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8.3.1 ファントムの使用
個人線量当量(率)測定器の校正,補正係数kE,αの測定,放射線エネルギーと入射角度との関数として
のレスポンスの測定は,適切なファントムを用いて行うのが望ましい。これらのファントムの仕様を次に
記載するとともに,附属書Cに規定する。
校正は,全身用線量計についてはJIS Z 4331に規定するファントム,末端部用線量計についてはISO
PMMAロッドファントム又はISO水ピラーファントムを用いて行うのが望ましい。
β線については10 cm以上×10 cm以上×1 cm以上の固体PMMAファントムをPWファントムの代替品
にできる。ISO PMMAロッドファントムは,指用線量計の校正のための,直径19 mmのPMMAで作った
ものである。ISO水ピラーファントムは,手首用線量計又は足首用線量計の校正のための,PMMAの直径
73 mmの円柱(側面2.5 mm厚,底面10 mm厚)を水で満たしたものである。環境モニタリングのための
線量計は,自由空気中で照射する。
これらのファントムを上記のように使うとき,試験中の線量計の指示値に対してICRU組織スラブと上
記のファントムとの間に存在し得る後方散乱の性質の違いに起因する補正をしてはならない。
適切なファントムに装着した線量計に照射して,個々の線量計を手順どおりに校正することは,確立し
た方法である。例えば,片側の長さが300 mm以上で,厚さが150 mm以上の固体PMMAスラブを平面の
線量計に用いること,又は300 mm以上の長さ,73 mmの直径の円柱のPMMAを手首用線量計若しくは足
首用線量計の校正に用いることである。β線に関しては,固体のPMMAファントムは,PWファントム又
はISOファントムと等価である。
日常的な校正を常にファントム上で行う必要はなく,単純化した方法として,より簡単に自由空気中で,
又は線量計で測定しようとしている放射線ではない,他の種類の放射線で校正することもできる。これら
の単純化を適用する場合には,前もって,規定どおりの方法によって結果と同一の結果が導かれることを
実証するか,結果の違いを信頼できる方法で補正することによって,単純化した手法の正当性を示さなけ
ればならない。これは,形式検査の結果,及び線量計の重要な要素の一貫性に関する製品の性能検査に基
づいて行うことができる。この校正方法については,附属書JCに示す。線量計の重要な要素とは,例え
ば,熱ルミネセンス線量計における蛍光体をカバーするフィルム及びその蛍光体の大きさである。
8.3.2 拡散ビームに関する考慮
測定面における照射野のサイズが,ファントムの前面のすべてに照射されるよう十分大きくなるように,
試験点の線源からの距離を選ばなければならない。試験点における線量値は,標準器の基準点を試験点に
設置して決定するか,前もって線源を校正しておいた値を用いる。被校正器物である線量計の基準点は,
試験点に設置し,その基準方向は指示された入射方向の角度αに向ける。末端部用線量計は,身体に取り
付けるのと同様にファントムに取り付ける。スラブファントムは,線量計の後側をファントムの前面に接
するように取り付け,ビーム軸に対して指示された角度αに設置する。試験中の線量計への照射は,標準
器に照射した条件と,ファントム使用の有無を除き同一である。校正定数,エネルギーの値又は角度応答
は,6.2.2及び6.2.3の式によって求めなければならない。
注記1 箇条8において,個人線量当量(率)測定器及びファントムの統一体を,試験する線量計と
みなす。統一体の基準点は,線量計の基準点である。測定した値は,線量計を装着していな
い基準ファントムの内部深度0.07 mmの線量当量の値となる。
注記2 この概念は,Hpの定義と一貫している。少なくとも原理的には,Hpの定義は,体内の容易に
接近できない点での線量当量の決定を要求している。試験点に線量計の基準点を設置するこ
とは,二つの現実的な利点がある。第一に,線源からくる一次放射線に起因する線量を,ビ
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ーム拡散の範囲にかかわりなく,常に正確に測定できる。β線の場合,一次放射線の線量は
常に,ファントムからの散乱を含んだ全体の線量に対して大部分を占める。これは,線量計
の校正定数が線源と試験点との距離にあまり依存しないということを暗に示している。第二
の利点は,角度応答の測定において現れる。基準点と試験点とが一致していると,試験中の
線量計の読取値を,線源と基準点との間の距離の回転角に応じた変化に対して補正する必要
がない。
注記3 スラブファントムに装着して照射する場合には,ファントムを一つの軸周りだけで回転させ,
線量計をファントム表面で互いに直交する二つの向きに置くことが現実的である。
8.3.3 複数の線量計に対する同時照射
複数の線量計を同時に照射する場合,次の二つの効果についても注意する。
a) 複数の線量計をファントムの表面に設置すると,一次放射線が線量計を通過するために減衰によって
後方散乱が減少する可能性がある。
b) 線源から基準点の距離が異なる可能性がある。
同時照射を採用するに先立って,一つの線量計を,ファントムの中央に設置し,単独で照射して得られ
た結果と±2 %で一致していることを確かめなければならない。シリーズA標準場の適切なフィルタを使
用すると,ファントムの表面にわたって,均一な照射野が得られる。
