JIS T 0330-3:2012 生体活性バイオセラミックス―第3部:溶解速度試験方法 | ページ 2

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g) 溶解液容器 JIS R 3503に規定するビーカー100 mLとする。

5.2 ガラス電極

  pH計のガラス電極は,JIS Z 8805に規定するものを用いる。

6 試料

  使用する試料は,緻密体,多孔体又はか(顆)粒とする。あらかじめ,溶解速度を試験するテスト試料
と,溶解速度の比較対照にするコントロール試料とを定めておく。試料1個の質量は,100±1 mgとする。
テスト試料及びコントロール試料とも,各々5個以上を準備する。
注記 試料がか粒の場合は,合計質量100±1 mgのか粒全量を1個の試料とみなす。

7 溶解液の調製

7.1 溶解液の組成及び温度

  試料を浸せきして溶解速度を試験する溶解液は,酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.08 mol/L)
とする。トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L)を用いてもよい。
使用する溶解液は,100±0.1 mL,温度は25±3 ℃とする。

7.2 酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.08 mol/L)の調製方法

  酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.08 mol/L)の調製は,次による。
a) 酢酸(0.8 mol/L) 酢酸4.804 g(0.08 mol)をはかりとり,全量フラスコ100 mLに移し入れ,水を標
線まで加えて調製する。
b) 酢酸ナトリウム溶液(0.8 mol/L) 酢酸ナトリウム65.62 g(0.8 mol)をはかりとり,全量フラスコ
1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加えて調製する。
c) 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.8 mol/L) a)で調製した酢酸溶液(0.8 mol/L)1 mL及び
b)で調製した酢酸ナトリウム溶液(0.8 mol/L)X mLを採取して“試し混合”してpHを測定し,25±
3 ℃でpHが5.50±0.02になるXを求める。Xは,約67 mLの値となる。25±3 ℃で,残りの酢酸
溶液と酢酸ナトリウム溶液とを混合比1 : Xで混合し,酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50±0.02,
0.8 mol/L)とする。
d) 酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.08 mol/L) c)で調製した酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH
5.50,0.8 mol/L)を水で10倍に希釈する。

7.3 トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン-塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L)の調製方法

  トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L)(トリス−塩酸緩衝液と
もいう。)の調製は,次による。
a) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(0.05 mol/L) トリス(ヒドロキシメチル)アミノ
メタン6.057 g(0.05 mol)をはかりとり,全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加えて調
製する。
注記 2 L以上のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(0.05 mol/L)を調製する場合,こ
の操作を繰り返し,これらの溶液を一つの溶液に混合する。
b) トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L) a)で調製したトリ
ス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(0.05 mol/L)を,かくはんしながら25±3 ℃でpHを測定
しつつ,塩酸を徐々に滴下し,トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン溶液(0.05 mol/L)のpHを
pH 7.30±0.05に調製する。

――――― [JIS T 0330-3 pdf 6] ―――――

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注記 用いる塩酸は,JIS K 8180に規定する塩酸8.33 mLをはかりとり,水で希釈して100 mLとし
た塩酸(1 mol/L)でもよい。

8 校正用カルシウム標準液の調製

8.1 カルシウム標準液(Ca: 1 000 mg/L)

  カルシウム標準液(Ca : 1 000 mg/L)は,硝酸(0.1 mol/L)に1 000 mg/Lのカルシウムイオンを含有す
るものとする。
注記 カルシウム標準液(Ca : 1 000 mg/L)は,以下のようにして調製できる。炭酸カルシウムを105
±2 ℃で約2時間加熱し,デシケーター中で放冷する。その2.497 gをはかりとり,硝酸(1 mol/L)
(硝酸75 mLを水に溶かして1 Lとする。)100 mLに溶かし,沸騰しない程度に数分間加熱し
て二酸化炭素を除去する。放冷後,全量フラスコ1 000 mLに移し入れ,水を標線まで加える。

8.2 pH 5.50校正用カルシウム標準液

  8.1のカルシウム標準液(Ca : 1 000 mg/L)と7.2 c)の酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.8 mol/L)
とを表1に規定する量だけ全量フラスコ100 mLに移し入れ,水を標線まで加えて,カルシウムの濃度
1 mg/L,10 mg/L及び100 mg/Lの酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.50,0.08 mol/L)を調製する。
表1−pH 5.50校正用カルシウム標準液の調製方法(混合割合)
単位 mL
カルシウムの濃度カルシウム標準液酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液 水
(mg/L) (Ca:1 000 mg/L) (pH 5.50,0.8 mol/L) (100 mLにするのための理論値)
1 0.10 10.0 89.9
10 1.00 10.0 89.0
100 10.0 10.0 80.0

