JIS Z 4511:2018 X線及びγ線用線量(率)測定器の校正方法 | ページ 7

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1 校正距離
2 鉛コリメータ
3 モニタ
4 付加フィルタ
5 シャッタ
6 X線管
7 フィルタなし : 10の分布
8 固有フィルタ含む : 11の分布
9 付加フィルタ含む : 12の分布
図6−モニタを用いたX線装置の幾何学的配置及び各位置でのX線スペクトルの例
8.7.1.3 照射口
照射口は,付加フィルタ直後に設置する。照射口の形状は,試験点での散乱線の寄与が小さくなるよう
に設計することが望ましい。照射野は,照射する測定器を完全に照射できるように十分な大きさとし,校
正中は,一定の大きさを保たなければならない。ただし,照射される電離箱ステム及び支持部は,十分に
小さくするのがよい。
8.7.1.4 シャッタ
シャッタは,X線管とモニタとの間に設置する。シャッタは,最も高いエネルギーの線質に対して,透
過する空気カーマ率が0.1 %以下に減弱するのに十分な厚さとする。積算線量の測定では,読取りは,照
射後速やかに行う。
8.7.1.5 空気カーマ率の調整
空気カーマ率は,X線管電流又はターゲットからの距離のいずれかを変更することで調整できる。
8.7.1.6 低エネルギーX線場の設定における注意点(30 kV以下)
低エネルギーX線標準場では,X線管から試験点までの空気層の密度変化によって線質が変わるため,
環境条件の違いによる補正を行う。空気密度の違いによる補正は,附属書Dによる。
8.7.2 蛍光X線標準場
X線装置の管電圧は,ラジエータからの必要な特性X線以外の放射線を最小限に抑えるように調整する
ことが望ましい。不純物によるスペクトル分布への影響を考慮する。特に低エネルギーK列特性X線にお
いては,影響が大きいので注意する。例えば,ウランK列特性X線を生成する場合には,ラジエータ及び
トリウムフィルタが放射性物質であることから,蛍光X線以外に起因する電流がモニタで計測される。必
要に応じて,この電流を補正しなければならない。
8.7.3 γ線標準場
8.7.3.1 線量率標準線源
照射装置を用いずに線源単体で校正した線量率は,照射装置を用いた標準場の線量率の決定に用いては
ならない。標準場は,校正された標準測定器を用いて校正しなければならない。線源単体で校正された場

――――― [JIS Z 4511 pdf 31] ―――――

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は,γ線源からの直接線だけに対して値付けされているため,照射装置との組合せなど,照射条件が異な
ることによって散乱線が増加し,校正した線量率と実際の線量率とに差異が生じる。
しかしながら,この規格の適用範囲外の10 μGy・h−1より低い空気カーマ率の測定には,線源単体で適切
に校正された放射線源を用いることもある。線量率標準線源を用いた校正は,附属書JCを参照する。
8.7.3.2 ビルドアップキャップ
標準測定器による標準場の設定は,標準測定器の校正に用いた二次電子平衡を成立させるためのビルド
アップキャップ(空気等価物質の層)と同じビルドアップキャップを用いて行わなければならない。
8.7.3.3 γ線源の減衰補正
必要に応じて,γ線源の減衰補正を行う。
8.7.3.4 γ線源の放射性核種不純物
製造後しばらくは,137Csには,134Csが含まれている。137Csと134Csとが異なる半減期をもつことに注意
しなければならない。製造から十分な時間が経過して,134Csが十分に減衰した137Cs線源の利用が望まし
い。線源に含まれる放射性不純物に関する情報は,通常,線源製造業者から入手できる。
8.7.3.5 校正位置間の内挿
測定点以外の照射距離における空気カーマ率の決定は,9.4.6に規定する内挿法による。
8.7.4 高エネルギーγ線標準場
8.7.4.1 線量
試験点における4 MeV9 MeVの基準放射線の線量(率)は,自由空間中において測定する空気カーマ
(率)である。人体組織,水などが存在する条件下で測定する組織等価吸収線量(率)又は水吸収線量(率)
は,この規格の適用範囲外である。
8.7.4.2 標準場の空気カーマ率の決定
空気カーマ(率)は,次に示す校正された電離箱による直接測定,又は光子フルエンス(率)スペクト
ルからの間接測定によって決定する。
直接測定に用いる電離箱は,検出器表面において二次電子平衡が成立するように,検出器周りを空気等
価物質のビルドアップキャップで覆わなければならない。ビルドアップキャップが空気等価でない物質の
場合は,阻止能の違いに対する補正が必要である。検出器の壁厚とビルドアップキャップとの合計の厚さ
は,60Coγ線標準場において校正する場合は0.4 gcm−20.6 gcm−2でなければならない。60Coを超える高
エネルギー光子において校正する場合は,4.0 gcm−2±0.1 gcm−2でなければならない。
a) 電離箱による直接測定 4 MeV9 MeVのエネルギー範囲の光子の測定に適用する電離箱は,4.0
gcm−2±0.1 gcm−2の壁厚をもち,空気カーマ(率)で校正されていなければならない。電離箱を校
正した上位の標準場の線質と,電離箱を用いて線量測定を行う標準場の線質とは,同じ線質であるこ
とが望ましい。
エネルギーErの基準放射線に対する空気カーマ (Ka) rは,指示値Mrに対して式(6)による。
Ka r Mr NK (6)
ここに, (NK) r : エネルギーErの標準場に対する空気カーマ校正定数
電離箱の校正に用いた標準場と同じ線質で校正ができない場合は,0.40.6 gcm−2の壁厚をもつ電離箱
を60Coγ線標準場において校正する。エネルギーErの基準放射線に対する空気カーマ (Ka) rは,式(7)によ
る。
Ka r Mr NK 1 ga kattkm (7)

