JIS Z 4511:2018 X線及びγ線用線量(率)測定器の校正方法 | ページ 6

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ここに, X : 照射線量(Ckg−1)
W/e : 空気中でイオン対を作るために必要なエネルギー(JC−1)
g : 制動放射によるエネルギー損失割合
式(1)の1/(1−g)は,制動放射によるエネルギー損失を補正するもので,表14の1.0 MeV以上の光子
エネルギーに対する(1−g)値を用いて補正しなければならない。
式(1)における照射線量Xと自由空気電離箱による電離電荷との関係は,式(2)による。
X (2)
ここに, V : 電離を起こす空気の体積(cm3)
Q : 体積Vで生じた電離電荷(C)
ρ : 測定時の空気密度(kgcm−3)
表14−制動放射損失による補正係数
光子エネルギー 1−g 1.25 MeVに規格化した補正係数
MeV 1−g
1.0 a) 0.998 1.001
1.25 a) 0.997 1.000
1.5 a) 0.996 0.999
4.0 0.988 0.992
4.4 b) 0.987 0.990
6.0 0.980 0.983
6.1 b) 0.980 0.983
7.0 b) 0.976 0.979
8.0 0.972 0.975
8.5 b) 0.970 0.973
9.0 b) 0.968 0.971
10.0 0.963 0.966
注記 参考文献[5]から引用。
注a) IN 6814,Terms and definitions in the field of radiological technique, Part 3: Dose quantities and
units, Deutsches Institut fr Normung e.V, Beuth Verlag GmbH, Berlin, Germany, 1985. による。
b) 内挿による値

8.3 標準場における線量当量(率)の決定

  場及び個人のモニタリングに用いる線量当量Hは,式(3)による。
H KahK (3)
ここに, Ka : X線及びγ線標準場の空気カーマ(Gy)
hK : 空気カーマから線量当量への換算係数(SvGy−1)
hKは,光子エネルギーによって変化するため,連続X線スペクトルの標準場では,換算係数の重付けを
行い,積分した平均値を求める。低エネルギーの換算係数は,特に注意しなければならない。

8.4 標準測定器の条件

8.4.1  一般
校正に用いる標準測定器は,二次標準又は参照標準として国家標準へのトレーサビリティが確保されな
ければならない。標準測定器は,通常,電離箱測定器を用いるが,線量率の低い空気カーマ率の測定では,

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電離箱測定器のほかに,例えば,シンチレーション検出器などを用いてもよい。4 MeV9 MeVの高エネ
ルギーγ線場では,電離箱測定器のほかに,TLD,フリッケ線量計などを用いてもよい。
高エネルギーγ線の線量測定は,8.7.4.2 a) の直接測定の方法による。直接測定における二次電子平衡及
び電子飛程の影響について,附属書Cに示す。
8.4.2 校正
標準測定器は,測定するエネルギー及び放射線量の範囲について校正されていなければならない。
8.4.3 標準測定器のエネルギー特性
標準測定器のレスポンスは,用いるエネルギー範囲のうち,平均エネルギーが30 keV以上においては,
レスポンスの最大値と最小値との比が1.1を超えてはならず,平均エネルギーが8 keV30 keVにおいて
は,1.2を超えてはならない。
標準測定器を校正した上位の標準場の線質と,標準測定器を用いて線量測定を行う標準場の線質とは,
同じ線質であることが望ましい。

8.5 標準測定器による測定方法

8.5.1  標準測定器の操作
標準測定器の操作方法は,測定器の校正証明書及び取扱説明書に従わなければならない。標準測定器の
校正周期及び標準測定器の校正後の安定性の定期的な確認の周期は,法的な要求がない場合は,3年以内
とすることが望ましい。
8.5.2 安定性の確認
標準測定器の安定性は,機器動作確認用のγ線源又は校正された放射線場を用いて,±2 %の再現性が
あることを確認しなければならない。確認の場合,γ線源の減衰補正並びに気圧及び温度の基準条件への
補正を行わなければならない。また,複数のレンジがある測定器では,最も精度よく指示値を読み取れる
レンジで実施するとよい。
8.5.3 ウォーミングアップ時間及び応答時間
測定器は,電源を入れてから安定するまで十分なウォーミングアップ時間を置かなければならない。測
定器の応答時間からみて独立とみなせる十分な時間間隔で測定しなければならない。空気カーマ率の測定
では,指示値の連続読取りの間隔は,使用レンジの応答時間の5倍以上の時間とする。測定器のウォーミ
ングアップ時間及び応答時間は,製造業者が示す。
8.5.4 ゼロ調整
ゼロ調整の機能が備わっている場合は,検出器を接続した状態で,使用するレンジのゼロ調整を行う。
8.5.5 読取回数
標準測定器は,読取値の平均値が十分な精度になるように,少なくとも4回以上連続して読み取る。
8.5.6 標準測定器のエネルギー特性
標準測定器の校正定数は,上位の標準場の特定のスペクトルに対応している。電離箱のレスポンスがエ
ネルギーに依存する場合で,校正に用いる放射線のスペクトル分布が,標準測定器が校正された標準場の
スペクトルと異なるときには,補正しなければならない。
8.5.7 測定器の目盛及びレンジの非直線性
標準測定器の指示値に対して,目盛及びレンジの非直線性の補正を行わなければならない。
8.5.8 シャッタ移動時間
照射設備のシャッタの作動によって照射時間を決定する場合,シャッタの移動時間による照射時間の補
正を行う。

