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JA.3 眼の下方回旋(下転)による視線通過位置の変化
単焦点の眼鏡をかけたとき,側方から見た視線及びレンズの位置関係を,図JA.2に示す。平均的な視線
の下方回旋角をα°とし,レンズの前傾角をβ°とすると,通常α=βとなり,視線はレンズの光学中心
OC(=optical center)を通り,かつ,レンズと直角に交わるのが理想的である。すなわち,視線及びレン
ズの光軸が一致するようにレイアウトされていることが望ましい。
前傾角β 表JA.2−レンズ下げ量yの目安
VP
前傾角β(°) 下げ量y(mm)
0 0
下方回旋角 5 2.2
α
10 4.4
15 6.7
視線 回旋点 20 9.1
下げ量y 25 mm
OC
α=β
図JA.2−下方回旋角α及び前傾角βの関係
顔を真っすぐ向けて水平視線で遠くを見るとき,視線とレンズ面との交点を(遠用)ビジュアルポイン
ト(VP又はDVP)という。VPからレンズの光学中心(OC)までのレンズ上の垂直距離は,下げ量yと
呼ばれ,y=25×tan βの式で求められる。ただし,レンズ後面から回旋点までの距離を25 mm(頂点間距
離12 mm+角膜回旋点間距離13 mm)と仮定している。
表JA.2に,前傾角βに対する下げ量yの目安を示す。常用眼鏡で前傾角β=10°の場合,下げ量は4.4 mm
となり,前傾角が大きくなるほど下げ量も大きくなる。
JA.4 ビジュアルポイントVP及び心取り点CP
頂点間距離及び前傾角を適切に調整したフレームを装用したとき,水平視線及びレンズ面の交点を(遠
用)ビジュアルポイント(VP),又はアイポイント(EP)という(図JA.3)。VPを数値で示す場合は左右
別に,ブリッジ中央からの水平距離,及び玉形下端からのVP高さで表す。VP高さは玉形高さの5分の3
くらいが美観上,望ましい。
――――― [JIS T 7337 pdf 26] ―――――
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VP ブリッジ中央 VP
玉形高さ
VP高さ
図JA.3−ビジュアルポイントVP
次に,心取り点(CP=centration point)とは,前述のように,レンズの光学中心OC,若しくはフィッテ
ィングポイントFPが置かれるべき目標位置である。ここで,常用眼鏡又は近用眼鏡では,図JA.4のよう
に,VPから(表JA.2の)下げ量yだけ下がった位置になり,近用の場合は,更に内寄せを考慮して心取
り点が決められる。
累進眼鏡(VP)
常用眼鏡
近用眼鏡
図JA.4−用途別の心取り点CP(左眼)
JA.5 レンズの種類及び目的に応じた心取り点の設定
累進レンズなどの屈折力変化レンズ,姿勢指定付き単焦点レンズなどでは,製造業者が規定するフィッ
ティングポイント(FP)又は設計基準点がレンズ上に指定されているので,それらをビジュアルポイント
(VP)に合わせて加工する。すなわち,VPがそのまま心取り点CPとなる。
一方,常用又は近用の単焦点レンズなどでは,通常,VPから目的に応じて数ミリメートル下げた位置
に心取り点CPを設定し,レンズ光学中心をそれに合わせるように加工する。
――――― [JIS T 7337 pdf 27] ―――――
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CP ブリッジ中央 CP(心取り点)
ボクシング中心 ボクシング中心
作製高さ(+,−)
水平中心線
作製高さ
(CP高さ)
内寄せ量 内寄せ量
RCD LCD
レンズ生地外径
CD(心取り点間距離)
図JA.5−フレーム上の心取り点CPの位置
左右の心取り点の隔たりを心取り点間距離CD(=centration distance)といい,ブリッジ中央から左右別々
に測る場合もある(RCD,LCD)(図JA.5)。
フレーム上の心取り点CPの位置を,水平及び垂直方向の座標で記録する場合,次の二つの方法がある。
一つは,左右のボクシング中心を基準としたCPの水平変位量(内寄せ量)及び垂直変位量(=作製高さ :
上がプラス,下がマイナス)で表す方法で,主にレンズ製造業者で用いられる。もう一つは,ブリッジ中
央から測った左右の心取り点間距離(RCD,LCD)及びボトムリムから測った作製高さ(CP高さ)で表
す方法で,主に眼鏡店で用いられる。
JA.6 眼鏡加工時の手順
新しいフレームにレンズを加工して枠入れする場合,まず,顔に合わせてフレームを適切にフィッティ
