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図3−コリメート照射装置及びその配置例
6.3.3 減弱フィルタによる空気カーマ率の変更
異なる放射能のγ線源を用いる代わりに,137Cs又は60Coのコリメート照射では,減弱フィルタによっ
て線量率を変化させることもできる。減弱フィルタは,コリメータを塞ぐように接近させて配置する。通
常,減弱フィルタの材質は,鉛,タングステン合金,ステンレス鋼などが用いられる。
減弱の割合は,照射野などの幾何学的なパラメータによって変化する。したがって,試験点の空気カー
マ率は,測定によって評価しなければならない。
6.4 散乱線の評価
照射設備の空気カーマ率については,線源及び線源周辺の構造体以外からの散乱線の寄与が5 %以下で
あることを確認する。
γ線源からのビーム軸上の適切な複数の試験点において空気カーマ率を測定する。空気による減弱補正
の後,空気カーマ率は,線源中心から検出器の基準点までの距離の逆二乗則の値に対して,±5 %でなけ
ればならない。散乱線の評価には,9.4.7に規定するシャドーシールド法を用いてもよい。
6.5 照射野の均一性
照射野直径は,試験点に設置した検出器全体を一様に照射する大きさとする。照射野内の空気カーマ率
の均一性は,±5 %であることが望ましい。
7 高エネルギーγ線標準場
7.1 設備の条件及び場の仕様
7.1.1 一般
原子力発電所及びその他の原子炉施設における6 MeVのγ線を含む,高エネルギー光子の測定に用いる
測定器に適用するため,4 MeV9 MeVのγ線標準場を規定する。通常,測定器のレスポンスは,このエ
ネルギー範囲を超えても不連続変化を示さないことから,これより高いエネルギーについては規定しない。
7.1.2 高エネルギーγ線標準場の生成
7.1.2.1 生成方法
高エネルギーγ線標準場は,次の四つの反応のいずれかを用いて生成する。
19F(p, αγ)16O反応における16Oの脱励起
a)
12Cの脱励起
b)
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c) 熱中性子捕獲γ線
16Nの壊変
d)
a) 及びb) のγ線標準場の光子フルエンススペクトルの例を,図4及び図5に示す。
16Oの脱励起によるγ線標準場
7.1.2.2
16Oの脱励起によるγ線標準場は,粒子加速器を用いてふっ素ターゲット(通常は,CaF2が用いられる。)
に陽子を衝突させ,19F(p, αγ)16O反応によって生成される。
1 μAの陽子電流及び約6 mgcm−2のターゲット厚さに対する代表的な光子発生率及び空気カーマ率につ
いて,入射陽子エネルギーの違いによる推定値を表13に示す。約6 mgcm−2のターゲット厚さと2.7 MeV
陽子とによって生成される光子フルエンススペクトルの例を図4に示す。
表13−1 μA陽子によって生成される光子の空気カーマ率
陽子エネルギー 光子発生率 空気カーマ率a)
MeV s−1 Gyh−1
0.340 5 105 0.05
0.872 1 106 0.5
2.05 6×107 30
2.7 2×108 100
注a) ターゲットから1 mの位置における値である。
薄いターゲットに340.5 keVの陽子が入射した場合に,この反応から得られるエネルギー準位及び相対
放出確率は,16O脱励起による6.13 MeV光子が97 %,7.117 MeV光子が2.5 %,6.917 MeV光子が0.5 %で
あり,表13に示す0.05 Gyh−1の空気カーマ率に対応する。340.5 keVより高い陽子エネルギーでは,表
13のように光子発生率及び空気カーマ率が増加するが,6.13 MeV光子の相対的な寄与が低下し,例えば,
(p, p'γ) 反応,電子対生成など,放射線の混在が増加する。
――――― [JIS Z 4511 pdf 22] ―――――
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図4−陽子エネルギー2.7 MeVでの6 MeV7 MeVのγ線標準場の
光子フルエンススペクトルの例
高空気カーマ率が必要な場合,空気カーマに対して約4 %の低エネルギー光子の混在が容認できるとき
は,約6 mgcm−2厚さのターゲットに入射する陽子エネルギーとして2.7 MeV付近の値を用いてもよい。
ターゲット厚さの増加につれて,ターゲット中の陽子エネルギー損失が増加するため,光子スペクトルは,
変化する。
12Cの脱励起によるγ線標準場
7.1.2.3
12Cの脱励起によるγ線標準場は,粒子加速器を用いて陽子を炭素ターゲットに衝突させ,12C(p, p'γ) 12C
反応による脱励起に続いて,12Cの最低励起準位から放出される4.44 MeVの光子によって生成される。タ
ーゲットは,高純度同位体組成の炭素層で構成しなければならない。高純度同位体組成の炭素層ではなく
天然の炭素層を用いる場合は,次の二つの反応が混在する。
13C(p, p'γ) 13C反応によって,3.09 MeVのγ線が発生する。
a)
13C(p, n) 13N反応によって,9.96分の半減期をもつ13Nの陽電子が消滅して,0.511 MeVの消滅放射線
b)
が発生する。13Nの発生と減衰との間の放射平衡状態は,反応が開始してから20分後に到達する。放
射平衡状態に達するまで,校正に用いてはならない。
4.44 MeV及び3.09 MeVの収率比並びに4.44 MeV及び0.511 MeVの収率比は,陽子エネルギーに依存し
ない。ターゲットから1 mの距離での陽子電流が1 μAで,陽子エネルギーが5.5 MeVの場合,0.511 MeV,
3.09 MeV及び4.44 MeVのそれぞれのエネルギーに対する光子フルエンス率は,約160 cm−2・s−1,12 cm−2・
s−1及び1 800 cm−2・s−1である。空気カーマ率は,それぞれ約1.4 μGy・h−1,0.046 μGy・h−1及び85 μGy・h−1
