JIS A 1486:2014 発泡プラスチック系断熱材の熱抵抗の長期変化促進試験方法 | ページ 3

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附属書A
(参考)
解析モデル
A.1 促進経年変化
長期断熱性能の測定を目的として,幾つかの促進試験方法が何年かにわたり開発されてきた。このよう
な試験方法の一部は,国によっては国内規格に既に組み込まれている。一般に,こうした試験方法では,
一定に制御された高温又は室温で状態調節した均一な厚さ(25 mm以上)の試験片の熱抵抗を,初期,す
なわち,ゼロ時点から一定の時間間隔で測定を行う。昇温する場合,温度は規格によって異なり,60 ℃
100 ℃の幅をもち,試験期間も10日90日と異なる。また,室温で180日以上の測定を条件とする規格
もある。
試験片の長期熱抵抗は,幾つかの数学モデルを基に熱抵抗の経時変化の曲線を外挿して算出する。特に,
この10年間に,様々な複雑なモデルが開発されてきた。そうしたモデルは,経年変化プロセスに対する理
解を深めるとともに,求めた長期熱抵抗値の不確実さをある程度解消する点でも役立ってきた。
これらの手順は,いずれも全面的に満足のいくものではなく,一般に認められた手順には至っていない。
ある材料の場合は,一定の高温に長期間暴露すること[すなわち,実用されている材料が通常ではさら(曝)
されない条件]は,ガス放散を加速化することに加え,経年変化プロセスとは関係のない材質の変化を引
き起こす原因となり,結果的に不正確なデータを得る可能性がある。また,最近はクロロフルオロカーボ
ン(CFC)に代わる代替発泡剤に関する研究が活発になっており,より迅速な試験方法を提供することが
求められている。
このため,最適な試験方法を実現するには,状態調節を高温ではなく室温又はそれに近い温度で実施す
ることが要求される。これを実現するためには,期間を長期化するか,厚さを薄くするかのいずれかが必
要である。各種の発泡プラスチックに対して,10 mm以下の均等な厚さをもつ試験片を用いて,短期間で
断熱性の変化の測定法に関する重要かつ有望な研究が,様々な国で行われている。
この試験方法は,上記の考え方,すなわち,一般に,スライシング・スケーリング手法と呼ばれている
方法に基づいている。
A.2 平均熱抵抗値の算出
多くの場合,発泡プラスチックの経年変化の研究では,熱伝導抵抗r(熱伝導率の逆数)は,時間の対
数関数として式(A.1)で表される。
r = F (log t) (A.1)
また,試験結果は,初期“ゼロ”時点(通常,数日)におけるr値を基準値として用いて,無次元化し
た熱伝導抵抗で示される[式(A.2)参照]。
rt/r0 = F (log t) (A.2)
これによって,経年変化プロセスの一般的特性を,絶対値に注意を払わなくても理解できる。
Rtを期間t日後の熱抵抗とし,Rav,nをn日間の平均熱抵抗とすれば,次の式(A.3)で表される。
Rav,n = ΣRt/n (A.3)
Rが時間に対数依存すると仮定すれば,式(A.1)及び式(A.2)は,次の式(A.4)で表される。