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例えば,シャッタ移動時間Δtは,複数回照射することによって,公称の照射時間t,二つの既知の線量
K1,Knから式(4)によって決定することができる。
t Kn K1 (4)
t
n K1 Kn
ここに, K1 : 連続した時間t(s) で1回照射した線量
Kn : 連続した時間t/n(s) をn回照射した合計線量
この方法は,線源出力が安定しているか,又は平均値Δtを得るために多数回繰り返して測定する場合に
良好な結果となる。
8.5.9 測定対象とする量への換算
標準測定器が測定対象とする量とは異なる量で校正されている場合,測定対象とする量に換算する。

8.6 電離箱を用いた測定方法

8.6.1  一般
標準測定器として電離箱測定器を用いる場合の測定方法は,次による。
8.6.2 電離箱部と測定部とを分離した校正
電離箱部と測定部とが分離して校正されている場合,測定部は,電気標準における国家標準へのトレー
サビリティが確保されていなければならない。
8.6.3 電離箱の放射線入射角の影響
電離箱への放射線の照射方向は,測定結果に影響を及ぼす。電離箱は,基準方向からの照射方向のずれ
による指示値の変化が±2 %となるように設置する。校正事業者は,電離箱の基準方向を校正証明書に明
記しなければならない。校正時の基準方向は,特に指定がない場合,製造業者によって決められた基準方
向とする。
8.6.4 漏えい電流の測定
標準測定器の漏えい電流は,最高感度レンジの最大値の2 %以下でなければならない。漏えい電流が2 %
を超えた場合は,補正を行わなければならない。
漏えい電流の発生源の例として次のようなものがある。
− 漏えい電流は,電離箱の絶縁体,ステム又はケーブルの一部が放射線に照射されることによって生じ
る。照射後も影響は続き,通常,時間の経過と共に指数関数的に減少する。
− 放射線がない状態の絶縁体の漏えい電流は,電離箱,ケーブル,コネクタ,電位計,前置増幅器など
の高インピーダンスを構築するための絶縁材の表面又は絶縁材の体積内で引き起こされる。
− 電離箱からの信号をデジタル化する測定器は,電離箱内のイオン化によって生成されたものとは逆の
極性の漏えい電流を表示しないものがある。
線量率が既知の適切な放射線が利用可能,又は漏えい電流と線量率との比が既知であれば,漏えい電流
の量を求めることができる。
漏えい電流に類似した影響を生じる要因の例としては,次のようなものがある。
a) ケーブルマイクロフォニックノイズ 同軸ケーブルは,変形するときに電気的ノイズを生成すること
がある。低ノイズ非マイクロフォニックケーブルを用い,機械的に誘導された電流が低下するように
十分時間が経ってから測定するのが望ましい。
b) 前置増幅器によって引き起こされる信号 放射線によって引き起こされる漏えい電流を避けるため,

