JIS X 8341-1:2010 高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス―第1部:共通指針 | ページ 3

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X 8341-1 : 2010 (ISO 9241-20 : 2008)

4.3 規定(要求事項,推奨事項)の実施

  箇条6箇条10の個々の規定(要求事項,推奨事項)は,利用の状況を考慮して,適用の可否を評価す
ることが望ましい。適用すると設計目標から逸脱することが明らかな場合,規定(要求事項,推奨事項)
は実施しないほうがよい。
注記 能力の多様性を理由として利用者を除外しなければ,設計目標は差別的にはならない。

4.4 適合性

  情報通信機器又はサービスがこの規格の規定(要求事項,推奨事項)を満たしたと宣言する場合には,
利用者の要求事項を規定し,機器又はサービスを評価するために利用した手順が明記されていなければな
らない。利用者の要求事項と評価するために利用する手順とをどの程度詳細に決めるかは,関係者間で決
めることができる(附属書Bは,適合性を文書化するのに利用できる。)。

5 アクセシビリティ

5.1 一般

  情報通信機器及びサービスは,一般には利用の状況の範囲を限定して設計されている。アクセシビリテ
ィは,情報通信機器又はサービスが,利用者の目標,能力及び制限を十分に考慮し,インタラクションが
うまくいくように支援する設計がされた場合にだけ達成される。アクセシビリティを制限する要因は,利
用の状況(すなわち,利用者,仕事,機器及び/又は環境)のうちの一つ以上の構成要素及び構成要素間
の相互作用から発生する。利用の状況の範囲を限定して情報通信機器及びサービスを開発すると,利用の
状況の範囲を拡大して開発したシステムよりも,アクセシビリティの問題が多くなるリスクが生じる。
注記 情報通信機器及びサービスは,支援技術を含む多くのハードウェア及びソフトウェアの構成要
素からなる。アクセシビリティは,機器及びサービスの様々な水準において,また,利用者そ
れぞれの個々の環境で存在し,利用者が異なるとアクセシビリティも異なる。アクセシビリテ
ィは,利用の状況内で利用者,仕事,機器・サービス及び環境を扱い,これらの様々な要素を
調整することによって改善できる。
しかし,個々の要素を改善しただけでは,アクセシビリティを保証できず,その改善さえ保
証できない。必要なことは,要素をすべて最適化しようと努力する全体的なアプローチである。
これには,利用者の教育,利用者に合わせた仕事の構造化,環境の改善,並びに機器及びサー
ビスの設計の改善を伴うことがある。

5.2 利用の状況及びアクセシビリティ

  利用者,仕事,社会環境,物理的,技術的環境などの利用の状況(複数の場合もある。)を特定すること
は重要であり,利用の状況は情報通信機器又はサービスの開発又は評価に適用される。利用の状況を特定
する指針はJIS Z 8521による。
この規格では扱わないが,多くの国々のアクセシビリティに関する法律で,利用の状況の中で考慮すべ
き指針及び要求事項が提供されている。
利用者グループを特定する場合に特に注意すべきことは,すべての利用者内にみられる利用者特性の範
囲を特定することである。なぜならば利用者グループを特定する目的が,最も幅広い層の利用者のニーズ
を満たすことにあるからである。機器又はサービスのアクセシビリティは,利用者が仕事の目標を達成で
きるように支援する利用者特性の範囲が広いほど向上する。
利用者特性の差異に注意を払うためには,次のアプローチを考慮することが望ましい。
a) 情報通信機器及びサービスを,すべての利用者が改造又は支援技術の接続をしなくても利用できるよ

