JIS H 1123:2021 鉛地金の光電測光法による発光分光分析方法 | ページ 3

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器を用いて放電を制御することが可能な装置。
2) アーク放電装置 直流アーク電源装置又は交流アーク電源装置のうち,光電測光法に適した交流ア
ーク電源装置とする。交流アークは,電圧によって交流高圧アーク(AC HVA)と交流低圧アーク
(AC LVA)とがあり,いずれの場合も,通常,高圧スパーク又は高周波放電を用いて点火する。こ
れらの装置には,アークの断続間隔が商用電力周波数単位のものと秒単位のものとがある。
3) 低圧コンデンサ放電電源装置 大容量のコンデンサを最高1 kV程度に充電した後,高圧スパーク放
電によって点火することが可能な装置。放電の制御方式には,同期回転断続器を用いたもの,電子
管回路によって断続する方法を用いたもの,固定制御間隙を用いたものなどがある。この装置は,
回路定数の選択によって直流低圧スパーク(DC LVS)的放電から直流低圧アーク(DC LVA)的放
電まで段階的に変化させることが可能なものとする。
b) 光源装置 試料を放電によって発光させるための電極支持台の上で,平面状試料用,棒状試料用又は
試料補助電極とその対電極とを保持可能なものとする。発光雰囲気として特定のガスを用いる構造の
もの,試料用補助電極を回転可能なもの,試料電極保持部分を水冷可能なものなどがある。
1) 平面状試料用電極支持台 この電極支持台は,通常,真空形分光計では径20 mm以上,常圧形分光
計では30 mm以上の平面状試料が保持可能なものとする。棒状試料の支持にも兼用可能なものでも
よい。真空形分光計では,通常,光源装置の雰囲気にアルゴンを使用し,その流量を流量計及び自
動弁によって調節する。真空形分光計の電極支持台の一例を図A.2に示す。
1 集光レンズ 3 アルゴンガス流入口 5 試料
2 保護石英ガラス板 4 対電極 6 アルゴンガス流出口
図A.2−真空形分光計の電極支持台の一例
2) 棒状試料用電極支持台 棒状試料用電極支持台は,通常,径20 mm以下の棒状試料が保持可能なも
のとする。電極位置を調節するための電極投影が可能なもの,電極保持部分の過熱防止のために水
冷可能なものなどがある。
c) 集光装置 光源からの光を集光して分光系に入射させるために用い,集光レンズ系からなるものとす
る。集光レンズ系は,コリメーター結像法,中間結像法,円筒レンズ結像法などを用い,次による。
通常,分光計では,コリメーター結像法を用いる。
1) コリメーター結像法 コリメーター結像法では,1個の集光レンズを入口スリットの前に置き,光
源からの光を集光して入口スリットを均一に照射し,コリメーター上に結像させる。コリメーター
結像法の光学系を図A.3に示す。

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1 光源 3 スリット
2 集光レンズ 4 凹面回折格子(又はコリメーターミラー)
図A.3−コリメーター結像法の光学系
2) 中間結像法 中間結像法では,分光器の前に3個の集光レンズを設置して光源からの光を集光し,
中間レンズに結像させ,入口スリットを均一に照射する。この結像法は,中間絞りによって光源の
適切な部分を選択することが容易である。
3) 円筒レンズ結像法 円筒レンズ結像法では,1個の円筒レンズを用いて入口スリット上に上下に細
長く結像させ,更にスリット直前に1個の円筒レンズを置いてコリメーター上に水平に細長く結像
させる。
d) 分光器 入口スリット系,分光系及び出口スリット系からなり,入口スリット系から入射した光を,
分光系で分光し,出口スリット系によって各元素のスペクトル線に選別可能なもの。分光器は,通常,
器内を真空下で使用する真空形又は常圧下で使用する常圧形を用いる。
1) 入口スリット系 入口スリット及びその位置調節機構によって構成し,スリット幅が固定のもの又
は可変のもの。通常,固定形を用いる。
2) 分光系 回折格子又はプリズムによって分光可能なもの。通常,回折格子による分光系を用いる。
回折格子の光学系には,凹面回折格子ではパッシェン·ルンゲ形,イーグル形などがあり,平面回
折格子ではエバート形があるが,通常,パッシェン·ルンゲ形を用いる。パッシェン·ルンゲ形分
光系を図A.4に示す。
1 入口スリット
2 凹面回折格子
3 出口スリット
4 焦点面
5 ローランド円
図A.4−パッシェン·ルンゲ形分光系
3) 出口スリット系 出口スリットを通ったスペクトル線を光電子増倍管の光電陰極面上に結像させる
ための凹面反射鏡,出口スリットにスペクトル線を入射させる石英屈折板などで構成し,出口スリ
ットは,通常,スリット幅が固定のもので,分析線に対する妨害スペクトル線の影響の程度によっ