――――― [JIS A 1486 pdf 11] ―――――

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(Ri−Rn) / (R0−Rn) = 1−log i/log n (A.4)
ここに,R0及びRnは,経年変化期間の初期及びn日後における熱抵抗である。
したがって,n日間における平均熱抵抗Ravは,t日後における熱抵抗Rtに相当するので,
t n/ 10 (A.5)
期間25年(9 125日)をスライスされていない発泡プラスチックの耐用期間と考えると,平均熱抵抗値
を得るには,期間9 125/3.16日,すなわち2 886日を要する。
A.3 熱移動及び物質移動の相似
窒素及び酸素の発泡プラスチック板内部への侵入並びに発泡剤の発泡プラスチックからの放散は,いず
れも発泡プラスチック板の加熱又は冷却と同様に記載することができる。
均一な温度T1のある板の表面温度をT2に冷却する場合,ある板の平均温度Tmは次の式(A.6)で与えられ
る。
(A.6)
Tm= (T0−T2) / (T1−T2) = 8π2Σ1/ (2n+l) xp[−F0 (2n+l) 2π2] (n = 0)
ここに,F0 = a・t/d 2 = λ/(ρ・cp) (A.7)
F0の値が大きい場合(要するに,期間が長い又は厚さが薄い場合),式(A.6)の級数は急速に収れんする。
したがって,式(A.6)は,次のように簡略化できる。
(Tm−T2) / (T1−T2) = 8π2exp (−F0π2) (A.8)
これは,特定の期間における値(厚さと温度拡散率とが一定)の場合,拡散プロセスは,厳密に指数関
数的であることを示している。これは,十分に進展した段階での拡散プロセスと呼ばれている。ガスの移
動も拡散プロセスと同様に扱うことができる。ガスの分圧が温度に,圧力変化が温度変化に,有効ガス拡
散係数が温度拡散係数にそれぞれ対応している。
したがって,ガス移動現象も,式(A.6)及び式(A.8)によって同様に解析することができる。式(A.8)は,
F0の値が大きい場合,相対(無次元)圧力の対数がF0に線形依存することを示している。一方,式(A.6)
は,相対(無次元)圧力の対数は常に,F0に比例することを示している。F0が一定の場合,ガス移動プロ
セスを式(A.6)が表している限り,ガス移動プロセスのスケーリングは,薄い試料の拡散速度を求め,この
求めた拡散速度と厚い試料の拡散速度との関係を求めることによって行う。したがって,任意の一連の特
性(d及びD)をもつ板について測定した拡散速度を基準板(d0,D0)の場合と比較検討するには,測定
時間に,スケーリング係数を乗じなければならない。
t=t0S (A.9)
S=(d02D/d2D0) (A.10)
試験材料についてD = D0(すなわち,均質である。)と仮定すれば,スケーリング係数は厚さだけの比
で表すことができる。すなわち,次の式(A.11)となる[例の式(A.12)を参照。]。
S = d02/d2 (A.11)
例 t10 =t100・(d10)2/(d100)2 = 25×365・(0.01)2 / (0.1)2 = 91日 (A.12)
A.4 経年変化プロセスのモデル化及びスケーリング係数の利用
経年変化プロセスにおいて発生する代表的な変化を説明するために,各種モデルを利用することができ
る。気泡ガスの熱伝導抵抗は,板内における位置と経年変化状態(経過時間,温度並びに気泡ガス組成に
影響を与える窒素,酸素及び分子量が大きい発泡剤のそれぞれの有効拡散係数)の関数として変化する。

――――― [JIS A 1486 pdf 12] ―――――

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与えられた変数を理想的な材料に適用することで,モデルを用いて経年変化特性を計算することができ
る。気泡内の各ガスの拡散は独立に扱うことができる。他のガスがもし存在しなければ,発泡剤のセル内
モル濃度は変化しないため,発泡剤による熱性能への影響はほとんどないこととなる。酸素の拡散速度は
窒素の6倍であるが,窒素の濃度が酸素の4倍であるため,窒素ガスが支配的な役割を果たす。空気が気
泡セルに入ることで,発泡剤の濃度を相対的に引き下げるため,断熱性の変化は非常にはっきりとしてい
る。
ある理想的な材料の三つの厚さについて,計算で求めた代表的な経年変化曲線を図A.1に示す。経年変
化は,一次段階及び二次段階に当てはめた個別の直線で近似的に示すことが可能である。遷移点(実質的
には遷移区間)は,拡散プロセスの進行速度の変化点と一致するため,発泡プラスチックの断熱性の分析
において重要な役割を果たす。
厚さが経年変化曲線の特性に与える影響は,非常にはっきりとしている。厚さが薄くなると,熱伝導抵
抗が時間の指数関数になるまでの期間も減少する。
二つの材料厚さを用いた試験で得た結果を図A.2では実時間で示し,図A.3ではスケーリング係数適用
後の時間で示している。図A.2は実時間の関数としての2種類の厚さの硬質独立気泡プラスチックの正規
化熱抵抗を,図A.3はスケーリング係数適用後の2種類の厚さの硬質独立気泡プラスチックの正規化熱抵
抗を示している。図に示すように,スケーリング係数Sを用いると,全てのデータが一つの曲線に沿うよ
うになる。したがって,薄い試料を測定すれば,それと同材質の厚い試料の,対応する挙動を知ることが
可能なデータを得られる。
A.5 結果に影響を与えうる要因
スライスした試験片及びスケーリング係数を利用する手法の利点は,高分子ポリマーのガス含有量,拡
散係数,気泡サイズ及び放射特性に関係なく適応できる比較的単純な手法であるという点にある。ただし,
この手法を適用する際には,幾つかの要素について注意を要する。特に,二つの変数,すなわち,厚さの
二乗の比及び有効拡散係数の比に依存するスケーリング係数の適用には,注意しなければならない。した
がって,“正確な”有効厚さの測定は,非常に重要である。また,試験する材料又は製品は,厚さ方向の特
性が均一であるべきである。すなわち,表面層と中心層との拡散係数は,大きく異ならないことが必要で
ある。
A.5.1 厚さの誤差
通常,試験片の厚さは10 mm程度である。現在,熱抵抗の測定に適した面積をもつ試験片を作製するた
めの各種方法を用いれば,最大誤差±10 %で均等な厚さを得ることが可能である。通常は,これよりはる
かに小さい誤差である。