――――― [JIS X 8341-1 pdf 11] ―――――

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うに設計する。このアプローチは,情報通信機器及びサービスを一般向け及び/又は公共機器として
設計する場合に重要である。
b) 情報通信機器及びサービスを,個々の利用者のニーズに合わせて設定を変えられるように設計する。
これによって,能力及び好みの異なる利用者が,機器又はサービスとインタラクションする方法を選
び,有効さ,効率及び満足度を最適化することができる。
c) 上記のアプローチa)及びb)が可能でないか適切でない場合,すべての利用者全体のニーズをカバーす
る一連の幾つかの情報通信機器又はサービスを提供する。それぞれの機器又はサービスは,すべての
利用者のサブグループのニーズを満たすことを目指しており,個別ベースで取得することができる。
これは特に,人々が個人的選択をすることができる公でない状況で適用できる。
d) 上記のアプローチa),b)及びc)は,ほとんどの人々のニーズを満たすことができるが,その一方で一
部の人々は,情報通信機器及びサービスとのインタラクションを支援するための支援技術も利用しな
ければならない。そのような人々のために,支援技術との接続性を確保して(それ自体はアクセシビ
リティのための手段ではないが),これらの利用者が自分のアクセシビリティのための手段を創出する
基礎を提供する。

5.3 プロセス

  アクセシビリティを確保するために次に示す活動が行われることが望ましい。
a) 利用の状況を理解し特定する。特に注意する対象は,利用者特性の差異,並びに仕事,機器及び環境
上の特性であって,これらはアクセシビリティに影響する。
b) 利用者のアクセシビリティのニーズを識別し特定する。
c) アクセシビリティに配慮した設計による解決策を作成する。
d) 対象とした利用者グループを代表するような特性をもつ利用者で,情報通信機器及びサービスのアク
セシビリティ設計による解決策を評価する。詳細は,JIS Z 8530による。
注記1 ISO/TR 16982も人間中心設計に対応するユーザビリティ手法の指針を提供する。
注記2 アクセシビリティ設計による解決策の評価には,利用者評価の結果及び他の利用できる形
の利用者からのフィードバックを得ることも含まれる。
注記3 多数の関係者が開発に関与する場合,アクセシビリティを達成するには交渉及び合意が重
要である。

6 開発管理に関する推奨事項

6.1 情報アクセシビリティ方針

  事業管理者及び開発管理者は,情報アクセシビリティ方針をもつことが望ましい。
例 会社において,アクセシビリティ目標の言明,会社がこれらの目標を達成することを確保する責
任者,及び会社が満たそうとする特定のアクセシビリティ規格の選別を含む全社的な情報アクセ
シビリティ方針が確立されている。

6.2 開発に関する責任

  事業管理者及び開発管理者は,情報アクセシビリティ方針が,情報通信機器及びサービスの企画,設計,
開発及び評価の中で遵守されることを確認することが望ましい。
通常,最良の結果がより低コストで達成されるのは,情報アクセシビリティが設計過程の最初から取り
組まれる場合である。