――――― [JIS Z 4511 pdf 32] ―――――

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60Coγ線による校正定数
ここに, NK :
ga : 制動放射によるエネルギー損失割合
katt : ビルドアップキャップを含む電離箱壁の吸収及び散乱に
係わる補正係数
km : 電離箱壁及び/又はビルドアップキャップが空気等価物
質でない場合の補正係数
katt及びkmは,測定時の高エネルギー光子が校正時の60Coγ線と異なるための補正係数である。
電離箱壁及び/又はビルドアップキャップが空気等価物質であれば,kmの補正は必要ないが,補正を行
う場合は,式(8)による。
a en m
km (8)
m en
ここに, L/ρ : 質量制限衝突阻止能比
μen/ρ : 質量エネルギー吸収係数比
その他の補正係数としては,再結合補正,極性効果,電極又はステムによる散乱,基準点のずれなどの
補正がある。通常,これらの補正値は,合計で1 %未満であり,無視することができる。
b) 光子フルエンススペクトルからの間接測定 空気カーマ率は,NaI(Tl) シンチレーション検出器,又
は高純度Ge半導体検出器によって得られる波高スペクトルから光子フルエンススペクトルを求め,
空気カーマスペクトルに変換して求めることができる。また,適用可能な場合は,関連する粒子計数
によって得られた全光子フルエンス率から空気カーマ率を求めることもできる。
通常は,Φiがi番目のエネルギー間隔Eiでのフルエンス,(μtr/ρ) iがこの間隔における平均質量エネルギ
ー転移係数とすると,空気カーマ率Kaは,式(9)による。
Ka iEi Φi

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  式(9)の積算は,全フルエンススペクトルにわたって展開する。質量エネルギー転移係数 (    丿
tr
) は,
( 丿
tr
丿
)=(
en
)/(1−
ag) として計算される(参考文献[6]参照)。
丿
en
は,質量エネルギー吸収係数であ
り, agは,初期光子相互作用で生じた電子スペクトルの平均化された制動放射線の発生率である。

9 実用測定器の校正方法

9.1 一般

  光子エネルギーで8 keV9 MeVのX線及びγ線標準場における,場,個人のモニタリングなどの実用
測定器の校正について規定する。個人モニタリングについては体幹部及び末端部の線量計が含まれ,場の
モニタリングについては携帯形,可搬形及び据置形の測定器が含まれる。光子エネルギー及び放射線入射
角に対するレスポンスの決定についても規定する。
なお,環境モニタリング用測定器などの低線量率測定器の方法については,附属書JCを参照する。

