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Z 4514 : 2010
表2−校正距離におけるEresの最小値
核種 Eres (MeV)
14C
0.09
147Pm
0.13
85Kr
0.53
204Tl
0.53
90Sr+90Y
1.80
106Ru+106Rh
2.80
4.3.1.2 標準場の特徴の測定
校正に使用するβ線源の残留最大β線エネルギーEresは,表2に示す値以上でなければならない。Eresの
最小値を設定する目的は,過度の自己吸収及び窓材による吸収のある線源の使用を避けるためである。
残留最大β線エネルギーEresは,式(8)によって求める。
2
Eres .0009 1Rres 1 1 / 224. (8)
ここに,EresはMeV単位で表す。Rresは残留最大β線飛程で,mg・cm−2で表す。
Rresは,適切な検出器を使って測定しなければならない。検出器の例として,薄窓電離箱,ガイガー・
ミュラー計数管,β線に感度をもつ蛍光物質などを用いることができる。検出器は試験点に,入射窓を線
源に対面するように設置しなければならない。Rresの測定では,様々な厚さの吸収体を検出器のすぐ前に
設置しなければならない。吸収体は,ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリスチレン,ポリエチレ
ン,ポリエチレンテレフタレート(PET)又はこれらに等価な物質を使う。Rresを決定するときには,測定
に用いる検出器の窓の厚さを考慮しなければならない。
ビームフラッタニングフィルタを使用する線源,すなわちシリーズA標準場(4.3.2.2参照)の場合には,
Rresの測定のとき,ビームフラッタニングフィルタは,規定する位置になければならない。
検出器からの信号は,吸収体の厚さ(mg・cm−2)の関数として決定しなければならない。信号をプロッ
トした片対数グラフを描かなければならない。
Rresは,測定した信号対厚さのグラフにおける,線形部分への外挿と残留光子に起因する低レベル信号
との交差として定義する。
Eresは,β線スペクトロメータ,例えば,Si(Li)半導体検出器を使うことによっても決定することがで
きる(ICRU56[5]参照)。表2のEresの条件を満たす標準場について測定したβ粒子スペクトルの例を図1
に示す。90Sr+90Yのスペクトルは,厚い線源窓によって90Yからのβ線だけで構成されている。ICRU56[5]
に,計算による多数のβ線スペクトルが示されている。
――――― [JIS Z 4514 pdf 11] ―――――
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1.0 1.0
0.8
相対値)
0.8
相対値)
0.6
粒子数(
0.6
粒子数(
0.4 0.4
0.2 0.2
0.0 0.0
0 20 40 60 80 100 120 140 160 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500
エネルギー (keV) エネルギー(keV)
a) b)
図1 a)において,一点鎖線は14C(シリーズB),実線は147Pm(シリーズA),図1 b)で実線は204Tl及び85Kr(シリー
ズA),破線は90Sr+90Y(シリーズA),点線は106Ru+106Rh(シリーズB)を示す。これらのスペクトルは,実効的に
ウィンドウレスの非冷却式Si(Li)半導体検出器で測定する。縦軸は,それぞれフルエンスの最大値を1として正規化
しているが,装置の分解能及び検出器の後方散乱による損失の補正は行っていない。シリーズA標準場については,そ
れぞれ表3に規定した校正距離においてビームフラッタニングフィルタを用いている。シリーズB標準場については,
校正距離は10 cmである。
図1−標準β線場のβ粒子スペクトルの例
4.3.1.3 不純物によるβ線の混在
放射線源の核種は,十分な放射化学的純度のものであることが望ましい。β線放出の不純物の存在を確
認することは困難であるが,高分解能のスペクトロメータ,例えば,Ge検出器とスペクトロメータシステ
ムとを使い,付随する光子を検出することによって,その存在を推測することが可能である。β線が次の
条件a)及び条件b)を満たす場合は,他のエネルギーのβ線の混入が少なく,標準放射線として用いるのに
十分な純度であるとみなす。
a) res測定に用いたグラフが線形部分をもつ(4.3.1.2参照)。
b) resが,表2で規定された下限値以上,かつ,Emax(表1参照)以下である。
注記 EresがEmaxを超える場合には,その線源は,標準場を形成する核種より高いエネルギーの粒
子を放出する不純物を含むので,4.1.2の要求事項に適合しない。
Rres及びEresは,2年ごとに測定しなければならない。
4.3.1.4 光子の混在
β線標準場には,表1に示した放射性核種の崩壊による光子,線源カプセルの材料(典型的には,銀又
はステンレス鋼)からの制動放射及び特性X線による光子が混在する。光子の混在が測定に影響するかど
うかは,光子に対する感度,すなわち,β線標準場に置いた検出器の形式に依存する。標準器への光子の
寄与は,校正を行う前に,それぞれの検出器の形式及び放射性核種ごとに,測定しなければならない。こ
の測定の内容は,次のa) 及びb) に従わなければならない。
a) 4.3.1.2に挙げた物質で作られた,β線を吸収するのに十分厚い吸収体を用いる(表A.1参照)。