ングした後,ビジュアルポイントVPをダミーレンズ上に印点する。ダミーレンズの代わりにフレーム面
に透明テープなどを貼って代用することもある。
次に,VPを基に心取り点CPを設定する。作製する眼鏡が屈折力変化レンズ又は姿勢指定付き単焦点レ
ンズの場合は,VPがそのままCPとなる。この場合,レンズにプリントされているフィッティングポイン
トFPが,CP(=VP)に正しく位置するように加工することが望ましい。
一般の単焦点レンズ及び多焦点レンズの場合は,遠用,常用又は近用の用途に応じて,また,装用時前
傾角を考慮して,VPから2 mm6 mm下げた位置にCPを設定する。近用の場合は,更にふくそう(輻湊)
を考慮して単眼で2 mm3 mm内寄せした位置をCPとする。これらの場合,レンズ光学中心が正しくCP
に位置するように,加工する必要がある。
設定されたCPの座標は,ボクシング中心からの水平・垂直変位量として,若しくはブリッジ中央から
の水平変位量及びボトムリムからの垂直変位量として,正しく記録しておくことが望ましい。
――――― [JIS T 7337 pdf 28] ―――――
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附属書JB
(参考)
単焦点レンズ(姿勢指定付き単焦点レンズを除く。)及び多焦点レンズのプ
リズムインバランスの測定手順
JB.1 プリズムインバランスの許容差の特定
a) 処方されたプリズムがプリズム屈折力量及びプリズム基底方向で指定されている場合は,左右のレ
ンズに指定されたプリズム屈折力を水平方向及び垂直方向の成分に分解して,水平方向及び垂直方
向の成分のプリズムとする。
プリズムがプリズム屈折力量P及びプリズム基底方向PAXで指定されている場合,次の計算によ
って水平垂直のプリズム成分の値に分解する。
水平方向のプリズム成分の値 PH=P×COS(PAX)
垂直方向のプリズム成分の値 PV=P×SIN(PAX)
水平成分のプリズムの基底方向は,右レンズでPH>0のときベースイン,PH<0のときベースア
ウトであり,左レンズでPH>0のとき水平成分のプリズムはベースアウト,PH<0のときベースイ
ンとする。垂直成分のプリズムは,左右レンズも,PV>0のときベースアップ,PV<0のときベー
スダウンとする。
プリズム屈折力が水平方向及び垂直方向の各成分に分けて指定されている場合は,それぞれのプ
リズム屈折力を水平方向及び垂直方向のプリズム成分の値とする。
プリズム屈折力が指定されていないレンズの場合,指定されたプリズムの水平方向及び垂直方向
のプリズム成分の値は,それぞれ0とする。
b) 左右レンズの指定されたプリズムの水平方向及び垂直方向のプリズム成分の値で,左右のより値の
大きな水平方向のプリズム成分の値と,より値の大きな垂直方向のプリズム成分の値とを特定する。
c) 左右レンズのそれぞれの両主経線屈折力(S,S+C)を特定する。
左右それぞれのレンズについて二つの主経線屈折力があるため,左右レンズで四つの主経線屈折
力を特定する。
d) )で特定した四つの主経線屈折力のうちの絶対値が最も大きな主経線屈折力を特定する。
e) 水平方向のプリズムインバランスの許容差を特定する。
d)で特定した絶対値が最も大きな主経線屈折力が,3.37 D以下の場合は,b)で特定した水平方向
の プリズム成分の値に従って,表5の2列目の許容差から該当する許容差を特定する。
d)で特定した絶対値が最も大きな主経線屈折力が,3.37 Dを超える場合は,b)で特定した水平方
向のプリズム成分の値に従って,表5の3列目の許容差から該当する許容差を読み込む。この3列
目の許容差は,一部に±(0.2×S)という計算式で表されているが,この計算式のSにd)で特定した,
絶対値が最も大きな主経線屈折力の値を代入して計算することで,許容差を特定する。
f) 垂直方向のプリズムインバランスの許容差を特定する。
d)で特定した絶対値が最も大きな主経線屈折力が,5.00 D以下の場合は,b)で特定した垂直方向
のプリズム成分の値に従って,表5の4列目の許容差から該当する許容差を読み込む。
d)で特定した絶対値が最も大きな主経線屈折力が,5.00 Dを超える場合は,b)で特定した垂直方
向のプリズム成分の値に従って,表5の5列目の許容差から該当する許容差を読み込む。この5列
――――― [JIS T 7337 pdf 29] ―――――