9.2 線量当量への換算係数

9.2.1  一般
各線質に対する換算係数を附属書Bに規定する。照射距離は,X線管の焦点又はγ線源の幾何学的な中
心から試験点までの距離とする。線量計の基準点を試験点に設置する。蛍光X線及びR-C,R-F又はR-O
放射線に関して,照射距離は,ラジエータ中心又はターゲット表面から試験点までの距離とする。照射距
離に範囲がある場合の換算係数の値は,この範囲の距離に適用することができる。それ以外の距離,QI
シリーズなどのように附属書Bに記載のない線質については,次の方法による。

――――― [JIS Z 4511 pdf 33] ―――――

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a) スペクトル測定をする場合は,パルス波高スペクトルからフルエンススペクトル及び空気カーマスペ
クトルを求め,各エネルギーの線量当量換算係数の重付けをして線量当量スペクトルを評価する(附
属書E参照)。この線量当量スペクトルと空気カーマスペクトルの総和との比から当該線質の線量当
量換算係数を求める。
b) スペクトル測定をしない場合は,40 kV以上の線質で,実効エネルギーに該当する線量当量換算係数
を利用してもよい。
9.2.2 換算係数の不確かさ
単一エネルギーの放射線に対する換算係数は,不確かさをもたないものとして扱ってもよい。それ以外
の換算係数の標準不確かさは,特にことわりのない場合は,2 %とする。
QIシリーズのように,実効エネルギーから求めた線量当量換算係数を利用する場合は,スペクトルから
求められる換算係数とのずれを不確かさとして考慮しなければならない。実効エネルギーから求めた線量
当量換算係数は,スペクトルから求められる換算係数と±3 %で一致するという報告(参考文献[7])があ
る。ただし,40 kV未満の線質では,H*(10) 及びHp(10) への換算係数は,スペクトルからの換算係数に対
して±3 %を超えるので注意する。
9.2.3 低エネルギー領域での換算係数に対する注意点
30 kV以下の管電圧,特にHシリーズに関して,換算係数h*K(10:E) 及びhpK(10:E,α) の数値を実験によ
って評価する場合,附属書Bに規定する値から2 %以上異なることがある。エネルギー分布から,少しの
変動で換算係数が変化する線質は,対応する表中に“注a)”で記載している。この場合には,9.2.2に規定
する2 %の標準不確かさは,十分ではないため,不確かさの適切な推定値又は換算係数の信頼できる値を
用いることが望ましい。校正時の空気密度による換算係数の補正は,附属書Dによる。
注記 低エネルギー線質の標準場において,H*(10) 及びHp(10) は,高エネルギー部分からの寄与が
大きく,また,空気カーマは,低エネルギー部分からの寄与が大きいため,エネルギー分布の
僅かな違いが換算係数の数値を著しく変化させる。
一つの実験で決定したエネルギー分布では,多くの要因で異なることがある。例えば,アノ
ード角度,アノードの表面状態の変化,管球窓へのタングステン蒸着,ビーム中の透過形電離
箱(モニタ)の存在,フィルタ厚の公称値からの偏り,測定時におけるX線管と試験点間との
空気層の厚さ,気圧などの要因がある。蛍光X線に関して,許容範囲の散乱線からの寄与を考
慮して最適化する。これは,薄いラジエータを用いるか又は管電圧を下げるかによって達成す
ることができる。
低エネルギーX線に対しては,4.2.2.1に規定する手法I又は手法IIによって,測定対象の線量当量の取
決め真値を決定することができる。
スペクトル測定と空気カーマ標準測定器とを併せて用いる方法では,取決め真値の不確かさを2 %(k
=1)以下にしなければならない(手法I)。
二次標準測定器を用いて線量当量を直接測定する方法では,達成可能な不確かさは,線質に依存し,2 %
3 %(k=1)の間である(手法II)。
試験中は,測定量の取決め真値の決定から被校正測定器の校正並びに放射線入射角及び光子エネルギー
の応答関数の決定までの期間中に各パラメータの安定性を維持する。

