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Lシリーズについては,第一半価層だけで評価することに注意する。±5 %を超えるずれがある場合は,
管電圧を調整しなければならない。
4.3.5 Hシリーズの設定
4.3.5.1 固定フィルタ
60 kV以下の管電圧では,固定フィルタ厚さは,アルミニウム相当で4 mm以下となる。そのため低エ
ネルギーの線質を生成するためには,薄い固有フィルタのX線管を用いる必要がある。60 kV以上では,
固定フィルタをアルミニウム相当で4 mmとなるよう調整しなければならない。固有フィルタとしてアル
ミニウムを用いる場合には,付加フィルタとして用いる銅フィルタからの特性X線を減衰させるために,
銅フィルタの後に設置する。また,このときのアルミニウムの厚さは,0.5 mm以上とする。
4.3.5.2 付加フィルタ
Hシリーズの付加フィルタの例を,表6に示す。管電圧が30 kV以下の場合は,第一半価層が表6記載
の値に対して±10 %となるように,30 kVを超えるエネルギーでは,±5 %となるように付加フィルタを調
整しなければならない。付加フィルタ及び半価層測定用アルミニウムフィルタの純度は,20 kV以下では,
99.99 %以上,20 kVを超える場合は,99.9 %以上のものを用いなければならない。
4.4 照射野の均一性及び散乱線の評価
4.4.1 照射野の直径
照射野直径は,試験点に設置した検出器全体を一様に照射する大きさとする。試験点は,X線の焦点か
ら50 cm以内に近づけてはならない。
4.4.2 照射野の均一性
試験点に設置した検出器の有感領域における空気カーマ率の均一性は,±5 %とする。
4.4.3 散乱線
次の二つの方法によって散乱線の割合の測定を行い,その影響が空気カーマ率に対して5 %以下でなけ
ればならない。これらの測定は,エネルギー特性及び方向特性のよい電離箱を用いる。低エネルギー線質
についても均一性及び散乱線の影響は,次の項目による。ただし,試験1は空気による減弱補正が大きい
ため,スペクトル測定と併用して行わなければならない。
a) 試験1 ビーム軸上で照射距離を変えて空気カーマ率の測定を行い,空気による減弱補正,及び必要
に応じて,照射野の均一性に対する補正を行い,線源−検出器間における距離の逆二乗則に対して±
5 %であることを確認する。この場合の線源は,X線管焦点とする。
b) 試験2 試験1における各照射距離において,ビーム軸に垂直な平面内で,照射野半径の2倍に等し
い距離だけ検出器を移動させた後,空気カーマ率を測定する。直接ビームの外側にある散乱線の空気
カーマ率は,中心軸上に対応する空気カーマ率の5 %以下であることを確認する。
5 蛍光X線標準場
5.1 場の仕様及び発生原理
蛍光X線標準場の仕様は,表10による。蛍光X線は,図1のX線装置からの一次線をラジエータに衝
突させて,ラジエータから発生するK列特性X線を利用する。蛍光X線の線質は,Kα1特性X線のエネル
ギー,ラジエータの化学形態及びその質量厚さ,一次フィルタの質量厚さ並びに二次フィルタの化学形態
及びその質量厚さで表し,表10の8.64 keV98.4 keVの16種類である。Kβ特性X線の寄与は,表10の
二次フィルタを用いることによって無視できる程度に減少させることができる(図2参照)。表10のラジ
エータ及び二次フィルタの化学形態及び質量厚は,推奨値である。
――――― [JIS Z 4511 pdf 16] ―――――
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5.2 蛍光X線装置及び操作条件
5.2.1 X線装置
4.3.1に規定するX線装置を用いる。管電圧の安定性は,±5 %でなければならない。蛍光X線標準場の
空気カーマが安定していない場合は,モニタを用いて補正しなければならない。モニタは,二次フィルタ
によるろ過に影響しないように適切な場所に配置する。
5.2.2 蛍光X線装置
蛍光X線装置の例を図1に示す。蛍光X線装置は,次の項目によって構成される。
a) ラジエータ ラジエータは,目的の蛍光X線エネルギーに応じて表10から選定し,純度は99.9 %以
上とする。ラジエータは,薄膜状又は粉体状の化合物(酸化物,炭化物又は硫化物)で,プラスチッ
ク板で挟んで固定する。支持部は,プラスチックなどの軽元素の材質を用いる。
b) フィルタ 図1における一次フィルタは,蛍光X線の生成において低エネルギー光子の影響を小さく
するために,一次線に対して設置する。二次フィルタは,L列の特性X線の除去及びK列のKα特性
X線に対するKβ特性X線の強度の割合を低減するために,蛍光X線ビーム軸に設置する。
c) 一次コリメータ(一次ダイヤフラム : Primary diaphragm) 一次線がラジエータ支持具又は蛍光X線
装置の壁に当たって発生する散乱線を最小にするため,一次コリメータは,一次線の出口に配置し,
ラジエータの位置での一次線の照射断面積をラジエータの面積より小さくする。
d) 二次コリメータ(二次ダイヤフラム : Primary diaphragm) 二次コリメータは,ラジエータから発生
する蛍光X線のビームの角度を制限して,壁,支持具,装置,その他附属品などによる散乱線を減ら
すために用いる。
e) トラップ トラップは,一次線によって生成された散乱線が混入しないように,一次フィルタとラジ