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目の許容差も,一部に±(0.1×S)という計算式で表されているが,この計算式のSにd)で特定した,
絶対値が最も大きな主経線屈折力の値を代入して計算することで,許容差を特定する。
JB.2 心取り点へのマーキング
枠入れされた眼鏡の左右のレンズの前面側にそれぞれ指定された心取り点の位置にマークをする。
このとき,レンズのもつ拡大縮小作用又はプリズム作用が,心取り点の位置の特定に影響しないように
するため,レンズの前面側で心取り点の位置を特定してマークをするとよい。
JB.3 レンズメータを使用したプリズムインバランスの測定
JB.3.1 手動の合焦式レンズメータを使用する場合
JB.3.1.1 プリズムコンペンセータを搭載していないレンズメータの場合
眼鏡の水平を維持するために,眼鏡フレームのリムの下端側を奥側にして,レンズメータの眼鏡受け台
に当て,右レンズの心取り点の位置でレンズの後面をレンズメータの開口部に当て,右レンズの水平成分
のプリズム値及びその基底方向ベースイン,ベースアウト並びに垂直成分のプリズム値及びその基底方向
ベースアップ,ベースダウンを読み取り,記録しておく。
次に,眼鏡のフレームのリムの下端側を眼鏡受け台に当て,左レンズの心取り点の位置で,レンズの後
面をレンズメータの開口部に当て,左レンズの水平方向のプリズム成分の値及びその基底方向ベースイン,
ベースアウト並びに垂直方向のプリズム成分の値及びその基底方向ベースアップ,ベースダウンを読み取
り,記録しておく。
なお,左右で心取り点の垂直方向の高さが異なる場合は,眼鏡受け台の前後位置を調整して,眼鏡の水
平方向を維持した状態で,左右それぞれ異なる高さの心取り点の位置で測定する。
記録された左右のレンズの水平成分及び垂直成分のプリズム屈折力の値から,水平方向及び垂直方向の
左右レンズの相対的なプリズム差を求める。
水平方向の左右の相対的なプリズム差を求める場合,基底方向ベースイン,ベースアウトが左右で同じ
場合は,左右の水平方向のプリズム値を加算し,基底方向ベースイン,ベースアウトが左右で異なる場合
は,左右の水平方向のプリズム値を減算して求める。
垂直方向の左右の相対的なプリズム差を求める場合,基底方向ベースアップ,ベースダウンが左右で同
じ場合は,左右の垂直方向のプリズム値を減算し,基底方向ベースアップ,ベースダウンが左右で異なる
場合は,左右の垂直方向のプリズム値を加算して求める。
JB.3.1.2 プリズムコンペンセータを搭載している手動式レンズメータの場合
眼鏡の水平を維持するために眼鏡のフレームのリムの下端側を奥側にして,レンズメータの眼鏡受け台
に当て,右レンズの心取り点の位置でレンズの後面をレンズメータの開口部に当て,レンズメータのター
ゲット像が,レンズメータ視野内の中心,又はスクリーンの中心からずれている場合には,プリズムコン
ペンセータ(図JB.1)を使用してそれぞれの中心にくるように調整する。
次に,眼鏡のフレームのリムの下端側を眼鏡受け台に当て,左レンズの心取り点の位置でレンズの後面
をレンズメータの開口部に当て,左レンズの水平成分のプリズム値及びその基底方向ベースイン,ベース
アウト並びに垂直成分のプリズム値及びその基底方向ベースアップ,ベースダウンを読み取り,水平方向
及び垂直方向の左右レンズの相対的なプリズム差として記録しておく。
――――― [JIS T 7337 pdf 30] ―――――
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JIS T 7337:2020の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 21987:2017(MOD)
JIS T 7337:2020の国際規格 ICS 分類一覧
JIS T 7337:2020の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB7090:1999
- 光学及び光学機器―基準波長
- JISB7183:1995
- レンズメータ
- JISB7281:2003
- 眼鏡光学―眼鏡フレーム―寸法測定方式及び用語
- JIST7313:2020
- 屈折補正用単焦点眼鏡レンズ及び多焦点眼鏡レンズ
- JIST7315:2020
- 屈折補正用屈折力変化眼鏡レンズ
- JIST7330:2000
- 眼鏡レンズの用語
- JIST7331:2018
- 屈折補正用眼鏡レンズの基本的要求事項