置ま
          での距離とし,図1のd2として例示している。
3.6
硬さ推移曲線(depth profile of hardness)
  鋼材の表面からの垂直距離と硬さとの関係を表す曲線。
3.7
炭素含有率推移曲線(depth profile of carbon content)
  鋼材の表面からの垂直距離と炭素含有率との関係を表す曲線。

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                                                                                             3
                                                                                   G 0558 : 2020
   a 材料規格に規定する最低炭素含有率       d1 完全脱炭層深さ
  b 生地の炭素含有率                        d2 実用脱炭層深さ
                                             d3 部分脱炭層深さ
                                             d4 全脱炭層深さ
注記 図1で示す斜線の帯は,実際の測定時に評価のばらつきがあることを示している。
                         図1−脱炭層をもつ代表的な鋼の各脱炭層深さの例

4 測定方法の種類

  脱炭層深さの測定方法の種類は,材料規格による規定又は受渡当事者間の協定のない限り,脱炭の程度,
ミクロ組織,鋼材の炭素含有率,鋼材の形状及び必要とする測定精度によって,試験を行う者が決める。
通常,次のいずれかの方法による。
a) 顕微鏡による測定方法 試験片の切断面を腐食して顕微鏡で観察し,脱炭層深さ(全脱炭層深さ,フ
    ェライト脱炭層深さ及び特定残炭率脱炭層深さ)を測定する。この方法は,主として鋳造のまま,鍛
    造又は圧延のまま,焼ならし状態,及び焼なまし状態のものに適用する。顕微鏡による測定が困難な
    鋼種(例えば,ステンレス鋼,耐熱鋼,高マンガン鋼,高合金工具鋼など)は,b)の硬さ試験による
    測定方法が望ましく,また,必要に応じてc)の炭素含有率による測定方法を用いてもよい。
b) 硬さ試験による測定方法 試験片の切断面について,JIS Z 2244-1に従ったビッカース硬さ試験,又

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G 0558 : 2020
    はJIS Z 2251に従ったヌープ硬さ試験を行って,脱炭層深さ(全脱炭層深さ及び実用脱炭層深さ)を
    測定する。この方法は,主として焼入状態及び焼入焼戻し状態のものに適用する。過共析鋼では,表
    層が共析成分まで脱炭しても生地と硬さがほとんど変わらないので,硬さ試験による測定方法よりも
    顕微鏡による測定方法の方がよい。
c) 炭素含有率による測定方法 試験片の切断面若しくは研磨面,又は機械加工によって採取された切粉
    について炭素分析を行って,脱炭層深さ(全脱炭層深さ)を測定する。この方法は,全ての供試材の
    状態に適用してよい。

5 試験片

  試験片は,通常,試験の対象となる鋼材そのものから採取する。ただし,試験の対象となる鋼材自体か
らの採取が難しい場合は,鋼材と同一条件で処理した同一鋼種の鋼材を用いてもよい。試験片の個数及び
採取位置は,材料規格による。規定のない場合は,受渡当事者間の協定による。

6 測定方法

6.1 顕微鏡による測定方法

6.1.1 一般事項
  特に指定がない限り,この方法は,炭素含有率によってミクロ組織変化が生じるような場合にだけ適用
する。特に焼なまし又は焼ならし組織(フェライト·パーライト組織)を示す鋼材に有効である(附属書
A参照)。
  なお,組織変化の判定が難しい焼入れ又は焼入焼戻しの組織をもつ鋼材でも,組織変化が明瞭な場合に
は,適用してよい。
6.1.2 試験片調製
  供試材を圧延方向に垂直に切断し,その切断面を研磨仕上げして試験片の被検面とする。圧延方向に垂
直以外に切断する供試材の被検面は,受渡当事者間の協定による。
  なお,小さな試験片(4 cm2未満の断面積)の場合は,できる限り試験片の全外周を測定する。大きな試
験片の場合は,試験片が対象とする鋼材を代表するように幾つかの部分から採取する。この場合,指定が
ない限り,異常な脱炭を示す可能性のあるすみ角部を含まないようにする。また,試験片の数及び位置に
ついては,受渡当事者間の協定によって決める。
  切断又は研磨の際,被検面の端部が丸くならないように,十分注意する。被検面の端部の丸み防止には,
合成樹脂などに埋め込むか,留め金などで押さえて研磨するのがよい。全自動又は半自動試験片調製装置
を使用するのがよい。
  体積分率1.5 %4 %ナイタル1)又は体積分率2 %5 %ピクリン酸アルコール溶液によって,被検面を鋼
の組織が現れるように腐食する。
    注1) 指定された体積分率の硝酸(質量分率60 %62 %)を含むエタノール溶液。
6.1.3 測定方法
  通常,炭素含有率の減少は,次によって決定する。
− 亜共析鋼(フェライト·パーライト組織) : パーライトの減少から求める。
− 共析鋼(パーライト組織) : パーライトの減少から求める。
− 過共析鋼(パーライト·初析セメンタイト組織) : パーライト又は初析セメンタイトの減少から求める。
− 分散炭化物組織(フェライト素地に炭化物が分散した組織) : フェライト素地中の炭化物の減少から求