8.3 pH 7.30校正用カルシウム標準液

  8.1のカルシウム標準液(Ca: 1 000 mg/L)1.00 mLを全量フラスコ200 mlにとり,7.3 b)のトリス(ヒド
ロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L)を標線まで加える。この溶液を全量フ
ラスコ100 mLを用いて,7.3 b)のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH 7.30,
0.05 mol/L)で表2のように2倍希釈及び10倍希釈して,カルシウムの濃度0.5 mg/L,2.5 mg/L及び5.0 mg/L
のトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(0.05 mol/L)とする。
表2−pH 7.30校正用カルシウム標準液の調製方法(混合割合)
単位 mL
カルシウム カルシウムの濃度5.00 mg/Lの
トリス−塩酸緩衝液(pH 7.30,0.05 mol/L)
の濃度 トリス−塩酸緩衝液
(100 mLにするのための理論値)
(mg/L) (pH 7.30,0.05 mol/L)
0.5 10.0 90.0
2.5 50.0 50.0
5.0 残り140.0 0(希釈なし)

――――― [JIS T 0330-3 pdf 7] ―――――

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9 試験方法

9.1 準備操作

  製造業者が指示するカルシウムイオン電極の取扱い方法及びJIS K 0122の表2(イオン電極及び比較電
極の使い始め,保存,再生,取扱い上の注意の一例)に規定する使い始めの注意事項に従って,あらかじ
め準備操作(水道水に浸しておくなど)を実施する。カルシウムイオン電極,イオン濃度計及び記録計を
接続して,オンラインでデータを取り込めるようにする。

9.2 カルシウムイオン電極の校正

  カルシウムイオン電極の校正は,校正用カルシウム標準液(8.2又は8.3)を用いて,25±3 ℃でJIS K 0122
の6.4.1(絶対検量線法)に規定する絶対検量法によって行う。必ずカルシウム濃度の低いものから順に校
正する。表示値が安定するまで(46分間)十分に時間をかけて校正する。
注記 カルシウムイオン電極は,経時的に劣化する。正常なカルシウムイオン電極は,Log[Ca濃度
(mg/L)]と電極の応答電位(mV)とがほぼ直線関係になり,理論的には,25 ℃でカルシウ
ムイオン活量が10倍変化すると,応答電位は29.58 mV変化する。カルシウムイオン電極が劣
化した場合は,このような直線関係が得られないか又は表示値が一定値に収束しない。

9.3 溶解速度の試験方法

  箇条6のテスト試料及びコントロール試料の溶解速度の測定は,次による。
a) 試料(100±1 mg)をプラスチック製ネットに入れてつり下げ,溶解液注入前の容器中心に取り付け
る。試料は,磨耗及び破壊が起こらないように配置する。とりわけ,試料は,回転子と接触しないよ
うにする。
b) 次に,カルシウムイオン電極を容器内にセットし,25±3 ℃の溶解液100±0.1 mLを容器に注入し,
イオン濃度計の製造業者が指示する回転数で回転子を回転させた後,溶解液と試料とが接触してから
1分以内に,溶解液カルシウムイオンの濃度のオンラインデータの取り込みを開始する。
c) そのまま,溶解液中のカルシウムイオンの濃度のオンラインデータを,2分間隔で30分間測定する。
測定中にカルシウムイオンの濃度が表3に規定する濃度範囲を超えた場合は,その時点で測定を終了
する。
d) 測定終了後,校正用カルシウム標準液のカルシウムイオンの濃度,及び溶解液のpHを測定する。pH
の測定は,JIS Z 8805に規定する電極を用いて,JIS Z 8802によって測定する。
e) )で測定した校正用カルシウム標準液のカルシウムイオンの濃度と標準液本来のカルシウムイオン濃
度との差が,2点以上で本来のカルシウムイオン濃度の±10 %を超える場合は,取り込んだオンライ
ンデータを破棄し,カルシウムイオン電極を再校正し,新しい試料を用いて再測定する。
f) d)で測定した溶解液が,pH 5.50の場合はpH 5.50±0.03,pH 7.30の場合はpH 7.30±0.06を逸脱した
ときは,取り込んだオンラインデータを破棄し,カルシウムイオン電極を再校正し,新しい試料を用
い,測定時間を短縮して再測定する。
g) いずれのpHの場合でも,テスト試料とコントロール試料とを各々5個以上用いて,各々5回以上の独
立したオンラインデータを取得する。
h) 溶液のかき混ぜ状態は,カルシウムイオン電極の応答電位,応答速度及び定量下限の変化となって影
響を与えるため,かき混ぜ速度,容器内での試料,イオン電極及び回転子の位置は,全ての試料で一
定になるようにし,できる限り試料間のかき混ぜ状態を一定にする。

