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5 測定方法の種類
5.1 フロー式免疫測定方法
フロー式免疫測定方法は,抗PCB抗体と試料中のPCBとの反応を行った後,その反応液を検出系に通
液し,抗原−キャリア結合体などを固定した固相(ヘテロジニアス免疫測定方法で使用する,プラスチッ
ク,ガラス,磁性体,メンブレンなどの担体)上で,PCBと反応した抗PCB抗体及び未反応の抗PCB抗
体を分離し,固相に捕そくした双方又はいずれかの抗PCB抗体量を測定し,試料中のPCB濃度を求める
方法である。定量ポンプなどによって通液制御を行うフロースルー形と,毛細管現象を利用して固相上に
展開するラテラルフロー形とに大別できる(測定対象成分がPCBに限らないが,フロースルー形の手法及
び適用例については[1]及び[2]を,ラテラルフロー形の手法及び適用例については[3]及び[4]を参照)。
5.2 バッチ式免疫測定方法
バッチ式免疫測定方法は,同一固相上で抗PCB抗体と,PCB及び抗原トレーサー又は抗原−キャリア
結合体などとの競争的結合反応を行った後,固相上に捕そくした抗原−抗PCB抗体結合体量を,トレーサ
ーを用いて測定し,試料中のPCB濃度を求める方法である。固定した抗PCB抗体及び抗原トレーサーを
用いる直接免疫測定方法,又は固定した抗原−キャリア結合体などと抗体トレーサーとを用いる間接免疫
測定方法に大別できる。トレーサーに酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ,アルカリフォスファターゼ,
β-D-ガラクトシダーゼなど)を用いる方法を通常,ELISA (enzyme-linked immunosorbent assay) という。
a) 直接免疫測定方法 抗PCB抗体を固定した固相にPCBと抗原トレーサーとを添加し,競合反応を行
った後,抗PCB抗体に結合した抗原トレーサー量を測定し,試料中のPCB濃度を求める方法である。
b) 間接免疫測定方法 抗原−キャリア結合体などを固定した固相に抗PCB抗体とPCBとを添加し競合
反応を行った後,固相に捕そくした抗PCB抗体の量を抗体トレーサーによって測定し,試料中のPCB
濃度を求める方法である。
6 試薬
測定に用いる試薬は,次による。ただし,これ以外に必要となる試薬は,高純度の試薬を用い,空試験
などによって測定に支障のないことを確認した後に使用する。使用する試薬の保存条件及び安定性に関す
る情報は,供給元による。
6.1 水 JIS K 0557に規定するA4若しくはA3の水,又は同等の品質のもの。
6.2 ジメチルスルホキシド (DMSO) IS K 9702に規定するもの,又は同等の品質のもの。
6.3 標準物質 組成及び濃度が可能な限り国家計量標準にトレーサブルなPCB標準物質。例えば,独立
行政法人産業技術総合研究所認証標準物質NMIJ CRM4206aNMIJ CRM4211a。
6.4 環境組成標準物質 PCBの組成及び濃度が可能な限り国家計量標準にトレーサブルな測定対象と類
似の組成物。例えば,独立行政法人産業技術総合研究所認証標準物質NMIJ CRM7902a絶縁油(ポリクロ
ロビフェニル分析用−高濃度),NMIJ CRM7903a絶縁油(ポリクロロビフェニル分析用−低濃度),NMIJ
CRM7904a重油(ポリクロロビフェニル分析用−高濃度),NMIJ CRM7905a重油(ポリクロロビフェニル
分析用−低濃度),NMIJ CRM7304a海底質(ポリクロロビフェニル分析用−高濃度),NMIJ CRM7305a海
底質(ポリクロロビフェニル分析用−低濃度)。
6.5 緩衝洗浄液 緩衝液にはJIS K 0461に規定したPBS,又は同等の品質のものを用いる。緩衝洗浄液
には,抗体の非特異的反応抑制効果をもつ物質(例えば,界面活性剤など)を必要に応じて添加する。
――――― [JIS K 0464 pdf 6] ―――――
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7 器具及び機器
測定に用いる器具及び機器は,次による。器具及び機器は,空試験などによって測定に支障のないこと
を確認した後使用する。
7.1 プッシュボタン式液体用微量体積計 JIS K 0970に規定するもの(マイクロピペットともいう。)。
7.2 検出器 蛍光強度,吸光度,磁性量などを測定することで,抗体トレーサー又は抗原トレーサーを