9.3 個人線量計の校正条件

9.3.1  ファントム
個人線量計について,光子エネルギー及び放射線入射角に対するレスポンスの決定のための測定及び校

――――― [JIS Z 4511 pdf 34] ―――――

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正は,適切なファントムを用いることが望ましい。通常,末端部に装着する線量計は,Hp(0.07) を対象と
する。手指に着用する線量計は,ISOロッドファントムを,手首又は足首に着用する線量計は,ISOピラ
ーファントムを用いることが望ましい。ISOロッドファントムは,直径19 mm,長さ300 mmのポリメタ
クリル酸メチル樹脂(以下,PMMAという。)製の円柱である。ISOピラーファントムは,PMMA壁をも
つ中空円柱に水を満たしたもので,外径73 mm,長さ300 mmである。円柱の側壁は,2.5 mmの厚さ,端
面は,10 mmの厚さである。体幹部に着用する線量計については,JIS Z 4331に規定するPWファントム
を用いることが望ましい。137Cs又は137Cs以上の高い平均エネルギーの基準放射線を用いる場合は,JIS Z
4331に規定するP-30ファントム又はP-40ファントムを用いてもよい。
ファントムを用いる場合,ファントムとICRU組織との後方散乱特性の違いに起因する補正は,しなく
てもよい。同一型式の線量計を定常的に校正する場合は,ファントムなしの自由空気中及び/又は線量計
の測定線種とは異なる種類の放射線を用いてもよい。ただし,これらの校正をする場合は,本体に規定さ
れた校正結果と同じであることを確認すること,又は差異がある場合には,補正しなければならない。
Hp(0.07) が有効な低エネルギー放射線領域では,Hp(0.07) を測定するために設計された線量計が体幹部
に装着されるときの線量計の指示値に注意することが望ましい。衣服による放射線の吸収のため,実際の
人体に与えるHp(0.07) の値は,指示値とは著しく異なる場合がある。
9.3.2 ファントムを用いた校正時の照射条件
試験点は,照射野がファントム全体を照射する十分な大きさとなるように,γ線源からの距離を選択し
なければならない。線量(率)の取決め真値は,標準測定器の基準点を試験点に配置して決定しなければ
ならない。校正する線量計の基準点は,その基準方向が放射線の入射方向に対して平行になるように試験
点に設置する。末端部に用いる線量計は,通常,体に装着する方法で,ファントムに装着することが望ま
しい。スラブファントムは,前面が線量計の後側に接し,ビーム軸に垂直とする。個人線量計の照射は,
ファントム上とする。校正定数又はレスポンスは,9.4.2.2の式(10)又は9.4.2.3の式(12)から求めなければ
ならない。放射線の入射方向による影響の試験については,ファントム及び設置された線量計は,図C.2
に示すように試験点の周りを回転しなければならない。通常,ファントム校正においては,線量計の基準
点を試験点に合わせるが,ファントム表面に試験点を合わせてもよい。
注記1 個人線量計及びファントムを組み合わせた状態を,被試験線量計とみなす。この状態の基準
点は,線量計の基準点である。測定量は,線量計がないときのファントム内の深さdにおけ
る線量当量の値である。
注記2 線量計の基準点を試験点に置くことには,二つの利点がある。一つは,線量計の校正定数が
γ線源と試験点との距離に依存しないで,一定となることである。二つ目の利点は,放射線
の入射方向に対するレスポンスの試験において,基準点と試験点とが同じであれば,被試験
線量計の読取値は,回転角に伴うγ線源と基準点との距離の変化について補正する必要がな
いことである。
注記3 スラブファントムを用いた放射線の入射方向に対するレスポンスを求める試験においては,
ファントムは,一つの軸だけで回転させ,通常,線量計をファントム表面に二つの相互に垂
直な向きに置く。
9.3.3 複数の線量計に対する同時照射
スラブファントム表面に複数の個人線量計を設置して同時に照射する場合,ファントム中心の線量に対
して±2 %の均一性をもつ直径dFの範囲に線量計を設置しなければならない。dFの値は,線質にも依存し,
それらは表B.16表B.21及び表B.35表B.39に規定する。照射距離が表B.16表B.21及び表B.35表

――――― [JIS Z 4511 pdf 35] ―――――

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JIS Z 4511:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 4037-1:1996(MOD)
  • ISO 4037-2:1997(MOD)
  • ISO 4037-3:1999(MOD)
  • ISO 4037-4:2004(MOD)

JIS Z 4511:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 4511:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ4001:1999
原子力用語
JISZ4331:2005
個人線量計校正用ファントム
JISZ8103:2019
計測用語