この規格ページの目次
13
Z 4514 : 2010
あるが,理想的な検出器は存在しない。そのため検出器の大きさと構成物質とについてはスケールファク
タ及び透過係数の概念を利用して補正する。
5.2.2 透過性に関する標準場の特徴
透過係数は,β線標準場の重要なパラメータである。吸収線量率を測定するのに用いる検出器の厚さは
有限であるため,校正に先立って透過力の観点から標準場の特徴を知る必要がある。物質を透過するに従
って場のβ線のエネルギーフルエンスは変化するので,エネルギーフルエンスが変化しても感度が影響を
受けない検出器を使って,相対線量を物質の深さの関数として決定しなければならない。このために,相
対線量−深度関数は,薄膜空気電離箱(検出部の深さ2 mm以下)によって決定しなければならない。こ
の決定をするための外挿電離箱を用いた手法は参考文献[7]を参照。相対線量−深度関数は,線源と基準点
との間の空気の密度の変化に伴う参照β線吸収線量率からの変化の補正に用いることができる。
厚い検出器の場合には,検出器の有効体積全体で平均化された吸収線量率を測定していることに注意を
要する。
5.3 外挿電離箱を用いた校正方法
5.3.1 一般
外挿電離箱は,β線場の線量率を測定するための標準器であり,平行平板形の電離箱で,一方の電極を
他方の電極側へ動かすことで電離体積を変化できるように作られている。典型的なものでは,入射窓が高
圧電極を兼ね,固定されており,集電極が動くように作られている。入射窓は,導電性をもったプラスチ
ックの薄膜でできている。入射窓は,β線を過度に吸収するほど厚すぎてはならないが,電場をかけたと
きに接地した集電極に引かれる影響で変形しない強度を保持する必要がある。集電極は,アースレベルに
維持されており,電離体積の断面積を規定する。集電極は,導電性の物質又は導電性のコーティングをし
た物質で作る必要があり,周囲の保護電極と絶縁する。絶縁体の厚さは電場を乱さない程度に薄くする。
また,集電極と高圧電極との距離を正確に測定するための装置を組み込む必要がある。正負両極の直流電
圧を発生できる電源及び低ノイズ微小電流計が電流測定に必要である。
5.3.2 外挿電離箱を用いた参照吸収線量率の決定
外挿電離箱を用いてβ線組織吸収線量率を求めるには,一般に式(9)によって求める。
W0 I (9)
Dt st, a
e ma BG
ここに, I : 電離電流の増加量
ma : Bragg-Gray条件における電荷収集領域の空気の質量の増
加量
β線の測定においてはBragg-Gray条件は現実的でないので,参照吸収線量率は,式(10)によって求める。
(W0 / e) t,a
d
DR kk'I(l) (10)
a0 a dl l 0
ここに, (W0/e) : 推奨値は33.83±0.06 J・C−1である。
ρa0 : 基準条件の空気の密度
a : 集電極の有効面積
d : 極板間隔lと補正電流値の傾きとの関数に対す
kk'I(l)
dl l 0
るl=0における極限値
st,a : st/sa
st : 組織に対する電子の平均質量阻止能比
sa : 空気に対する電子の平均質量阻止能比
k' : 極板間隔に依存しない各補正係数の積
――――― [JIS Z 4514 pdf 16] ―――――
14
Z 4514 : 2010
k : 極板間隔に依存する各補正係数の積
5.4 他の測定装置による校正方法
極板間隔が数ミリメートル以下で電離体積が固定の平行平板電離箱をEmaxが200 keV以上のβ線標準場
の校正に用いてもよい。より厚い検出器は,Emaxが1 MeV以上だけに適している。標準場において校正さ
れている場合は,固定体積電離箱を基準測定器として用いることができる。電離箱の後方の壁が十分な後
方散乱を生成できない程度の厚さの場合(1 cm以下の場合)は,ファントムを用いて測定するのが望まし
い。
6 β線測定器一般の校正方法
6.1 一般
6.1.1 線質
線源の選択は,次による。
a) 箇条4において三つのシリーズの標準場を規定している。シリーズA標準場では,例えば,エリアモ
ニタの校正及び多数の個人線量計の同時校正のために,直径15 cmの円の面積にわたって均一な線量
