JIS K 9901:1994 規格概要
この規格 K9901は、高純度試薬として用いる硝酸について規定。
JISK9901 規格全文情報
- 規格番号
- JIS K9901
- 規格名称
- 高純度試薬―硝酸
- 規格名称英語訳
- Highly purified nitric acid
- 制定年月日
- 1994年3月1日
- 最新改正日
- 2016年10月20日
- JIS 閲覧
- ‐
- 対応国際規格
ISO
- 国際規格分類
ICS
- 71.040.30
- 主務大臣
- 経済産業
- JISハンドブック
- 試薬 II 2020
- 改訂:履歴
- 1994-03-01 制定日, 2002-09-20 確認日, 2006-11-20 確認日, 2011-10-20 確認日, 2016-10-20 確認
- ページ
- JIS K 9901:1994 PDF [12]
日本工業規格(日本産業規格) JIS
K 9901-1994
高純度試薬−硝酸
Highly purified nitric acid
HNO3 FW : 63.01
1. 適用範囲 この規格は,高純度試薬として用いる硝酸について規定する。
備考 この規格の引用規格を,付表1に示す。
2. 共通事項 この規格に共通する事項は,JIS K 0050,JIS K 8001及びJIS K 8007による。
3. 品質 品質は,4.によって試験し,表1に適合しなければならない。
表1 品質
項目 規格値
濃度 54.055.0%
塩化物 (Cl) 0.05ppm以下
りん酸塩 (PO4) 0.01ppm以下
硫酸塩 (SO4) 0.1ppm以下
リチウム (Li) 1ppb以下
ナトリウム (Na) 5ppb以下
カリウム (K) 1ppb以下
銅 (Cu) 1ppb以下
銀 (Ag) 1ppb以下
金 (Au) 1ppb以下
ベリリウム (Be) 1ppb以下
マグネシウム (Mg) 1ppb以下
カルシウム (Ca) 5ppb以下
ストロンチウム (Sr) 1ppb以下
バリウム (Ba) 1ppb以下
亜鉛 (Zn) 1ppb以下
カドミウム (Cd) 1ppb以下
水銀 (Hg) 1ppb以下
アルミニウム (Al) 2ppb以下
ガリウム (Ga) 1ppb以下
インジウム (In) 1ppb以下
タリウム (Tl) 1ppb以下
チタン (Ti) 1ppb以下
ジルコニウム (Zr) 1ppb以下
けい素 (Si) 0.01ppm以下
すず (Sn) 1ppb以下
鉛 (Pb) 1ppb以下
――――― [JIS K 9901 pdf 1] ―――――
2
K 9901-1994
項目 規格値
バナジウム (V) 1ppb以下
ひ素 (As) 1ppb以下
アンチモン (Sb) 1ppb以下
ビスマス (Bi) 1ppb以下
クロム (Cr) 5ppb以下
モリブデン (Mo) 1ppb以下
マンガン (Mn) 1ppb以下
鉄 (Fe) 5ppb以下
コバルト (Co) 1ppb以下
ニッケル (Ni) 1ppb以下
4. 試験方法
4.1 濃度
(1) 要旨 試料を水に溶かし,指示薬としてブロモチモールブルー溶液を加え,1mol/l水酸化ナトリウム
溶液で滴定して硝酸の濃度を求める。
(2) 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a) 1mol/l水酸化ナトリウム溶液 JIS K 8001の4.5(19.1)に規定するもの。
(b) ブロモチモールブルー溶液 JIS K 8001の4.4に規定するもの。
(3) 器具 器具は,次のとおりとする。
(a) 共通すり合わせ三角フラスコ 呼び容量200mlのもの。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 共通すり合わせ三角フラスコ200mlに水20mlを入れ,その質量を0.1mgのけたまではかる。
(b) (a)のフラスコに,試料約2mlを加えて,その質量を0.1mgのけたまではかる。
(c) 指示薬としてブロモチモールブルー溶液約0.2mlを加え,1mol/l水酸化ナトリウム溶液で滴定する
(終点は,溶液の色が黄から緑に変わる点)。