――――― [JIS X 8341-1 pdf 12] ―――――

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7 利用者特性に関する推奨事項

7.1 一般

7.1.1  利用者特性の対応の範囲
情報通信機器及びサービスが対応する利用者特性の範囲は,最も幅広い層の利用者すべてが設計で意図
された仕事を行えるようにすることが望ましい。
特定の利用者は,種々の障害を合わせもつので特別の解決策を必要とすることがある。個々の障害に対
する解決策を寄せ集めただけでは適切ではない。例えば,テキストの音声出力は目の不自由な人にとって
有効であり,音声のテキスト出力は耳の不自由な人にとって有効であるが,どちらの出力も,耳も目も不
自由な利用者は恩恵を得ることができない。
例 あるシステムでは,利用者の長期記憶,短期記憶及び学習能力に,過度の負担をかけないように
している。
7.1.2 多数のインタラクション手段への対応
情報通信機器及びサービスは,異なる利用者グループのアクセシビリティニーズに対応するために,で
きるだけ多くの代替的なインタラクション手段に対応することが望ましい。
利用者の一部のグループは,特定の知的又は身体的な機能を働かせることが難しい。その場合,代替と
なる知的又は身体的な機能を用いれば,これらの利用者はその機能が行う働きに対してアクセスできる。
例1 キーボードが打てない人々,及びつづりの書けない人々のための代替手段として,音声認識が
提供されている。
例2 支援技術によって,機器又はサービスに対し,キーボード等価の入力をできる(例えば,タッ
チスクリーンの代わりにキーボード又は点字入力装置によって入力ができる。)。
例3 グラフィカルユーザインタフェースにおいて,グラフィックオブジェクトの代替テキストが提
供されており,見ることのできない利用者が,スクリーンリーダによって読むことができる。
7.1.3 代替インタラクション手段の同時利用の対応
情報通信機器及びサービスは,異なる状況又は変化する状況の中で利用者のアクセシビリティニーズを
満たすために,代替的なインタラクション手段の同時利用に対応することが望ましい。
これは,多数のインタラクションチャネルの利用を含んでいる(7.3.10も参照)。
例 表示スクリーンを個別設定できるのに加え,スクリーンリーダが,オペレーティングシステムか
らのテキスト出力にアクセスし,テキスト出力を音声又は点字で送ることができる。
7.1.4 個別設定への対応
情報通信機器及びサービスは,利用者による個別設定に対応することが望ましい(7.3.8及び7.6.7では,
二つの特定の個別設定に関する指針を提供する。)。
例1 利用者が,与えられた仕事をするためにどの入出力装置を利用するかを選択できる。
例2 利用者が,個々の装置の物理的な位置を容易に変えることができる。
例3 利用者が,ドラッグアンドドロップによってディスプレイ上のコンポーネントのレイアウトを
変えることができる。
7.1.5 設定の変更
利用者が機器又はサービスの再設定又は再起動をしなくても,情報通信機器又はサービスとインタラク
ションする代替手段を利用し,アクセシビリティに関連する設定を選択できる方法を提供することが望ま
しい。
利用者にとって種々のインタラクション手段を選択できることと同様に,その選択を外すことができる

――――― [JIS X 8341-1 pdf 13] ―――――

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ことも重要である。
例1 利用者が,マウスの代わりにキーボードを用いて画面上のポインタを制御できる。
例2 利用者が,色覚に制限があっても問題ない配色を選択できる。
例3 利用者が,システムのスピーカの音量とマイクロホンの音量とを別々に調節できる。
例4 利用者が,物理的な操作機能,例えば触覚入力装置によって利用されるストローク及び押圧を
調節できる。
例5 スクリーンの内容を読むために指を利用する利用者が不注意にタッチしても問題ないように,
タッチスクリーンからの入力が遮断されている。タッチスクリーンによって通常行われる機能
は,他の入力方法によって行う。
例6 支援技術が,利用者が常に利用できるキーボードコマンドによって容易に起動又は停止できる。
7.1.6 初期設定への復帰
利用者が機器又はサービスの再設定又は再起動をしなくても,情報通信機器又はサービスを初期設定に
復帰できる方法を提供することが望ましい。
複数の利用者間での共有を意図する情報通信機器及びサービスでこれが特に重要である。
7.1.7 カスタマイズされた設定の保存及び回復
できれば,利用者によってカスタマイズされた設定を保存し回復する手段を提供することが望ましい。
利用者がカスタマイズして保存した設定を読み込むことは,利用者の認知能力が低いために設定を作成で
きない状況で特に重要である。
7.1.8 支援技術への対応
支援技術に対応するために,標準インタフェース手段が提供されることが望ましい。システムはアクセ
シビリティニーズを満たすように設計されることが望ましいが,一部の利用者にとってはシステムとイン
タラクションできる唯一の手段が,支援技術の利用であることも知られている。一般に利用されている支
援技術のリストを,次に示す。
a) 見ることができない利用者を支援する技術,例えば音声及び/又は点字出力によって情報を示すスク
リーンリーダ
b) 視覚に制限のある利用者を支援する技術,例えば大きなディスプレイ,大きなフォント,高いコント
ラスト及びディスプレイの一部を拡大するハードウェア又はソフトウェア
c) 聞くことができない利用者を支援する技術,例えば字幕及び音の可視化
d) 聴覚に制限のある利用者を支援する技術,例えば音量増幅器及び補聴器
e) 発話ができない利用者を支援する技術,例えば音声合成装置
f) 発話に制限のある利用者を支援する技術,例えば外付け音声拡大装置
g) 動作に制限のある利用者を支援する技術,例えば眼球運動追跡装置,ヘッドスティック,マウスステ
ィック及び遠隔制御装置
h) 聞くことができず見ることもできない利用者を支援する技術,例えば点字出力及びテレタイプライタ
(文字電話)入力
7.1.9 利用者の疲労の回避
情報通信機器及びサービスは,次の手段によって,利用者を疲労させず,長時間にわたり利用者に快適
さを確保することが望ましい。
a) 微小で精ち(緻)な関節運動を要求しないようにする。
b) 極端に無理な姿勢又はそれに近い状態で静止を要求しないようにする。