エータとの間の一次線の経路に設置する。一次線が入射する大きな空間は,トラップとなる。
f) X線遮蔽体 蛍光X線の測定を行う空間は,遮蔽などによって一次線及び散乱線の影響がないように
する。
表10−蛍光X線標準場の仕様(ラジエータ及びフィルタを含む)
No. 蛍光X線エ ラジエータ 管電圧a) 一次フィルタ 二次フィルタ
ネルギー 元素 化学形態 化学形態の (kV) 最小の質量厚 化学形態 化学形態の
Kα1(keV) 質量厚 (gcm−2) 質量厚
(gcm−2) (gcm−2)
1 9.89 Ge GeO2 0.180 60 Al0.135 GdO 0.020 c)
2 15.8 Zr Zr 0.180 80 Al0.27 SrCO3 0.053
3 23.2 Cd Cd 0.150 100 Al0.27 Ag 0.053
4 31.0 Cs Cs2SO4 0.190 100 Al0.27 TeO2 0.132
5 40.1 Sm Sm2O3 0.175 120 Al0.27 CeO2 0.195
6 49.1 Er Er2O3 0.230 120 Al0.27 Gd2O3 0.263
7 59.3 W W 0.600 170 Al0.27 Yb2O3 0.358
8 68.8 Au Au 0.600 170 Al0.27 W 0.433
9 75.0 Pb Pb 0.700 190 Al0.27 Au 0.476
10 98.4 U U 0.800 210 Al0.27 Th 0.776
11 8.64 Zn Zn 0.180 50 Al0.135 Cu 0.020
12 17.5 Mo Mo 0.150 80 Al0.27 Zr 0.035
13 25.3 Sn Sn 0.150 100 Al0.27 Ag 0.071
14 37.4 Nd b) Nd 0.150 110 Al0.27 Ce b) 0.132
――――― [JIS Z 4511 pdf 17] ―――――
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表10−蛍光X線標準場の仕様(ラジエータ及びフィルタを含む)(続き)
No. 蛍光X線エ ラジエータ 管電圧a) 一次フィルタ 二次フィルタ
ネルギー 元素 化学形態 化学形態の (kV) 最小の質量厚 化学形態 化学形態の
Kα1(keV) 質量厚 (gcm−2) 質量厚
(gcm−2) (gcm−2)
15 49.1 Er Er 0.200 120 Al 0.27 Gd 0.233
16 59.3 W W 0.600 170 Al 0.27 Yb 0.322
注記 No.110のラジエータ及びフィルタは,金属はく(箔)又は適切な混合物で構成される。No.17に対して
は,同様のエネルギーをもち,金属ラジエータ及び金属フィルタからなるNo.1116が代用できる。
注a) 標準場における線質の単色性が高い場合の管電圧である。管電圧を高くすれば高い空気カーマ率が得られる
が,単色性が低下する。
b) d及びCeは,酸化を防止するために密封することが望ましい。
c) 0.020 gcm−2は,Gdだけの質量である。
図1−蛍光X線装置の概略図の例
10000
8000
Kα159.3 keV
s
6000
Count
4000
2000
0
0 20 40 60 80 100
(keV)
光子エネルギー
図2−表10のNo.16 : 59.3 keV,ラジエータ : W 573 mgcm−2及び第二フィルタ : Yb 360 mgcm−2の
ラジエータを用いた蛍光X線標準場のスペクトルの例[4]
5.2.3 動作条件
5.2.3.1 幾何学的配置
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ラジエータは,一次線の軸に対して,角度45°±5°に置かなければならない。一次線に対して90°の
方向に発生した蛍光X線を用いる。高い空気カーマ率の蛍光X線を発生させるためには,ラジエータは,
X線管にできるだけ近い位置がよい。一次線は,ラジエータの広い領域に照射した方がよい。ラジエータ
と試験点との距離は,目的の空気カーマ率が得られる範囲とする。試験点におけるビームの断面積は,常
に,被校正測定器の断面積よりも大きくなければならない。蛍光X線の線質は,スペクトル測定によって
確認しなければならない。
5.2.3.2 基準放射線の特性
空気カーマ率基準放射線の調整は,次の項目による。
a) 管電流 通常,管電流を1 mA程度まで下げても基準放射線の特性を維持できる。
b) 蛍光X線が発生する面積 一次コリメータの直径を変えることで蛍光X線の量を変化させることがで
きる。一次コリメータの直径は,X線焦点より大きくなければならないが,照射野の均一性等を考慮
して不必要に大きくないものとする。
c) ラジエータと検出器との距離 ラジエータと検出器との距離が1 mより長い場合は,蛍光X線のスペ
クトルに変化がないことを確認することが望ましい。
5.3 照射野の均一性及び散乱線の測定
5.3.1 照射野の均一性
試験点における蛍光X線ビーム軸に対して直角となる試験点断面における均一性は,ビーム軸上の空気
カーマ率の±5 %とする。
5.3.2 散乱線の測定
適切に校正された電離箱を用いて,試験点における散乱線の寄与を評価しなければならない。散乱線の
寄与は,蛍光X線による空気カーマ率の5 %以下とする。電離箱は,測定するエネルギー領域において,
エネルギー特性が既知で方向特性がよいものを用いなければならない。