――――― [JIS A 1486 pdf 13] ―――――

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A 1486 : 2014
一次段階
正規化熱抵抗
ニ次段階
遷移点
相対時間(日)
図A.1−スケーリング係数適用後の3種類の厚さの硬質独立気泡プラスチックの正規化熱抵抗
正規化熱抵抗
実時間(日)
図A.2−実時間の関数としての2種類の厚さの硬質独立気泡プラスチックの正規化熱抵抗

――――― [JIS A 1486 pdf 14] ―――――

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A 1486 : 2014
一次段階
正規化熱抵抗
ニ次段階
遷移点
相対時間(日)
図A.3−スケーリング係数適用後の2種類の厚さの硬質独立気泡プラスチックの正規化熱抵抗
A.5.2 損傷表面層
試料を切断することで連続気泡の部分が増え,試験片の“有効”厚さが減少する。これは,厚さが薄く
なるほど著しくなる。この厚さの減少を補正するために,TDSLという考え方が導入された。
試験片の有効体積をガスビュレット又は空気比較比重瓶のいずれかを用いて測定し,これを幾何学的体
積の測定値と比較する方法で,最も高い精度で有効厚さを求めることができる。ガスビュレットは,試験
片の表面積と体積との比が大きい場合に最も適した精度の高い方法であるが,標準的な試験方法はまだ開
発されていない。
一般に,この損傷表面層は,各切断面について最大で一つの気泡径に等しいことが明らかになっている。
損傷表面層の測定に適した試験方法が開発されるまでは,この値を適用することが望ましい。
表面の損傷した気泡の影響は,近似的に次の式(A.13)で排除できる。
λ= (ds−2x) / (ds/λs−2x/λair) (A.13)
ここに,λairは,一定の気泡径xをもつ,損傷を受けて空気で満たされた場合の発泡プラスチックの熱伝
導率である。気泡径が0.5 mmの場合,λは0.038 W/(m・K)となる(この値は,製品ごとに異なる。)。λsは,
この測定法で測定された熱伝導率,dsは試験片の厚さである。
したがって,気泡径が0.5 mm,厚さ100 mmの製品の場合,式(A.14)になる。
λ= (0.01−0.001) / (0.01/0.028−0.001/0.038) = 0.027 2 W/(m・K) (A.14)
これに対応する測定値は,0.028 W/(m・K)であった。
A.5.3 試験片作製前の経年変化
これまで行われてきた経年変化現象の様々な研究においては,試験は製造“直後”(通常,5日未満)に
作製された試験片について実施されてきた。しかし,実際には,製造から試験片作製までの期間は,それ

――――― [JIS A 1486 pdf 15] ―――――

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JIS A 1486:2014の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 11561:1999(MOD)

JIS A 1486:2014の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1486:2014の関連規格と引用規格一覧