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                                                                                             5
                                                                                   G 0558 : 2020
    める。
  測定方法は,次による。
a) 脱炭層深さは,読取り寸法のある接眼鏡を用いるか,スクリーングラスに投影するか又は写真を用い
    るかのいずれかの方法で測定する。測定倍率は,特に規定のない場合,脱炭層深さによって,適切な
    倍率を選定する。通常の標準組織状態では100倍がよく,100倍では判定し難い組織(例えば,球状
    化焼なまし組織など)では200倍500倍を使用するのがよい。
b) 脱炭層深さは,被検面の中で,脱炭層帯が最も深く一様に存在している位置を測定する。ただし,脱
    炭層深さが極端に深い部分は,受渡当事者間の協定によって除外できる。
c) 脱炭層が明瞭に判別できない場合は,受渡当事者間の協定によって,脱炭層深さに変化を与えない雰
    囲気中で焼なまし又は焼ならし処理を行ってもよい。
      焼入焼戻し後の組織状態では,脱炭層の判定が非常に困難なので,焼なまし又は焼ならしを行い,
    標準組織の状態で判定することが望ましい。
      球状化焼なましを行う鋼種(軸受鋼,工具鋼など)で,球状化焼なまし状態で判定が困難な場合は,
    焼なまし又は焼ならしを行い,標準組織の状態で判定することが望ましい。標準組織とは,通常,焼
    ならしで得られるフェライト·パーライト組織,又はパーライト·初析セメンタイト組織で,組織変
    化によって脱炭層の測定が容易な組織をいう。

6.2 硬さ試験による測定方法

6.2.1 一般事項
  測定は,ビッカース硬さ試験又はヌープ硬さ試験によって行う。二つの方法はいずれも,供試材表面に
垂直な直線又は斜めの直線に沿って,供試材の断面の硬さの変化を測定する。
  なお,この方法は,焼入焼戻し又は他の熱処理を施した亜共析鋼及び顕微鏡による測定方法では,脱炭
層深さが明瞭に判別できない,焼入れ処理を行った鋼材に適用する。
6.2.2 試験片調製
  供試材を表面に垂直に切断し,その切断面を研磨仕上げして試験片の被検面とする。切断又は研磨する
場合は,被検面の硬さに影響を及ぼさないように,又は端部が丸くならないように,十分注意する。
  なお,試験片調製時の留意点は,6.1.2による。
6.2.3 測定方法
6.2.3.1 硬さ測定方法
  研磨のままの被検面についてビッカース硬さ試験又はヌープ硬さ試験を行い,表面から生地の硬さが得
られる位置又は指定された硬さが得られる位置までの硬さ推移曲線を作成する。鋼種,生地の硬さ,脱炭
層深さの程度などに応じて,ビッカース硬さ試験の試験力は,0.98 N9.8 Nの中から選択し,ヌープ硬さ
に対しては,適切な範囲のものから選択する。
  測定は,直角測定法(図2)又は斜め測定法(図3)による。
  直角測定法は,脱炭層深さが大きい場合に,斜め測定法は,小さい場合に用いるとよい。直角測定法の
場合,直角一列法でなく,直角千鳥法を採用すれば測定間隔を更に細かくすることができる。いずれの場
合も,表面からの距離を,測微顕微鏡又はマイクロメータのついた支持台その他適切な装置及び方法によ
って正確に測定することが必要である。