――――― [JIS X 8341-1 pdf 14] ―――――

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注記 利用者の耐久力には差があるので,疲労を感じる前に行うことができる身体的・知的作業の量
は利用者によって差が生じる。
利用者の個人差に対処するには,疲労を感じたら常に休息できるように仕事の一時停止及び再開ができ
れば助けになる。

7.2 視覚

7.2.1  見ることができない利用者
情報通信機器及びサービスは,視力がないか又は環境条件によって物が見えない利用者に対応すること
が望ましい。
見ることができない利用者にとって特に重要な具体的な指針を,7.2.27.2.5に示す。7.1で示した一般
的な指針及びこのほかの具体的な指針も,これらの利用者にとって重要である。
7.2.2 音を用いた情報の提供
利用者が,視覚的表示の有無にかか(関)わらず,音で情報を得られるようにすることが望ましい。
注記1 点字を学習した人ならば,点字出力のできるスクリーンリーダを利用でき,音情報がなくて
も済むだろう。しかし,後天的に全盲になる人の中で,点字のような専門の技能を習得でき
る人は少ない。そのような人でも,音情報ならば,新しい聴覚の技能を習得して,追加の聴
覚方法に頼って情報を得られることがある。
注記2 見ることができない多くの利用者は,音声合成出力によってスクリーンを読み取るので,読
んでいる最中に発生する音出力に注意を払うことは困難か不可能かもしれない。
音による情報の提示が,視覚情報の提示と確実に同期することが重要である。
7.2.3 聴覚情報でのナビゲーションへの対応
利用者が音響的な手がかりを用いて,コントロール・表示オブジェクト群の中をナビゲートできる機能
が提供されることが望ましい。
注記 空間的な位置づけを理解することを必要としたり,図式表現されたオブジェクトを見ることを
必要としたりするナビゲーションは,見ることができない利用者にとって不利である。
7.2.4 聴覚的及び/又は触覚的手段による位置及び機能情報の提供
利用者に対して,コントロール及び表示オブジェクトについての位置及び機能情報を,聴覚的及び/又
は触覚的手段によって提供することが望ましい。
7.2.5 非視覚的なフィードバック手段を用いる制御の提供
キーボード,音声又は他の非視覚的なフィードバック手段によって,利用者がフォーカス,ナビゲーシ
ョン及び他の機能を制御できることが望ましい。
例 利用者がコントロールに遭遇したとき(例えば,コントロールが選択できる位置にカーソルが移
動したとき。)に,聴覚フィードバックが提供される。
7.2.6 視覚に制限のある利用者
情報通信機器及びサービスは,視覚に制限のある利用者に対応することが望ましい。
視覚に制限のある利用者にとって特に重要な特別の指針に関しては,7.2.77.2.12を参照する。7.1及び
7.2.27.2.5に追加される一般的な指針及び特定の指針も,これらの利用者に対して重要である。
7.2.7 ディスプレイ上にあるオブジェクトのコントラストの調節
ディスプレイ上にあるユーザインタフェースに関するオブジェクトのコントラストを調節する機能が提
供されることが望ましい。

――――― [JIS X 8341-1 pdf 15] ―――――

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JIS X 8341-1:2010の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9241-20:2008(IDT)

JIS X 8341-1:2010の国際規格 ICS 分類一覧

JIS X 8341-1:2010の関連規格と引用規格一覧