――――― [JIS T 0330-3 pdf 8] ―――――

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表3−測定時のカルシウムイオン濃度範囲
単位 mg/L
試料の材質 pH 5.50 pH 7.30

水酸アパタイトセラミック 0.46
(00.2 )a)
β-りん酸三カルシウムセラミック 0.410 0.41
b) b) )
水酸アパタイト−β-りん酸三カル 6 10 2.0 0.1
0.4 HA TCP 0 HA TCP
シウム2相セラミック 100 100 100 100
注a) カルシウムイオンの検出下限濃度が0.2 mg/L以下のカルシウムイオン電極を用いた場合に測定可能。
b) A : 水酸アパタイトの含有量(質量百分率) TCP : β-りん酸三カルシウムの含有量(質量百分率)
c) 水酸アパタイトの含有量が75 %以上の場合は,カルシウムイオンの検出下限濃度が0.4 mg/L未満のカルシウム
イオン電極を用いた場合に測定可能。

10 試験結果の表し方

10.1 カルシウムイオン濃度-時間曲線

  試験開始から終了までの,カルシウムイオンの濃度と溶解時間との関係を表すカルシウムイオン濃度−
時間曲線を作成する。

10.2 溶解速度

  測定終了時の溶出したカルシウムイオンの量(mol),又はそれから換算した溶出試料量(mol又はg)
を測定時間(秒)で除して溶解速度を求める。

10.3 相対溶解速度の計算

  テスト試料の溶解速度をコントロール試料の溶解速度で除した相対溶解速度を求める。
注記 この相対溶解速度が,骨組織内での相対吸収量をある程度反映することは,β-りん酸三カルシ
ウムセラミックについて動物実験で確認した。

10.4 平均値及び標準偏差

  テスト試料又はコントロール試料の溶解速度の平均値及び標準偏差は,各々の試料の溶解速度測定値か
ら式(1)及び式(2)によって求める。
n
xi
x (1)
i 1n
n 2
(xi x)
S (2)
i 1n 1
ここに, x : テスト試料又はコントロール試料の溶解速度の平均値
(mol/s又はg/s)
xi : 各々の試料の溶解速度 (mol/s又はg/s)
S : 溶解速度の標準偏差 (mol/s又はg/s)
n : 試料の個数
相対溶解速度の平均値及び標準偏差は,テスト試料及びコントロール試料の溶解速度平均値及び標準偏
差を用いて式(3)及び式(4)によって求める。
xt
xr (3)
x0

――――― [JIS T 0330-3 pdf 9] ―――――

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2
xt 2 1S 2
Sr 2
S0 t (4)
x0 x0
ここに, xr : 相対溶解速度の平均値 (mol/s又はg/s)
xt : テスト試料の溶解速度の平均値 (mol/s又はg/s)
x0 : コントロール試料の溶解速度の平均値 (mol/s又はg/s)
St : テスト試料の溶解速度の標準偏差 (mol/s又はg/s)
S0 : コントロール試料の溶解速度の標準偏差(mol/s又はg/s)
Sr : 相対溶解速度(xt/x0)の標準偏差
計算した溶解速度及び相対溶解速度の平均値及び標準偏差は,JIS Z 8401によって,有効数字2桁に丸
める。

11 報告書

11.1 必須項目

  試験報告書には,次の事項について記載する。
a) この規格番号
b) 試験年月日,試験場所及び試験者名
c) 材料の名称,種類及び化学組成
d) 試料形状,寸法及び質量
e) 試料の気孔率及び平均気孔径
f) 試料の個数
g) 溶解液の種類,pH及び温度
h) 溶解試験条件(溶解時間,かくはん速度,回転子の大きさ,電極,回転子及び試料の位置関係)
i) カルシウムイオン電極,比較電極及びイオン濃度計の名称及び形式
j) 溶解液の最終pH(9.3参照)
k) 溶解速度測定終了後に測定した,校正用カルシウム標準液のカルシウムイオン濃度(9.3参照)
l) 試験結果(カルシウムイオン濃度−時間曲線)
m) 溶解速度の平均値及び標準偏差
n) )の溶解速度が溶出カルシウムの量によるものか,又は溶出試料量によるものかの区別
o) 相対溶解速度の平均値及び標準偏差

11.2 補足項目

  次の各項目を付け加えて報告することが望ましい。
a) 材料の製造業者名及び製造年月日
b) 材料の添加物の種類及び焼結方法
c) 素材からの試料の採取条件及び加工条件
d) 温度,湿度などの試験環境条件

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