――――― [JIS G 0558 pdf 7] ―――――

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G 0558 : 2020
            注記 破線は測定線を示す。                      注記 破線は測定線を示す。
                図2−直角測定法                                図3−斜め測定法
6.2.3.2 硬さ推移曲線の作成
  硬さ推移曲線の作成は,次による。
a) 被検面の測定する位置について,その表面に対し垂直な直線又は斜めの直線に沿って順次ビッカース
    硬さ又はヌープ硬さを測定し,硬さ推移曲線を作る。
b) ビッカース硬さ試験による硬さ推移曲線を作る場合の測定点の表面からの間隔は,通常,0.1 mm以下
    とする。その場合,隣り合うくぼみの中心の間隔は,JIS Z 2244-1又はJIS Z 2251の規定を満たさな
    ければならない。
c) ただし,必要のある場合は,表面の1.5 mmの範囲内に2点5点をとり,それぞれの点から表面に垂
    直な直線上で硬さ測定を行い,1本の硬さ推移曲線を作ってもよい(図4参照)。
                                                                                      単位 mm
                         l2−l1,l3−l2,l4−l3··は,いずれも0.1以下とする。
                              図4−硬さ測定点の配置(直角千鳥法)
6.2.3.3 脱炭層深さの求め方
  硬さ推移曲線からの脱炭層深さの求め方は,次による。
a) 全脱炭層深さは,1本の硬さ推移曲線上で表面から生地の硬さが得られる位置までの距離で表す。
b) 実用脱炭層深さは,1本の硬さ推移曲線上で表面から指定された硬さが得られる位置までの距離で表
    す。ただし,推移曲線によらず,指定した硬さが規定した深さの位置で得られるかどうかによって判
    定する場合もある。
      なお,実用脱炭層深さで鋼材の合否を判定する場合には,受渡当事者間の事前の協定による。

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                                                                                             7
                                                                                   G 0558 : 2020
  受渡当事者間の協定によって,できるだけ離れた場所で作成された最低2本の硬さ推移曲線から得られ
た値の平均値として,全脱炭層深さ及び実用脱炭層深さを求めてもよい。ただし,硬さ試験による測定方
法で脱炭層深さが判定できない場合は,受渡当事者間の協定によって,脱炭層深さに変化を与えない条件
で焼入れ処理を行ってもよい。

6.3 炭素含有率による測定方法

6.3.1 一般事項
  6.3.26.3.6に規定する方法によって,表面から垂直方向の炭素含有量変化を決定する。これらの方法は,
鋼の組織に関わりなく適用できる。
6.3.2 化学分析
6.3.2.1 一般事項
  化学分析は,単純な形状(円筒状又は平面で囲まれた多面体)をもち,かつ,機械加工に適した大きさ
の製品で,表面全体が脱炭されている場合だけに適用する。
6.3.2.2 試験片の選択及び試験
  汚染の影響がないようにしながら,試験片の表面と平行に乾式機械加工2)で0.1 mm厚ごとの層を連続的
に採取する。酸化物層は,あらかじめ取り除く3)。
  鋼材が硬くて切削し難い場合は,受渡当事者間の合意によって,脱炭層深さに変化を与えない雰囲気を
用いて,適切な温度で熱処理を行ってから切削してもよい。
    注2) 切粉試料の炭素含有率への影響がないように,バイト刃先の著しい摩耗及び脱落に十分注意す
          る必要がある。
       3) 酸洗が一般的な方法である。
  各試料採取ごとに,JIS G 1211-3又はJIS G 1211-4に従って,炭素含有率を分析する。
6.3.3 発光分光分析(Spectrographic analysis)
6.3.3.1 一般事項
  発光分光分析は,十分な大きさをもち,かつ,平たん(坦)な表面の製品だけに適用する。
  炭素の定量分析は,JIS G 1253を適用し,その分析方法は受渡当事者間で協定した方法によって行う4)。
    注4) 対応国際規格では,具体的な分析方法について特に規定していないが,測定時の混乱を避ける
          ためJISの引用を追加している。
6.3.3.2 試験片の選択及び試験
  深さ0.1 mmごとに連続的に研削作業して,平面の被検面とする。各深さの炭素含有量を放電が重なら
ないようにして,発光分光分析によって,測定する。
6.3.4 結果の解釈(化学分析法及び発光分光分析法)
  6.3.2及び6.3.3に規定する方法によって,表面から炭素含有量が規定された最小値になった位置までの
距離を測定することによって,実用脱炭層深さを決定してよい。また,全脱炭層深さは,表面から炭素含
有量が一定となる位置(例えば,製品中心部)までの距離を測定して決めることができる。ただし,分析
値の許容変動を考慮して,実際には,測定した炭素含有率と生地の炭素含有率との差が,式(1)に規定する
最大許容偏差以下になる位置までの距離とする。
                        A=0.05×B      (1)
                       ここに, A  : 最大許容偏差(質量分率 %)。Aの最小値は,0.03とする。
                                 B  : 生地の炭素含有率(質量分率 %)

