JIS Z 4511:2018 X線及びγ線用線量(率)測定器の校正方法 | ページ 8

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B.39に与えられる距離よりも短い場合,直径dFは表中の値より小さくなる。複数の線量計の入射方向特性
を表す応答(レスポンス)関数を同時に決定するには,線量計の基準点は回転軸に位置しなければならな
い。さらに,同時照射では,次の二つの影響に注意する必要がある。
a) ファントム表面に複数の線量計を配置することによって,ファントムからの後方散乱が線量計を透過
する放射線の減衰によって減少する。
b) 複数の線量計の基準点とγ線源との距離がファントム上の配置で異なる。
このような距離の違いは9.5.2に従って考慮することが望ましい。複数の個人線量計の同時照射による結
果が,一つの線量計を単独でファントムの中心において照射したときの結果と±2 %であることを確認し
なければならない。
線量計によっては,後方散乱光子の小さな変化に対して非常に敏感に応答するものがある。これはエネ
ルギー特性の大きい検出器を用いていること,検出器の信号から線量当量による指示値を算出するまでに
用いるアルゴリズムによることなどが考えられる。このような場合,一つの線量計だけをファントム表面
に設置して校正することが望ましい。
9.3.4 Hp(0.07) における方向特性
特定の放射線場において,Hp(0.07) は,放射線の入射方向Ωに依存する。ピラー及びロッドファントム
については,二つの相互に垂直な回転軸があり,いずれも線量計の基準点に交差している。一つは,円柱
軸に平行で,もう一つは,円柱軸及び放射線の入射方向の両方向に垂直である。二つの軸に対して60°の
様々な光子エネルギー範囲に対して,hpK(0.07:E,α) の値は,0°に対する比として0.951.05である。より
小さな回転の場合,これらの変異は常に小さい。Hp(0.07) は,角度の変化による影響が小さいため,この
規格では,ピラー及びロッドファントムのHp(0.07) は,60°までの放射線の入射角度には依存しないとみ
なす。60°の角度を超える回転は,この規格では規定しない。

9.4 標準場での校正方法

9.4.1  一般
標準場での校正方法は,置換法,同時照射法,線源法,内挿法及びシャドーシールド法がある。置換法
には,モニタを必要としない置換法I,及びモニタを必要とする置換法IIがある。
9.4.2 置換法I
9.4.2.1 一般
置換法Iは,放射線出力の安定性が高く,X線及びγ線標準場での校正にモニタを必要としない。
9.4.2.2 校正
放射線場の空気カーマ率が安定している場合,校正は,次の手順による。
標準測定器を放射線場に設置して測定し,空気カーマ率の取決め真値の決定を行い,その後,被校正線
量計を同じ場所に設置する。被校正線量計の校正定数NBは,式(10)による。
h NA MA
NB (10)
MB
ここに, h : 空気カーマ−線量当量変換係数
NA : 標準測定器の校正定数
NB : 被校正線量計の校正定数
MA : 標準測定器の測定値(指示値に空気密度の違いを補正する
係数を乗じた値)