(5) 計算 濃度は,次の式によって計算し,JIS Z 8401によって規格値のけたに丸める。
0.063 01b f
A 100
S
ここに, A : 濃度
b : 1mol/l水酸化ナトリウム溶液の滴定量 (ml)
f : 1mol/l水酸化ナトリウム溶液のファクター
S : 試料の質量 (g)
0.063 01 : 1mol/l水酸化ナトリウム溶液1 mlのHNO3相当量 (g)
4.2 塩化物 (Cl)
(1) 要旨 試料に硝酸銀溶液を加えて生じる塩化銀の白濁を,塩化物標準液を同様に操作して生じる白濁
と比較して塩化物の含有量を求める。
(2) 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a) 炭酸ナトリウム溶液 (100 g/l) JIS K 8001の4.2に規定するもの。
(b) 硝酸銀溶液 (20 g/l) IS K 8001の4.2に規定するもの。
(c) 硝酸 (1+2) JIS K 8001の4.1に規定するもの。
(d) 塩化物標準液 (0.01mg Cl/ml) JIS K 8001の4.3(1)に規定するもの。
(3) 器具 器具は,次のとおりとする。
――――― [JIS K 9901 pdf 2] ―――――
3
K 9901-1994
(a) 共通すり合わせ三角フラスコ 呼び容量300mlのもの。
(b) 丸底蒸発皿 JIS R 3503に規定する丸底蒸発皿,90×45mmのもの。
(c) 共通すり合わせ平底試験管 JIS K 8001の5.1(2)(b)に規定するもの。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料100gを共通すり合わせ三角フラスコに1gのけたまではかりとり,炭酸ナトリウム溶液 (100g/l)
1mlを加え,数回に分けて丸底蒸発皿に移し入れ,水浴上(水浴の水は,イオン交換水とする)で
加熱蒸発し,最後に少量の水で共通すり合わせ三角フラスコ内を洗い,洗液も丸底蒸発皿に入れ,
蒸発乾固する。
(b) 少量の水で蒸発残留物を溶かし,共通すり合わせ平底試験管に移し入れ,丸底蒸発皿を少量の水で
洗い,洗液も共通すり合わせ平底試験管に入れ,水を10mlの標線まで加えた後,硝酸 (1+2) 0.5ml
を加える。
(c) 別に,4個の共通すり合わせ平底試験管に塩化物標準液 (0.01mg Cl/ml) 0,0.25,0.5,0.75mlずつを
とり,水を10mlの標線まで加えた後,硝酸 (1+2) 0.5mlを加える。
(d) それぞれの溶液に硝酸銀溶液 (20g/l) 1mlを加えてよく振り混ぜる。約15分間暗所に放置した後,
その背後に黒い紙を置き,試料側の濁りと標準側の白濁を共通すり合わせ平底試験管の前面から目
視によって比較し,塩化物の質量 (mg) を求める。
(5) 計算 塩化物の含有率 (ppm) は,次の式によって算出する。
C 100 1000
ここに, C : 塩化物の含有率 (ppm)
A : 比濁によって求めた塩化物の質量 (mg)
100 : 試料の質量 (g)
4.3 りん酸塩 (PO4)
(1) 要旨 試料を蒸発乾固し蒸発残留物を希硫酸に溶かした後,七モリブデン酸六アンモニウム溶液及び
塩化すず(II)溶液を加え,生じるモリブデン青の吸光度を測定してりん酸塩の含有量を求める。
(2) 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a) 硫酸(1+5) IS K 8001の4.1に規定するもの。
(b) 七モリブデン酸六アンモニウム溶液(りん酸定量用) JIS K 8001の4.2に規定するもの。
(c) 塩化すず(II)溶液(りん酸定量用) JIS K 8001の4.2に規定するもの。
(d) りん酸塩標準液 (0.01mgPO4/ml) JIS K 8001の4.3(1)に規定するもの。
(3) 装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(a) 分光光度計
(b) 蒸発皿 JIS R 1302に規定する化学分析用磁器蒸発ざらの平底型,容量120mlのもの。
(c) 加熱板 電熱ホットプレートなど。