定量できる装置。
8 サンプリング,前処理及び試料調製
8.1 サンプリング
サンプリングを行う試料媒体,目的に応じた採取量及び採取時間などを十分考慮して代表試料を採取す
る。その例を附属書Aに示す。
8.2 前処理
採取した試料は,抽出及びクリーンアップによって,PCBの定量に影響を及ぼす物質を除去する。その
例を附属書Aに示す。
8.3 標準液の調製
標準物質を,抗PCB抗体を含む測定溶媒と均一な混合が可能なDMSOなどの溶媒に溶かして溶解希釈
し,標準希釈列を調製する。
8.4 試料調製
試料の前処理によって得られたPCBを含む溶液は,標準液の調製と同一の溶媒に置換する。
9 測定操作
9.1 フロー式免疫測定方法
9.1.1 一般
測定操作方法を,9.1.29.1.8に示すが,これに限定するものではない。具体的な測定操作は,技術提供
元の技術情報によって実施する。その例を附属書Bに示す。
9.1.2 抗原抗体反応
PCBの標準液又は試料と,緩衝液及び適切に希釈又は溶解した抗体トレーサーとを所定の容器中で混合
し,PCBと抗PCB抗体との結合が平衡状態に達するまで行う。トレーサーは,抗PCB抗体に直接結合し
ている場合と,二次抗体に結合している場合とがある。二次抗体トレーサーを使用する場合には,未標識
の抗PCB抗体と二次抗体トレーサーとを同時に混合するか,又は順次反応する。
9.1.3 通液・展開
抗原を固定した固相(材質及び機能によって,測定セル,メンブレンなどということがある。)に対して,
PCB−抗PCB抗体反応液を通液又は展開する。フロースルー形の場合は,定量ポンプを用いて反応液を固
相に一定の流量で通液するのに対し,ラテラルフロー形の場合は,毛細管現象を利用して反応液を固相上
に展開する。
9.1.4 抗体捕そく
未反応抗PCB抗体を,固相に固定した抗原−キャリア結合体などに捕そくする。ラテラルフロー形では,
抗原−キャリア結合体による未反応抗PCB抗体の捕そくに加え,抗原−キャリア結合体より下流域に固定
した二次抗体によって,PCBが結合した抗PCB抗体を捕そくする。
――――― [JIS K 0464 pdf 7] ―――――
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9.1.5 洗浄・(乾燥)
フロースルー形では,定量ポンプを用いて緩衝洗浄液を通液し,固相に残存する反応液を洗浄する。洗
浄後,必要に応じて固相を乾燥する。
9.1.6 検出のための反応
使用するトレーサーが酵素の場合は,適切な基質溶液を通液又は展開する。
9.1.7 検出
固相に結合した抗体トレーサーの量を,各トレーサーに適した検出装置で測定する。
9.1.8 再生
フロースルー形の一部の固相は,再生が可能なものがある。その場合は,再生液を通液することによっ
て固相に捕そくした抗PCB抗体を解離した後,緩衝液を通液し,固相を抗PCB抗体結合前の状態に復帰・
再生する。
9.2 バッチ式免疫測定方法
9.2.1 一般
バッチ式免疫測定方法のうち,トレーサーとして酵素を用いた場合の一つの方法である直接酵素免疫測
定方法の測定操作方法は,JIS K 0461による。トレーサーとして酵素を用いた場合の別の方法である間接
酵素免疫測定方法の測定操作方法を,次に規定するが,これに限定するものではない。具体的な操作は,
技術提供元の技術情報によって行う。その例を附属書Bに示す。
9.2.2 一次抗原抗体反応
PCBの標準液又は試料及び抗PCB抗体(一次抗体)を抗原−キャリア結合体を固定した固相に添加す
る。抗原抗体反応が完了するまで反応を行う。
9.2.3 洗浄
緩衝洗浄液で洗浄して,固相に結合しなかった成分を除去する。
9.2.4 二次抗原抗体反応及び洗浄
固相に二次抗体トレーサー溶液を添加し反応を行う。その後,未反応物質を緩衝液で洗浄し除去する。
9.2.5 検出のための反応
抗体トレーサーの酵素に対応した基質溶液を固相に添加し反応を行う。
9.2.6 検出
適切な検出装置を用いて,酵素反応生成物ごとに決められた検出方法によって酵素活性を測定する。
10 分析方法のバリデーション(妥当性確認)
10.1 一般
データの質を保証するために,新たに導入した免疫測定方法では,分析方法のバリデーション(妥当性
確認)を実施し,10.210.4に示した方法によって,精度プロファイルを作成し,定量範囲(定量下限及
び定量上限)及び検出下限を求める。
10.2 精度プロファイル