――――― [JIS Z 4511 pdf 36] ―――――

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MB : 被校正線量計の測定値(指示値に空気密度の違いを補正す
る係数を乗じた値)
9.4.2.3 光子エネルギー及び放射線入射角に対するレスポンスの決定
線量計のレスポンスRは,光子エネルギーE及び角度αの関数として表され,式(11)による。
MB E,
R E, (11)
h E, NA MA kE k
ここに, h : 空気カーマ−線量当量変換係数
NA : 標準測定器の校正定数
MA : 標準測定器の測定値(指示値に空気密度の違いを補正する
係数を乗じた値)
MB : 被校正線量計の測定値(指示値に空気密度の違いを補正す
る係数を乗じた値)
kE及びkαは,標準測定器の校正時と測定時とのエネルギーE及び角度αが異なることに起因する補正係
数である。
線量計のレスポンスは,相対レスポンスrとして表してもよい。
線量計の相対レスポンスは,式(12)による。
R
r (12)
Rr
ここに, Rr : 基準条件におけるレスポンス
9.4.3 置換法II
9.4.3.1 一般
置換法IIは,モニタによる補正を必要とする連続X線及び蛍光X線のように校正中の放射線出力の安
定性が低い標準場での校正に用いる。
9.4.3.2 校正
時間経過によって空気カーマ率が緩やかに変化する場合は,8.7.1.2に規定するモニタを用い,標準測定
器によって試験点における空気カーマ率の取決め真値を決定した後,被校正線量計を試験点に設置して,
置換法によって校正する。標準測定器及び被校正線量計が試験点に置かれているときのそれぞれのモニタ
指示値mA及びmBを求め,標準測定器及び被校正線量計によるそれぞれの測定値MA及びMBを補正する。
被校正線量計の校正定数NBは,式(13)による。
MA mB
NB h NA (13)
mA MB
ここに, mA : 標準測定器照射時におけるモニタの値
mB : 校正時における線量計を照射しているときのモニタの値
注記1 線量計の照射が標準測定器の照射の直前又は直後に行われる場合には,環境条件の変化が無
視できることから,モニタの値の環境条件の変化に関する補正の必要がないときがある。
注記2 モニタの長期安定性がよい場合には,仲介測定器として用いることができる。
9.4.3.3 光子エネルギー及び放射線入射角に対するレスポンスの決定
線量計のレスポンスRは,式(14)による。
mA MB E,
R E, (14)
h E, NA mB MA kE k

――――― [JIS Z 4511 pdf 37] ―――――

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9.4.4 同時照射法
9.4.4.1 校正
同時照射法による校正は,標準測定器及び線量計を,γ線源の中心から同じ距離の対象位置に設置する
ことによって,標準測定器及び被校正線量計を同時に照射する方法である。一方の測定器の読取値が,他
方の存在によって2 %を超える散乱線の影響を受けないように,二つの検出器の間の距離は,十分に離さ
なければならない。
放射線場が非対称であるための影響を除去するために,測定は,二つの測定器の位置を交換して再度測
定しなければならない。その後,読取値の相乗平均を求める。校正定数NBは,式(15)による。
MA MA
NB h NA (15)
MB 1
MB 2
ここに,式中の1及び2は,測定器の位置を交換して測定した2回の測定を示す。
9.4.4.2 光子エネルギー及び放射線入射角に対するレスポンスの決定
線量計のレスポンスRは,式(16)による。
1 MB E, MB E,
R E, (16)
h E, NA kE k MA 1
MA 2
ここに,式中の1及び2は,測定器の位置を交換して測定した2回の測定を示す。
9.4.5 線源法
γ線源からある距離における空気カーマ率の取決め真値が既知の場合は,校正する線量計の校正定数NB
は,式(17)による。
h Ka
NB (17)
MB
ここに, Ka : 空気カーマ(率)
MB : 校正時の線量計による(標準条件下における)測定値
h : 空気カーマ線量当量換算係数
9.4.6 内挿法
測定の行われた距離以外の距離について,任意の関数による内挿によって空気カーマ率Kaを決定するこ
とは,6.4に規定する逆二乗則からの差が±5 %の範囲の距離に限定して行う。ある基準位置から逆二乗則
によって空気カーマ率を決定することもできるが,標準測定器による線量率の差が±5 %であることを確
認しなければならない。
9.4.7 シャドーシールド法
シャドーシールド法に用いるシャドーコーンは,校正する検出器が隠れる大きさの断面をもつコーン形
状の鉛製の遮蔽体であって,直接線の減弱率を千分の一以下にする厚さ(137Csで約6.5 cm,60Coで約12.5
cm)があるものとする。ビーム中心軸上のγ線源から被校正測定器間の距離のほぼ中央に支持具を用いて
設置する。
シャドーシールド法は,全空気カーマ率から散乱線を分離して,直接線に対する測定器の指示値を求め
る方法であり,照射距離は,シャドーコーンがなす立体角内に測定器を隠すことを考慮すると,通常は100
cm以上が望ましい。また,エネルギー特性が悪い測定器のエネルギー特性試験を行う場合に,散乱線を分
離して直接線に対するレスポンスを求めるための方法として有効である。