入射角の関数として複数の線量計のレスポンスを同時に決定する場合には,線量計の基準点は回転軸上
に設置しなければならない。
9 組織吸収線量(率)測定器の校正方法
9.1 一般
この校正方法は,組織吸収線量(率)測定器の標準場における校正に適用する。組織吸収線量(率)測
定器は,自由空気中(ファントムなし)で照射される。
9.2 測定量
組織吸収線量(率)測定器について,測定量は組織吸収線量Dt(0.07)でなければならない。
10 校正結果の記録
測定器の校正結果は,記録用紙に記入し,その内容は次による。記録又は校正証明書は,少なくとも次
の項目を含まなければならない。
なお,数値の丸め方は,JIS Z 8401による。
a) 校正年月日,校正場所
b) 線量計の形式及び製造番号
c) 線量計の所有者
d) 校正に用いた線源の詳細(例えば,シリーズ名)及び標準器
e) 基準条件並びに校正条件及び/又は標準試験条件
f) 測定値を求める式及びすべての補正係数の数値
g) 校正結果
h) 校正を行った作業員の氏名
i) その他の所見
j) 不確かさの記述
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11 校正定数の不確かさの求め方
不確かさの記述は,不確かさのバジェット表を用いるなど,ISO/IEC Guide 98-3による。次の不確かさ
の要因を考慮しなければならない。
a) 校正証明書から得た取決め真値の不確かさ
b) 標準器及び試験器の設定位置の不確かさ
c) ビームの拡散及びビームフラッタニングフィルタの効果に起因する,測定面におけるビームの断面積
の不均一性による不確かさ
d) 複数の線量計に同時に照射することに起因する不確かさ
e) 簡略化した校正手順に起因する不確かさ(適用する場合,8.3.1参照)
f) 線源減衰補正の不確かさ
g) 標準器の応答の長時間の変動による不確かさ
h) 気温,気圧,湿度の補正又は補正しないことに起因する不確かさ
i) 他の放射線に起因する不確かさ
j) 非線形性,重力の装置への影響,装置の正確さなどに起因する,校正する装置に由来する不確かさ
k) 時間の誤差に起因する線量の不確かさ
――――― [JIS Z 4514 pdf 23] ―――――
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附属書A
(参考)
組織等価物質
採用した軟組織の元素組成比は,ICRU39[1]及びICRU44[2]を参照。軟組織及び通常組織等価物質として
使われる他の物質の密度及び元素組成比を,表A.1に示す。
表A.1−組織等価物質
物質 密度 単位体積当た 元素組成比(質量%)
りの電子数 H C N O その他
g・cm−3
軟組織 1.00 331 10.1 11.1 2.6 76.2 −
ポリエチレン 0.92 316 14.4 85.6 − − −
グラファイト 1.70 511 − 100 − − −
ポリエチレンテレフタレート 1.40 439 4.2 62.5 − 33.3 −
(PET)
ポリメチルメタクリレート 1.19 380 8.0 60.0 − 32.0 −
(PMMA)
ポリスチレン 1.05 340 7.7 92.3 − − −
A150 プラスチック 1.12 370 10.1 77.7 3.5 5.2 1.7 (F)
1.8 (Ca)
――――― [JIS Z 4514 pdf 24] ―――――
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附属書B
(参考)
推奨される線源の特徴−β線源の構造の例
校正に適した特徴をもつβ線標準場を構成するβ線源の構造の例を,表B.1に示す。これらの線源につ
いてEres の容認できる測定値を併せて示す。放射性物質の均一性は,オートラジオグラフィで調査するの
が望ましい。
表B.1−β線源の構造の例
核種 核種を含む化合物名又 窓材 窓厚 残留最大
は化学種の状態 エネルギー(Eres)の
下限値
mg・cm−2 MeV
14C
PMMA-14C PMMA-14C なし 0.09
147Pm
炭酸プロメチウム チタン 2 0.13
85Kr
気体 チタン 22 0.53
204Tl
クロム酸タリウム 銀 20 0.53
90Sr+90Y
炭酸ストロンチウム ステンレス 80 1.80
106Ru+106Rh
金属ルテニウム 銀 50 2.80
――――― [JIS Z 4514 pdf 25] ―――――
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JIS Z 4514:2010の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 6980-1:2006(MOD)
- ISO 6980-2:2004(MOD)
- ISO 6980-3:2006(MOD)
JIS Z 4514:2010の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.240 : 放射線測定
JIS Z 4514:2010の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ4001:1999
- 原子力用語
- JISZ4331:2005
- 個人線量計校正用ファントム
- JISZ8103:2019
- 計測用語
- JISZ8202-10:2000
- 量及び単位―第10部:核反応及び電離性放射線
- JISZ8401:2019
- 数値の丸め方