b) 吸収体がある場合とない場合との信号の比較によって,光子の寄与を見積もる。
4.3.2 β線標準場の特徴
4.3.2.1 概要
β線標準場に適した線源の構造の詳細を,一例として附属書Bに示す。
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4.3.2.2 シリーズA標準場
照射野の広い範囲にわたって均一な線量率が要求される場合は,表3に規定する線源と,適切なビーム
フラッタニングフィルタとを一緒に使い,校正距離において最小でも直径15 cmの線量率が均一な領域を
生成しなければならない。このフィルタは,線源面に直交する軸上に設置しなければならない。
それぞれの核種において,試験点の線量率は,異なる放射能の線源を使って変化させなければならない。
上記の領域における線量率の変化は,90Sr+90Y,85Kr,204Tlについては±5 %,147Pmについては±10 %で
なければならない。これは面積が約1 cm2の,レスポンスがβ線エネルギーに依存しない検出器を用いて
確かめることができる。このような検出器の一例として薄窓平行平板電離箱がある。
照射野の線量率の均一性は,与えられたフィルタの構造に対して,決まった距離についてだけ最適化さ
れている(ICRU56 [5]参照)。
表3にシリーズA標準場について,校正距離及びフィルタの構造の例の詳細を示す。表4に単位放射能
当たりのおおよその線量当量率を示す。
線源の最大直径は16 mmを推奨する。
注記 シリーズA標準場は,ISO 6980-1:2006で規定するSeries 1 reference beta-particle radiation fields
と同等である。
表3−シリーズA標準場の校正距離及びビームフラッタニングフィルタ
核種 校正距離 線源とフィルタ フィルタの素材及び構造
との間の距離
cm cm
147Pm
半径5 cm,質量厚14 mg・cm−2のPET製の円盤で,中央に半径
20 10
0.975 cmの穴があいているもの。
85Kr及び204Tl
半径4 cm,質量厚7 mg・cm−2及び半径2.75 cm,質量厚25 mg・cm−2
30 10
のPET製の円盤各1枚を,同心円状に重ねたもの。
90Sr+90Y
半径2 cm,半径3 cm,半径5 cmで,質量厚が25 mg・cm−2のPET製
30 10
の円盤各1枚を,同心円状に重ねたもの。
表4−シリーズA標準場の校正距離における単位放射能当たりの
おおよその方向性線量当量率
単位放射能当たりの
核種 おおよその方向性線量当量率
μSv・h−1・MBq−1
147Pm
3
85Kr
49
204Tl
58
90Sr+90Y
78
4.3.2.3 シリーズB標準場
高い線量率が要求される場合は,表3に規定する線源,ビームフラッタニングフィルタ及び校正距離の
組合せ以外の標準場を使うことができる。例えば,高い放射能の点線源及び薄いシート状の線源を利用す
ることができ,これらの線源はビームフラッタニングフィルタとともに使う必要はない。これらは線源表
面から表5に規定した距離までで使うことが望ましい。薄いシート状の線源による測定例は,参考文献[6]
参照。
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校正距離が表5に示す距離よりも長い場合は,空気減衰のため,Eresが表2の値と同じかそれ以上であ
ることを確かめることが特に重要である。
シリーズA標準場について規定する校正距離より短い校正距離を使うと,高い線量率が得られるが,β
線場の均一性は低くなる。
照射野の不均一性は,校正に使用する距離で測定するのが望ましく,4.1.4の値を超えている場合は,測
定器の校正において補正することが望ましい。表5に示した距離は,規定した線源について通常用いられ
る最大の校正距離である。
シリーズB標準場は,14C及び106Ru+106Rhが追加されている。これらは,シリーズA標準場のエネル
ギーの範囲外での校正が要求されるときに用いる。
参考として,シリーズB標準場において得られる,おおよその線量率の例を表5に示す。
注記 シリーズB標準場は,ISO 6980-1: 2006で規定するSeries 2 reference beta-particle radiation fields
と等価である。
表5−シリーズB標準場の放射能と線量率との例
線源の特徴 線量当量率 Sv・h−1
公称放射能 公称線源面積 線源表面におけ 校正距離における典型値
核種
MBq cm2 る推定値a) 典型値 校正距離
14C
1 9 0.6 0.006 5 cm
147Pm
102 25 3 0.003 20 cm
85Kr
102 14 10 0.003 50 cm
90Sr+90Y
103 0.7 700 0.03 50 cm
106Ru+106Rh
102 1.5 6 0.001 100 cm
注a) 表面線量率は,線源の表面積より小さい検出器で測定するのが望ましい。
4.3.2.4 シリーズC標準場
4.3.1の要求事項を満たす線源の前に,PMMAなどの組織等価物質で作られた付加フィルタを設置して
Eresを低下させた標準場を利用することができる。付加フィルタはできるだけ線源に近い位置に設置する
のが望ましい。付加フィルタの厚さは,要求されるEresと,線源及び線源から校正距離までの空気層を考
慮して決定する。
照射野の不均一性は,校正に使用する距離で測定するのが望ましく,4.1.4の値を超えている場合は,測