――――― [JIS Z 4511 pdf 38] ―――――

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9.5 特性試験の方法

9.5.1  影響量の変動
校正及びレスポンス試験における基準条件及び標準試験条件は,附属書Aによる。標準試験条件として
規定する影響量の範囲は,表A.1及び表A.2による。一つの影響量のレスポンスの変化に対する影響を決
定するための測定では,特に指定のない限り,他の影響量は,標準試験条件内の値とする。
一方で,被校正測定器のレスポンスが一定になるように,影響量を変化させる場合がある。例えば,GM
管式線量計のエネルギー特性試験を大きな不感時間が生じる線量率範囲で試験する場合,一定の線量率で
はなく,線量率を変化させて,一定の指示値が得られる範囲で試験をすることが望ましい。熱ルミネセン
ス線量計のように,ある線量を超えると単位線量当たりの応答(発光量)が過応答となる直線性応答を示
す線量計の場合についても同様である。通常,線量又は線量率が線形となる条件下で測定器の校正を行う
ことが望ましい。
9.5.2 試験点及び基準点
測定は,被校正線量計の基準点を試験点に合わせて実施する。被校正線量計の基準点及び基準方向は,
製造業者によって明示され,基準点は,線量計の表面に記されている。基準点を線量計表面に記すことが
困難な場合,基準点は機器に附属する添付文書に示されている。照射距離は,放射線源と被校正線量計の
基準点との距離となる。被校正線量計の基準点又は基準方向についての情報がない場合,これらのパラメ
ータは,校正機関が特定し,証明書に記載しなければならない。
注記 点線源で散乱線及び光子吸収がない場合,線量率は,距離lの逆二乗則によって変化する。ビ
ーム内でビーム方向の距離Δlの配置のずれは,距離lにおける校正定数に2Δl/lの相対誤差を
もたらす。ビーム軸に垂直なΔλのずれは,(Δλ/l)2の相対誤差をもたらす。散乱線が存在し,線
源が有限の大きさをもつ場合,この相対誤差の近似は,Δl又はΔλが十分に小さい場合に限定
される。
9.5.3 回転軸
放射線入射方向特性は,線量計の少なくとも二つの軸を回転させて試験しなければならない。二つの軸
を用いる場合,それらの軸は互いに垂直でなければならない。回転軸は線量計の基準点と交差しなければ
ならない。個人線量計を試験する場合には,ファントムに設置して行う。幾何学的な位置関係を図C.2に
示す。
9.5.4 被校正線量計の取扱い
校正前に,被校正線量計が使用可能な状態で,かつ,放射性汚染がないことを確認してから試験を行う。
線量計の設定基準,操作モードなどは,取扱説明書による。
9.5.5 電子による影響
エネルギーが65 keVを超える電子は,0.07 mmのICRU組織を透過し,2 MeVを超える電子は,10 mm
厚のICRU組織を透過する。光子の標準場では,そのようなエネルギーの電子を生成すること及び電子の
飛程に関連した影響を考慮しなければならない。この詳細は,附属書Cが参考となる。
電子による影響の評価は,次による。
H'(0.07) 及びHp(0.07) の標準場,並びに表B.9表B.14及び表B.22表B.39に示すエネルギー300 keV
以下の標準場に対しては,電子飛程の効果の特別な注意を必要としない。光子エネルギーが約250 keV以
下であれば,空気,モニタなどの物質が介在することによって,全ての状況下で二次電子ビルドアップが
成立する。高エネルギーγ線標準場におけるレスポンスの決定においては,光子場における非二次電子平
衡状態での校正は,適切ではなく,適切な電子の放射線標準場における校正が必要になる。詳細は,附属