(d) 共通すり合わせ三角フラスコ 呼び容量300mlのもの。
(e) 全量フラスコ JIS R 3505に規定する呼び容量25mlのもの。
(f) 吸収セル 光路長10mmのもの。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料300gを共通すり合わせ三角フラスコに1gのけたまではかりとり,これを数回に分けて蒸発皿
に移し入れ,加熱板上で蒸発し,最後に少量の水で共通すり合わせ三角フラスコ内を洗い,洗液も
――――― [JIS K 9901 pdf 3] ―――――
4
K 9901-1994
蒸発皿に入れ,蒸発乾固する。
(b) 蒸発残留物を少量の水に溶かし,全量フラスコ25mlに移し入れる。蒸発皿を少量の水で洗い,洗
液も全量フラスコに入れ,硫酸 (1+5) 2.5ml及び水約10mlを加える。
(c) 別に,4個の全量フラスコ25mlにりん酸塩標準液 (0.01mgPO4/ml) 0,0.2,0.3,0.5mlをとり,硫酸
(1+5) 2.5ml及び水約10mlをそれぞれに加える。
(d) (b)及び(c)の溶液それぞれに,七モリブデン酸六アンモニウム溶液(りん酸定量用)1mlを加えてよ
く振り混ぜ約3分間放置した後,塩化すず(II)溶液(りん酸定量用)2mlを加え,水を標線まで加え
て約20分間放置する。
(e) それぞれの溶液の一部を吸収セルにとり,水を対照液として波長700 nm付近における吸光度を測定
する。
(f) 試料を加えないで(a)(e)の操作を行い,吸光度を測定し,(e)で得た吸光度から差し引いて,試料に
ついての吸光度を求める。
(g) りん酸塩標準液 (0.01mgPO4/ml) 0.2,0.3,0.5mlのものの吸光度からりん酸塩標準液 (0.01mgPO4/ml)
0mlのものの吸光度を差し引いた後,りん酸塩の質量 (mg) と吸光度との関係線を作成し,検量線
とする。
(5) 計算 りん酸塩の含有率 (ppm) は,次の式によって算出する。
C 300 1000
ここに, C : りん酸塩の含有率 (ppm)
A : 検量線から求めたりん酸塩の質量 (mg)
300 : 試料の質量 (g)
4.4 硫酸塩 (SO4)
(1) 要旨 試料を蒸発乾固した後,蒸発残留物を希塩酸に溶かし,エタノールと塩化バリウム溶液を加え
て生じる硫酸バリウムの白濁を硫酸塩標準液を同様に操作して生じる白濁と比較して硫酸塩の含有量
を求める。
(2) 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a) エタノール(95) JIS K 8102に規定するもの。
(b) 塩化バリウム溶液 (100g/l) IS K 8001の4.2に規定するもの。
(c) 塩酸(2+1) IS K 8001の4.1に規定するもの。
(d) 硫酸塩標準液 (0.01mg SO4/ml) JIS K 8001の4.3(1)に規定するもの。
(3) 器具 器具は,次のとおりとする。
(a) 共通すり合わせ三角フラスコ 呼び容量300mlのもの。
(b) 蒸発皿 4.3(3)(b)による。
(c) 共通すり合わせ平底試験管 JIS K 8001の5.1(2)(b)に規定するもの。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 試料200gを共通すり合わせ三角フラスコに1gのけたまではかりとり,数回に分けて蒸発皿に移し
入れ,水浴上で蒸発する。最後に,共通すり合わせ三角フラスコ内を少量の水で洗い,洗液も蒸発
皿に移し入れ,蒸発乾固する。さらに,塩酸 (2+1) 0.5mlを加え蒸発乾固する。
(b) 別に,4個の蒸発皿に,塩酸 (2+1) 0.5mlをとり,硫酸塩標準液 (0.01mg SO4/ml) をそれぞれ0,1,
2,3mlずつ加え水浴上蒸発乾固する。
――――― [JIS K 9901 pdf 4] ―――――
5
K 9901-1994
(c) (a)及び(b)の蒸発皿に塩酸 (2+1) 0.3mlを加え蒸発残留物を溶かし,少量の水とともに共通すり合わ
せ平底試験管に移し入れる。蒸発皿を少量の水で洗い,洗液も試験管に移し入れ,水を加えて5ml