定器の校正において補正することが望ましい。
注記 シリーズA標準場(4.3.2.2),シリーズB標準場(4.3.2.3)で規定する,ビームフラッタニング
フィルタの使用及び校正距離に関する要求事項は,シリーズC標準場には適用しない。
4.4 線源の校正
放射線防護用の線量計の校正において推奨する物理量は,3.8及び3.9に規定する。校正で用いるファン
トム及び条件については,箇条6及び8.3に規定する。ビームフラッタニングフィルタによって生成する
シリーズA標準場では,表3で規定した距離及びフィルタの構造に限り,照射野の線量率の均一性を最適
化できる。校正は,この距離で行わなければならない。
シリーズB標準場及びシリーズC標準場では,校正距離又は線源面積が大きくない限り,均一な線量率
の範囲が比較的小さいことに留意して,ある範囲の距離にわたって校正することができる。線量率の均一
性を検出器の範囲にわたって確認し,必要な場合は補正することが望ましい。
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基準とする放射線源から組織吸収線量率を決定する場合,次のいずれかの方法によらなければならない
(ICRU56 [5]参照)。
a) 国家計量標準機関によって参照吸収線量率が決定された放射線源を用いる。
b) 校正を行うのに適した仲介用の測定器を用い,国家計量標準機関又は他の一次若しくは二次校正機関
によって校正された同様の線源と比較する。
5 β線標準場の校正方法
5.1 β線標準場の校正に関するトレーサビリティ
この規格に従った校正を行うために構築した標準場の吸収線量率は,国家計量標準にトレーサビリティ
がなければならない。
仲介標準を用いることで,トレーサビリティを確保できる。
放射線源又は承認された仲介用の測定器を仲介標準とすることができる。
標準場の校正は,厳密には,校正を行ったまさにその時だけ有効であり,その後は,例えば,放射線源
の半減期,同位体組成比に基づき,標準場における線量率について,時間経過に伴う減衰を評価しなけれ
ばならない。
β線測定器の校正を行う校正機関で用いる校正手法は,国の規制に従った承認が必要な場合がある。
この場合,その校正機関は,国の承認部署又は機関によって承認された参照校正機関及びその校正機関
自身によって,その校正機関が日常的に業務として校正する測定器と同じ又は類似したタイプの測定器を
校正しておかなければならない。この校正はその校正機関自身及び参照校正機関においてそれぞれ独自の
承認された校正方法によらなければならない。トレーサビリティが確保されていることを示すには,その
校正機関は,参照校正機関が取得した校正定数に,許容範囲内で一致する校正定数を得ることが望ましい。
この範囲は,その校正機関,参照校正機関などの合意に基づいて決定する。ただし,国家計量標準機関が
校正した線源及び線源ホルダーを,当該校正機関がその組合せのまま使用する場合は,国家計量標準に対
してトレーサビリティがあることを十分保証できる。
標準場の校正の頻度は,次の校正までの期間中に,標準場の値が仕様から外れないように設定するのが
望ましい。仲介用の測定器の校正,及び校正機関が用いる測定技術の確認は少なくとも5年ごと,又は校
正施設の環境に大きく変化があったとき,若しくは国の規制が求める頻度で実施するのが望ましい。
β線源を用いたβ線標準場で校正する場合には,トレーサビリティは,次のいずれかによらなければな
らない。
a) その参照吸収線量率が参照校正機関によって決定されている線源を用いる。
b) 参照校正機関で校正された合意に基づく仲介用の測定器を用いて,測定器の試験点における参照吸収
線量率を決定する。
この規格に基づく校正を含むトレーサビリティの体系は,参考として附属書JAに示す。校正に用いる
器具の性能は,附属書JBに示す。
5.2 β線標準場校正の一般原理
5.2.1 概要
β線に起因する場及び個人にかかわる線量の測定は,皮膚上の不均一性及び線量の深さによる変化のた
め,一般に困難である。あるβ線場におけるファントム内の点における吸収線量率を正確に測定するため
には,ファントムを構成する物質と,吸収散乱の性質とが非常によく似た,とても小さな検出器が必要で
――――― [JIS Z 4514 pdf 15] ―――――
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JIS Z 4514:2010の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 6980-1:2006(MOD)
- ISO 6980-2:2004(MOD)
- ISO 6980-3:2006(MOD)
JIS Z 4514:2010の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.240 : 放射線測定
JIS Z 4514:2010の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ4001:1999
- 原子力用語
- JISZ4331:2005
- 個人線量計校正用ファントム
- JISZ8103:2019
- 計測用語
- JISZ8202-10:2000
- 量及び単位―第10部:核反応及び電離性放射線
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方