率を作り出すビームフラッタニングフィルタを用いる。校正距離,線源とフィルタとの間の距離,フ
ィルタの素材及び構造は,箇条4の規定による。この規定は,必ず守らなければならない。
b) シリーズB標準場は,シリーズA標準場の線量率・エネルギーを拡大できる利点をもち,ビームフラ
ッタニングフィルタを使わずに作ることができる。校正及びレスポンスの決定は,用いた標準場と校
正距離とを指定しなければならない。
c) β線の校正業務のために各校正機関で用途に合わせ,独自の線源と幾何学配置との組合せによる標準
場が設定される可能性があるが,二次校正機関は少なくとも,シリーズA標準場の線源を利用できる
ことが望ましい。これらの標準線源は,試験所間比較試験(JIS Q 17025 [8]参照)ができるような,
首尾一貫した,再現性がある結果を与える。
d) 標準場の線量測定は,箇条5に従って行わなければならない。
106Ru+106Rh以外のすべての線源から作られるβ線標準場は,線源自身及びその周囲の線源カプセル
e)
からの制動放射を除く光子の影響を受けないことが経験的に知られている。106Ru+106Rhは,放出さ
れるβ線粒子の最大エネルギーが高いために用いる。小さい自己吸収で,薄い窓のβ線源だけが箇条
4に規定した内容を満たすことができる。これは,校正距離におけるEresが規定した値よりも大きな
値になる必要があるからである。
6.1.2 吸収線量−線量当量換算係数
6.1.2.1 一般
3.11及び3.12によると,式(1)又は式(2)に従って,吸収線量−線量当量換算係数を用いて,参照吸収線
量DRから線量当量H(0.07;source; α)を計算する必要がある。ここに,Hは,β線場においてH′及びHp
に等価である。標準器を用いて,試験点の距離における参照吸収線量DRを測定する必要がある。空気と
ビームフラッタニングフィルタとによってβ線が散乱するために,実際のβ線場は,単一方向とはいえな
い。したがって,上記のαは,ある未知の分布の平均の角度にすぎない。h′D(0.07; source; α)は,任意の
放射線場(放射線源のタイプ,ホルダー及び周囲の構造物)及び任意の距離について,個々に求める必要
がある。
6.1.2.2 換算係数の決定
換算係数は,線質係数(β線の場合は1)と角度依存係数との積によって表す。入射角0°における換算
――――― [JIS Z 4514 pdf 17] ―――――
15
Z 4514 : 2010
係数は,この規格で推奨する線源については,1 Sv・Gy−1とみなす。換算係数の角度依存性,すなわち角
度依存係数は,参照吸収線量DRの測定に用いた装置と同じ装置を用いて測定することができる。通常は,
外挿電離箱を用いる。角度依存係数は,角度αにおいて測定した吸収線量の角度0°における測定した吸
収線量に対する比によって求める。例として,市販のβ線照射装置によって標準場について求めた換算係
数を附属書Dに示す。
6.1.2.3 換算係数のファントムによる違い
8.3.1にPWファントム,ISO水ピラーファントム及びISO PMMAロッドファントムの3種類のファン
トムを規定する。入射角度が0°60°の範囲では,ファントム間での換算係数の違いを無視できる。し
たがって,60°までは,PWファントムに関して測定した換算係数を,他のすべてのファントムに対して
用いることができる。より大きな角度(α>60°)においては,より高いエネルギー(ロッドファントム
に対してE>350 keV)では,測定点に直接到達する放射線に起因するファントムによって換算係数の違い
が生じる。
6.1.3 標準試験条件
校正及びレスポンスの決定は,標準試験条件下で遂行しなければならない。標準試験条件に含まれる影
響量の許容範囲は,表C.1及び表C.2に示す。
6.1.4 影響量の変化
レスポンスへの一つの影響量の変化の効果を決定する測定について,他の影響量は,記載がない限り標
準試験条件の範囲内で固定するのが望ましい。
注記 本来は,線量又は線量率に対する応答が本質的には線形であるという条件の下で,機器の試験
を行うのが賢明であるが,試験中の機器の指示値Mが一定であることを保ちながら,一つの影
響量を変化させることが重要な場合がある。例えば,ある程度の不感時間がある線量率の範囲