分析値の変動係数 [CV (rc) ] を測定対象成分の濃度に対してプロットした図を,精度プロファイルと定
義する([5]参照)。精度プロファイルには,測定値のCVのプロット及び定量値のCVのプロットの2種類
がある。PCBの免疫測定方法の代表的な精度プロファイルを,図1に示す。
――――― [JIS K 0464 pdf 8] ―――――
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図1−精度プロファイル及び検量線(フロー式免疫測定方法の例)
測定値のCV (rm) から定量値のCV (rc) への変換は,検量線の微分係数 ( dY/ dX ) を用いて,標準偏差
(SD) 間の変換を行って,図2に示すように行う。
Y dY/ dX X
測定値の 測定値の 定量値の 定量値の
CV (rm) SD SD CV (rc)
図2−測定値のCV (rm)から定量値のCV (rc) への変換
この変換は,次の式による。
rmY
rc
( dY / dX ) X
ここに, X : 定量値
Y : 測定値
rc : 定量値のCV
rm : 測定値のCV
10.3 定量下限及び定量上限
定量下限とは,試料に含まれる分析対象成分の定量が可能な最小量又は最小濃度であり,定量上限とは,
定量が可能な最大量又は最大濃度である。定量値のCV (rc) が10 %を示す分析対象成分の量又は濃度を,
それぞれ定量下限及び定量上限とする。図3は,図1で示した定量値の精度プロファイルから求めた。
――――― [JIS K 0464 pdf 9] ―――――
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図3−定量下限及び定量上限の求め方
10.4 検出下限
検出下限とは,試料に含まれる分析対象成分の検出可能な最低の量又は濃度である。図4に示すように
定量値のCV (rc) が30 %を示す目的値の量又は濃度を検出下限とする。ただし,検出下限は,精度プロフ
ァイルのU字曲線の低濃度側とする。
図4−検出下限の求め方
10.5 他の分析方法との比較
既に分析方法(GC-MSなど)がある場合は,それらの方法と比較を行うとよい。具体的には同一の標準
品,又は値の異なる幾つかの試料を用いて測定を行い,既存測定方法との相関性を明らかにしておく。
11 計算
11.1 繰返し測定
目的によって異なるが繰返し測定を実施する場合は,定量値の変動係数 [CV (rc) ] が10 %以下となるよ
うに行うのがよい。望ましいCVによって繰返し数を定める。各濃度のCVは,図1の精度プロファイル
から求め,これから繰返し数を決定する。
11.2 検量線
通常,市販のキットには計算方法の選択の指針が付けられている(例えば,4-parameter logistic回帰,直
線回帰,point to point回帰,log-logit 回帰,log-log回帰など)のでその方法に従う。検量線の関数を得る
のによく用いる例(4-parameter logistic回帰)を図5に示す([6]参照)。
――――― [JIS K 0464 pdf 10] ―――――
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JIS K 0464:2009の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.080 : 土質.土壌学 > 13.080.05 : 土壌検査一般
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.060 : 水質 > 13.060.50 : 水に含まれる化学物質の検査
JIS K 0464:2009の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0093:2006
- 工業用水・工場排水中のポリクロロビフェニル(PCB)試験方法
- JISK0461:2006
- 競合免疫測定方法通則
- JISK0462:2008
- 非競合免疫測定方法(サンドイッチ法)通則
- JISK0557:1998
- 用水・排水の試験に用いる水
- JISK0970:2013
- ピストン式ピペット
- JISK3600:2000
- バイオテクノロジー用語
- JISK9702:2014
- ジメチルスルホキシド(試薬)
- JISZ9021:1998
- シューハート管理図