――――― [JIS G 0558 pdf 9] ―――――

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G 0558 : 2020
6.3.5 電子プローブマイクロ分析(Electron probe microanalysis : EPMA)
6.3.5.1 一般事項
  この方法は,JIS K 0189によって行う。
  この方法は,特に単層組織で,硬化又は調質された鋼材に適している。複層構造の製品に対して,炭素
含有量変化の解釈が難しくなる場合に,適用してもよい。
6.3.5.2 試験片調製
  炭素含有量の測定を円滑にするためには,エッチングしてはならないが,試験片調製は,顕微鏡による
測定方法(6.1参照)と同様にしなければならない。
6.3.5.3 測定
  被検面に垂直方向にEPMAの線分析又は点分析を連続的に行って,炭素含有量を求める。脱炭層の表面
から生地の炭素含有率が得られる位置までの炭素含有率推移曲線を作成する。脱炭層深さは,この推移曲
線から決定する。
  全脱炭層深さは,表面から炭素含有量が一定となる位置(例えば,製品中心部)までの距離を測定して
決めることができる。ただし,分析値の許容変動を考慮して,実際には,測定した炭素含有率と生地の炭
素含有率との差が,式(1)に規定する最大許容偏差以下になる位置までの距離とする。
  全脱炭層深さは,受渡当事者間の協定によって,少なくとも4本の推移曲線から得られた値の平均値と
してもよい。
6.3.6 グロー放電発光分光分析(Glow discharge optical emission spectrometry : GD-OES)
6.3.6.1 一般事項
  この方法は,JIS K 0144によって行う。
  この方法は,適切な大きさの平面表面の製品で,脱炭層深さが0.1 mm未満の製品だけに適用する。試
験片の大きさは,使用するグロー放電源に適したものであることが望ましい。通常,20 mm100 mm(直
径,幅及び/又は長さ)の円形又は長方形が適している。
6.3.6.2 試験片調製
  油分又は付着物を除去するために,適切な溶剤(高純度アセトン又はエタノール)で試験片表面を洗浄
する。不活性ガス(アルゴン又は窒素)又は清浄で油分を含まない圧縮空気を吹き付けて,表面を乾かす。
その際に,送風チューブが試験片表面に触れないようにする。表面が湿っている場合は,油分又は付着物
を除去しやすいようにするため,湿らせた柔らかくて糸くずが出ないような布又は紙で,軽く拭き取って
もよい。拭き取った後,溶剤で流し,上記の方法で乾かす。
6.3.6.3 測定
  アルゴンイオン流によって,試験片表面をスパッタリングする。スパッタされた原子は,低圧プラズマ
中で励起され,その結果生じる発光を試験片の成分定量に用いる。脱炭された表面から製品中心部の炭素
含有量を示す位置までの,深さ方向の炭素含有率推移曲線を作る。脱炭層深さは,この推移曲線から決定
する。
  全脱炭層深さは,表面から炭素含有量が一定となる位置(例えば,製品中心部)までの距離を測定して
決めてよい。ただし,分析値の許容変動を考慮して,実際には,測定した炭素含有率と生地の炭素含有率
との差が,式(1)に規定する最大許容偏差以下になる位置までの距離とする。
  全脱炭層深さは,受渡当事者間の協定によって,少なくとも2本の推移曲線から得られた値の平均値と
してもよい。