で,線量計のエネルギー依存性を調べたい場合は,“指示値が一定になるように線量率を変化さ
せる。”という条件で様々な放射線にかかわる量を測定することが望ましい。同じことが,ある
線量以上になると単位吸収線量当たりの発光量が増大する,熱ルミネセンス線量計についても
当てはまる。
6.1.5 試験点及び基準点
測定は,線量計の基準点を試験点に設置することによって行う。試験を行おうとしている線量計の基準
点又は基準方向についての情報が欠如している場合には,これらのパラメータは,使用者と試験所(JIS Q
17025 [8]参照)との協議の上,試験所において決定する。これらは,試験証明書に記載しなければならな
い。
注記1 試験点に線量計の基準点を設置することは,二つの現実的な利点がある。第一に,線源から
くる一次放射線に起因する線量が,ビーム拡散の範囲にかかわりなく,常に正確に測定でき
る。β線の場合,一次放射線に起因する線量は常に,ファントムからの散乱を含んだ全体の
線量に対して大部分を占める。これは,線量計の校正定数が線源と試験点との間の距離にあ
まり依存しないということを暗に示している。第二の利点は,角度応答の測定において現れ
る。基準点と試験点とが一致していると,試験中の線量計の読取値を,線源と基準点との間
の距離の回転角に応じた変化に対して補正する必要がない。
注記2 携帯形方向性線量当量(率)測定器が,線源から検出器までの距離が検出器の体積の大きさ
に比較して短い条件で使われる場合は,検出器内の放射線場は不均一である。このような条
件下での携帯形方向性線量当量(率)測定器の読取値は,検出器内のエネルギー付与率の平
――――― [JIS Z 4514 pdf 18] ―――――
16
Z 4514 : 2010
均値である。この読取値は,入射窓の表面の実際の線量当量率よりも有意に小さい。
6.1.6 回転軸
放射線の入射方向の影響を調べる場合には,線量計又は線量計とファントムの統一体の回転が必要とな
る。放射線の入射方向に対するレスポンスの変化は,少なくとも互いに直交する2方向で測定しなければ
ならない。回転軸は,線量計の基準点を通らなければならない。
6.1.7 校正する線量計の条件
校正に先立って,線量計が正常に動作し,サービスを提供できる状態であり,放射性物質によって汚染
していないことを確認しなければならない。線量計のセットアップの手順及び動作モードは,装置の手順
書によらなければならない。
6.1.8 光子の影響の測定
多くのβ線用線量計は,光子に対しても応答するため,β線標準場による校正に先立って,光子に対す
る感度を測定するのが望ましい。線量計の光子に対するレスポンスの補正は,H't(0.07;→Ω)に対するレス
ポンスと比較して行うのが望ましい。検出器の10 cm程度前方の線源との間に,10 mm厚のPMMAフィ
ルタを設置したとき及び設置しないときの線量計のレスポンスを測定することで,光子の影響を測定する
ことができる。フィルタによる光子吸収は,補正を要するが,高エネルギー(E>100 keV)では補正量は
小さい。10 mm厚のPMMAフィルタは,2 MeV以下の電子だけを除去する。別のPMMAフィルタを追加
して測定を行うことでさらなる情報が得られる。
6.2 校正定数及び補正係数の決定
6.2.1 標準器による参照吸収線量率の決定
β線標準場の線量測定を箇条5に示す。一般に,参照吸収線量率・
DRは外挿電離箱で測定する。放射能減
衰補正を行わなければならない。
6.2.2 基準校正定数の決定及び非線形レスポンスの補正
基準校正定数N0は,測定量の基準値,Ht,0について求める。非線形レスポンスに対する補正係数は
kn=N /N0で与えられる。
6.2.2.1 個人線量当量(率)測定器の校正定数
この規格で用いるファントムの表面に装着した入射角0°の個人線量当量(率)測定器の校正定数Nは,
式(11)によって求める。
Hp,t .0(07)
N (11)
Mr
ここに, Mr : 被校正測定器の基準条件における正味の指示値
Hp,t(0.07) : hp,D (0.07; source,0°) DR
DR : 参照吸収線量
hp,D(0.07; source, 0°) : 用いた線源・条件に対する換算係
数(3.12及び6.1.2参照)。この規