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書Cが参考となる。
S-Csから9 MeVまでの高エネルギーγ線標準場の場合は,試験点に対する空気カーマの取決め真値を決
定する。その後に,被校正線量計の基準点を試験点に合わせて校正する。また,二次電子平衡の成立を確
保するのに十分な厚さのPMMA板については,場のモニタリングに用いる測定器の前面,又は個人線量
計とファントムとの組合せの前面に配置する。PMMA板を用いることによる標準場の補正は,表B.8及び
表B.21に示す補正係数kPMMAを乗じる。プレートの断面積は,30 cm×30 cmで,厚さは,表B.8及び表
B.21に示す値を用いる。
注記 ファントム付個人線量計及び場のモニタリングに用いる測定器の照射には,PMMA板を線量
計,又は線量計とファントムとの組合せから一定距離を離して配置することが実用的である。
その理由は,放射線の入射方向によるレスポンスの変化を調べるときに,PMMA板を回転させ
る必要がないからである(図C.2参照)。

9.6 場のモニタリング用線量当量測定器の校正方法

9.6.1  周辺線量当量(率)H*(10) 測定器
9.6.1.1 一般
周辺線量当量(率)H*(10) 測定器の校正方法は,携帯形又は据置形の周辺線量当量(率)H*(10) 測定器
の標準場における校正に適用する。周辺線量当量(率)測定器は,能動形及び受動形の両方を含む。これ
は,据置形周辺線量当量(率)測定器の据置状態における校正(現場校正)には適用しない。周辺線量当
量(率)測定器は,自由空気中(ファントムなし)で照射する。レスポンス試験は,8 keV9 MeVの光子
エネルギーで,測定に適した照射装置,照射距離で行う。空気カーマから実用量H*(10) への換算係数は,
表B.2表B.8に,散乱線がなく,幅広い平行ビームでの単一エネルギーの光子に対する換算係数は,表
B.2による。
実際には,校正は常に発散ビームで実施される。表B.2表B.8に示す換算係数は,表中に記載する照
射距離の範囲で適用できる。
9.6.1.2 測定量
周辺線量当量(率)H*(10) 測定器の測定量は,周辺線量当量H*(10) でなければならない。
9.6.2 方向性線量当量(率)H'(0.07) 測定器
9.6.2.1 一般
方向性線量当量(率)H'(0.07) 測定器の校正方法は,携帯形又は据置形の方向性線量当量(率)H'(0.07)
測定器の標準場における校正に適用する。方向性線量当量(率)測定器は,能動形及び受動形の両方を含
む。これは,据置形方向性線量当量(率)測定器の据置状態における校正(現場校正)には適用しない。
方向性線量当量(率)測定器は,自由空気中(ファントムなし)で照射する。H'(0.07) に変換するための
換算係数は,表B.9表B.14による。散乱線がなく,幅広い平行ビームでの単一エネルギーの光子に対す
る換算係数は,表B.9による。実際には,校正は常に発散ビームで実施される。表B.9に示す換算係数は,
照射距離の範囲に適用できる。距離と共に放射線入射方向の角度αが与えられる場合,αは,入射方向と
線量計との基準方向との間の角度である。
9.6.2.2 測定量
方向性線量当量(率)測定器の測定量は,方向性線量当量H'(0.07;Ω ‰ 瀰

9.7 個人のモニタリング用線量当量測定器の校正方法

9.7.1  個人線量当量(率)Hp(10) 測定器
9.7.1.1 一般

――――― [JIS Z 4511 pdf 40] ―――――

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JIS Z 4511:2018の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 4037-1:1996(MOD)
  • ISO 4037-2:1997(MOD)
  • ISO 4037-3:1999(MOD)
  • ISO 4037-4:2004(MOD)

JIS Z 4511:2018の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 4511:2018の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ4001:1999
原子力用語
JISZ4331:2005
個人線量計校正用ファントム
JISZ8103:2019
計測用語