――――― [JIS G 0558 pdf 10] ―――――

                                                                                             9
                                                                                   G 0558 : 2020

7 表示方法及び表示記号

  脱炭層深さは,ミリメートルで示し,顕微鏡による測定方法の場合は,小数点以下2位まで,硬さ試験
及び炭素含有率による測定の場合は,小数点以下1位までとする。
  脱炭層深さの表示記号は,表1による。
                                   表1−脱炭層深さの表示記号
         脱炭層深さ                                  測定方法
                         顕微鏡による 硬さ試験によ         炭素含有率による測定方法
                         測定方法    る測定方法a) 化学分析 スパーク 電子プロ グロー放
                                                              発光分光 ーブマイ 電発光分
                                                              分析     クロ分析 光分析
     全脱炭層深さ          DM-T         DH-T       DC-T     DS-T     DE-T     GT-T
     フェライト脱炭層深さ  DM-F          −         −       −       −       −
     特定残炭率脱炭層深さ  DM-S          −         −       −       −       −
     実用脱炭層深さ         −          DH-P        −       −       −       −
     例1 DM-T0.28 顕微鏡による測定方法で,全脱炭層深さ0.28 mm。
     例2 DH (2.9) -T0.2 試験力2.9 Nのビッカース硬さ試験機を用いてビッカース硬さを測定する方法で,全
          脱炭層深さ0.2 mm。
     例3 DM-F0.05 顕微鏡による測定方法で,フェライト脱炭層深さ0.05 mm。
     例4 DM-S (70) 0.10 顕微鏡による測定方法で,残炭率70 %の脱炭層深さ0.10 mm。
     例5 DM-F0.05-S (50) 0.15-T0.28 顕微鏡による測定方法で,フェライト脱炭層深さ0.05 mm,残炭率50 %
          の脱炭層深さ0.15 mm,全脱炭層深さ0.28 mm。
     例6 DH (2.9) -P (450) 0.2 試験力2.9 Nのビッカース硬さ試験機を用いてビッカース硬さを測定する方法
          で,450 HVの実用脱炭層深さ0.2 mm。
     例7 DC-T0.3 化学分析による炭素分析測定方法で,全脱炭層深さ0.3 mm。
     例8 DS-T0.3 スパーク発光分光分析装置を用いる炭素分析測定方法で,全脱炭層深さ0.3 mm。
     例9 DE-T0.3 電子プローブマイクロ分析装置を用いる炭素分析測定方法で,全脱炭層深さ0.3 mm。
     例10 GT-T0.3 グロー放電発光分光分析装置を用いる炭素分析測定方法で,全脱炭層深さ0.3 mm。
     注記 対応国際規格では,全脱炭層深さをDDで表す(例えば,DD=0.08 mm)。
     注a) 表示記号は,ビッカース硬さ試験による場合を示す。ヌープ硬さ試験によった場合の表示記号は,受
          渡当事者間の協定による。

8 試験報告書

  試験報告書が必要な場合には,報告する事項は,次のうちから受渡当事者間の協定によって選択する。
a) 鋼種又は化学成分
b) 試験片(試験の対象となる鋼材又は同一鋼種の鋼材)の区別
c) 採取した試験片の数及び位置
d) 使用した測定方法
e) 試験結果

――――― [JIS G 0558 pdf 11] ―――――

           10
G 0558 : 2020
                                          附属書A
                                          (参考)
                             典型的な脱炭ミクロ組織の例
  顕微鏡による測定においては,脱炭層深さは,表面の炭素含有量変化に起因するミクロ組織変化の評価
に基づいて,求められている。焼なまし又は焼ならしされたフェライト及びパーライトミクロ組織に対し
ては,図A.1に示すように,パーライト量の減少から脱炭層を決めることができる。硬化,焼入れ及び調
質されたマルテンサイトミクロ組織に対しては,図A.2に示すように,粒間フェライト量の減少から脱炭
層を決めることができる。球状化焼鈍ミクロ組織に対しては,図A.3に示すように,炭化物又はラメラ状
パーライトの生成から脱炭層を決めることができる。
                           図A.1−熱処理された高炭素鋼の部分脱炭の例

――――― [JIS G 0558 pdf 12] ―――――

                                                                                            11
                                                                                   G 0558 : 2020
                            図A.2−熱処理されたばね鋼の完全脱炭の例
                        図A.3−球状化焼鈍処理された工具鋼の部分脱炭の例