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である。光子フルエンススペクトルの例を図5に示す。
図5−陽子エネルギー5.5 MeVにおける4.4 MeVのγ線標準場の
光子フルエンススペクトルの例
7.1.2.4 熱中性子捕獲γ反応によって生成されるγ線標準場
熱中性子捕獲γ反応によって生成されるγ線標準場は,中性子源としては原子炉を用い,チタン又はニ
ッケルターゲットの捕獲γ反応によって生成される。
16Nの壊変によるγ線標準場
7.1.2.5
16Nの壊変によるγ線標準場は,原子炉炉心内の水が速中性子によって,16O(n, p)16N反応を起こし,放
射化することによって生成される。半減期7.1秒の16Nのベータ壊変の結果,16Oの励起状態から放出確率
がそれぞれ68 %及び5 %である6.13 MeV及び7.117 MeVの光子が発生する。10.4 MeVのβ線放出も伴う
ため,低原子番号のプラスチックなどによって遮蔽する。
実用的な標準場として,水30 Ls−1の流量率を閉ループで炉心を通って連続的に循環させる標準場など
がある。
7.2 照射野の均一性及び散乱線の評価
照射野の均一性及び散乱線の評価は,4.4に規定する要件を満たさなければならない。ただし,4.4.3 a) の
“X線管焦点”は,“ターゲット”に置き換える。照射野が測定器又はファントムを完全に,かつ,均一に
照射できない場合は,測定器又はファントムの全体を走査してもよい。ただし,この方法が全てのカーマ
率測定器に適用できるわけではない。
――――― [JIS Z 4511 pdf 24] ―――――
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7.3 混在放射線の影響評価
7.3.1 一般
中性子,電子及び測定対象エネルギー以外の光子の混在を評価し,校正定数への影響を評価しなければ
ならない。γ線標準場及び混在光子の両方とも,附属書Eに示すようなパルス波高分布の測定によって評
価することが望ましい。ベリリウム,すず又は鉛を含む測定器であっても,通常,これらの材質による光
核反応に起因する影響は無視できる。各γ線標準場に混在する放射線を,7.3.2,7.3.3及び7.3.4に示す。
7.3.2 各γ線標準場に混在する放射線
ターゲット部,照射室の壁及びフィルタ材料における電子対生成後の陽電子消滅によって,0.511 MeV
の光子が生成される。
核反応の結果としてターゲットで生成されたβ粒子,又はターゲット及びその付近の光子によって生成
した二次電子がγ線標準場に混在する。さらに,これらの電子の制動放射によって生成される光子が混在
することもある。
ターゲット材及びその近傍にある物質による光子散乱によって,少なくとも空気カーマ率で1 %程度の
低エネルギー光子が生じる。
16Oの脱励起によるγ線標準場に混在する放射線
7.3.3
7.3.2に規定する混在放射線に加えて,陽子エネルギーが2 MeV3 MeVの間では,図4に示す19F(p,
p'γ)19F反応によって生成される0.1 MeV1.5 MeVの光子が陽子エネルギーと共に発生割合が増加する。
2.7 MeVの陽子エネルギーでは,この反応は,6 MeV7MeVのγ線標準場の空気カーマ率に約4 %寄与す
る。
7.3.4 原子炉の中性子によって生成されるγ線標準場に混在する放射線
7.3.4.1 熱中性子捕獲γ反応によって生成されるγ線標準場での混在
7.3.2に規定する混在放射線に加えて,チタン又はニッケルの熱中性子捕獲γ反応によって生成されるγ
線標準場は,熱中性子捕獲γ反応によって放出される低エネルギー光子を含んでいる。チタンから放出さ
れる5 MeV以下の光子,又はニッケルから放出される6.8 MeV以下の光子の混在率は,付加フィルタによ
って空気カーマ率で10 %以下に低減させなければならない。
16N壊変によって生成されるγ線標準場での混在
7.3.4.2
7.3.2に規定する混在放射線に加えて,16N壊変によって生成されるγ線標準場は,冷却媒体中の混在物
質による放射化生成物から放出される低エネルギー光子を含む。24Naに起因する2.754 MeV及び1.369 MeV
の光子が主なものである。
8 標準場の線量測定法及びトレーサビリティ
8.1 一般
この規格が規定する標準場の線量率は,国家計量標準にトレーサビリティがなければならない。
標準場の校正は,厳密には,校正を行ったその時だけ有効であり,その後は,標準場における線量率の
減衰を評価しなければならない。
この規格におけるトレーサビリティ体系の概念図を,附属書JAに示す。
8.2 標準場における空気カーマ(率)の決定
X線及びγ線標準場の空気カーマKa(Jkg−1又はGy)は,式(1)による。
W 1
Ka X (1)
e 1 g
――――― [JIS Z 4511 pdf 25] ―――――
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JIS Z 4511:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 4037-1:1996(MOD)
- ISO 4037-2:1997(MOD)
- ISO 4037-3:1999(MOD)
- ISO 4037-4:2004(MOD)
JIS Z 4511:2018の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.240 : 放射線測定
JIS Z 4511:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ4001:1999
- 原子力用語
- JISZ4331:2005
- 個人線量計校正用ファントム
- JISZ8103:2019
- 計測用語