6 γ線標準場
6.1 γ線核種
γ線標準場の生成に用いるγ線源には,表11に規定する放射性核種を用いる。
表11−γ線源の基礎特性
放射性核種 放射線エネルギー 半減期 空気カーマ率定数a)
keV D Gy・h−1m2MBq−1
60Co
1 173.3 1 925.5 0.31
1 332.5
137Cs
661.6 11 050 0.079
241Am
59.54 157 788 0.003 1
注a) 空気カーマ率定数は,カプセルなどによって遮蔽されていない点状線源の場合の値である。このため,この
値は,目安程度のものであり,空気カーマ率の決定には用いない。
6.2 γ線源の構造及び仕様
6.2.1 γ線源
γ線源の線源部の大きさは,小さい方がよい。
放射性不純物による空気カーマ率は,γ線源の空気カーマ率の1 %以下でなければならない。表12に,
――――― [JIS Z 4511 pdf 19] ―――――
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放射性核種に対する比放射能及び化学形態の例を示す。
表12−γ線源の基礎特性
放射性核種 比放射能 化学形態
Bqkg−1
60Co
3.7×1015 金属
137Cs
8.51×1014 塩化物
241Am
1.11×1014 酸化物
注記 60Coは,比放射能の高い線源が製作可能である。137Cs線源には製造後,しばらくの間は,134Csが含まれる場
合がある(8.7.3.4参照)。精製直後の137Csには,134Csが含まれている。通常,放射性不純物に関する情報は,
線源製造業者から入手できる。
6.2.2 カプセルへの封入
カプセルは,γ線源から放出されるβ線を十分に吸収する厚さでなければならない。カプセルの厚さは,
60Coの場合は,0.2 gcm−2,137Csの場合は,0.5 gcm−2以上とする。241Amについては,26 keVのγ線及び
L列特性X線の空気カーマ率を59.5 keVのγ線の1.0 %未満に減衰させるために,カプセルは,ステンレ
ス鋼で厚さ0.32 gcm−2以上とする。
6.3 照射設備
空気,施設・設備などによって発生する散乱線の空気カーマ率は,直接線の空気カーマ率の5 %を超え
てはならない。照射設備は,6.3.1に規定する非コリメート照射設備又は6.3.2に規定するコリメート照射
設備とする。
6.3.1 非コリメート照射における幾何学的配置
照射室は,高さ3 mで4 m×4 m以上の内部寸法をもつことが望ましい。線源及び検出器の支持台は,
例えばポリメチルメタクリレート,アルミニウムのような低原子番号の材料で作製され,最小限の量であ
ることが望ましい。γ線源を設置する高さは,照射室の2分の1の高さが望ましい。校正に用いるγ線源
−試験点間の距離は,空気による減弱補正した後の空気カーマ(率)と,距離の逆二乗則から求めた空気
カーマ(率)との差が5 %を超えない範囲での距離が望ましい。散乱線が5 %を超えない校正距離は,照
射室の広さ及びγ線源のエネルギーによって異なるが,30 cm130 cmが目安となる。
6.3.2 コリメート照射における幾何学的配置
照射装置内でγ線源を収納する遮蔽容器は,漏えい(洩)放射線を千分の一以下に低減することが望ま
しい。60Coの場合は,12.5 cm以上,137Csの場合は,6.5 cm以上の鉛厚で千分の一以下となる。
照射野の広がりを限定するために,コリメータを用いる。コリメータ構造の例を,図3に示す。
照射野は,照射する検出器よりも大きくなければならない。そのため,図3の例の場合には,距離d1は,
30 cm以上となる。距離d2は,部屋の壁からの後方散乱に大きく影響するため,6.4に規定する要求事項を
満たすように設定しなければならない。
図3のコリメータは,γ線源が頂点の円すい(錐)形となるコリメータである。コリメータは,連続し
た6個以上の開口した隔壁から構成されている。開口した隔壁は,全厚さが約90 mmであり,それぞれ
20 mmの隙間で隔てられている。20 mmの隙間は,隔壁前方の開口部のエッジによって散乱した光子を更
に遮蔽するために用いられる。最終の開口した隔壁は,厚さ3 mmで,ビームの横断面より僅かに大きい
直径である。これらの開口した隔壁の材質は,タングステン合金である。
――――― [JIS Z 4511 pdf 20] ―――――
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JIS Z 4511:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 4037-1:1996(MOD)
- ISO 4037-2:1997(MOD)
- ISO 4037-3:1999(MOD)
- ISO 4037-4:2004(MOD)
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- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.240 : 放射線測定
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- 規格番号
- 規格名称
- JISZ4001:1999
- 原子力用語
- JISZ4331:2005
- 個人線量計校正用ファントム
- JISZ8103:2019
- 計測用語