――――― [JIS G 0558 pdf 13] ―――――

   12
    G 0558 : 2020
                                                                                                                                              G0
                                                                                                                                                  2
                                                                  附属書JA
                                                                                                                                                 55
                                                                   (参考)
                                                                                                                                                   8 : 2
                                                     JISと対応国際規格との対比表
                                                                                                                                                       020
     JIS G 0558:2020 鋼の脱炭層深さ測定方法                            ISO 3887:2017,Steels−Determination of the depth of decarburization
     (I)   JISの規定                   (II) (III)国際規格の規定                                                 (V)   JISと国際規格との技術的差
                                                                        (IV)   JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
                                     国際                              の評価及びその内容                     異の理由及び今後の対策
                                     規格
      箇条番号         内容              箇条          内容         箇条ごと       技術的差異の内容
                                     番号
      及び題名                            番号                        の評価
     3 用語及び 3.1 脱炭層                3     3.1 脱炭層           追加及  国内で使用する定義を追加。    JISの定義の追加をISOへ提案す
     定義      3.2 全脱炭層深さ                 3.2 実用脱炭層深さ   び削除  全脱炭層深さでは,ISO規格では,る。
                3.3 フェライト脱炭層             3.3 全脱炭層深さ              炭素含有率だけであるが,JISでは,
                深さ                             3.4 炭素含有率推移曲線        硬さを含めた物理的性質を入れて
                3.4 特定残炭率脱炭層             3.5 硬さ推移曲線              いる。
                深さ                                                            実用脱炭層深さでは,ISO規格では
                3.5 実用脱炭層深さ                                              硬さ,炭素含有率の二方法を認めて
                3.6 硬さ推移曲線                                                いるが,JISでは硬さだけに限定。
                3.7 炭素含有率推移曲
                線
     4 測定方法 a) 顕微鏡による測定方     4     ·顕微鏡による方法   追加    基本的な測定方法に関しては一致 技術的差異は軽微である。
     の種類    法                               ·硬さ試験による方法          している。JISは,より詳細な方法
                b) 硬さ試験による測定            ·炭素含有率による方法        の記述及び留意点を追加した。
                方法
                c) 炭素含有率による測
                定方法
     5 試験片  対象鋼材そのもの又は                      −          追加    JISでは,試験片採取の一般的事項ISOへの提案を行う。
                同一条件で製造したも                                            の項を設けて記載している。
                の

――――― [JIS G 0558 pdf 14] ―――――

                                                                                                                                         13
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     (I)   JISの規定                   (II) (III)国際規格の規定                                                 (V)   JISと国際規格との技術的差
                                                                        (IV)   JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
                                     国際                              の評価及びその内容                     異の理由及び今後の対策
                                     規格
      箇条番号         内容              箇条          内容         箇条ごと       技術的差異の内容
                                     番号
      及び題名                            番号                        の評価
     6 測定方法 6.1.2 試験片の調製        5.2.2 試験片の調製         追加    JISでは,異常な脱炭を示す可能性技術的差異は軽微である。
                                                                                 のあるすみ角部を含まないことを
                                                                                 明記した。
                6.2 硬さ試験による測      5.3   硬さ試験による測定方法 追加及 JISは,ビッカース硬さの試験力のISOへの提案を行う。
                定方法                                                 び変更  範囲が狭く,また,硬さ推移曲線を
                                                                                 作成することとしている。
                6.3 炭素含有率による      5.4   炭素含有率による測定方追加                                   ISOへの提案を行う。
                                                                                 化学分析試験片の採取に際し,試料
                測定方法                         法                            が硬くて切削し難い場合は,熱処理
                                                                                 してもよいことを追加した。
                                                                                 JISは,発光分光分析において,炭ISOへの提案を行う。
                                                                                 素の定量分析方法を追加している。
                                                                                 JISは,分析許容変動を考慮して,ISOへの提案を行う。
                                                                                 脱炭層深さを判断するため計算式
                                                                                 を規定した。
     7 表示方法 全脱炭層深さ              3.3   全脱炭層深さの平均を 追加及  JISの定義の表示及び記号を追加。ISOへの提案を行う。
     及び表示記 フェライト脱炭層深さ      6     DDで示す。           び変更  JISでは,測定結果を示す数値の桁
     号        特定残炭率脱炭層深さ                                            数を規定した。
                実用脱炭層深さ
     8 試験報告 鋼種又は化学成分          6     試験片の識別         追加    JISでは,受渡当事者間の協定によISOへの提案を行う。
     書        試験片の区別                     試験片の数及び位置            って,報告項目を選択できるとし
                試験片の数及び位置               試験結果                      た。また,供試材の内容を示す鋼種
                測定方法                         手順からの相違点など          及び試験片が対象材そのものか,同
                試験結果                         試験日                        一鋼種によるものかの区別を記載
                                                                                 するとした。
                                                                                                                                              G0 558 : 2020
                                                                                                                                                  2

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