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前置増幅器は,照射野の外に設置することが望ましい。これが困難な場合は,前置増幅器を適切に遮
蔽してもよい。
8.6.5 電離箱の設置
電離箱の基準点をビーム軸上の試験点に設置する。
8.6.6 幾何学的条件
照射野直径は,標準測定器又は被校正測定器に対して十分な大きさであることが望ましい。照射野内の
空気カーマ率の均一性は,±5 %,散乱線の寄与は,5 %以下でなければならない。
標準測定器の大きさは,γ線源と標準測定器との距離が短い場合には,測定結果に影響することがある。
8.6.7 電離箱の支持部及びステムによる散乱
電離箱の支持部又はステムが照射野内にある場合は,支持部及びステムによる散乱線の発生を最小限に
抑える構造としなければならない。上位の標準場における校正条件下において,支持部及びステムによる
散乱並びにステム中で放射線によって発生した電流の寄与を含めて標準測定器の校正定数が与えられる。
このため,標準場を設定するときの標準測定器に対する照射野が,標準測定器を校正したときの照射野と
同等である場合には,支持部又はステムによる散乱線の影響を補正する必要はない。
注記 ステムによる散乱は,基準放射線の線質及び照射野と相関がある。
8.6.8 測定値の補正
8.6.8.1 一般
標準測定器の指示値は,必要に応じて,8.5.6及び8.5.7に規定する影響について補正しなければならな
い。
8.6.8.2 ゼロシフト
ゼロシフトは,ゼロ設定モードを測定モードに切り替えたときの指示値の変化である。ゼロシフトの影
響は,高感度の測定レンジで大きくなり,必要に応じて,調整,測定方法の変更などによって補正又は除
去しなければならない。
8.6.8.3 環境バックグラウンド及び漏えい電流の補正
必要に応じて,環境バックグラウンド放射線による影響及び8.6.4に規定する漏えい電流の影響について
補正する。
8.6.8.4 気温,気圧及び湿度の変動の補正
通気形の電離箱は,測定時の温度,気圧及び湿度の試験条件を,式(5)によって校正されたときの基準条
件に補正しなければならない。
M Mi Ch
CT, p (5)
ここに, M : 次の基準条件に補正された測定値
気圧の基準条件 p0 kPa
気温の基準条件 T0 ℃
相対湿度の基準条件 h0 %
Mi : 次の条件の下で得られた測定値
測定時の気圧 p kPa
測定時の気温 T ℃
測定時の相対湿度 h %
CT,p : 次式によって得られる気温及び気圧の補正係数
p0 273.15 T
CT, p
p 273.15 T0

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Ch : 基準条件と測定時の条件との相対湿度の差異による補正
係数。相対湿度の関数として電離箱の応答から求める。通
常,この補正係数は小さく,Ch=1を用いることができる。
測定器の中には,温度及び/又は気圧の自動的な補正機能をもつものもある。
注記 標準試験条件の範囲内で温度及び/又は湿度を調節することは可能である。しかしながら,気
圧は,事実上調節が困難である。標準試験条件以外の環境では,標準測定器の特性によって補
正が必要となる場合がある。
8.6.8.5 イオン再結合の補正
標準測定器を高い線量率範囲で用いる場合には,電離箱部のイオン再結合による不完全なイオン収集の
補正が必要となるときがある。測定器の高い線量率範囲のレンジで,電気信号だけによる校正はしないほ
うがよい。イオン再結合の補正のための試験を行う場合は,放射線を用いて測定システム全体で評価する
ことが望ましい。
8.6.8.6 照射野の均一性
照射野の空気カーマ率の均一性は,小形検出器又はフィルム検出器を用いて照射野を測定することによ
って評価する。

8.7 各種標準場固有の測定方法

8.7.1  連続X線標準場
8.7.1.1 X線の出力の変動
X線装置からの放射線出力が変動する場合は,装置の出力をモニタによって測定しなければならない。
注記 照射用のフィルタは,多くの付加フィルタからなるため,X線管電圧の小さな変化が出力に大
きな変化を与える。例えばLシリーズでは,X線管電圧の1 %の変化によるX線の出力変化は,
最大15 %にまでなる。また,管電圧が一定であっても,管電圧のリップルがX線の線量率を
瞬時に変動させる場合がある。
8.7.1.2 モニタ
モニタは,通気形の透過形電離箱であることが望ましい。ビームが通過する膜を含む電離箱部は,均一
でなければならず,付加フィルタの後方に接近させて配置しなければならない。電離箱は,それが線質に
影響を与えないように十分に薄くなければならない。X線の設定例を図6に示す。この電離箱の電離収集
効率は,測定対象とする全ての空気カーマ率に対して99 %以上とする。校正対象の線質において,標準測
定器の指示値とモニタの指示値との割合の変化が,校正中,0.5 %以下で安定していれば,モニタを仲介測
定器として用いてもよい。モニタの時定数は,標準測定器の時定数以下であることが望ましい。温度及び
気圧は,基準条件に補正しなければならない。モニタ及び関連する測定器の性能は,標準測定器と同等で
なければならない。

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JIS Z 4511:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 4037-1:1996(MOD)
  • ISO 4037-2:1997(MOD)
  • ISO 4037-3:1999(MOD)
  • ISO 4037-4:2004(MOD)

JIS Z 4511:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 4511:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ4001:1999
原子力用語
JISZ4331:2005
個人線量計校正用ファントム
JISZ8103:2019
計測用語