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て,入口スリットとともに適切なスリット幅を選択して使用可能なもの。
e) 測光装置 出口スリットからの光を光電子増倍管又は半導体検出器に受けて電流に変え,各スペクト
ル線の強度を測定するもの。その測光方式には,積分ユニット又は記録計による電圧測定方式,及び
直接計数変換する電気量測定方式がある。
1) 光電子増倍管 使用する分析線の波長に対して適切な波長感度領域のもので,その特性は,SN比
が大で感度が高く,疲労回復の早い特性をもち,光電子増倍管の印加電圧を,スペクトル線強度に
応じて調節可能なもの。
2) 半導体検出器 光電変換素子を二次元に並べた面状の半導体検出器で,電荷結合素子(CCD),電
荷注入素子(CID),セグメント化電荷結合素子(SCD)などからなる。各スペクトル線を検出して
発光強度を同時に測定可能でなければならず,そのための十分な素子数及び電気特性を備えている
もの。
3) 積分ユニット 漏えい及び履歴現象の極めて小さいコンデンサ並びにリレー群からなり,光電子増
倍管の出力電流を充電して記録計,指示計又は含有率換算機に信号として出力可能なもの。
4) 記録計,指示計及び含有率換算機 記録計及び指示計には,通常,デジタル表示計を用い,積分ユ
ニットの出力信号を測定し,通常,その測定値を,直接又は内標準線に対する相対値として記録·
指示することが可能なもの。含有率換算機は,測定値又は内標準線に対する相対値を対応する元素
含有率に自動的に換算可能な機能をもつもの。
5) 操作回路 多数のリレー,スイッチ,タイマーなどで構成し,測光装置及び発光装置の各部分に対
する作動命令を自動的に制御することが可能なもの。
A.1.3 装置の調整
装置の調整は,次による。装置は,常に正常な運転が可能なように十分整備しておく。
a) 発光装置の調整 発光装置の調整は,次による。励起電源装置の回路の諸元,光源装置の雰囲気ガス
流量などは,試料の種類,定量成分,その定量範囲などによって適切な条件をあらかじめ決定してお
く。
1) 予備通電 励起電源装置の電気的作動が安定するまで,あらかじめ適切な時間,通電しておく。必
要な場合は,励起電源装置の高圧変圧器の一次電圧を電圧調整器によって,所定の電圧に設定する。
この一次電圧は,十分に安定していなければならない。
2) 励起電源装置の制御間隙の調整 電極の放電面及び間隙が,常に規定の状態にあるようにそれぞれ
定期的に成形することによって,また,スペーサー又は放電電圧で所定の間隙になるように調整す
る。
3) 雰囲気ガス流量の調整 雰囲気ガスの流量は,試料の発光に影響するため,発光中及び休止中の流
量が所定の値となるように,流量を調整する。
b) 光学系の調整 集光装置及び光学器の光学系の調整は,次による。点検及び調整は,あらかじめ実施
しておく。
1) 集光レンズ及びその保護石英ガラス板の点検 汚染が認められるときは,清浄にする。汚染の有無
は,通常,積分時間の増加又は感度の低下によって判定する。
2) 分光器内圧力の調整 真空形分光計の器内圧力は,装置に応じた真空度を保持する。
3) プロファイルの調整 特定元素のスペクトル線を用い,調整機構によって分析線が出口スリットの
正常の位置に入射するように光学系の調整を行う。自動調整機構をもつ装置では,その作動状況を
確かめる。