にする。
(d) それぞれの溶液にエタノール(95)3ml及び塩化バリウム溶液 (100g/l) 2mlを加えてよく振り混ぜ,1
時間放置した後,その背後に黒い紙を置き,試料側の白濁と標準側の白濁を試験管の前面から目視
によって比較し,硫酸塩の質量 (mg) を求める。
(5) 計算 硫酸塩の含有率 (ppm) は,次の式によって算出する。
C 100 1000
ここに, C : 硫酸塩の含有率 (ppm)
A : 比濁によって求めた硫酸塩の質量 (mg)
100 : 試料の質量 (g)
4.5 水銀 (Hg)
(1) 要旨 試料を水に溶かし,テトラヒドロほう酸ナトリウム溶液を加える。この液に通気して水銀蒸気
を発生させ,原子吸光分析装置に導入して指示値を読み取り,水銀の含有量を求める。
(2) 試薬 試薬は,次のとおりとする。
(a) よう化カリウム溶液 (200g/l) JIS K 8001の4.2に規定するもの。
(b) テトラヒドロほう酸ナトリウム溶液 (6g/l) テトラヒドロほう酸ナトリウム(純度96%以上のも
の)1.5gとJIS K 8576に規定する水酸化ナトリウム1.25gを水に溶かし,水を加えて250mlとした
もの。
(c) 塩酸 (1+19) IS K 9902に規定する高純度試薬−塩酸50mlに水を加えて1 lとしたもの。
(d) 硝酸 (1+1) 硝酸(1)50mlに水を加えて100mlとしたもの。
(e) 水銀標準液 (1 最 最一 2)に規定する水銀標準液 (0.001mg
(f) 水銀標準液 (1ngHg/ml) (e)の水銀標準液 (1 最 最一 フラスコ1 000mlにとり
(1+1) 10mlを加え,水を標線まで加えたもの (0.001最 最一
注(1) 空試験値がこの試験に支障がないもの。
(3) 装置及び器具 装置及び器具は,次のとおりとする。
(a) 原子吸光分析装置
(b) 水銀還元気化装置 図1に示す還元気化装置。
(c) はかり瓶 JIS R 3503に規定する筒型はかり瓶,45×60mmのもの。
(d) 還元容器 呼び容量200mlのガラス瓶又は三角フラスコ(100mlの位置に印を付けておく)。
(4) 操作 操作は,次のとおり行う。
(a) 還元気化装置を組み立てる。
(b) 試料20gをはかり瓶に0.1gのけたまではかりとり,あらかじめ水50mlを入れた還元容器に振り混
ぜながら徐々に加え,はかり瓶内を少量の水で洗い,洗液も還元容器に入れ,水を加えて100mlと
する。
(c) この溶液に手早くよう化カリウム溶液 (200g/l) 5mlと塩酸 (1+19) 4mlを加え,更にテトラヒドロほ
う酸ナトリウム溶液 (6g/l) 2mlを加えて還元容器を直ちに還元気化装置に取り付ける。あらかじめ
設定した最適流量で空気ポンプを作動させ,発生した水銀蒸気を吸収セルに導き,波長253.7nmの
指示値を読み取る。
――――― [JIS K 9901 pdf 5] ―――――
次のページ PDF 6
JIS K 9901:1994の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 9901:1994の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISH6202:1986
- 化学分析用白金皿
- JISK0050:2019
- 化学分析方法通則
- JISK0121:2006
- 原子吸光分析通則
- JISK0970:2013
- ピストン式ピペット
- JISK8001:2017
- 試薬試験方法通則
- JISK8007:1992
- 高純度試薬試験方法通則
- JISK8102:2012
- エタノール(95)(試薬)
- JISK8576:2019
- 水酸化ナトリウム(試薬)
- JISK9902:1994
- 高純度試薬―塩酸
- JISR1302:1980
- 化学分析用磁器蒸発ざら
- JISR3503:1994
- 化学分析用ガラス器具
- JISR3505:1994
- ガラス製体積計
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方