格で扱う線源及びファントムに
ついては,1 Sv・Gy−1とみなす。
6.2.2.2 方向性線量当量(率)測定器の校正定数
自由空気中の入射角0°の方向性線量当量(率)測定器の校正定数Nは,式(12)によって求める。
Ht .0(070; )
(pdf 一覧ページ番号 )
N
Mr
ここに, Mr : 被校正測定器の基準条件における正味の指示値
H′t(0.07;0°) : h′D(0.07; source, 0°) R
――――― [JIS Z 4514 pdf 19] ―――――
17
Z 4514 : 2010
DR : 参照吸収線量
h′D(0.07; source,0°) : 用いた線源・条件に対する換算
係数(3.11参照)。この規格で扱
う線源については,1 Sv・Gy−1
とみなす。
6.2.2.3 組織吸収線量(率)測定器についての校正定数
自由空気中の入射角0°の組織吸収線量(率)測定器の校正定数Nは,式(13)によって求める。
Dt .0(07) R (13)
N
Mr Mr
ここに, Mr : 被校正測定器の基準条件における正味の指示値
DR : 参照吸収線量
Dt(0.07) : 参照吸収線量DR
6.2.3 補正係数kE,αの決定
(平均)β線エネルギーE,β線の(平均)入射角度αについての補正係数,kE,α及びk'E,αは,個人線量
当量(率)測定器及び方向性線量当量(率)測定器について各々式(14)及び式(15)によって求める。
) DR
hp,D .0(07;source;
k,E (14)
N M.0(07; E; )
) DR
hD .0(07; source;
kE , (15)
N M.0(07; E;)
ここに, M(0.07;E;α) : (平均)β線エネルギーE,β線の(平均)入射角度α
の条件における被校正測定器の正味の指示値
基準条件からのずれは,適切な補正係数kqで補正しなければならない。
注記 線量計の基準条件でのレスポンスに対する相対レスポンスは,補正係数kE,αの逆数である。相
対レスポンスを縦軸に,β線エネルギーE又は入射角αの関数として図示すると,レスポンス
の変化を視覚的にとらえるのに役立つ。
7 方向性線量当量(率)測定器の校正方法
7.1 一般
この校正方法は,携帯形又は据付形の方向性線量当量(率)測定器の標準場における校正に適用する。
方向性線量当量(率)測定器は,能動形及び受動形の両方を含む。これは,据付形方向性線量当量(率)
測定器の据付状態における校正には適用しない。方向性線量当量(率)測定器は,自由空気中(ファント
ムなし)で照射される。
7.2 測定量
方向性線量当量(率)測定器について,測定量は,方向性線量当量H't(0.07;→Ω)でなければならない。
8 個人線量当量(率)測定器の校正方法
8.1 一般
この校正方法は,個人線量当量(率)測定器,すなわち,全身用線量計及び末端部用線量計の校正に適
用する。照射は,ファントムに装着して行う。
8.2 測定量
個人線量当量(率)測定器について,測定量は,個人線量当量Hp(0.07)でなければならない。
8.3 実験条件
――――― [JIS Z 4514 pdf 20] ―――――
次のページ PDF 21
JIS Z 4514:2010の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 6980-1:2006(MOD)
- ISO 6980-2:2004(MOD)
- ISO 6980-3:2006(MOD)
JIS Z 4514:2010の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.240 : 放射線測定
JIS Z 4514:2010の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ4001:1999
- 原子力用語
- JISZ4331:2005
- 個人線量計校正用ファントム
- JISZ8103:2019
- 計測用語
- JISZ8202-10:2000
- 量及び単位―第10部:核反応及び電離性放射線
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方