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c) 測光装置の調整 測光装置の調整は,次による。
1) 予備通電 光電子増倍管を含む測定回路が安定に作動するようになるまで,あらかじめ測光装置に
適切な時間通電しておく。
2) 予備放電時間及びパルス数の決定 予備放電時間及びパルス数は,分析試料,定量元素の種類,発
光条件,分析線対などによって異なるため,あらかじめ実験的に確かめて決める。
3) 積分時間及びパルス数の決定 積分時間及びパルス数の設定は,分析精度,所要時間,分析線の強
度などを基準にして,あらかじめ実験的に定める。
4) 測定強度範囲の調整 定量元素の濃度範囲及びスペクトル線の特性に応じて,各光電子増倍管の印
加電圧を調整しておく。
A.2 装置の選定及び設置
A.2.1 装置の選定
装置は,通常,定量元素,定量範囲,試料の種類及び形態によって励起電源装置,分光器及び設定する
分析線を選択する。これらの選定は,次による。
a) 励起電源装置の選定 多種類の試料又は元素の分析を行うためには,各種励起方法の得られる装置が
必要である。しかし,多数元素の同時定量を行う場合には,定量範囲によって,いずれか1種類の励
起方法を使用することが望ましい。励起電源装置の選定は,次による。
1) スパーク電源装置は,比較的多量元素の定量に適する。金属の合金成分,比較的多量の不純元素の
定量などに用いる。
2) アーク電源装置は,試料中の微量成分の定量に適する。
3) 低圧コンデンサ放電装置は,回路定数を変化させれば,アーク的からスパーク的励起発光まで段階
的に変化可能なもので,多目的な分析に利用する。
b) 分光器の選定 分光器は,通常,定量元素及びその定量範囲,使用する分析線に対する近接線の影響
の程度などによって,分散,測定波長領域,明るさなどを考えて選定する。分光器の選定は,次によ
る。
1) 高分散分光器は,多線性の元素スペクトルを励起する試料の分析に適する。鉄,チタン,タンタル,
ウラン,ジルコニウムなどの金属及びそれらの合金試料の分析に使用する。
2) 比較的分散の小さい分光器は,少線性の元素スペクトルを励起する試料の分析に適する。銀,亜鉛,
アルミニウム,鉛,カドミウム,銅,それらの合金などの試料の分析に使用する。
3) 真空形分光計は,炭素,硫黄,りんなどの200.0 nm以下の短波長の分析線を使用する場合に用いる。
通常,常圧形分光計は,真空計分光計に比較して長波長の分析線が使用可能であり,光源装置が分
光計と分離されている場合が多いので,多目的に使用する。
4) 光電測光法による分光計は,分光写真機と比較して,多数の試料中の限られた少数元素を同時に定
量する場合に使用する。
c) 分析線の選定 定量元素及び内標準元素のスペクトル線は,他元素のスペクトル線,バンドスペクト
ルなどの影響が少なく,SN比の大きいものを選定する。
A.2.2 装置の設置
装置の設置に当たっては,機種に応じた設置条件を満たさなければならない。通常,次の事項に注意す
る。
a) 装置は,ほこりが少なく,腐食性ガスが入らない室内に設置することが望ましい。

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b) 装置を設置する分析室内の温度及び湿度は,通常,装置性能を確保するため,装置製造業者の設置条
件を満たさなければならない。
c) 分光器は,できるだけ振動の少ない場所に設置し,必要な場合は防振床,防振ゴムなどを用いて振動
の影響を受けないようにする。
d) 装置への供給電源の電圧変動は,装置性能を確保するため,装置製造業者の設置条件を満たさなけれ
ばならない。
e) 装置を安定に作動させ,他の機器への妨害雑音を軽減するために,接地抵抗20 Ω以下の専用の接地設
備を設けなければならない。
f) 光源部にガスを供給する装置の場合には,ガスの配管は内面を清浄にしたステンレス鋼管,銅管など
を用い,接合部分ができるだけ短いことが望ましい。
g) 装置は,直接日光の当たらない場所に置き,電灯光源がコリメーターに直接入射してはならない。
A.3 安全衛生
発光分光分析を行う場合の安全衛生については,次の事項に注意する。
a) 電気配線は,全て規格に適合するものを使用し,装置の絶縁及び接地は,確実に行わなければならな
い。
b) 全部の電気回路が切断可能な1個の主開閉器を備えなければならない。
c) 装置の点検及び修理は,やむを得ない場合を除き,主開閉器を切ってから行う。主開閉器の開閉は,
呼称しながら行うなどの方法によって,十分に注意して操作する。特に回路にコンデンサを含む励起
電源装置においては,開閉器を切った後も,短時間帯電していることがあるので放電させてから行う。
通電中の点検は,2名以上で行い,感電時の応急措置法を明確に決めておくことが望ましい。
d) 装置を設置する室内は,試料発光時に発生する有毒ガス及びほこり,特に雰囲気として供給するガス
などの室内充満を避ける処置をする。
e) 発光源からの紫外線放射光を直接見ないように注意する。必要な場合は,紫外線防止の保護具を使用
する。
f) 発火性金属の分析においては,その切削,研磨及び放電時の発火に注意する。また,切削研磨くずの
処理をおろそかにしてはならない。さらに,電気火災に備えて専用の消火器具を室内に設置しておく
ことが望ましい。
g) 騒音を発生する装置を使用する場合は,できるだけ吸音構造にすることが望ましい。
h) 試料調製用機械の操作方法は,十分に習得してから行う。高速度切断機,ベルトサンダー,グライン
ダーなどは,安全カバー,集じん(塵)装置などを備える。切削用の旋盤,ボール盤などの操作には
手袋を使用してはならない。目に切りくずの入るおそれのある場合には,保護めがねなどの保護具を
用いる。

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